著者
栗原 義夫 山下 久美子
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.892-896, 2013-11-30 (Released:2013-12-03)
参考文献数
7

スルホニル尿素薬(以下SU薬)を含む経口血糖降下剤治療にdipeptidyl peptidase-4(以下DPP-4)阻害薬を追加した当院通院中の2型糖尿病患者219例を対象に,SU薬の用量調節について後ろ向きに検討を行った.SU薬を減量せずにシタグリプチンを追加した169例では,3ヵ月以内に低血糖症状の発現や低血糖予防のためにSU薬を減量された者が46例(27 %)あった.そのうちRecommendation以下のSU薬を服用していた者が9例(20 %)あった.また,SU薬をその量に関係なくほぼ半減しシタグリプチンを追加した50例の患者では低血糖症状の発現はなく,HbA1cの低下幅はSU薬を減量しなかった患者と有意差を認めなかった(-0.9 % vs -0.9 %,p=0.95).以上よりSU薬にDPP-4阻害薬を追加する時には,SU薬はその量に関係なく一旦半減するのが適切な調節であると考える.
著者
木村 和樹 石坂 正大
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.791-797, 2016-12-30 (Released:2016-12-30)
参考文献数
16

本研究は糖尿病多発神経障害(DP)に伴い低下する身体機能・構造項目を二項ロジスティック回帰分析で検討した.対象はDM患者100例とした.身体機能・構造項目は,前方および後方10 m歩行速度,開眼片脚立位,Timed Up & Go Test(TUG),30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30),下腿周囲長(CC)とした.DPは「糖尿病性多発神経障害の簡易診断基準案」を用いた.二項ロジスティック回帰分析よりCCの萎縮と後方歩行速度の低下が抽出された.ROC曲線より,カットオフ値はCCが33.75 cm,後方歩行速度が0.905 m/sであった.非高齢患者はCS-30の減少,高齢患者は後方歩行速度の低下が抽出された.DPを有する非高齢患者は下肢筋力低下を生じ,加齢に伴いCCの萎縮を認めた.DPを有する高齢患者はTUGや後方への動的バランスが障害され,後方歩行速度の低下と関連があった.
著者
植木 浩二郎
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.689-692, 2014-09-30 (Released:2014-10-07)
参考文献数
5
被引用文献数
2
著者
林 葵 佐藤 大介 大角 誠一郎 辻 明紀子 西村 公宏 関根 理 森野 勝太郎 卯木 智 前川 聡
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.132-138, 2020-03-30 (Released:2020-03-30)
参考文献数
29

症例は27歳,女性.産後7日目から食思不振と全身倦怠感が出現し,産後25日目に意識障害を認めたため救急搬送され,糖尿病性ケトアシドーシス(以下DKAと略す)と高アンモニア血症のため緊急入院となった.DKAの改善後も見当識障害と高アンモニア血症は遷延した.先天性代謝異常の既往や家族歴はないが血中アミノ酸分画を測定したところ血中シトルリン低値であり,尿素サイクル異常症が示唆された.亜鉛欠乏(49 μg/dL)に対して亜鉛補充を開始したところ,高アンモニア血症と血中シトルリンは正常化し,見当識障害は改善した.以上の経過から,亜鉛欠乏による一過性のオルニチントランスカルバミラーゼ活性低下から高アンモニア血症を来したと推察された.本例のような長期の食思不振から低栄養状態が疑われる場合には,亜鉛欠乏に伴う一過性高アンモニア血症も鑑別に挙げる必要があると考えられる.
著者
荒古 道子 中 啓吾 貴志 豊 江川 公浩 澳 親人 西 理宏 古田 浩人 中尾 大成 佐々木 秀行 南條 輝志男
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.221-225, 2004-03-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
9
被引用文献数
1

症例は71歳の女性で, 1999年よりプランマー病と診断されるも, 甲状腺機能異常は認めずβプロッカ-のみで治療されていたが, 2001年8月より甲状腺機能亢進症が出現し, バセドウ病の合併 (Marine-Lenhart症候群) と診断した.チアマゾール (以下MMIと略す) による治療を開始するも肝障害が出現したため入院した.肝機能障害の精査中に高インスリン血症 (IRI 82-4μU/ml, CPR 2.18ng/ml, IRI/CPRモル比0.79) の存在が確認され, 75gOGTT 2時間後でIRIは最大1, 785μU/mlまで上昇し, 3時間後には低血糖 (28mg/dl) を認めた.インスリン負荷試験で感受性は正常, インスリンレセプター抗体は陰性, インスリン抗体は7396と高値であった.HLAタイプはクラスIIのDR4, HLA-DR遺伝子解析ではDRB 1*0406であり, インスリン注射歴がないことよりインスリン自己免疫症候群 (以後IASと略す) と診断した.プロピルチオウラシルに変更後は肝機能は正常化し, 低血糖症状も認めずインスリン抗体価の低下も認められた.-ASはその発症にSH基を有する薬剤の関与が指摘されており, MMI服用により発症したと考えられるIASを経験したので報告した.
著者
稲葉 利敬 六角 久美子 板橋 直樹 井手野 順一 長坂 昌一郎 本多 一文 岡田 耕治 横山 水映 石川 三衛 齊藤 寿一 内潟 安子 岩本 安彦 石橋 俊
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.787-790, 2003-10-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
12
被引用文献数
4

症例は69歳, 女性.1993年 (平成5年) 10月Graves病と診断されmethimazole (MMI) 投与を開始.1997年 (平成9年) 7月より夜間空腹感を自覚し, 低血糖症を指摘された.インスリン注射歴のないこと, 血中インスリンの異常高値, 高力価のインスリン抗体の存在からインスリン自己免疫症候群と診断.同年7月, 甲状腺機能低下を認めMMIは中止されたが, 低血糖症状が持続し2000年 (平成12年) 6月入院.75gOGTTは糖尿病型, 入院食摂取下の血糖日内変動では低血糖を認めず, 絶食試験で19時間後に低血糖を認めた.HLA-DRB1*0406を認めた.Scatchard解析の結果, 本症例のインスリン抗体はポリクローナルで, そのhigh-affinity siteのK1は2.35×108M-1, b1は1.32×10-8Mと計算された.本症例の血清は, 加えたヒトインスリンに対しての本症候群に特徴的とされる低親和性, 高結合能に比して高親和性でかつ低結合能を示した.本症候群では, 誘因となる薬物の開始後早期に発症し, 薬物中止後数カ月以内に低血糖発作が自然緩解する例が多いとされるが, 本例は, MMI開始4年後に診断され中止後も症状が持続する, 特異な臨床経過を示した症例であった.
著者
田村 好史 筧 佐織 竹野 景海
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.730-733, 2016-11-30 (Released:2016-11-30)
参考文献数
7
被引用文献数
1
著者
渡邉 聡子 勅使川原 早苗 國方 友里亜 三嶋 麻揮 田原 稔久 今井 佑輔 金藤 光博 田村 友和 桃木 律也 小武 和正 利根 淳仁 中塔 辰明
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.188-194, 2022-04-30 (Released:2022-04-30)
参考文献数
15

メトホルミンの過量服薬を契機に乳酸アシドーシス,急性腎不全を呈した2型糖尿病の1例を経験したので報告する.症例は50歳代男性.入院2週間前より気分の落ち込み,食欲不振を認めていた.入院2日前の採血で血清Cre 1.50 mg/dL,血糖247 mg/dL,血液ガス分析では異常を認めず,入院前日の採血ではCre 1.42 mg/dLであった.入院前日の夜にメトホルミンを推定4000 mg服用し,嘔気嘔吐,下痢が出現したため,翌日当院へ救急搬送となった.血液ガス分析でpH 6.91,乳酸25.0 mmol/L,採血でCre 4.39 mg/dLと,乳酸アシドーシス,急性腎不全を認めた.来院後速やかに緊急血液透析を開始することで救命し得た.メトホルミンの過量服薬後に急激な腎機能悪化を認めた経過から,メトホルミンによる直接的な腎障害が示唆された.迅速な血液透析が治療に有効であったので報告する.
著者
大谷 敏嘉 笠原 督 内潟 安子 岩本 安彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.865-871, 2007 (Released:2009-05-20)
参考文献数
11
被引用文献数
1

50歳頃から急に重症低血糖を頻回に起こし始めた44年以上の罹病歴を有する小児期発症1型糖尿病の3症例を報告する.症例1は53歳の女性.1959年11月(6歳)発症.2002年3月(48歳)から意識消失を伴う低血糖が頻回に出現.症例2も53歳の女性.1962年12月(9歳)発症.2002年6月(48歳)から意識消失を伴う低血糖が頻回に出現.症例3は52歳の女性.1959年9月(4歳)発症.2005年12月(51歳)から意識消失を伴う低血糖が頻回に出現.全症例とも更年期から低血糖が重症化してきた.症例2では更年期に加え自律神経障害の関与が考えられた.小児期発症1型糖尿病女性患者では更年期を迎える50歳頃から急にそれまでとは異なる重症低血糖を頻回に起こすようになることがあるので,治療にはより細やかな対応が必要である.
著者
吉田 宗儀 穂積 俊樹 土井 邦紘
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.647-652, 2002-09-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
22

糖尿病発症に妊娠時の低タンパク質摂取が妊娠と新生仔に及ぼす影響が報告されている. オヤと新生仔の3世代の膵内分泌機能をラットを用いて観察し, その知見を報告する. Wistar系ラットを正常群C-1 (n=13, 餌タンパク25.1%) と低タンパク群P-1 (n=15, 餌タンパク14.5%) にわけ, 妊娠後に新生仔C-1-1, P-1-1 (2世代) を得た, 血糖, IRI, 膵組織中IRI, IRGを測定した. 新生仔の一部を同じ餌条件で飼育し, 再度オヤ (C-2, P-2) とその新生仔C-2-1, P-2-1 (3世代) を得, 同様の実験を行った. 低タンパク餌投与群ではオヤ, 新生仔とも体重と膵組織のIRI含有量が正常群より低い傾向が認められ, 膵タンパク量についても同様の低下が認められた. 膵組織タンパク量はオヤでは有意に低タンパク餌群が低値であった. また, 低タンパク餌群の新生仔の膵組織中のIRI含有量については対照との有意の差は認められなかったが, 3世代は2世代に対して有意に低値であった, このことは, 低タンパク質摂取は世代を経るほど妊娠時の膵内分泌に与える影響が大きいことが示唆された.
著者
荒木 理沙 丸山 千寿子 鈴木 裕也 丸山 太郎
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.357-367, 2013 (Released:2013-07-09)
参考文献数
37

2型糖尿病(DM)患者は非糖尿病者に比べ血中ホモシステイン(Hcy)濃度が高いとされている.そこで40~70歳2型DM患者149名の血中Hcy,ビタミン濃度と食品摂取状況の関連を検討した.Hcy濃度は7.6±3.6(Mean±SD)nmol/mlと正常で,葉酸,ビタミンB12濃度は比較的高く男女差がみられたが,5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素遺伝子多型の関与は低かった.男性は女性より海藻・きのこ(p<0.001),野菜,果物(いずれもp<0.01),大豆・大豆製品,魚(いずれもp<0.05)の摂取頻度とこれらを組み合わせた日本食パターンスコア(p<0.001)が高く,このスコアは対象全体でlog Hcy濃度と負,log葉酸,ビタミンB12濃度と正の相関(いずれもp<0.01)を示した.2型DM患者の高Hcy血症予防において,これらの食品の摂取頻度を高めることの有用性が示唆された.
著者
福島 あゆみ 岡田 洋右 谷川 隆久 河原 智恵 三澤 晴雄 中井 美穂 廣瀬 暁子 神田 加壽子 森田 恵美子 田中 良哉
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.311-316, 2003-04-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
16

症例は52歳女性. 1996年 (平成8年) に低血糖昏睡 (血糖12mg/dl) で近医に緊急入院したが, 低血糖発作が頻発するため1997年 (平成9年) 当科入院.考えられる低血糖発作の原因を除外した後に, インスリン (IRI) 血糖 (PG) は0.44~1.07, 血管造影で膵尾部に径1.5cm大の濃染像が疑われることより, インスリノーマの診断で膵体尾部脾合併切除 (90%) を施行したが, 術中所見, 切除膵の組織学的検討で異常所見を認めなかった. しかし, その後も夜間空腹時低血糖発作を反復するも, 発作時のIRI PGが0.07と過剰インスリン分泌は消失していたことから, 術後低血糖の主因としては反応性低血糖を考え, ボグリボース内服と夜間補食 (2単位) を開始. 以後, 日常生活には支障ないものの, 依然として早朝空腹時血糖は50mg/dl前後であり, 2001年 (平成13年) 9月病状再評価のため施行した選択的動脈内カルシウム注入検査 (ASVS) にて, 30秒後にIRIが2.5倍以上に上昇し陽性. また, ボグリボースと夜間補食中止下でのdaily profiieでは食後高血糖がみられ, 著明なインスリン抵抗性と低血糖時のインスリン分泌抑制を認めた.本例の低血糖の病態としては, ASVSの結果および術後経過より, 術前の病態としては膵β細胞のび漫性機能亢進があったのではないかと考えられ, 広汎な膵切除によるインスリン総分泌量の減少に加え, ボグリボースにより反応性のインスリン過剰分泌を減少させることで重篤な低血糖発作を改善することができたと推測される.
著者
笠原 隆行 藤巻 理沙 治部袋 佐知代 和田 純子 佐藤 麻子 稙田 太郎
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.27-31, 2008

37歳,罹病期間8年の2型糖尿病女性.治療中断後に再開した強化インスリン療法により体重が5 kg増加し,全身浮腫,胸水,肺うっ血を伴う心不全をきたした.入院第5病日,いまだ胸水,下肢浮腫の残存時に行った心超音波検査では,左室壁運動に異常なく,EFは71%と正常であり,拡張機能障害による心不全が疑われた.利尿剤のみで自覚症状,全身浮腫,胸水は約2週間で消失した.血中BNPは第1病日130 pg/m<i>l</i>, 第2病日82.4 pg/m<i>l</i>, 第15病日には4.3 pg/m<i>l</i>と漸次改善した.本例は長期にわたる血糖コントロール不良下に,強化インスリン療法により血糖是正が比較的急速に行われた結果,心不全が誘発されたと想定された.機序としてインスリンのNa貯留作用による循環血液量の増加に加え,潜在する心拡張機能障害が一因となった可能性が示唆される.強化インスリン療法が普及した今日,留意すべき症例と考え報告する.
著者
金森 岳広 竹下 有美枝 御簾 博文 加藤 健一郎 太田 嗣人 金子 周一 篁 俊成
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.803-808, 2012 (Released:2012-11-16)
参考文献数
16

症例はCMT病の48歳,男性.45歳時から口渇・多飲多尿を認め,46歳時の検診でHbA1c 10.8 %(NGSP)を認めた.当科に第一回入院時,身体所見で内臓脂肪型肥満(体重84 kg, BMI 28.1 kg/m2,腹囲101 cm)と四肢遠位部の筋萎縮を認め,高インスリン正常血糖クランプ検査はMCR 4.38 ml/kg/分と末梢組織における高度のインスリン抵抗性を示した.また,肝生検にて肝線維化を伴う非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と診断した.食事・運動療法とインスリン療法を開始し,1年半の外来経過中に19.6 kgの減量(体重64.4 kg, BMI 21.8 kg/m2,腹囲75.5 cm)に成功し,HbA1c 5 %台の良好な血糖コントロールを得た.第二回入院時にMCR 6.86 ml/kg/分とインスリン抵抗性の著明な改善を認め,肝生検ではNAFLDの所見が消失した.CMT病合併糖尿病も肥満を伴う症例では,食事・運動療法による減量がインスリン抵抗性の改善と血糖コントロールに有効と考えられた.
著者
佐々木 陽 鈴木 隆一郎 堀内 成人 松宮 和人 荒尾 雅代
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.610-616, 1977-09-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
17

Prediabetesへのアプローチの一方法として, 3歳3ヵ月で発病した小児糖尿病の血縁者で, 祖父母の同胞およびその子孫までに至る61名中55名の検査を行い, その糖代謝およびIRI反応について検討した.1) 糖代謝異常は55名中14名 (25.5%) にみられ著しく高率であった.これを患児の4親等以内の血縁者 (Group I) と5親等以上のもの (Group II) の別にみると, Group Iにやや頻度が高く, とくに0~19歳の若年層で7名中2名に糖代謝異常がみられた.平均血糖値は0~19歳の年齢層を除いて, 両Group間にとくに差はみられなかった.2) 糖代謝の正常な35名についてIRI反応を両Groupで比較すると, 患児と血縁関係の近いGroup Iでは血縁関係の遠いGroup IIに比しIRI反応が低く, またすでに報告したインスリン分泌の指標, IRI面積/血糖面積比も低下する傾向のあることが認められた.以上の結果, 糖尿病患児の糖代謝正常な近親者でもIRI反応が低下しており, prediabetesにおけるインスリン分泌の減退が示唆された.