著者
土肥 昭夫
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.62-66, 1969-04-01

The feeding experiments of the guppy, Poecilia reticulata, were carried out under various bait concentrations. A water flea, Daphnia pulex, was used as the bait. 1) The guppy continously feeds on the bait all through the day, when supplied with a sufficient amount. 2) The consumed number of baits can be described as a function of the time required for feeding, as follows, n=N(1-e^<-at>) where n is the number of baits consumed till the time t, N is the initial concentration of bait and 'a' can be expressed in the present experiments as the function of the initial concentration of bait and the full function can be described as, n=N(1-e^<-5.468t>/N^<0.913>) 3) The equation between the number of baits consumed and the initial concentration of the bait showed good agreement with the equation obtained by IVLEV (1955). This equation is described as, r=R(1-e^<-ξp>) where R is the maximum amount of food consumption at a definite time and ξ is the coefficient of proportionality.
著者
北村 俊平
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.159-171, 2007-07-31 (Released:2016-09-15)
参考文献数
172
被引用文献数
2

今日、東南アジア熱帯の森林は急激な減少を続けており、そこに生息する動物も絶滅の危機に瀕している。この総説では、東南アジア熱帯における動物による種子散布の有効性を取り扱った既存の情報(果実食動物の行動圏、腸内滞留時間、散布距離、種子散布地の特定、林床における果実消費、二次散布)を整理し、新熱帯やアフリカ熱帯における最新の研究成果を交えながら、東南アジア熱帯において種子散布に貢献する果実食動物の絶滅がもたらす影響について考察する。東南アジア熱帯においては、日中にどのような動物がどのような果実を利用するかについてはかなりの情報が蓄積されつつある。一方、夜にどのような動物が果実を利用しているか、林床でどのような動物が果実を利用しているか、どのくらいの距離を種子は散布されるのか、どこに種子は散布されるのか、散布後の種子の運命はどうなのか、の情報は非常に限られている。現段階の情報では、東南アジア熱帯において、ある特定の果実食動物の絶滅が、生態系に及ぼす影響を予測することは困難である。種子散布や種子捕食といった動物と植物の相互作用を介した生態系機能についての研究は、持続的な森林管理や熱帯林生態系の回復や復元に必要不可欠である。種子散布を担っている果実食動物相は地域により異なるので、情報の少ない東南アジア熱帯における独自の研究の進展が待たれる。
著者
増田 直紀 中丸 麻由子
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.219-229, 2006-12-05 (Released:2016-09-10)
参考文献数
62
被引用文献数
1

複雑ネットワークは、要素と要素のつながり方の構造と機能に焦点をあてた新しい研究分野である。生態学の多くの対象においても、地理的空間、あるいは抽象的空間で個体や個体群同士がどのようなつながり方にのっとって相互作用するかは、全体や個々のふるまいに大きく影響しうる。本稿では、複雑ネットワークについて概説し、次に食物綱や伝播過程の例を紹介しながら、生態学へのネットワークの応用可能性を議論する。
著者
井村 隆介
出版者
日本生態学会暫定事務局
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.707-714, 2016 (Released:2017-04-06)

日本は狭い国土に110もの活火山が分布している世界でもまれな国である。とりわけ南九州には、多くの活火山があるだけでなく、姶良カルデラや鬼界カルデラなど多くのカルデラ火山が存在する。カルデラは過去の巨大噴火によって生じた凹地形である。カルデラを作る噴火は、日本全体では1万年に1回程度の割合で起こってきた。日本で最後に起こったこの規模の噴火は7300年前の鬼界カルデラの噴火である。カルデラ噴火はめったに起こらないが、もし起これば世界中が深刻な事態に陥る自然現象である。日本列島、特に南九州の自然は、カルデラ噴火による環境攪乱と言うよりも、深刻な破壊とそこからの再生の繰り返しによって作られたものと言える。
著者
常木 勝次 安達 之彦
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.166-171, 1957
被引用文献数
3

A horizontal, well sun-shiny area of 16×20 sq. m. in the precincts of a temple, deeply surrounded by trees and shrubs, inhabited by four species of ants-Camponotus herculeanus japonicus MAYR (abbreviated to C), Formica fusca japonica MOTSCHULSKY (abbr. to F), Aphae-nogaster famelica SMITH (abbr. to A) and Tetramorium caespitum jacoti WHEELER (abbr. to T)-was adopted as the observation ground. It was sectioned into a net of 2 m (partly 1 m)meshes and was baited at all corners of the meshes with such small insects as house flies and the like. All the baits were numbered by means of a tiny label respectively which was attached with a silk thread, in order to make clear their original positions even when they were carried afar by the ant. They were always replaced by another new ones as soon as dragged off. Observations were made as to the species and the nest of the ant by which the bait was found and transported. Also every event occurred during the transportation was recorded in detail. The investigation was conducted during 8-10 o'clock a.m. every day from Aug. 3 to 26,1956. The records thus obtained were put in order on a sheet of section paper per species (Figs. 2,4 and 5) and the foraging range of each nest population, its size, form and distribution, as well as its intra-and interspecific relations were investigated. Also the social order among the species concerned could be elucidated through the observation of their behaviour during forage and bait transportation. The results can be summarized as follows : 1) Habitat segregation and territoriality can be observed, as a rule, among nest populations of the same species (Fig. 2,4 and 5). Such relations, however, could not be confirmed, as a rule, between populations of different species, although there can be admitted some tendency towards such a segregation between A and T, A and F and C and A. 2) Foraging distance is greatest in F, next to it in C and much less in A and T, the last mentioned two being nearly equal to each other in the range of their foraging. (Fig. 3). 3) Social order among the species concluded from the observation of the behaviour at the time when they met with one another is A=T>C>F. While the ratio of the total number of the baits carried away by each species is C>T>F>A. However, when the dimension of the ants is taken into consideration, it comes to be efficiently T>F>C>A. Possibly this is the practical scale of the population prosperity among them.
著者
角谷 拓 須田 真一 鷲谷 いづみ
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.187-192, 2010-07-31 (Released:2017-04-21)
参考文献数
22
被引用文献数
5

類似の環境変化のもとでも種の絶滅リスクはその生態的特性に応じて異なる。種間の絶滅リスクの差異の生態的要因を解明するための統計モデルによる分析手法が発展しつつある。本稿では、日本産トンボ目の種ごとの絶滅リスク評価、および絶滅リスクに及ぼす生態的特性の効果を分析した研究を紹介する。このような種間比較アプローチは、種の絶滅リスクに大きな効果を持つ人為要因の特定に有効である。
著者
福森 香代子 奥田 昇
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.113-123, 2013-03-30 (Released:2017-04-28)
参考文献数
60
被引用文献数
3

生物代謝のサイズスケーリング則は、生物学における最も普遍的な規則の一つである。近年、個体の代謝を生態系レベルにスケールアップして生態系の構造と機能の関係を理解する試みが注目されている。本稿では、スケーリング則を用いた生態系代謝に関する理論的枠組みと実証研究を紹介する。特に、生態系代謝を決定する主要因とみなされている生物群集の体サイズ分布が生態系代謝に及ぼす影響を検証する我々の実験的研究の概要を紹介するとともに、その実験結果から見えてきた新たな理論の展開について考察する。最後に、生物代謝をマクロ生態学の視点から理解しようと試みる「生態学の代謝理論」の将来展望について述べる。
著者
香坂 玲
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.361-367, 2010-11-30 (Released:2017-04-21)
参考文献数
25
被引用文献数
1

近年、企業活動における生物多様性との関わりのなかで、「リスク」という用語がキーワードとなりつつある。生態リスクは、健康や開発といった領域ごとに、生態毒性学や保全生態学などから派生する形で議論されてきた。本稿では、「リスク・コミュニケーションと企業活動」に関連する文献のレビューを行ない、論点を提示する。まず、養殖、鉱業、遺伝子組換え体(Living Modified Organism;以下LMOs)など操業領域ごとの議論を概観し、その操業領域ごとの議論から、企業活動とリスク・コミュニケーションの方法論やプロセスについての議論にまで敷衍する。リスクを巡る議論とその評価は、科学者主導のものではあるが、科学者、企業、地域住民にとって極めて倫理的な側面も含まれていることを、レビューを通じて提示する。次に具体事例として経団連のアンケート調査結果について報告を行なう。全体を通じてリスクに関わる概念の整理を行なった上で、生態学の立場から企業活動に対してどのように提言を行なっていくことが効果的なのか、実践的な課題である科学-政策インターフェースを視野に入れて、論点の整理を行なう。
著者
前川 光司 米田 政明 富樫 洋
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.103-108, 1980-06-30

The age composition of 362 red foxes, Vulpes vulpes shrencki KISHIDA, which were collected in eastern Hokkaido during the autumn and winter of 1970-1973,was determined by examination of the annual layers of canine tooth cementum and the fusion of the cranial sutures. The average percentage of individuals younger than 1 year old was 67% during the three-year study period. Some of the red foxes survived longcr in eastern Hokkaido than in other districts. The survivorship curve was estimated for the population surveyed.
著者
金子 之史
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.107-114, 1976-06-30

Reproduction of Microtus montebelli inhabiting cultivated lands was studied bi-monthly during the period from May, 1971 to March, 1972. The population was characterized by two main breeding seasons, in spring and fall, with sporadic breeding during winter. The average embryosize per pregnant female, based on 40 specimens captured during one year, was 5.1. The largest mean embryo-size appeared in September. The pattern of change in the male breeding rate and mean testis length showed similarities to that in female breeding rate, pregnancy rate and mean embryo-size. From the comparison of the breeding season in Kyoto with that in other localities, it is suggested that high temperature exerted a restraining influence on the breeding of the vole in summer. The seasonal change of embryo-size in Kyoto differed from that in Iwate. The reasons for the difference are discussed.
著者
福井 眞 荒木 希和子
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.147-159, 2017 (Released:2017-08-03)
参考文献数
45
被引用文献数
3

種子植物にはクローン成長で親ラメットの近隣に娘ラメットを生産することで、遺伝的に同一な株の集合が個体となるクローナル植物がある。多くの陸上植物は固着性であり、一度定着したラメットはその場所から移動できないため、クローン成長によるクローンサイズの拡大に伴い、同一クローン内のラメットでも時間空間的な環境変動を経験する。このようなクローン成長に対し、種子繁殖は遠方への分散で環境変動のリスクを回避することができる。繁殖戦略の違いは分散戦略の違いと、遺伝組成の相違の観点から議論されてきた。成育地での撹乱は個体の死亡に大きく影響するが、個体の成育環境への適合性を前提として撹乱前後の成育環境の変化に注目した分散戦略の進化はこれまで考えられてはこなかった。本稿では、成育地への撹乱はそこにいる生物個体の死亡に直接影響するというよりも、成育地の土壌水分や光強度といった性質の変化を通して間接的に影響するものとして、成育環境の時空間変動を表現した空間明示型の個体ベースモデルによってシミュレーションを行った。時空間的に変動する成育環境において、クローン成長のみの繁殖は不適であった。しかし、少ない機会で種子繁殖による遺伝的多様性を保ちつつ、旺盛にクローン成長を行う戦略がこのような環境で有効性を発揮することが示された。また、自然界でクローン成長を行っている植物は、このような時空間的な環境の違いに応じた繁殖をおこなっているかをクローナル植物の野外データを用いて検証した。野外個体群内の個体の位置と遺伝子型を調べ、ペア相関関数によって空間的遺伝構造を種間で比較した。さらに、シミュレーションにおいても同様のデータの取り扱いが可能であるため、自然界で見られる空間的遺伝構造を再現するようさまざまな変動環境下でシミュレーションを行った。その結果、スズランの野外個体群のデータは、成育環境との適合性を考慮したうえで、インパクトの小さい環境変動が高頻度で起きているシミュレーションの空間的遺伝構造パターンが類似し、このような環境変動が個体群構造に影響していることが示唆された。
著者
小路 晋作 伊藤 浩二 日鷹 一雅 中村 浩二
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.279-290, 2015-11-30 (Released:2017-05-23)
参考文献数
65
被引用文献数
3

水稲の省力型農法である「不耕起V溝直播栽培」(以降、V溝直播と略す)では、冬期にいったん給水し、代かきを行った後、播種期前に落水して圃場を乾燥させる。イネの出芽後(石川県珠洲市では6月中旬以降)から収穫直前まで湛水し、夏期の落水処理(中干し)を行わない。また、苗箱施用殺虫剤を使用しない。このようなV溝直播の管理方式は、水田の生物多様性に慣行の移植栽培とは異なる影響を及ぼす可能性がある。本稿では、石川県珠洲市のV溝直播と移植栽培の水田において、水生コウチュウ・カメムシ類、水田雑草、稲株上の節足動物の群集を比較し、以下の結果を得た:(1)V溝直播では6月中旬以降に繁殖する水生コウチュウ・カメムシ類の密度が高かった。この原因として、湛水期間が昆虫の繁殖期や移入期と合致すること、さらに苗箱施用殺虫剤が使用されないことが考えられた。(2)V溝直播では夏に広く安定した水域があり、そこにミズオオバコ等の希少な水生植物が生育し、有効な保全場所となった。(3)両農法の生物群集は、調査対象群のすべてにおいて大きく異なり、両農法の混在により生じる環境の異質性が、水田の動植物のベータ多様性を高める可能性が示唆された。一方、V溝直播には以下の影響も認められた:(1)4月から6月中旬にかけて落水するため、この時期に水中で繁殖する種群には不適である。(2)初期防除が行われないため、一部の害虫(イネミズゾウムシ、ツマグロヨコバイ)の密度が増加した。本調査地におけるV溝直播水田では、慣行の移植栽培と同様に、8月中旬に殺虫剤散布が2回行われており、生物多様性への悪影響が懸念される。本調査の結果は、一地域に二つの農法が混在し、それぞれに異なる生物群集が成立することにより、今後の水田動植物の多様性が保全される可能性を示している。
著者
米倉 竜次 河村 功一 西川 潮
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.153-158, 2009-07-31
被引用文献数
2

外来種の小進化に関する研究は分子遺伝レベルでの解析と表現型レベルでの解析を中心に発展してきた。しかし、分子遺伝マーカーでみられる遺伝変異はおもに遺伝的浮動による影響のみを反映しているのに対し、表現型レベルでの変異には遺伝的浮動に加え自然選択による影響も大きく関与していると考えられる。したがって、分子遺伝レベル、もしくは、表現型レベルのみの解析では、定着成功や侵略性に影響する外来種の性質が遺伝的浮動により影響されているのか、もしくは、自然選択により影響されるのかを区別することは難しい。しかし、外来種の表現型の小進化に対して遺伝的浮動と自然選択のどちらが相対的に重要であるのかを把握しなければ、導入された局所環境への外来種の定着成功や侵略性が小進化によりどう変化(増加、それとも減少)するのかを議論することは困難であろう。この総説では、この問題を解決する方法としてF_<ST>-Q_<ST>法を概観するとともに、外来種の管理対策へのその適用についても考えた。
著者
伊藤 信一 鈴木 智和 小南 陽亮
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.123-131, 2011-07-30 (Released:2017-04-21)
参考文献数
9
被引用文献数
1

陸生のカニ(陸ガニ)が生息地の植物に対して果実採食と種子散布という作用を及ぼすことは熱帯・亜熱帯において数例知られているが、日本のような温帯では報告例が見当たらない。そこで、本研究では、陸ガニによる果実の選好性と採食・運搬行動を明らかにし、その結果から陸ガニが温帯海岸林において種子散布者や種子食者として作用するかを検討した。調査は浜松市にある海岸林とその周辺の竹林で行い、日本に広く分布するアカテガニ、ベンケイガニ、クロベンケイガニを対象に、果実の選好性、種子の取り扱い、果実の採食場所を比較した。飼育下でも野外の生息地においても、3種の陸ガニは多様な果実を好む傾向がみられた。アカテガニでは採食時に種子を破損する頻度が他の2種よりも低く、海岸林の多様な植生で活動し、採食した果実の種子を巣穴から離れた場所にも落としていた。一方で、クロベンケイガニでは、種子を破損する割合が高く、生育可能な植物が限られる湿った環境で主に活動しており、巣穴近くに果実を運んで採食する傾向が強かった。ベンケイガニでも種子を破損する頻度が高かったが、活動する植生は多様であった。これらの結果から、種子散布者となる可能性はアカテガニ、ベンケイガニ、クロベンケイガニの順に高く、種子食者となる可能性はその逆であると考えられた。すなわち、温帯の海岸林においても陸ガニは種子散布者または種子食者となっている可能性が高く、陸ガニの種によってその作用は異なることが示唆された。
著者
高槻 成紀 鹿股 幸喜 鈴木 和男
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.435-439, 1981-12-30 (Released:2017-04-12)
被引用文献数
1

Defecation rates, dry weights and numbers of pellets of Sika deer (Cervus nippon) and Japanese serow (Capricornis crispus) were determined at the Sendai Yagiyama Zoological Park for one week each in April, August, October of 1979 and in February or March of 1980. Defecation rates were greater in the Sika deer (11-13 times/day) than in the Japanese serow (2.2-4.6 times/day), while the fecal amounts per defecation were smaller in the deer (c. 19-23 gr, 81-95 pellets/def.) than in the serow (c. 37-64 gr, 200-360 pellets/def.). The daily amounts of defecation were rather greater in the deer (c. 210-280 gr, 880-1200 pellets/day) than in the serow (c. 130-210 gr, 810-980 pellets/day). Slight differences were found in the seasonal changes of the defecation rates and daily fecal amounts for the deer, however for the serow these rate and amount increased in the fall.
著者
石庭 寛子 十川 和博 安元 研一 星 信彦 関島 恒夫
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.69-79, 2016 (Released:2016-06-01)
参考文献数
66
被引用文献数
1

本稿では、化学物質汚染による野生個体群への影響を明らかにする1 つのアプローチとして、生物で普遍的に起きている「適応」に焦点をあてた評価例を紹介する。ダイオキシン類による汚染によってアカネズミ個体群内に、ダイオキシン抵抗性個体が増加するような集団構造の変化が起きているか否かを明らかにするため、ダイオキシン感受性の違いを識別する遺伝子マーカーを開発し、野外集団への適用を試みた。遺伝子マーカーとしてダイオキシン類の作用機序に深く関わるダイオキシン受容体(AhR)に着目し、野生集団におけるAhR 遺伝子の配列解析を行ったところ、アカネズミのAhR にはタンパク質の機能に差をもたらす変異、グルタミン(Q)、アルギニン(R)が799 番目のアミノ酸に存在していた。さらに生体での機能を調べるため、各遺伝子型を持つアカネズミへダイオキシン投与を行ったところ、Q を持つ個体はダイオキシンに対する反応が高く、R を持つ個体は低かった。このことから、このAhR のアミノ酸変異は、アカネズミ個体群においてダイオキシンに対する抵抗性保持個体を検出する遺伝子マーカーとして有用であると示唆された。ダイオキシン汚染地域のアカネズミ個体群において、確立された遺伝子マーカーのアリル頻度を調べたところ、非汚染地域と比較してアリル頻度に差は見られなかった。ダイオキシン類の暴露下で、Q タイプは有利性が低下し、R タイプは有利性が相対的に増加するが、その選択係数は非常に低く、世代数の経過も少ないためにアリル頻度の変化は見られなかったと考えられる。