著者
山川 真 山本 忠司 水谷 洋子 西谷 博 八星 元彦 平田 純生 堀内 延昭 清水 元一 山本 啓介 岸本 武利 前川 正信
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
人工透析研究会会誌 (ISSN:02887045)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.115-127, 1982-03-31 (Released:2010-03-16)
参考文献数
55

炭酸塩の析出という重曹透析液の欠点は, 酢酸ソーダを緩衝剤として用いることによって解決されたが, 透析法の発達によって新たに酢酸透析の問題点が指摘されるようになった. まず, dialyzerの効率の上昇に伴って, 透析液から生体に負荷されるacetate量がその代謝能を超える可能性があることと, 患者の中にはacetateの代謝能が低いものがあることがわかった. またacetateの大量負荷が生体のTCA-cycleに影響を及ぼすことが明らかにされた. 第2は, 酢酸透析では, dialyzerを通して血液から失われるHCO3-とCO2が大きいため, 適正な酸塩基平衡の是正が行われないこと, またCO2の低下から生ずるPO2の低下も考えられた. 第3はacetateの心機能抑制作用と, 未梢血管拡張作用が, 透析に不利に働いて, 透析中の不快症状の原因になっていることが示唆された. 第4はacetateの代謝経路から考えて, 長期には脂質代謝に何等かの影響が及ぶことが推測される. 第5は, まだ知見は少ないが, 重曹透析がCa代謝に有利に働くことが期待される.実際, 酢酸透析を重曹透析に移行することによって, 透析中の不快症状の発現が激減し, 種々の検査成績も改善することが示された. 重曹透析はすべての透析患者にとって有利な透析を提供すると考えられるが, 特に酢酸不耐症、 重症合併症、 心循環系合併症, 導入期, 大面積短時間透析等の症例に有効である. 重曹透析液は炭酸塩の沈澱を防止することが最大の課題であるが, そのためには, 液のpHの安定化をはからねばならない. このことはとりもなおさず, 液のPCO2の安定化に他ならない. 現在では, 重曹透析液は2原液法によって作製されるが, 安定した組成の液とその混合供給装置が開発され実用化している. 重曹透析は生理的で有用であるが, その取扱いはやや煩雑で、 高価になるので, 今後これらの点の改良が望まれる.
著者
大谷 洋子
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.71-76, 2018-05-31 (Released:2018-09-01)
参考文献数
13

トマト青枯病菌に対する土壌還元消毒の新規資材として,糖含有珪藻土または糖蜜吸着資材を用いた場合の処理条件について検討した。両資材とも,土壌に対して重量比で 1%以上混和して土壌還元消毒処理すると,青枯病菌に対して対照の廃糖蜜 0.6%処理に優る効果が得られることが示唆された。また,20~50°Cの範囲では温度が高いほど還元が進んだ。和歌山県で7~8月に施設内で土壌消毒を実施すると,地下 30 cmでは 40°C以上を12日間維持できた。一方,地下 40 cmでは,みなべ町では処理開始13日後以降 40°C以上を維持したが,海南市では 40°Cに達することはなかった。これらのことから,地下 30 cmより浅い層では高地温による菌密度低減と還元による菌密度低減が併せて起こり,地下 30~40 cmより深い層では溶出した糖含有珪藻土および糖蜜吸着資材の成分による還元が起こって菌密度が低減することが期待される。
著者
木村 友子 菅原 龍幸 福谷 洋子 佐々木 弘子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.153-160, 1997-02-15 (Released:2010-03-09)
参考文献数
14
被引用文献数
2

鶏骨スープの調製法の迅速化・合理化・実用化を目的に, 食品の新しい処理方法として加熱過程に超音波照射を併用した熱水抽出法を試み, 鶏骨スープ (鶏骨20%濃度) の溶出成分と嗜好性の関係を調べ, 好適な調製条件を検討した.(1) 鶏骨スープの色調は経時的に明度の値が低下しこの傾向は照射ありのスープが顕著に低くなり, 色相のa値, b値では抽出温度および照射の有無で, 相違が認められた.(2) 鶏骨スープ中の抽出成分では照射ありの試料が照射なしの試料に比べ全エキス, 総窒素, ヒドロキシプロリンの含量がやや多く, また80℃・98℃設定は60℃設定に比べ溶出量が多かった.(3) 遊離アミノ酸量では照射ありの場合は30分間でグルタミン酸, アラニン, グリシン, セリンなどが大幅に増加し, 5'-IMPの溶出でも照射30分間で最大となり, 以後下降する傾向を示した.(4) 官能検査で高い評価を得た鶏骨スープは, 98℃設定の照射ありの30分間処理であり, 旨味成分などの理化学的測定値とよく対応した.(5) 超音波照射を併用した調製法は, 対照の照射なしの調製法に比し抽出時間が1/3に短縮され, しかも良質なスープが得られ有利であることが示唆された.
著者
細谷 洋子
出版者
公益社団法人 日本女子体育連盟
雑誌
日本女子体育連盟学術研究 (ISSN:18820980)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.1-16, 2014

アフロ・ブラジル文化カポエイラは,アフリカ系奴隷によってブラジルで創造され,近年ブラジル社会,歴史,文化の象徴としてブラジル国家によって認められた民族スポーツである。本稿はこのようなカポエイラの,幼児を対象にした教授内容を明らかにし,授業構成の観点とその鍵となる概念を考察することを目的とした。<br>その結果,授業パターンにおいて,幼児の心身の発育発達段階を考慮して,多様な動きの体験が優先された。そしてカポエイラの独特の世界観が重視されない「ジョゴ」(カポエイラのゲームを意味する。以下「ジョゴ」と略す)が行われていると考察された。<br>授業構成の観点として「行為の意味を重視する」ことが重要であることが明らかになった。つまり,技の完成度よりもジョゴを行う二人の間で技が行われることで生じる「問いかけと返答」という意味を重視する傾向が考察された。<br>更には,「問いかけと返答」の意味生成において,即興性が基軸となる「ジョゴ」概念が授業構成の観点として重要であり,この「ジョゴ」概念はカポエイラ特有の文化的特性であるという知見が得られた。
著者
細谷 洋子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.55_2, 2018

<p> カポエイラとは、350年ほど前にブラジルで創出されたアフリカ系ブラジル文化固有の格闘技である。これまで報告者は、児童、生徒、学生を対象に、数回のみの体験授業(45分~90分)ならびに正課授業(90分×15回)における、カポエイラを教材とした授業を実践してきた。これらの授業では、知識による理解だけでなく、学習者自身の身体を介した体験的な文化理解を目指した。これまでの実践を振り返ると、授業では、カポエイラにおいて不可欠の民族楽器による演奏や合唱を必ずおこなっており、それによって文化的な文脈の場が再現されていた。そのようなカポエイラ固有の実践形式や、組手中の駆け引きは、学習者間のコミュニケーションの促進に役立つと見受けられた。また、学習者は非日常的な雰囲気の中、「楽しさ」を伴う情動的な活動を体験し、文化としてのカポエイラについて深い理解がもたらされたようであった。しかしながら、教育目的、学習内容・方法、学習者のニーズ等を踏まえた教材化における改良の余地があり、課題も多い。そうしたカポエイラの教材化の現状について報告する。</p>
著者
菱田 慶文 中嶋 哲也 細谷 洋子
出版者
四日市看護医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

今年度の調査は、8月にタイで行われたアマチュアムエタイの世界ユース大会と12月末ブラジルのリオデジャネイロにある4つのブラジリアン柔術の道場に調査に行くことができた。タイ国のアマチュアムエタイ世界大会では、ブラジルチームにインタビューした結果、選手は、自ら渡航費を捻出するほどの金銭を所持しておらず、チームは、寄付金や企業にスポンサーとなってもらい世界大会に参加している状況であることが分かった。大会事務局発行のアマチュアムエタイの機関誌において、リオデジャネイロやサンゴンサロなどの都市では、ムエタイの普及が、教会や公民館などを借り,ボランティアて行われていることが分かった。ファベイラ(スラム街)では、特に、犯罪組織や麻薬の密売者に関わらせないためにも活動が重要であると記されている。ムエタイのボランティア指導は、週に2、3回行われており、参加者の中には、いじめ被害者や不登校児の報告もあった。12月に行ったブラジル、リオデジャネイロでの調査は、観光客でにぎわうコパカーナビーチにあるブラジリアン柔術道場やカンタガーロのファベイラにある柔術場の調査に成功した。コパカーナビーチの柔術道場は、ミドルクラス以上の白人が多く、フィットネスでもブラジリアン柔術は、行われていた。これらの道場の教育観は、少年少女に礼儀作法や身体訓練など健全育成のために、ブラジリアン柔術を教えるという理念のもと行われている。一方、ファベイラのジムでは、健全育成の側面に加えて、前述のムエタイと同様に、犯罪組織や麻薬の密売から遠ざけたい、という目的が第一であり、柔術をやっていれば、将来にファベイラ以外での生活ができるように、目標を持たせたい、等という、教育観を垣間見ることができた。これらの道場もボランティアでムエタイやブラジリアン柔術を教える人々の教育観や格闘技観を知ることができた。
著者
佐藤 真実 村上 亜由美 岸松 静代 谷 洋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.17, pp.159, 2005

<br>【目的】福井県における魚介類の利用状況と調理について調査を行い,とくに県内で使用される地方独特の魚の種類や行事などに利用する魚の調理方法について明らかにすることを試みた。<BR>【方法】越前(海岸部,主に漁業)10名,奥越(山間部,主に農業)10名,坂井(海に面した平野部,農業と漁業)11名,福井(地方都市)12名,嶺南(海岸部,漁業と商業)9名の5地域,計52名の20歳代から70歳代の居住者を対象に,アンケート調査及び聞き取り調査を行った。とくに地方独特の魚の種類や調理方法についてまとめ,写真撮影を行った。<BR>【結果】福井県で食べられる地方独特の魚の種類としては,みずべこ,がまえび,みずだこ,せいこがになどがある。みずべこはかに漁の底引き網にかかる深海魚であるが,吸い物や味噌汁に,がまえびは味が甘えびに類似しており刺身やフライに,みずだこは刺身に,せいこがにはゆでて卵やかにみそをそのまま食べる。行事などで食べられる地方独特の調理法としては,まさばの丸焼き(越前や嶺南では浜焼き鯖,奥越では半夏生の鯖と呼ばれる),へしこ(さばやいわしの糠漬け),まがれいの塩焼き(天神講に食べられる),身欠きにしんの昆布巻き(正月,盆,祭りに食べられる),にしんの麹漬け(12月から正月にかけて食べられる),だだみ(たらの精巣)の味噌汁,かつお節をもりつける雑煮などがみられた。
著者
南 アイコ 橋本 明子 佐藤 真実 岸松 静代 谷 洋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 創立40周年日本調理科学会平成19年度大会
巻号頁・発行日
pp.12, 2007 (Released:2007-08-30)

【目的】 すでに食品特性にはテクスチャーおよびフレーバーの次に食品の色が強い影響を示すことがいわれ、さらには食欲の増進や減退には色が関わることが報告されている。前報ではコロッケの盛り付けについて色と嗜好の関係について報告した。本研究においては、ハンバーグを盛り付ける際の付け合せの色と嗜好の関係について検討を行った。【方法】 日常的に食べられる料理としてハンバーグを選んだ。料理本などにある盛り付け方をまとめ、実際に盛り付けと写真撮影を行った。その写真を提示しながら、視覚情報による盛り付けのイメージ調査を行った。調査対象は本学学生181名の女子とした。調査項目は、(1)ハンバーグのイメージ、(2)料理本にみる付け合せの色と嗜好、(3)付け合せの色と組み合わせによる嗜好についてである。因子分析を行い、盛り付けによる色と嗜好に関するイメージについて検討した。【結果】 料理本にみるハンバーグの盛り付けは、皿が白、テーブルクロスが洋風であると緑系色、和風であると青系色が多く使用され、付け合せとしては、洋風であるとブロッコリー(緑)、にんじん(赤)、じゃがいも(白)の3品、和風であるとブロッコリー(緑)の1品が多くみられた。ハンバーグのイメージとしては、ハンバーグの種類によって異なり、洋風ハンバーグの場合には「家庭食」、煮込みハンバーグの場合には「外食」のイメージであった。ハンバーグの付け合せとしては、付け合せの種類が3種類まで増えると高級感や濃厚さが強調されることがわかった。料理の盛り付けにおいては、家庭の食習慣による盛り付けの色や嗜好によるイメージを配慮していかなければならないことが示唆された。