著者
矢野 信礼
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.103-111, 1964-04-05 (Released:2010-03-01)
参考文献数
78

好冷細菌に対する関心は, 近来食品工業および食品衛生の分野において急速に増大しつつある. この綜説ではもっぱら牛乳, 乳製品の好冷細菌について論議を進めたが, 好冷細菌の問題は食品全般について, 食品の加工利用方式の変化とともに重要となってきている.好冷細菌と一言であらわしても, その内容はおびただしい広がりをもっている. 特定の食品のみの好冷細菌の問題に限定しても, そのなかには性質および作用の異なる多数の種類の細菌が含まれている. そして食品自体が非常にバラエティに富んでいる.好冷細菌に関する諸問題を解明してゆくには, 個々の好冷細菌の生理学的生化学的諸特性および発育特性を究明してゆくとともに, 好冷細菌群の生態学的な追究が必要となってくる. 好冷細菌による食品汚染に対する対策, さらには好冷細菌の制御を合理的に推進してゆくためには, 今後これらの研究が大いに発展してゆくことが望まれる.
著者
楢崎 幸範 平川 博仙 大津 隆一 深町 和美
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.59-68_1, 1989-02-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
23

メラミン樹脂製食器の安全性を確認する目的で, 種々の条件で溶出試験を行い, 樹脂の変化, 溶出物及びその変異原性について検討した. 一連の実験から, 通常の使用状態では, 樹脂が分解して多量のホルムアデヒドが基準を越えて溶出することはなく, 微量に存在する未反応のホルムアルデヒドがわずかに溶出する程度であった. また, カドミウム, 鉛の溶出は認められず, メラミンが微量検出された. 一方, ホルムアルデヒドはサルモネラTA104株に対し弱い変異原性 (28rev/μg) を示したが, 溶出物による変異原性は認められなかった.
著者
坂井 隆敏 人見 ともみ 菅谷 京子 甲斐 茂美 村山 三徳 米谷 民雄
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.144-147, 2007-10-25 (Released:2008-02-05)
参考文献数
14
被引用文献数
16 15

液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)による,豚および牛組織中のβ-作動薬ラクトパミンの簡便かつ再現性の高い分析法を開発した.筋肉および肝臓の場合は,酢酸エチルによりラクトパミンを抽出し,得られた酢酸エチル層を減圧乾固後,残留物をアセトニトリル/n-ヘキサン分配により精製した.脂肪の場合は,アセトニトリル/n-ヘキサンにより分配抽出および精製を行った.精製後に得られたアセトニトリル層を減圧乾固し,残留物をメタノールに再溶解後LC/MS測定に供した.LCにおける分離は,分析カラムとしてWakosil-II 3C18HGカラム(150×3 mm i.d.),移動相として0.05%トリフルオロ酢酸-アセトニトリル(80 : 20)を用い,流速0.4 mL/minの条件で行った.MSにおける検出は選択イオン検出(SIR)モードにて行い,エレクトロスプレーイオン化法(ESI)により生じたラクトパミンの擬分子イオン(m/z 302)を検出した.本法による筋肉(0.01 μg/g添加),脂肪(0.01 μg/g添加)および肝臓(0.04 μg/g添加) からのラクトパミンの平均回収率(n=3)は,豚サンプルにおいてそれぞれ99.7%, 99.5%および100.8%,牛サンプルにおいてそれぞれ108.3%, 97.0%および109.4%であった.相対標準偏差は0.1∼9.5%の範囲であった.また,定量下限値は0.001 μg/g (1 ng/g)であった.
著者
棚田 益夫 内田 晴彦 井出 知佐子 玉置 幸美 沢 久美子
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.14, no.5, pp.437-442, 1973-10-05 (Released:2010-03-01)
参考文献数
4

The absorption and decomposition of hydrogen peroxide (H2O2) on Japanese noodle was studied in previous papers. The sterilizing effect of H2O2 on Japanese noodle where the residual amount was under 100ppm and the relation between the concentration of H2O2 residue and the viable cell counts in the commercial Japanese noodles were studied in this papers.In case of combined treatment of H2O2 and steaming (100°C, 4 minutes), the satisfying concentration of H2O2 to sterilize the packed 20g of Japanese noodle-paste increased proportionally with the logarithm of the added viable cell counts.The viable cell counts less than 104/g in the most of the commercial Japanese noodles containing more than 20ppm of H2O2.
著者
近藤 竜雄 川城 巌
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.372-378, 1964-10-05 (Released:2010-03-01)
参考文献数
15

Determination of trimethyl-lauryl-ammonium-2, 4, 5-trichlorophenoxide in food was studied and the colorimetric method was established. Its principle is based on the oxidative condensation of 2, 4, 5-trichlorophenol, produced from trimethyl-lauryl-ammonium-2, 4, 5-trichlorophenoxide in food by steam distillation, with 4-aminoantipyrine in pH 7.8 phosphate buffered medium to yield an indophenol type pigment.Residual trimethyl-lauryl-ammonium-2, 4, 5-trichlorophenoxide in the fruit of Citrus natsudaidai HAYATA which had been soaked in 10v/v% ethanolic aqueous solution containing 500ppm of it for one hour, was determined according to the authors' method.3-10 days after soaking, the amount of residual trimethyl-lauryl-ammonium-2, 4, 5-trichlorophenoxide was not detected in the fruit (except peel and seed), but 16-22ppm of it was found in the peel of Citrus natsasdaidai HAYATA.
著者
津村 ゆかり 開原 亜樹子 石光 進 吉井 公彦 外海 泰秀
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.377-384, 2002-12-25 (Released:2009-04-30)
参考文献数
11
被引用文献数
7 6

国産23試料,輸入80試料,合計103試料の瓶詰め食品のキャップシーリング中の可塑剤の種類及び含有量を調査した.103試料中93試料から炎色反応により塩素を検出した.そのうち62試料からフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHP),フタル酸ジイソデシル,アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル),フタル酸ジイソノニル,フタル酸ジシクロヘキシル,クエン酸アセチルトリブチル,ジアセチルラウロイルグリセロールのいずれか又は複数が検出された.DEHPが検出されたもののうち12試料については,瓶内容物中の可塑剤含有量も調査した.油脂分の含まれる流動性の高い食品に対して,DEHPの移行が認められたが,1回の摂取で耐容一日摂取量を超えるものはなかった.またDEHPが最も多く検出された食品について,種々の保存条件における移行量を検討した結果,振とうによってキャップシーリングから食品へのDEHPの溶出が促進されることが示唆された.
著者
竹脇 優太郎 岡部 亮 根本 了 青栁 光敏
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.177-181, 2022-10-25 (Released:2022-11-03)
参考文献数
6

畜産物中のキンクロラック分析法として,試料からキンクロラックをアセトン–塩酸(99 : 1)混液で抽出し,塩基性条件下酢酸エチルで洗浄した後,酸性条件下酢酸エチルで抽出し,LC-MS/MSで定量および確認する方法を開発した.開発した分析法を用いて,牛の筋肉,牛の脂肪,牛の肝臓,牛乳および鶏卵の5食品に対し,キンクロラックを残留基準値濃度および0.01 m/kg相当濃度で添加し,回収試験を行ったところ,真度85.6~93.5%,相対標準偏差1.7~6.8%の良好な結果が得られた.また,定量下限値として0.01 mg/kgを設定可能であった.これらの結果から,本法は畜産物中のキンクロラック分析法として有用と考えられた.
著者
富川 拓海 國吉 杏子 伊藤 史織 佐久川 さつき 石川 輝 齋藤 俊郎 小島 尚 朝倉 宏 池原 強 大城 直雅
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.190-194, 2022-10-25 (Released:2022-11-03)
参考文献数
32
被引用文献数
3

シガテラ魚類食中毒は,シガトキシン類(CTXs)を含有する魚類による動物性自然毒食中毒で,主に熱帯・亜熱帯で発生している.日本では,沖縄県を中心に発生報告があるが,日本本土の太平洋岸産魚類による食中毒事例も散発的に発生し,原因魚種のほとんどがイシガキダイOplegnathus punctatus の老成個体である.イシガキダイにおけるCTXsの含有状況を調査するために,本州,四国,九州,奄美,沖縄,および小笠原の沿岸産176個体(標準体長:13.1~60.0 cm,体重:100~6,350 g,年齢:0~11歳)を収集し,LC-MS/MSによる分析を実施した.そのうち沖縄産2個体(全試料の1.1%)からCTXsが検出され,沖縄産14個体に限定した検出率は14%であった.CTXsが検出された2個体の魚肉中の総CTX含量は,0.014 μg/kgおよび0.040 μg/kgであり,いずれも米国FDAの推奨値0.01 μg CTX1B equivalent/kg以上であったが,ヒトの最小発症量(10 MU, CTX1B換算で70 ng)に達するには,1.5 kg以上の摂食が必要であるため,シガテラ魚類食中毒発症のリスクは高くないと考えられる.沖縄産イシガキダイのCTXs組成はCTX1B系列のみで,バラフエダイやバラハタなどの肉食魚が含有するCTX1Bおよび52-epi-54-deoxyCTX1Bに加えて,渦鞭毛藻が産生するCTX4AおよびCTX4BがCTX1Bと同程度のレベルで検出された.なお,CTX3C系列は検出されなかった.
著者
辻村 和也 松尾 広伸 谷口 香織 吉村 裕紀
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.182-189, 2022-10-25 (Released:2022-11-03)
参考文献数
33

テトロドトキシン(TTX)に起因する食中毒は,全国的に毎年発生している.本研究では,2011年から2017年に長崎県で発生したTTXに起因した食中毒8事例について,食品残品,患者血清および尿中のTTX濃度の定量結果をまとめ,試料中のTTX濃度と症状との関係を整理し,比較検討した.その結果,食品残品においては,4事例7試料で,有毒(弱毒:4試料,強毒:2試料,猛毒:1試料)と位置付けられた.患者尿中TTX量では,既報において,3事例とも重症度分類3~4相当のTTX量であったが,実データでは,重症度分類にばらつきがあった.血清中濃度では,喫食後約12~24時間に最高血中濃度到達時間(Tmax)があり,24時間以内に血清中TTX濃度が19.5 ng/mL以上に上昇することが,呼吸に異常を起こす重症度分類3以上になる一つの目安と推察された.また,1~3 ng/mL付近が症状の発現や快方・消失の目安になる濃度と推察された.一方,TTX排泄においては,重症の2名の結果であるが,血清中TTX濃度の対数と摂取後の時間には,負の相関が認められ,これにより,血清中TTXが対数関数的に減少することが示された.また,血清中TTX濃度の半減期(T1/2)は,17.5時間および23.7時間だった.本調査で得られた結果は,TTX類に関する食品衛生学的知見をさらに深め, TTX類のリスクアセスメントの一助になると思われる.
著者
深津 浩佑 土山 智之 谷口 賢 丹羽 一将 杉浦 潤 宮崎 仁志
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.163-168, 2022-10-25 (Released:2022-11-03)
参考文献数
12

残留農薬の多成分一斉分析において,分析結果の品質を保証するためには内部品質管理が必要である.今回,複数の安定同位体標識化合物をすべての分析対象試料に添加して分析結果の品質を管理する方法を検討した.その結果,従来の管理試料を用いた品質管理の方法と比較して,高い精度で分析結果の品質を管理することが可能であった.安定同位体標識化合物を用いた管理方法では,分析結果の品質を対象試料ごとに評価することが可能であり,内部品質管理において有効な手法となると考えられる.
著者
佐藤 昭子 寺尾 通徳 石橋 美也子
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.63-67_1, 1993-02-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
27
被引用文献数
2 4

液体培地及び魚肉 (アジ, カツオ) ホモジネート中における V. parahaemolyticus に対するニンニク抽出液の抗菌作用を検討した. ニンニク抽出液を20, 10及び5%添加した培地に供試菌を約105/ml個接種し, 経時的に生菌数を測定した結果, 15分, 30分及び1時間以内に供試菌は死滅した. 同濃度のニンニク抽出液を添加した無処理のアジ魚肉ホモジネートに, 供試菌を約105/g個接種した場合, 30分後の生菌数は約102, 104及び104/g個であった. カツオの魚肉ホモジネートを用いて同様の実験を行った結果, アジ魚肉に比べ抗菌効果はやや低下したが抗菌作用が認められた. ニンニク抽出液を-20, 4, 25及び37°で120時間保存し, 抗菌活性を測定した結果, 4°以下では安定していたが, 25°以上では24時間後, 活性は徐々に減弱した.