著者
城戸 浩三 渡辺 忠雄
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.238-243_1, 1977

トリプシンおよびキモトリプシン活性に対するキサンテン系色素の影響について, 初速度の解析から検討した. まず光の照射の強さの影響は, 照射が強くなるとともに阻害度も増した. 次に両酵素活性を50%阻害する色素濃度および時間について検討し, いずれもローズベンガル>フロキシン>エリスロシン>エオシンの順に阻害した. また<i>K</i><sub>m</sub>およびた<i>K</i><sub>cat</sub>について検討し, その結果より両酵素の活性は色素にょる活性中心部位の阻害によって低下したものと推定した.
著者
森 葉子 植田 康次 櫻井 有紀 青木 明 岡本 誉士典 神野 透人
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.162-165, 2021-10-25 (Released:2021-11-02)
参考文献数
7

食品中のシアン化合物の簡便,迅速な測定法を確立する目的で,日本産業規格(JIS)工場排水試験法で採用されている通気法を参考に,小型インピンジャーを用いる前処理について検討を行った.その結果,シアン化物イオンとして10 ppmに相当するアミグダリンをビワ種子粉末に添加して実施した分析法の性能評価では,真度83.9%,併行精度1.18%,室内精度4.67%の良好な結果が得られた.本法を用いて,市販されている食品中のシアン化合物を調査した結果,10食品中のビワ種子粉末3食品において10 ppmを超えるシアン化合物が検出された.
著者
鈴木 知華 野村 昌代 奥富 幸
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.139-147, 2021-10-25 (Released:2021-11-02)
参考文献数
14
被引用文献数
1

愛玩動物用飼料中の無機砒素の濃度測定について,液体クロマトグラフ-誘導結合プラズマ質量分析計(LC-ICPMS)を用いた定量法を開発した.2 w/v%TMAH溶液を試料に添加後,加熱抽出し,試料溶液をpH調整しLCICP-MSに注入した.共同試験は,5種類の愛玩動物用飼料を用い9試験室で実施した.ドライ製品及び素材乾燥ジャーキーに2 mg/kg相当量を,ウェット製品に0.5 mg/kg相当量を,成型ジャーキーに1 mg/kg相当量を,ビスケットに0.2 mg/kg相当量のAs (III)を添加した.その結果,平均回収率,繰返し精度及び室間再現精度の相対標準偏差(RSDr及びRSDR)並びにHorRatは,それぞれ95.4%から98.3%,2.9%以下及び9.1%以下並びに0.51以下であった.
著者
大門 拓実 田村 彩 髙橋 邦彦
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.166-167, 2021-10-25 (Released:2021-11-02)
参考文献数
1

著者らは,農産物中の残留農薬をQuEChERS (EN 15662:2008)の原理で抽出後,希釈のみ行い,LC-MS/MSで測定を行うという,迅速性,簡便性,汎用性の高い分析方法について,全21種の農産物を対象にその妥当性確認を実施した.その結果,全210成分中194~210成分において妥当性評価ガイドライン(厚生労働省通知)の目標値を満たしたことから,本法は迅速的かつ効果的な分析法として適用可能であることが考えられた.
著者
長沢 寛弥 國吉 杏子 谷川 敏明 小林 直樹 小西 良子 朝倉 宏 大城 直雅
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.157-161, 2021-10-25 (Released:2021-11-02)
参考文献数
32
被引用文献数
2

小笠原群島(聟島列島,父島列島および母島列島)におけるシガテラの実態を調査するために,周辺海域で漁獲されたバラハタVariola louti 65個体の筋肉を試料としてLC-MS/MSによるシガトキシン類(CTXs)分析を実施した.すべての試料からCTX1Bに近接するピークが検出されたが,CTX1Bの前駆体である52-epi-54-deoxyCTX1B,54-deoxyCTX1Bや,他のCTX類縁体は検出されなかった.バラハタ試料では通常,この3物質が同時に検出されることから夾雑物による影響を考え分析カラムを変更して分析した結果,全試料においてCTX1Bとは保持時間が異なったため夾雑物由来であると判断した.本研究に供したバラハタは体重2,170~7,000 gと大型の個体であったにも関わらず,65個体のいずれからもCTXsは検出されなかった.そのため,小笠原群島周辺海域のバラハタによるシガテラのリスクは低く,CTXs産生性渦鞭毛藻の分布密度は沖縄・奄美海域に比較して極めて低いことが示唆された.
著者
福光 徹 脇 ますみ 萩尾 真人 林 孝子 桑原 千雅子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.168-174, 2021-10-25 (Released:2021-11-02)
参考文献数
12
被引用文献数
1

畜水産物中のキノロン系およびテトラサイクリン系薬剤18成分を対象としたLC-MS/MSによる高精度な一斉分析法を確立した.n-ヘキサン存在下,EDTA含有クエン酸緩衝液–メタノール–アセトニトリル(3 : 1 : 1, v/v/v)混液で試料から対象薬剤を抽出し,Oasis PRiME HLBミニカラムで精製した.本分析法は,n-ヘキサンを用いることで,脂肪を含む固体試料中の対象薬剤も抽出可能であることが示唆された.また,ミニカラムからの溶出液に0.1 vol%ギ酸含有・メタノール–アセトニトリル(3 : 7, v/v)混液を用いることで,回収率の低下を最小限にしつつ精製効果を向上させることができた.6種類の食品試料を用いて妥当性評価を実施した結果,選択性および添加濃度におけるS/N比は良好であり,真度70.6~113.8%,併行精度9.0%以下,室内精度15.5%以下とガイドラインの目標値を満たした.
著者
大石 晃史 永富 康司 鈴木 康司
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.108-112, 2019
被引用文献数
6

<p>飲料中への意図的な植物毒の混入を想定し,LC-MS/MSを用いた植物毒一斉分析法を開発した.分析対象には日本で中毒事例の多い,もしくは過去に事件に用いられた植物毒18成分を,分析試料にはビール,焼酎,ブレンド茶,缶コーヒー,乳性飲料を選択した.分析成分の抽出および精製にはQuEChERS法を用いた.バリデーション試験の結果,日内精度,真度,回収率について良好な結果が得られた.いずれの成分も5~200 ng/mLの範囲で良好な直線性を示し(<i>r</i>>0.990),低濃度での検出が可能となった.</p>
著者
成田 弘子 奈良 正人 馬場 啓輔 大上 皓久 阿井 敬雄 野口 玉雄 橋本 周久
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.251-255_1, 1984
被引用文献数
10

巻貝ボウシュウボラ <i>Charonia sauliae</i> のテトロドトキシン (TTX) 毒化機構を解明する目的で同じくTTXをもつトゲモミジガイ <i>Astropecten polyacanthus</i> によるその飼育試験を行った. 1~4週間後には, 供試した全ボウシュウボラ個体の中腸腺に毒性が認められ, TTXの蓄積率は平均33%であった. ボウシュウボラ中腸腺の総毒量は, ある水準までは投与したトゲモミジガイの毒量に応じて増加した. また, いったん毒化したボウシュウボラは, さらに40日間無毒の餌で飼育しても特に毒力は低下しなかった.
著者
堀江 正一 石井 里枝 小林 進 中澤 裕之
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.234-238, 2002-08-25
参考文献数
7
被引用文献数
4

LC/MSによるフグ毒テトロドトキシン(TTX)の分析法を検討した.TTXは高極性物質であることから,イオン化にはエレクトロスプレーイオン化法(ESI)を採用し,ポジティブモードとした.LC条件は,カラムにTSKgel ODS 80Ts (25 cm&times;2 mm i.d.),移動相には5 mmol/L HFBA-メタノール(99 : 1)を用い,流速は毎分0.2 mLとした.検出には,プロトン化分子[M+H]<sup>+</sup>を用い,結果をより確かなものとするために水脱離イオン(<i>m/z</i> 302.1)も同時にモニターした.本法の検出限界は1 &mu;g/gであり,無毒とされる10 MU/g (2.2 &mu;g/g)レベルの分析が可能であった.
著者
鈴木 学 大和 康博 渡辺 忠雄
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.160-167, 1973-04-05 (Released:2010-03-01)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

土壌に残留する農薬の野菜への移行を検討しつぎのような結果を得た.1) 土壌中に残留する各BHC異性体は, ニンジン, カブ葉, ダイコン葉, ホウレンソウなどに多く移行し, トマト, キャベツなどへの移行は少なかった. 現在の土壌残留量から考えるとニンジン, カブ葉などで残留許容基準をこえる可能性がある.2) アルドリンとディルドリンのキュウリ, ニンジン, ホウレンソウへの移行率は, それぞれ16.6%, 9.6%, 4.4%であった. アルドリンは野菜中でディルドリンの型で検出された. 移行率はキュウリについて文献値にほぼ一致したが, ダイコン, ニンジンについてはかなり低い値を示した.3) エンドリンのキュウリ, キャベツ, ダイコンへの移行率は, それぞれ21.8%, 14.5%, 9.1%であった. エンドリン, アルドリン, ディルドリンの野菜への移行率と土壌残留量から考えると, 日本の残留許容基準をこえる可能性が多い.4) DDTは土壌中にかなりの濃度で残留していたが, 野菜への移行は極めて少量であった.
著者
渕 祐一 帆足 喜久雄 赤枝 宏 牧野 芳大 野口 玉雄
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.80-89, 1999-02-05
参考文献数
16
被引用文献数
7

筋肉摂食による死者1名を含む食中毒事例が過去にある大分県国東沿岸産ヒガンフグ及びコモンフグについて, 部位別及び季節別の毒性を検討した. 1983~96年に漁獲されたヒガンフグ46個体とコモンフグ34個体中, 筋肉の有毒率及び最高毒力はヒガンフグが6.5%及び55MU/g, コモンフグが41.2%及び84MU/gであった. 食用不可とされる三陸沿岸産の両種より筋肉の毒性は低いものの, ヒガンフグは毒力の個体差が著しく, コモンフグは活魚でも有毒率が高いことから, 食用に供するには検討を要する魚種と考えられた. また, 両種とも皮膚, 肝臓及び卵巣の毒力相互間に相関関係が認められた.
著者
中村 優美子 外海 泰秀 辻 澄子 伊藤 誉志男
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.251-260_1, 1987

ラットを用いて, クエン酸及びそのナトリウム塩, カルシウム塩, カリウム塩の代謝を調べた. 伊藤らによって算出されたクエン酸の日本人の一日摂取量37.78mg/kgを基準として投与量を設定した. クエン酸及びその塩類の<sup>14</sup>Cでラベルされたものあるいはされていないものをラットに経口投与して, 尿中へのクエン酸排泄量, 呼気中の<sup>14</sup>C放射活性及び血中の<sup>14</sup>C放射活性の経時変化を調べた. その結果, 投与されたクエン酸及びその塩類は, いずれも体内へ吸収された後ほとんどが代謝されて体内へは蓄積せずに, 主として呼気中にCO<sub>2</sub>として排泄されることがわかった. また, 塩の違いによる差は顕著ではなかった.
著者
田中 智哉 木村 圭介 觀 公子 新藤 哲也 笹本 剛生
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.119-124, 2021-08-25 (Released:2021-09-01)
参考文献数
15
被引用文献数
2

チョコレート中のカフェイン,テオブロミンおよびテオフィリンの同時分析法を検討した.試料にアセトニトリル–水(1 : 1)を加え,超音波抽出(15分間,50℃)を2回行い,得られた抽出液をOasis HLB SPEカートリッジで精製し,LC-MSで測定することによりこれらの同時分析が可能であった.検討した分析法は真度97.4%~100.2%,併行精度1.0%~2.8%,室内精度2.0%~7.9%であり,定量性は良好であった.既存の分析法に比べ,本法は簡便かつ選択性の高い分析法であり,チョコレート中のカフェイン,テオブロミンおよびテオフィリンの分析に有用である.
著者
森 哲也 岸野 かなえ 田原 麻衣子 守山 隆敏 和田 真太郎 伊藤 武
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.129-132, 2021-08-25 (Released:2021-09-01)
参考文献数
13

3MTM病原菌検出アッセイ2 STEC遺伝子スクリーニン-stx用キットを,食品からの腸管出血性大腸菌検査におけるVT遺伝子スクリーニングに使用することを目的に,検出感度を調べた.純培養菌での検出感度,食品として牛スライス肉やタンドリーペースト,きゅうりなどを供試して食品培養液を調製し検出感度を調べた.食品培養液中の検出感度は,BPW,mEC培地ともに3から4 Log CFU/mLレベルであった.3MTM病原菌自動検出システムを用いたVT遺伝子検出は,通知法が要求する検出下限値(4 Log CFU/mL)を満たしていた.本手法は食品からの迅速簡便なVT遺伝子スクリーニング法として有用であった.
著者
大門 拓実 髙橋 邦彦
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.133-137, 2021-08-25 (Released:2021-09-01)
参考文献数
11
被引用文献数
2

筆者らは迅速性,選択性,汎用性を勘案し,QuEChERS (EN 15662:2008)の原理で抽出を行い,抽出液を固相カラムで精製せず,希釈のみでLC-MS/MSを用いて測定する枝豆中の残留農薬一斉分析法について妥当性確認を実施した.その結果,202成分の農薬について,妥当性評価ガイドライン(厚生労働省通知)の目標値を満たしたことから,本法は迅速的かつ効果的な分析法として適用可能であることが考えられる.
著者
岡部 亮 久保田 晶子 根本 了 青栁 光敏
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.113-118, 2021-08-25 (Released:2021-09-01)
参考文献数
8

畜産物中のアルベンダゾール代謝物(代謝物I)の分析法として,試料を塩酸酸性条件下で加熱した後,酢酸エチル–n-ヘキサン(1 : 1)混液で脱脂し,代謝物Iをアセトニトリルで抽出後,塩基性条件下で塩析し,スルホン酸塩修飾ジビニルベンゼン-N-ビニルピロリドン共重合体カートリッジカラムで精製する方法を開発した.測定はLC-MS/MSを用い,イオン化はESI法(ポジティブモード)により行った.また,分析カラムはODSカラム(Inertsil ODS-4),移動相は0.05%(v/v)ギ酸および0.05%(v/v)ギ酸含有アセトニトリルを用いた.4種類の畜産物(牛の筋肉,牛の脂肪,牛の肝臓および牛乳)に対して代謝物Iを残留基準値濃度および定量下限値濃度(0.01 mg/kg)で添加し,開発した分析法により回収試験を行った結果,真度83.6~97.9%,併行精度1.6~6.1%の良好な結果が得られた.
著者
大門 拓実 髙橋 邦彦
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.125-128, 2021-08-25 (Released:2021-09-01)
参考文献数
4
被引用文献数
4

筆者らは迅速性,簡便性,汎用性を勘案し,アセトンを用いて抽出後,n-ヘキサンによる脱脂精製,分析種のアセトニトリルへの分配,塩析効果による精製を同時に行うことが可能となる三層分離抽出の原理を応用し,TBHQ迅速分析法の検討を行った.本法は,固相抽出カラムを用いた精製や溶媒の濃縮,転溶操作をせずに試験溶液を調製可能であった.妥当性確認の結果,多種多様な11種の試料において妥当性評価ガイドライン(厚生労働省通知)の目標値を満たしたことから,迅速的かつ効果的なTBHQ分析法として適用可能であることが考えられる.