著者
谷本 奈穂
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.286-301, 1998-09-30

従来, 研究対象として無視されがちであった恋愛に関する言説を分析し, 恋愛の社会的物語を明らかにする。また分析素材として雑誌記事を採り上げるが, その方法として, 個々の記事を社会的物語の「断片」と捉え, それらを一つの物語として「復元」するというやり方を提案する。また, その際には物語記号論と物語論を援用する。分析の結果, 見えてきた現代的恋愛モデルは, (1) プロセスが肥大し結末は延期された, (2) 享楽的で苦しみを最小化している, というものである。更に, このモデルを生み出し, また受け入れる読者 (若者) の心性は, 以下のような側面を持つと解釈できる。 (1) 結果よりプロセスを大事にする。 (2) 仲間内でシェルターの中に閉じこもる。 (3) 最終決定を避けようとする。
著者
時安 邦治 平川 秀幸 西山 哲郎 宮本 真也 関 嘉寛 谷本 奈穂
出版者
学習院女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本共同研究のテーマは、人々(特に子どもたち)が日常的に親しむ文化において科学がどのようなものとして描かれ、人々がそれをどう受容して、どのように「科学的なもの」を理解しているかである。子どもたちが接するコンテンツに描かれているのは、科学的な根拠を欠く「非科学」というよりは、科学的には実現されていない、いわば「未科学」である。これらのコンテンツには科学を批判的に見る視点が確かに含まれているが、最終的には科学技術のリスク認知よりもそれへの期待が上回るという分析結果となった。
著者
谷本 奈穂
出版者
関西大学
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.39-52, 2011-01-21

科学は女性と疎遠なものであると捉える認識がある一方で,美容という領域においては,科学は女性をアピールするものとして扱われて続けてきた.本稿は,化粧品広告,および美容雑誌における科学的言説の特徴を考察するものである. 考察の結果,第二次世界大戦以前の科学とは,西洋を模範とする衛生を目指すものであったのに対して,1980年代以降の科学とは,成分を全面に押し出すものであると分かった.また80年代以降,一方で科学そのものが権威として機能し,それへの信仰や依存があること,ところが他方で,科学がわざわざ自然と融合した形で表現されることも見いだした. つまり,近年の科学信仰の中には,科学に対する潜在的な不安も同時に存在する.そこで,不安を和らげるような自然物イメージが,科学に付与されることになる.科学と自然が共犯関係を結ぶことで,より強固な科学信仰を生み出すというパラドックスが,美容の科学における言説に発見できる. People commonly think that women have been alienated from the field of science, however the science of beauty (for example, cosmetics) has appealed to women. In this study, I attempt to explore the features of scientific discourse in advertisements on cosmetics and in beauty magazines.Through this analysis, I find that people believe ads’ science claims and have trusted science blindly since 1980’s, where as before World War II , we focused on hygiene modeled upon the West. I also find that scientific words are tied with natural images.Blind faith in science, ironically, leads to potential distrust of science. To ease this anxiety, natural images are associated with scientific words.In analyzing the beauty science discourse, I examine the paradox that belief in science is strengthened by its unscientific association with natural images.
著者
谷本 奈穂
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.286-301, 1998-09-30 (Released:2009-10-19)
参考文献数
53
被引用文献数
2

従来, 研究対象として無視されがちであった恋愛に関する言説を分析し, 恋愛の社会的物語を明らかにする。また分析素材として雑誌記事を採り上げるが, その方法として, 個々の記事を社会的物語の「断片」と捉え, それらを一つの物語として「復元」するというやり方を提案する。また, その際には物語記号論と物語論を援用する。分析の結果, 見えてきた現代的恋愛モデルは, (1) プロセスが肥大し結末は延期された, (2) 享楽的で苦しみを最小化している, というものである。更に, このモデルを生み出し, また受け入れる読者 (若者) の心性は, 以下のような側面を持つと解釈できる。 (1) 結果よりプロセスを大事にする。 (2) 仲間内でシェルターの中に閉じこもる。 (3) 最終決定を避けようとする。
著者
増田 のぞみ 猪俣 紀子 東 園子 谷本 奈穂 山中 千恵
出版者
甲南女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、少女マンガ黎明期のジャンル形成過程において作家や編集者がどのような役割を果たしたのかを明らかにすることである。戦後日本のメディア文化をより深く理解するためには、少女マンガという世界的にも稀有なジャンルがどのような作家や雑誌によって作られてきたのか、黎明期の少女マンガの形成過程を多角的に問う必要がある。本研究では、1950年代から1960年代にかけての、「少女マンガ」というジャンルの黎明期とされる時期から活躍を続けるわたなべまさこ、牧美也子、水野英子、花村えい子といった女性のマンガ家たちに焦点を当て、それらの作家たちが少女マンガというジャンルとどのような関わりを持ってきたのかを明らかにすることを目指している。2018年度は、水野英子が呼びかけ人となり、少女マンガ黎明期に活躍した作家や編集者らによる座談会が計4回開催された「少女マンガを語る会」の活動に注目し、この座談会の記録を報告書として後世に残すための作業を進めた。また、少女マンガ黎明期の「少女」イメージに大きな影響を与え、その後は女性週刊誌などを舞台に「劇画」作品を描いた牧美也子を取り上げ、牧の作品と少女マンガジャンルとの関わりを掘り下げる調査を進めた。その内容については、2018年12月に仁愛大学にて行われた中部人間学会大会において、「黎明期少女マンガと牧美也子――「少女」イメージと女性向け「劇画」をめぐって」と題した成果報告を行った(報告者・増田のぞみ)。
著者
谷本 奈穂
出版者
関西大学総合情報学部
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
no.37, pp.37-59, 2012-09

本論文は,美容整形や美容医療(プチ整形)が普及する現代社会において,それらの施術を受けたいと思う人々の①属性,②身体意識を明らかにする.また,以前行った調査で,美容整形を希望する理由に「自己満足のため」が最も多かったという結果をうけ,③美容実践が,身体を自分の所有物と感じてアイデンティティを再定義するような主体的な経験なのかも明らかにする.25~65 歳の男女800 人に調査票調査を行い,分析した結果は次の通り.①美容施術を望むのは男性よりも女性である.性別以外の,年代,世帯年収,学歴,既婚・未婚といった属性では有意差が見られなかった.②美容実践はあくまでも第一義的に「自分の心地よさ」(=自己満足)のために行われる.自分の心地よさという理由は,美容実践でない行為においても,美容実践を望む人が,望まない人より使用している.ただし,美容実践を望む人ほど「他者」の評価も求める傾向ももつ.③美容実践は,性別と世帯年収に規定される.また自己アイデンティティの再構築を目指すような主体的な行為というより,むしろ「外見の老化を感じる」こと,「身体に関する社会の常識を守るべきという考えを持たない」ことに規定される行為でもある.したがって,美容実践は,第一に「自分」という位相で語られる行為である.ただし,自分の心地よさの背後には「他者」の評価期待が含まれる.そして身体に関わる常識という意味での「社会」的影響は後景に退いている行為である.\nThis paper analyses people intending to undergo cosmetic surgery or cosmetic medical care in contemporary Japan. It aim to explore (1) their attributes, and (2) their body consciousness. The study found that the most popular motivation for cosmetic surgery was "self-satisfaction". ーFollowing this, the study investigated (3) whether cosmetic practices can be regarded as subjective experiences, which promote the re-definition of identities. The results of this later survey (involving 800 informants) as follows.First, more women want to have cosmetic interventions than men. Other attributes, including age, academic background, income, and marital-status, did not show any significant influence on motivations. Second, some people want to have cosmetic interventions because of a sense of self-satisfaction, however, they tend to want positive evaluations from "others" too. Third, "awareness of aging" and "lack of a conviction to maintain common sense in relation to one's body" are more likely to inderpin a desire to undergo cosmetic intervention than "the intention to reform self-identity."Therefore, cosmetic interventions should be understood in terms of "the self," positive evaluations by "the other," and "self-comfort." Although cosmetic practices are social practices, they are not significantly influenced by "the social."
著者
谷本 奈穂
出版者
関西大学総合情報学部
雑誌
情報研究 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
no.34, pp.39-52, 2011-01

科学は女性と疎遠なものであると捉える認識がある一方で,美容という領域においては,科学は女性をアピールするものとして扱われて続けてきた.本稿は,化粧品広告,および美容雑誌における科学的言説の特徴を考察するものである. 考察の結果,第二次世界大戦以前の科学とは,西洋を模範とする衛生を目指すものであったのに対して,1980年代以降の科学とは,成分を全面に押し出すものであると分かった.また80年代以降,一方で科学そのものが権威として機能し,それへの信仰や依存があること,ところが他方で,科学がわざわざ自然と融合した形で表現されることも見いだした. つまり,近年の科学信仰の中には,科学に対する潜在的な不安も同時に存在する.そこで,不安を和らげるような自然物イメージが,科学に付与されることになる.科学と自然が共犯関係を結ぶことで,より強固な科学信仰を生み出すというパラドックスが,美容の科学における言説に発見できる. People commonly think that women have been alienated from the fi eld of science, however the science of beauty (for example, cosmetics) has appealed to women. In this study, I attempt to explore the features of scientifi c discourse in advertisements on cosmetics and in beauty magazines.Through this analysis, I fi nd that people believe ads' science claims and have trusted science blindly since 1980's, whereas before World War II , we focused on hygiene modeled upon the West. I also fi nd that scientifi c words are tied with natural images.Blind faith in science, ironically, leads to potential distrust of science. To ease this anxiety, natural images are associated with scientifi c words.In analyzing the beauty science discourse, I examine the paradox that belief in science is strengthened by its unscientifi c association with natural images.
著者
谷本 奈穂
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.418-433, 2005-03-31 (Released:2010-04-23)
参考文献数
31

本稿では複数ある「ものの見方=視覚モード」を整理する.「言葉」をモデルにして対象に潜む意味や物語やイデオロギーなるものを「読解」するというモードや, 「芸術作品」をモデルにして対象と (論理を媒介にしない) 「直接的交流」をするモードが考えられる.しかし現代においては, メディア (広告ポスター, テレビ, マンガ, インターネットの動画) をモデルにした視覚モードもある.本稿ではそのモードを〈イメージ〉の生成と名づけた.このモードは「じっくり鑑賞する」というより「ちらっと・ぼんやり散見する」点, 対象に表層と深層があるとするなら「深層」ではなくて「表層」に焦点を当てる点に特徴がある.また〈イメージ〉の生成の登場は, 人が魅惑に対してむしろ醒めて麻痺したような態度を取るようになったことを意味している.
著者
山田 昌弘 須長 史生 谷本 奈穂 施 利平 羽渕 一代 土屋 葉
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、現代日本社会での夫婦関係のあり方を分析するために、離婚研究者に対するインタビュー調査、及び、30才から59才までを対象とする質問紙調査を東京と大阪で実施した。質問紙調査では、離婚対象者のみの質問を質問票に組み込むことによって、離婚対象者に対するランダムサンプリングデータを得た。分析による知見は、主に三つにまとめられる。一つは、日本の夫婦関係の現状に関してのものである。日本の夫婦関係において、40年前の調査結果と比較しても、一緒に出かけるなど共同行動は相変わらず低調である。これは、セクシュアリティーに関してもいえる。しかし、共同行動が少なく、セックスレスだからといって、夫婦の関係性が希薄だと結論づけることはできない。日常会話や困ったときに助け合うなど、愛情を直接表現し合うこととは別の形での愛情関係が維持されうることが分かった。次に、恋愛感情と結婚生活における愛情が分離している様相が観察された。意識において、恋愛感情と結婚を別立と意識している傾向が強まることが分かった。行動においても、カップルを壊すことなくカップル外の親密関係を作るケースが相当数いることがわかる。以上のように、近年の離婚急増を、「夫婦の愛情関係が変化した」という点に求めるという仮説は成り立たないように見える。むしろ、離婚や結婚をめぐる環境の変化によってもたらされた可能性が高い。データ分析を行うと、離婚経験者には、配偶者への愛情表現や経済力(女性のみ)への高い期待が見られた。つまり、相手が提供できうる能力以上のものを相手に求めることが離婚につながる大きな原因となっている。愛情表現に関しては、その基準が高まったという仮説も成り立ち、今後の検証にまたねばならない。一方、経済力に関しては、近年の男性の雇用の不安定化によって、男性の経済力が落ちている。離婚相手の経済力に不満があったという女性の割合が高いことによっても裏付けられる。近年の離婚急増の一因は、経済状況の変化によってもたらされたものであり、少子化の原因とも重なるものであると結論できる。
著者
谷本 奈穂 東 園子 猪俣 紀子 増田 のぞみ 山中 千恵
出版者
関西大学総合情報学部
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
no.39, pp.37-50, 2013-08

本論は,日本アニメが海外でどのようにして読み取られるかについて,キャラクターの図像に焦点を当てながら考察するものである.具体的にはフランスの学生に対し,キャラクターを10種類提示して出身地を予測させた.その結果,出身地をキャラクターの外見に基づいて判断する場合と,マンガ・アニメに関する知識に基づいて判断する場合があると分かった.日本では「自然主義的リアリズム」と「まんが・アニメ的リアリズム」の二つがあり,その二つが作品の消費形態を規定するとされるが,フランスでも二つの読み取りが行われている(二つのリテラシーがある)ことが確認できた.This paper examines and investigates how Japanese animation is being interpreted in France. To this end, we focus on character iconography interpretation. We presented French students with ten types of characters and asked them to predict the fictional birth places of these characters. The results showed that the students came to their conclusions based on either the appearance of the characters or their knowledge of manga and anime. In Japan, "naturalistic realism" and "manga or anime-istic realism" are thought to define how works of art are consumed, and we identified these two forms of interpretation (literacies) in France.
著者
村田 光二 道家 瑠見子 樋口 収 桑山 恵真 田戸岡 好香 渡邊 さおり 谷本 奈穂 上林 憲司
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、社会的場面における効果的な自己制御過程に影響を及ぼす要因を、実証的に解明することを目的としている。特に、目標葛藤の解決方略、制御資源の枯渇に対抗する方略、意識的抑制に基づくリバウンド効果を低減する方略を中心に実証研究を積み重ねた。その成果として、課題達成目標と誘惑とが葛藤する場面では、対抗的自己制御が働き、課題達成に役立つ人物の評価が高まることを見出した。また、制御資源の枯渇に対して、自己肯定化と解釈レベルを高次にすることの組み合わせが有効であることを再確認した。さらに、嫉妬的ステレオタイプの抑制に伴って生じるリバウンド効果を低減する方策の1つを見出した。