著者
佐藤 洋 町野 諭 藤井 達也 吉田 緑 浅野 哲 横山 央子 美谷島 克宏
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.34-42, 2022-02-25 (Released:2022-03-10)
参考文献数
39

残留農薬のリスク評価において,発がん性の評価は人への健康にとって最重要課題の一つである.透明かつ一貫性のある評価のためには評価手法の公表は必要不可欠である.本稿は,残留農薬の海外のリスク評価機関や食品安全委員会の農薬評価書など,公表された評価手法を参考に,リスクアナリシスの原則に則り,農薬の発がん性試験評価の考え方と,評価にあたり留意すべき点を提言するものである.本稿ではげっ歯類を用いた発がん性試験の評価で考慮すべき点を,毒性評価のステップごとにまとめた.構成は,げっ歯類を用いた発がん性試験を評価する目的やこれらの試験の有用性に始まり,発がん性を示唆する根拠や影響を与える因子,げっ歯類の発がん性を評価する際に留意すべき点を挙げた.毒性評価のステップであるハザードの特性評価として,これらの知見を総合し判断すべきげっ歯類の発がん性と人への外挿性の考え方を記載した.さらに次のステップとして用量反応関係から判断すべき発がん性についてまとめた.本稿は毒性評価に主眼をおいたものであるが,発がん性評価の今後の展望と課題についても言及した.
著者
朝倉 敬行 北村 真理子 安本 三穗 竹内 理貴 中里 光男 安田 和男
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.1-11, 2022-02-25 (Released:2022-03-10)
参考文献数
25

LC-MS/MSを用いた鶏組織およびその加工品中からの7種の抗ウイルス剤(アマンタジン,リマンタジン,アルビドール,ラニナミビル,オセルタミビル,ペラミビル,ザナミビル)の分析法を確立した.試料からメタノール–水(9 : 1)で抽出し,InertSep MAXミニカラム(上側)及びInertSep MCXミニカラム(下側)を連結したタンデム型のミニカラムで精製した後,LC-MS/MSで測定した.鶏組織および鶏卵など6試料に適用した結果,真度77.9~97.5%,併行精度1.7~9.2%の良好な結果が得られた.また,焼き鳥,唐揚げなどの加工品9試料に適用した結果,真度72.6~99.2%,併行精度3.0~11.2%の良好な結果であった.開発した試験法を鶏の組織と鶏卵の12試料および焼き鳥,唐揚げ,サラダチキン,チキンステーキ,チキンカツなど30試料の加工品の実態調査を行ったところ,抗ウイルス剤は検出されなかった.開発した試験法は,鶏組織だけではなく加工品等にも適用できることが確認された.本分析法における定量限界値は,0.01 mg/kgであった.
著者
吉光 真人 内田 耕太郎 小阪田 正和 松井 啓史 上野 亮 藤原 拓也 阿久津 和彦 新矢 将尚
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.43-46, 2022-02-25 (Released:2022-03-10)
参考文献数
3

食品中のアフラトキシン分析法として,平成23年8月16日付け厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知(通知)に基づく分析法が定められている(以下,旧分析法).本研究では,アフラトキシン分析法の操作性と分析性能を向上させるために,イムノアフィニティカラム(IAC)の種類と精製条件の最適化,および旧分析法からIAC精製後の濃縮乾固の操作の省略を検討し,改良法の構築を目的とした.改良法を用いて,9種類の試料にアフラトキシンB1,B2,G1,G2の4種類を2.5 ng/gの濃度で添加して添加回収試験を実施したところ,真度は77.0~99.7%,室内精度および併行精度はそれぞれ,1.7~5.6%,0.9~3.6%となり,通知の目標値を達成した.また,旧分析法と比較して,改良法はアフラトキシン4種類の回収率が4.3~10.5%向上し,前処理時間が約1.5時間短縮された.以上から,改良法は9種類の食品に適用可能で,食品中のアフラトキシン分析法として有用であると考えられた.
著者
千葉 剛 種村 菜奈枝 西島 千陽 梅垣 敬三
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.20-26, 2022-02-25 (Released:2022-03-10)
参考文献数
13
被引用文献数
2

健康被害が多発したことをうけ,食品衛生法が一部改正され,プエラリア・ミリフィカは「指定成分等」として管理されることとなったが,現在も多くのプエラリア・ミリフィカ含有食品が出回っている.そこで,消費者を対象に「指定成分等」の認知度および「指定成分等」含有食品の利用実態についてインターネット調査を行った.その結果,「指定成分等」の認知度は45.9%であった.「指定成分等」という言葉の印象は,効果がありそう32.7%,身体に良さそう18.9%といい印象を持つ者が多かった.しかしながら,「指定成分等」の説明文を読ませたところ,概ねいい印象が減少し,注意すべき成分である印象が増えていた.また,プエラリア・ミリフィカ含有食品の利用率は4.3%であり,その内,利用が原因と思われる体調不良を経験した者は41.3%であった.本調査において,消費者は指定成分等を正しく認知しているとは言えないことが明らかとなったことから,「指定成分等」に関する情報を提供し,正しく認識してもらう必要があると考えられた.
著者
見上 葉子 高木 優子 宮川 弘之 山嶋 裕季子 坂牧 成恵 小林 千種
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.12-19, 2022-02-25 (Released:2022-03-10)
参考文献数
16
被引用文献数
3

食品添加物であるジブチルヒドロキシトルエン(BHT),ブチルヒドロキシアニソール(BHA)およびtert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)のHPLC分析条件について検討した.内径2.1 mmのカラムを用い,タイムプログラムを使用し各至適蛍光波長に切り替えることにより,25分間で一斉分析が可能となった.蛍光検出をUV検出と併用することにより選択性が向上し,夾雑ピークの影響を大幅に改善できた.また,ガス供給不足に対応するため,GC-MSによる確認法の代替としてLC-MS/MSによる確認法を作成した.さらに,上記3化合物標準溶液の長期安定性について検討した.その結果,0.1%アスコルビン含有メタノールを用い−20℃の条件で,TBHQは約1年間保存が可能となったが,BHT, BHAは著しく減少する場合があった.BHA, BHT混合標準溶液の場合は,メタノール溶液で4℃,BHA, BHT, TBHQ混合標準溶液は0.1%アスコルビン酸含有メタノール溶液で−20℃としたときいずれも約1年間安定であることを確認した.
著者
大門 拓実 髙橋 邦彦
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.47-50, 2022-02-25 (Released:2022-03-10)
参考文献数
6

著者らは迅速性,簡便性,汎用性を勘案し,アセトンを用いて抽出後,n-ヘキサンによる脱脂精製,分析種のアセトニトリルへの分配,塩析効果による精製を同時に行うことが可能となる三層分離抽出の原理を応用し,6種の防かび剤迅速分析法の検討を行った.本法は,固相カラムを用いた精製や溶媒の濃縮,転溶操作をせずに試験溶液を調製可能である.妥当性確認の結果,対象とした6種全てにおいて農薬等の妥当性評価ガイドライン(厚生労働省通知)の目標値を満たしたことから,迅速的かつ効果的な防かび剤迅速一斉分析法として適用可能であることが考えられる.
著者
関田 寛 武田 明治 内山 充
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.57-63, 1983
被引用文献数
1

多種多様の果実野菜類が世界中で大被害をこうむっているミバエ類に対して, 唯一有効なくん蒸剤であるとして植物検疫上世界各国で使用されているEDBには近年発癌性のあることが判明して以来, 食品衛生上重大な危ぐの念が抱かれるに至った. これを契機として, 著者らはEDBくん蒸後に輸入された生鮮果実類中のEDBの簡便迅速な残留分析法の確立を検討し, あわせて著者らの方法を用いて実態調査を行った.<br>1) EDBは果実類 (可食部) の均一化試料の水混和物から Dean-Stark 蒸留装置を用いて留出し, ヘキサン層に移行させ, ヘキサン層を液相分離用ロ紙を用いてろ過したものをECD付きガスクロマトグラフィーを行うことにより, 簡便かつ迅速に, しかも, 高感度かつ高精度に定性及び定量することができた. 本法におけるEDBの検出限界は0.005ppmであった.<br>2) 今回検討した果実類のうちで, グレープフルーツ以外の全ての果実試料検液のガスクロマトグラム上にそれらの果実成分に由来する大小多様のきょう雑ピークが観察された. これらのきょう雑ピークの除去法を検討したところ, 残留農薬分析に常用されている活性化フロリジルを検液中に直接添加することにより, レモン, オレンジ及びマンゴー試料の場合には, きょう雑ピークのみを完全に除去することができた. この方法により, レモン及びオレンジの場合には, ガスクロマトグラフイーの所要時間を大幅に短縮することができ, マンゴーの場合には, 保持時間が近接しているためにEDBとまぎらわしいきょう雑ピークを除去することができた. しかし, このフロリジル添加法は, パパイヤの成分に由来する検液注入約3時間後に出現する巨大なきょう雑ピークを消失させる効果は, 全く認められなかった.<br>3) 今回の調査結果では,1981年10月に米国から輸入されたレモンから0.045~0.617ppm, ネーブルオレンジから0.042~1.890ppm, 同時期にハワイ州から空輸されたパパイヤから0.084~0.465ppmのEDBが検出された. そしてこれらの一部のものには, 厚生省が定めたEDBの残留許容値 (0.13ppm) を越えるものがあった. 他方, 同時期にメキシコから輸入されたグレープフルーツからは0.040ppm以下の極めて低いEDB残留が認められたに過ぎなかった. また, 1982年3月フィリピンから空輸されたマンゴーからは, EDBは全く検出されなかった.<br>4) 生鮮果実類中に残留するEDBは, その初期濃度が同一でも, 果実の種類, 果実の保管貯蔵場所の室温あるいは通風換気の状況によって, その経時的減衰の動向が大きく異なることが推測された.
著者
一言 広 諸角 聖 和宇慶 朝昭 坂井 千三 牛尾 房雄 道口 正雄 辺野 喜正夫
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.273-281_1, 1978

「紅茶キノコ」と呼ばれる嗜好飲料の安全性の解明を目的として微生物学的ならびに有機酸組成の検討を行った.「紅茶キノコ」液から検出した微生物は <i>Acetobacter xylinum</i>, <i>Saccharomyces cereviciae</i>, <i>S. inconspicus</i>, <i>Candida tropicalis</i>, <i>Debaryomyces hansenii</i> などであった. これらの菌の凝塊形成至適温度は26~27°で, 菌の発育により紅茶液のpHは最終的に3.1以下となった. また, 本液に各種病原細菌を接種し生存性を検討した結果, いずれも48時間以内に死滅したことから, これらの菌により汚染される危険はほぼないものと考えた. 一方,「紅茶キノコ」液中に存在した有機酸の95%以上は酢酸で, 他に微量の乳酸およびギ酸が認められた.
著者
荻原 博和 露木 朝子 古川 壮一 森永 康 五十君 靜信
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.109-116, 2009-06-25 (Released:2009-07-15)
参考文献数
22
被引用文献数
2 1

E. sakazakii における感染リスクの低減対策として,PIFの調乳湯温による殺菌効果とその保存温度に対するE. sakazakii の消長を検討した.加熱の指標とされているD 値は,ATCC 29004株が60℃で3.6分,HT 022株が1.9分で,HT 028 株については52℃において1.6分であった.PIFの調乳湯温におけるE. sakazakii の殺菌効果については,湯温60℃では1 log CFU/mL以下,湯温70℃では1~2 log CFU/mL,湯温80℃では5 log CFU/mL以上の殺菌効果が得られた。室温ならびに低温下でのE. sakazakii の増殖は,5℃ではすべての供試菌株の発育が抑制され,10℃ではHT 028株のみ増加する傾向が認められた。25℃では保存4時間後には供試3菌株とも増殖し,保存16時間後には8 log CFU/mLに増加した.以上のことから,調乳に使用する湯温は70℃以上で調製することが E. sakazakii の死滅に有効と考えられた.さらに調乳後は5℃以下での保存が好ましく,2時間以上の保存は避けることが E. sakazakii の感染リスク低減に有効と考えられた.
著者
新矢 将尚 紀 雅美 山口 之彦
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.58-62, 2020
被引用文献数
1

<p>指定外着色料の一つであるパテントブルーVによる,輸入食品の食品衛生法違反は後を絶たない.パテントブルー色素の名称で市販されているものには,化合物名が異なるものがある一方,複数の異なる化合物がパテントブルーの名称で市販されている場合もあるため,注意が必要である.パテントブルー色素と推察される市販色素9品について,TLC,HPLC,LC-MS/MSで分析したところ,いずれの方法でもパテントブルーV,アズールブルーVX,イソスルファンブルー,アルファズリンAの4種に識別され,製品情報が不明瞭な試薬も同定された.パテントブルー群については,命名法を統一することで誤認の可能性を軽減できると考えられる.</p>
著者
ニー ライミトナ 谷山 茂人 柴野 啓輔 余 振輝 高谷 智裕 荒川 修
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.361-365, 2008
被引用文献数
20

カンボジア・シアヌークヴィル沿岸に生息する<i>Lagocephalus</i> 属フグ3種,シロサバフグ<i>L. wheeleri</i>&ensp;(20個体),モトサバフグ<i>L. spadiceus</i>&ensp;(15個体) およびドクサバフグ<i>L. lunaris</i>&ensp;(82個体) 計117個体につき, マウス試験法により部位別毒性を調べたところ,シロサバフグとモトサバフグは全個体が無毒(2 MU/g未満),ドクサバフグは全個体ないしロットが有毒であった.最高毒性値は, 皮 25 MU/g, 筋肉 67 MU/g, 肝臓 257 MU/g, 腸 127 MU/g, 精巣52 MU/g, 卵巣238 MU/gで,いずれも食用可否の目安となる10 MU/gを上回っていた.LC/MS分析により,毒の本体はフグ毒テトロドトキシン(TTX)と関連成分で,TTXがマウス毒性の80%以上を占めることが示された.
著者
渡邊 裕子 赤星 千絵 関戸 晴子 田中 幸生 田中 和子 下条 直樹
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.98-104, 2012
被引用文献数
3

全卵・卵白・卵黄を用いた菓子・肉団子・パスタ・プリンモデル食品を作製し,調理による卵タンパク質の検出値の変化を,抽出液にトリス塩酸緩衝液を用いたELISAキットにより測定した.菓子,肉団子では揚調理が最も低下し,肉団子はレトルト処理によりオボアルブミン(OVA)は検出限界以下(<1 μg/g)となり,オボムコイド(OVM)も最も低下した.ゆえに,調理温度とともに均一な加熱処理が加わる調理方法が卵タンパク質の検出に影響した.また,卵黄使用の肉団子レトルト処理とパスタでは,いずれの卵タンパク質も6 μg/g以下となり,さらに患者血清中のIgE抗体によるウエスタンブロット法では,OVA,OVMは検出されなかった.一方,抽出液に可溶化剤を用いたELISAキットでは,前述のキットに比べ定量値が上がり,加熱処理したタンパク質が検出された.
著者
佐藤 昭子 寺尾 通徳 本間 ゆかり
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.328-332_1, 1990-08-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
16
被引用文献数
5 6

主な食中毒菌及び腐敗細菌23菌種25株を供試し, ニンニク抽出液の抗菌作用を検討した. その結果, 大部分の供試菌に対するニンニク抽出液のMICは, 0.62~1.25%の範囲で, 強い抗菌作用を有することが認められた. なお, 検液1mlはニンニク0.5g水抽出液に相当する. 次に, 抗菌活性の安定性について, 加熱及びpHによる影響について検討した. その結果, 抗菌活性は加熱による影響が顕著で, 100°10分間の加熱で半減し, 20分間加熱で完全に失活した. また, pH 6.0~7.0付近の抗菌活性は最も強く安定していたが, pH 5.0やpH 8.0以上では減少することが認められた.
著者
桐明 絢 石崎 松一郎 長島 裕二
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.203-208, 2021-12-25 (Released:2021-12-25)
参考文献数
25
被引用文献数
1

日本で頻発する巻貝によるテトラミン食中毒のリスク管理に資することを目的に,日本沿岸で採集した5科16種巻貝唾液腺中のテトラミン含量をLC-MS/MSで定量した.バイ以外の15種の巻貝唾液腺からテトラミン(0.700~9,410 μg/g)が検出され,本研究により,エゾバイ科ウスムラサキエゾボラ,ミクリガイ,トウイト,ヒモマキバイ,アニワバイならびにイトマキボラ科ナガニシ,コナガニシ,イトマキナガニシの唾液腺にテトラミンが含まれることが初めて明らかにされた.特に,ウスムラサキエゾボラは,調べた5個体全てがテトラミン含量1,000 μg/gを越えていたため,他のエゾボラ属巻貝と同様にテトラミン食中毒を起こす可能性が高いと考えられ,テトラミン食中毒のリスク管理上重要な種であることがわかった.
著者
渡邊 裕子 秋山 晴代 大澤 伸彦 井村 香織 伊関 直美 植田 壽美子 政岡 智佳 赤星 千絵
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.193-202, 2021-12-25 (Released:2021-12-25)
参考文献数
28
被引用文献数
3

大豆の調理・加工によるタンパク質定量への影響を検討した.リン酸緩衝食塩水抽出画分はビシンコニン酸法で測定し,ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と2-メルカプトエタノール(ME)含有緩衝液抽出画分は2-D Quant Kitで測定し,各画分のSDSポリアクリルアミド電気泳動分析を行い,さらに各種ELISAで測定を行った.豆腐調理過程では浸漬大豆と生呉でタンパク質濃度が変動し,試料均一化時の水分量によるタンパク質溶解性の変動が要因と考えられた.豆乳作製時の生呉の加熱でのタンパク質濃度の低下は熱変性を表すと考えられた.豆腐ではSDS,ME抽出による測定系への影響が考えられた.加熱調理では炒り豆を除き50 kDa付近以上と20 kDa付近のタンパク質が変性し,2度揚げ豆腐で40 kDa付近のタンパク質が変性したが,煮豆を除いたタンパク質濃度は低下しなかった.さらに炒り豆,ゆば,炒りおから,揚げ豆腐では調理時間に伴いタンパク質濃度が増加したことから,水分の低下に伴いタンパク質の変性温度が高温にシフトしたと考えられた.食品表示法に準拠した2種のELISAは大豆調理加工品や納豆を除いた発酵食品,健康食品中のタンパク質とペプチドを検出し,大豆タンパク質の検出に有用であった.
著者
Sabina Yeasmin 高畠 令王奈 鍵屋 ゆかり 岡﨑 法子 峯岸 恭孝 橘田 和美
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.180-186, 2021-12-25 (Released:2021-12-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1

食品あるいは飼料において,遺伝子組換え(GM)作物の検出法を開発するためには,種特異的な内在性配列が不可欠である.本研究では,ナス科作物のβ-fructosidase遺伝子の部分配列を用いて,loop-mediated isothermal amplification (LAMP)法によるナスの種特異的検出法を開発した.LAMP法は,迅速,特異的かつ低コストで実施可能な検出技術である.開発したプライマーセットを用いて,ナスの種特異性および安定性を,18品種のナスおよびナス科植物を含む作物種を用いて検討した.また,検出限界を評価した.その結果,本LAMP検出法は,ナスに特異的であり,かつナス品種間で安定した増幅を示した.以上の結果から,LAMP法によるGMナス検出法が開発される際には,有用な陽性コントロールとして利用可能であることが示された.
著者
穐山 浩 高木 彩 井之上 浩一 鈴木 美成 伊藤 里恵 涌井 宣行 浅井 麻弓 杉浦 淳吉
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.187-192, 2021-12-25 (Released:2021-12-25)
参考文献数
9
被引用文献数
1

食品中の残留農薬に関する正確な知識を促進するために,残留農薬のリスクコミュニケーションに関するシンポジウムプログラムをWeb開催した.リスクコミュニケーションプログラムは,プログラム前後のオンラインアンケート調査を使用して統計学的に評価した.105名の有効な参加者のアンケートを回収した.リスクコミュニケーションプログラムは,プログラム後のアンケート結果の分析により,プログラム後の理解と関心の点において効果的であったことが示された.プログラム前の残留農薬のリスク認知や安全性評価の認知は,残留農薬の基準値を確立に関する認識と有意に正の相関性があった.プログラム後のリスク認知はプログラム前よりも有意に高く,プログラムによりリスク認識が増加したことが示唆された.重回帰分析では,プログラム前に残留農薬の安全性評価に関する意識や基準値設定に対する認知が高い参加者ほど,プログラム後の理解度やリスク認知が高くなることが示唆された.
著者
菅野 慎二 河村 葉子 六鹿 元雄 棚元 憲一
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 = Journal of the Food Hygienics Society of Japan (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.196-199, 2006-08-25
参考文献数
9
被引用文献数
3

わが国の市販瓶詰の金属キャップに塗布されたシーリング103検体について,形状,材質,エポキシ化大豆油(ESBO)含有量,共存可塑剤などを調査した.シーリングの材質は 97% がポリ塩化ビニルであり,ごく一部がポリエチレンおよびアクリル樹脂であった.ESBOは全検体から 0.006~42.4% の含有量で検出され,ベビーフード,ジャムなどでは高く,飲料などでは低かった.また,ラグキャップやプレスオンツイストキャップでは高く,ピルファープルーフキャップでは低く,スクリューキャップではばらつきが大きかった.スクリューキャップおよびラグキャップの一部からフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHP),フタル酸ジイソデシル(DIDP)などの可塑剤が検出され,これらのシーリングのESBO含有量はESBOのみの1/10以下と低かった.今回の調査により,わが国で流通するほぼすべてのキャップシーリングがESBOを含有し,80% が主可塑剤として使用していることが判明した.