著者
角田 光淳 井上 典子 青柳 康夫 菅原 龍幸
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.153-160_1, 1993
被引用文献数
4 4

ベニテングタケによる食中毒防止の観点から, 言い伝えられている保存法や調理加工法に準じてイボテン酸 (IBO) 及びムシモール (MUS) の消長を調べた. IBOは容易に脱炭酸されてMUSになり, それが幻覚を引き起こすことが知られている. 本研究の結果, 1) 乾燥するとIBOは減少するがMUSが増加し, MUSによる生理作用は強まるものと思われる. 2) 乾燥保存中のIBO及びMUSは安定で, また短期塩漬保存では両者の変動はわずかで, その生理活性を失うことはないと思われる. 3) 10分程度の加熱調理では, 両者の変動はわずかで, 無毒化を期待することはできない. 4) 湯がきや水さらしにより, 両者の含量は大きく減少したが, 実際には個体差, 喫食量及び他成分の影響等を考えるとこれらの処理は推奨される調理方法とはいえない.
著者
伊永 隆史
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.197-204, 2010
被引用文献数
1 1

食のグローバル化に伴いさまざまな輸入食品が安価に手に入るようになったが、国内で禁止された農薬・消毒剤の使用やBSE(牛海綿状脳症)などで安全性への懸念が高まり、ここ数年消費者の国産食品指向が高まっている。植物やそれを餌とする動物の水素・酸素安定同位体比は天然水の安定同位体比を反映することが知られ、気候変動に関連した生態系解析などに用いる先行研究がいくつか報告されている。しかし、このような有機物の安定同位体比を精密測定できる質量分析法は、かつてはごく一部の先端的研究者だけが扱える特殊な測定技術とされていたが、近年の同位体比質量分析装置(IRMS)の発展普及により汎用性が高まり、食品の産地鑑別研究へ展開可能な実施環境が整いつつある。
著者
新間 弥一郎 田口 脩子
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.28-34, 1961-03-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
6

イシナギ肝臓による食中毒が, 単なるA過剰症によるのか, あるいは他の特異な毒物によるのか検討するために, 東京築地市場に入荷した3尾のイシナギの肝臓を試料とし, それぞれの脂質を分析したのち, 人間およびシロネズミに対して, これら3個の試料から分離した抽出油, 抽出残留物, 肝臓エキスおよび調理した肝臓を与えた結果, シロネズミでは抽出残留物および肝臓エキスは全く中毒症状を現わさず, 抽出油中にはよりA毒性の強い物質を認めなかった.人間では3個の試料のうち, 含油量22.3%, 油中のA濃度117万IUの肝臓を調理して食した場合に, 皮膚落屑を伴う特有の中毒症状が現われたが, 摂取した肝臓中のA量から予想されたよりも, 中毒症状は激しく, かつ長期にわたり, 単なるA過剰症とは断定できなかった.
著者
武田 由比子 河村 葉子 山田 隆
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.178-183_1, 1998-06-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
19
被引用文献数
4 7

アルミホイルから各種食品擬似溶媒へのアルミニウム溶出について検討したところ, 溶媒により溶出挙動は大きく異なった. 水への溶出は少なく, 水道水では超純水よりわずかに高かった. 4%酢酸及び0.5%クエン酸溶液では, 水道水の25~200倍であった. また,4%酢酸へは0.5%クエン酸溶液の2倍以上の溶出量であった. 酸性溶媒への溶出は温度及び時間に相関して増加した. 一方, アルカリ性溶媒への溶出は, 2時間以内に急激に増加し, その後はほぼ一定の状態となった. 市販アルミ箔製品10種類の溶出調査を行ったところ, 95℃30分で超純水への溶出は0.1-0.2μg/cm2, 0.5%クエン酸溶液では4.4-14.6μg/cm2, 4%酢酸では24.4-37.6μg/cm2であった.
著者
宗村 佳子 木本 佳那 小田 真悠子 奥津 雄太 加藤 玲 鈴木 康規 齊木 大 平井 昭彦 秋場 哲哉 新開 敬行 貞升 健志
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.260-267, 2017-12-25 (Released:2017-12-28)
参考文献数
35
被引用文献数
6

2017年2月,東京都内で食中毒が4事例発生した.患者は10の学校にわたり,このうち7校および1校では,それぞれ別の共同調理場で調理された給食を提供されており,2校では自校で調理した給食を喫食していた.全事例に共通して提供されていたものは,同一業者が2016年12月に製造した刻みのりであった.喫食者4,209名のうち,1,193名(28.3%)が胃腸炎症状を呈し,リアルタイムRT-PCRによる検査の結果,4事例の患者265名中207名(78.1%)からノロウイルス(NoV)GIIが検出された.刻みのり31検体が検査に供されたが,このうち7検体(22.6%)がNoVGII陽性となった.刻みのり7検体と4事例に由来する患者20検体のNoV ORF1/2ジャンクション領域302塩基の配列は一致し,その遺伝子型はGII.17であった.また,次世代シークエンサーによる解析により,患者検体からほぼ全長(7,420塩基)のNoV塩基配列が得られたが,同株は系統樹解析でHu/GII/JP/2015/GII.P17_GII.17/Kawasaki308株と同じクラスターに属した.これらの結果から,今回の4事例は同一刻みのりを感染源としたNoVGII.17によるものであると断定された.刻みのり検体の水分活性は0.119~0.129であり,NoVは乾燥状態でも2か月間は感染性を失わないことが疫学的に示された.本事例の解決を発端として,刻みのりが関連したNoVGII.17による大規模なdiffuse outbreakの国内発生が明らかとなった.
著者
鍋師 裕美 菊地 博之 堤 智昭 蜂須 賀暁子 松田 りえ子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.415-418, 2013-12-25 (Released:2013-12-28)
参考文献数
2
被引用文献数
4 5

平成23年3月の福島第一原子力発電所事故後,牛肉から高濃度の放射性セシウムが検出されたことから,暫定規制値を上回る牛肉が市場に流通しないよう全頭検査が実施された.しかし,検査の過程で同一個体の部位間で放射性セシウム濃度が異なる例が明らかとなり,検査結果の信頼性に疑問が生じる事態となった.そこでわれわれは放射性セシウムを含む同一個体由来の5部位の肉を用いて測定部位間の放射性セシウム濃度の違いについて原因の解明を試みた.その結果,検討した3個体すべてにおいて,脂肪含量が高い部位ほど放射性セシウム濃度が低下することが判明し,部位間の放射性セシウムの濃度差が脂肪含量に起因することが明らかとなった.さらに,筋肉組織は平均して脂肪組織の7倍以上の放射性セシウムを含んでいたことから,ウシの個体検査で放射性セシウム濃度を測定する場合には,脂肪の少ない筋肉部を用いた検査が適当であると考えられた.
著者
杉山 広
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.285-291, 2010-12-25 (Released:2011-01-07)
参考文献数
32
被引用文献数
1 2
著者
千葉 剛 佐藤 陽子 小林 悦子 梅垣 敬三
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.96-106, 2017-04-25 (Released:2017-05-09)
参考文献数
9
被引用文献数
10

平成27年4月に事業者の責任により機能性表示ができる機能性表示食品制度が施行された.施行後1年が経過した時点における機能性表示食品の認知度および利用実態について消費者2,060名,医師515名,薬剤師515名を対象にアンケート調査を行った.機能性表示食品を認知している人は消費者81%,医師93%,薬剤師98%であった.しかしながら,その特徴を正しく理解していた人は消費者16%,医師23%,薬剤師44%であった.機能性表示食品を利用したことのある消費者は12%であり,治療目的に利用,通院中,医薬品を併用している人がいたが,医師・薬剤師へ相談している人は僅かであった.一方,医師・薬剤師において,患者から機能性表示食品の利用について相談を受けたのは約8%であり,利用が原因と思われる健康被害の相談を受けたのは約2%であった.
著者
小林 悦子 佐藤 陽子 梅垣 敬三 千葉 剛
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.107-112, 2017-04-25 (Released:2017-05-09)
参考文献数
12
被引用文献数
5

高齢者においては健康食品の利用率が高く,利用による被害を避けるためにも適切な情報提供が重要である.近年,情報提供手段としてインターネットが活用されているが,高齢者に対する健康食品の情報提供手段としてインターネットが適切であるか検討した.インターネット調査では,健康食品の情報源,入手経路のいずれにおいてもインターネットの利用率が高かった.一方,紙媒体調査では情報源,入手経路のいずれにおいてもインターネットの利用率は低く,テレビ,新聞,雑誌などメディアに加え専門職や友人などの情報の利用が高く,知人などを介して入手している人も多かった.これらの結果より,普段インターネットを利用していない高齢者に対しては,専門職などとのコミュニケーションを介した情報提供が必要であると考えられた.
著者
石崎 睦雄 上野 清一
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.447-451_1, 1989
被引用文献数
5

天然及び合成食品添加物21品目のDNA損傷活性をDNA修復試験 (Spore rec-assay) で検討した. その結果, 天然添加物のアーモンド油, スターアニス油, セイボリー油, ディル油及び合成添加物の安息香酸ナトリウム並びに合成添加物のカリウム塩である安息香酸カリウム, クエン酸一カリウムの7品目には, 弱いながらDNA損傷作用が認められた. また, クエン酸三ナトリウム (二水和物) とそのカリウム塩クエン酸三カリウム (一水和物) は明瞭な陰性を示したが, 残り12品目は, 最高用量においてもなおM45, H17両株に増殖阻害が観察されず未確定陰性であった.
著者
宮下 振一 貝瀬 利一
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.71-91, 2010
被引用文献数
6

ヒ素の毒性が高いことはこれまでに起こったさまざまな殺人事件や事故を通じて周知の事実となっている。すでに古代ギリシアやローマではヒ素が殺人や自殺に用いられていたと言われており、またわが国でも森永ヒ素ミルク中毒事件や和歌山毒物カレー事件などのヒ素中毒事件を経験している。その一方で、われわれが呼吸や飲食物の摂取を通じて日常的にヒ素を体内に取り込んでいることはあまり知られていない。実はわれわれは空気中に存在する超微量のヒ素や、飲食物中に種々の濃度で含まれるヒ素を無意識のうちに取り込み、これらを代謝および排泄しながら生活している。また通常の環境下で摂取されるヒ素の多くは、呼吸器や皮膚からの吸収よりもむしろ飲食物の摂取に由来することが知られている。そのため体重70kgの成人の体内には常に約7mgのヒ素が普遍的に存在すると言われている。本報では、日本人における主要なヒ素摂取源である海産物、特に他の国民と比べて多食していると考えられる海藻および魚介類に焦点を当て、含有されるヒ素の化学形態や生体への影響、ならびに生体内における代謝に関して最近の知見を交えて紹介してみたい。なお、本報では触れないヒ素の化学形態別分析法については多くの総説にまとめられているので参考にされたい。またこれまでに報告された海洋環境におけるヒ素の化学形態および動態についてはいくつかの総説にも詳しくまとめられているので参照されたい。
著者
天川 映子 鎌田 国広 斎藤 和夫 鈴木 助治
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.304-308_1, 1999-08-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
6

TLC及びHPLCを用いた食品中のアリテームの分析法を検討した. アリテームは水-アセトニトリル (8:2) 混液で食品から抽出した. 糖分の多い試料の場合は, DEAE-セファデックスカラムを用いたクリーンアップが必要であった. TLCでアリテームが検出された場合は, HPLCにより定量した. TLC条件: TLCプレート, RP-18F254S (5×10cm); 展開溶媒, 0.02mol/Lリン酸二水素カリウム溶液 (pH 4.6)-メタノール (4:6) 混液; 発色液, 0.3%ニンヒドリン溶液. HPLC条件: カラム, Lichrosorb RP-18-5; 移動相, 0.02mol/Lリン酸二水素カリウム溶液 (pH 4.6)-アセトニトリル (8:2) 混液; 検出波長, 210nm; カラム温度, 45℃; 流速1.0mL/min; 注入量, 10μL. 市販食品での回収率は99.0~104.2%, 検出限界は20μg/gであった.
著者
佐々木 久美子 辰濃 隆 中村 宗知 金子 正堅 後藤 修宏 近藤 安昭 高畑 薫 三浦 嘉巳 豊田 正武
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.210-214, 2001-06-25
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

殺ダニ剤酸化フェンブタスズ(FBTO)及びシヘキサチン(CHT)の告示試験法評価のために6分析機関で共同実験を行った.玄米など6作物からのFBTO回収率の平均値は85.2~96.5%,CHTのそれは大豆を除いて83.5~89.2%であった.FBTO回収率の併行再現性及び室間再現性の相対標準偏差はそれぞれ2.3~9.4%,3.9~12.6%,CHTのそれらは3.2~6.3%,8.3~12.9%であった.検出限界は0.015~0.05μg/g(FBTO),0.005~0.02μg/g(CHT)であった.
著者
加藤 友香里 寺田 久屋
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.162-166, 2014
被引用文献数
4

超高速液体クロマトグラフ–タンデム型質量分析法を用いたキャッサバ製品およびシアン化合物を含有した豆類中のリナマリンの迅速で簡便な定量法を開発した.リナマリンをアセトニトリル–水(3 : 1)で抽出後,アミノ固相抽出カラムで精製し,超高速液体クロマトグラフ–タンデム型質量分析計により定量した.キャッサバに,リナマリンを10 μg/gおよび100 μg/g添加したところ,回収率は96.1%(RSD: 2.6%)および95.3%(RSD: 1.4%)であった.また,タピオカにリナマリンを1 μg/g,10 μg/gおよび100 μg/g添加したところ,回収率は81.1%(RSD: 3.3%),91.9%(RSD: 5.4%)および97.1%(RSD: 2.1%)であった.本法を適用してキャッサバ14検体,タピオカ9検体およびシアン豆4検体について実態調査を行ったところ,キャッサバは11検体から0.1~245 μg/g,タピオカは5検体から0.1~0.5 μg/g,シアン豆は全検体から4,950~5,590 μg/gのリナマリンが検出された.本法による定量下限値は0.1 μg/g,検出限界値は0.03 μg/gであった.
著者
田端 節子
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.129-138, 2012-06 (Released:2013-10-08)
著者
天倉 吉章 堤 智昭 飯田 隆雄 中川 礼子 堀 就英 飛石 和大 内部 博泰 中村 宗知 柳 俊彦 河野 洋一 豊田 正武 佐々木 久美子 米谷 民雄
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 = Journal of the Food Hygienics Society of Japan (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.148-152, 2005-08-25
参考文献数
9
被引用文献数
2 3

市販ベビーフード中のダイオキシンレベルを評価するために,2001~2002年に入手した102品目(102試料) のベビーフード中のダイオキシン類〔ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(PCDDs),ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)およびコプラナーポリ塩化ビフェニル(Co-PCBs)〕の分析を行った.その結果,各試料の毒性等量(TEQ)は湿重量当たり<0.001~0.135 pg-TEQ/gで,102試料中,26試料が0.010 pg-TEQ/g以上であった.最高濃度は,おかず類"いわし,野菜"(0.135 pg-TEQ/g),次いで"いわし,大根" (0.080 pg-TEQ/g)であった.傾向として,魚類や乳製品のような動物性食品を含むものにダイオキシン検出が認められたが,それらは低い汚染レベルであった.
著者
菊池 正行 玉川 勝美 広島 紀以子 相原 良之 三島 靖子 関 敏彦 角田 行
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.534-542, 1984-12-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
33
被引用文献数
3 5

きのこ中金属の含有実態を有用性と有害性の両面より把握する目的で, 21種32点の食用きのこについて18金属の分析を行った.1. 鉄, カリウム, ナトリウム, マグネシウム, 亜鉛, 銅及びマンガンの必須金属は, 一般の野菜類と同程度の値であった.2. カルシウムの含有量は, 一般の野菜類と比較し低く, 供給源として考えた場合, 著しく有用性に乏しいものであった.3. 鉛, クロム, ニッケル, コバルト, バナジウム, スズ及びアンチモンの有害金属は, 不検出またはこれに近い値であった.4. カドミウムは, ほぼ全試料より検出し, 特にコウタケ( 1.02μg/g) とホウキタケ (0.80μg/) が高い値を示し, 食べる量によっては有害性を示す危険性がある.5. アルミニウムは, 一般の野菜類の10倍以上の含有量が測定されたが, 有害性を示すとは考え難い量であった。6. セレンは, コウタケのみから高い濃度で検出され (6, 10μg/g), 十分に安全な値とは断言できず, 食べる量によっては有害性を示すことが考えられる.7. 各金属の含有傾向を知る目的で, 確率紙を用いた濃度分布の検定を行ったが, マンガン,カリウム及びマグネシウムが正規分布, カドミウムが対数正規分布によい適合を示した.8. 金属間の相関性は, 銅とカドミウム; 鉄とアルミニウム; 亜鉛と銅; アルミニウムとカドミウム; 鉄とナトリウム: 亜鉛とカドミウムと, 危険率1%で有意の相関性を得た.9. 発生場所と金属含有量の差は, アルミニウム, マグネシウム及びカドミウムが, 枯木上に発生するきのこより地上に発生するきのこの方が濃度が高く, 有意水準5%で有意な差を認めた.