著者
橘 春菜
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.469-479, 2007-12-30

本研究の目的は,幼児期後期から児童期中期の子どもを対象に描画課題を実施し,他者に情報を伝える意図をもつことで対象物の非視覚的性質の表現をどのように調整するか,その発達的変化を検討することであった。具体的には,幼児22名,小学校2年生20名,4年生21名を対象に次の課題を実施した。まず,対象児に外観が同じ2つの対象物の重さを区別する体験をさせた後に,それらの対象物の絵を自由に描かせた(自由課題)。続いて対象物の重さの違いを絵で他者に伝える意図を明示して,再度対象物の絵を描かせた(伝達課題)。分析では,対象児の描画と言語報告に基づき,その表現方略を年齢間で比較した。その結果,自由課題では表現方略に年齢差がみられなかった。伝達課題では,幼児では言葉による説明を付加しながら物語的に重さを伝える「継時付与方略」,2年生では対象物の大きさの違いのみで重さを伝える「同時単独方略」,4年生では媒介物(例:シーソー)等の非実在物を同時に提示することで重さを比較させる「同時付与方略」が多いこと等が示された。これらの結果より,発達にともない他者にわかりやすく意図を伝える表現における質的な変化が示唆された。
著者
樽木 靖夫
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.130-137, 1992-06-30
被引用文献数
1

Effects of positive and negative feedback on students' self-evaluation were investigated. Junior high school students were administered self-esteem scale, the Guess-Who-Test (class members nominations) and rating scales on self-confidence and self-evaluation relating to group behavior items. Then, class teachers gave each student positive feedback based on the peer ratings. The main results were as follows : (1) Though on the whole positive feedback had raising effects on self-confidence and self-evaluation, it was found larger for low self-esteem students than for high self-esteem students ; (2) Additional negative feedback only to high self-esteem students did not lower their self-confidence and self-evaluation but roused their willingness to improve their behavior when they were convinced of the truth of negative feedback. Based on the above results, effects of positive and negative feedback on students' self-evaluation were discussed.
著者
針生 悦子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.349-357, 1993-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
9

According to Markman and Wachtel (1988), children assume that words stand for mutually exclusive object categories, and so each object must have only one category label. This study examined whether children suspended their use of this assumption and interpreted a given novel label as referring to a familiar object; that is, an object whose name they already knew in their mother tongue (Japanese), when they were informed that the label came from a foreign language (English). The result showed that five-year-olds accepted the novel English label for a familiar object, while the three-year-olds and four-year-olds were not willing to accept it. To explain such result, the following hypotheses were considered. Children younger than 5 used mutual exclusivity to interpret a novel English label:(1) because the limitation of their capacity (Case, 1972) did not allow them to suspend the use of mutual exclusivity effectively, even if they knew English;(2) simply because only a few of them knew English. As a result, four-year-olds who knew English were found to suspend their use of mutual exclusivity when interpreting English labels. The second hypothesis was thus supported.
著者
松岡 弥玲 加藤 美和 神戸 美香 澤本 陽子 菅野 真智子 詫間 里嘉子 野瀬 早織 森 ゆき絵
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.522-533, 2006-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
42

本研究では, 成人期を対象に, 複数の他者 (子ども, 配偶者, 両親, 友人, 職場の人) から望まれている自己 (他者視点の理想自己) と現実自己のズレが自尊感情に及ぼす影響について, 性, 性役割観, 世代, 就業形態との関連から検討した。調査参加者は就学前もしくは大学生の子どもを持つ成人期 (子育て期, 巣立ち期) の男女計404名。自尊感情を基準変数, 5つの他者視点の理想-現実自己のズレを説明変数とした重回帰分析を行った結果, 際立った性差がみられ, 全体的に男性は職場のみ, 女性は複数の他者 (子ども, 友人, 両親のうち2者) の視点からの理想-現実自己のズレが自尊感情に影響していた。また, 性役割観の違いによってどの他者視点から影響を受けるのかが異なり, 子育て期の男性では伝統主義の場合は職場が影響していたが, 平等主義群では子どもが影響していた。女性においては性役割観の違いが両親と友人の影響の差として現れ, 世代差は子どもと職場の影響の違いにみられた。就業形態別では, 専業主婦は両親のみが影響していた。以上のことから他者視点の理想-現実自己のズレが自尊感情に及ぼす影響は性, 性役割観, 世代, 就業形態によって異なることが示された。
著者
林 昭志 竹内 謙彰
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.129-137, 1994-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
12
被引用文献数
1

In this study, two experiments were conducted in order to reexamine Borke's task, based on the degeneration theory. The aim of Experiment 1 was to clarify the relationship among the three mountains task, Borke's turntable task and some subordinate abilities tasks. The result of this experiment suggested that Borke's turntable task was at the same level as the topological abilities tasks, but it differed from the three mountains task. In Experiment 2, which makes the turntable task easy, the object familiarity or the marker-object nearness were examined. Though all 19 children, aged 4-5, could solve the “near” tasks, some made errors on the “distant” task. The result of these two experiments proved that Borke's task did not measure the true perspective-taking ability.
著者
黒田 祐二 有年 恵一 桜井 茂男
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.24-32, 2004-03-31 (Released:2013-02-19)
参考文献数
23
被引用文献数
7 3

本研究の目的は, 大学生の親友関係における関係性高揚と精神的健康との関係について検討すること, 及び, その関係に相互協調的-相互独立的自己観が及ぼす影響について検討することであった。結果から, 日本の大学生において, 自分たちの親友関係を他の親友関係より良いものであると評価する「積極的関係性高揚」と, 悪くはないと評価する「消極的関係性高揚」は, 相対的幸福感・自尊感情・充実感と正の関係を示し, 抑うつと負の関係を示すことが見出された。さらに, この関係性高揚と精神的健康との関係は, 相互協調的自己観ないし相互独立的自己観が自己に内在化されている程度によって異なることが示された。すなわち, 相互協調的自己観の低い者より高い者において, そして, 相互独立的自己観の高い者より低い者において, 関係性高揚 (積極的関係性高揚及び消極的関係性高揚) と精神的健康との関係が強くなることが示された。
著者
藤野 京子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.26-37, 2023-03-30 (Released:2023-03-25)
参考文献数
36

自身の行為が謝罪に値するかもしれない状況下,どのようなコーピング方略を用い,それらが謝罪するかどうかにどう影響するか,さらに,ソーシャルサポートの有無やエゴ・レジリエンシー(ER)が,それらにどのような影響を及ぼすかを検討するため,20代(N=834)を対象にウェブ調査を実施した。研究協力者は自身のERについて自己評定し,さらに人に暴言を吐いたというシナリオを提示され,自身がその人だと想定して,いかにその状況で反応するかを回答するよう教示された。研究協力者は周りからサポートを提供される支援群,提供されない静観群にランダムに割り振られた。 ソーシャルサポートの有無によって,とられるコーピング方略の多寡や謝罪の程度に違いが見られた。また,コーピング方略のうち,計画立案方略は謝罪を促進させ,放棄・諦め方略は抑止させることが明らかになった。加えて,支援群では,放棄・諦め方略が少なくなり,謝罪が促進されるのに対して,静観群では,計画立案方略が少なくなり,謝罪が抑止される等の結果が得られた。加えて,ERは肯定的解釈に正の,放棄・諦め方略に負の影響を与えることが示された。
著者
奈田 哲也
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.1-12, 2023-03-30 (Released:2023-03-25)
参考文献数
23

本研究の目的は,奈田他(2012)を踏まえ,ネガティブ感情を含め,感情が,如何に個の知識獲得を促すのかを検討することであった。そのため,実験参加者(小学3年生)が示した考えを前半は否定するものの,後半は賞賛していくNP条件,その逆のPN条件,終始賞賛するPP条件というように,感情の生起のさせ方が異なる3条件を設定し,奈田他(2012)と同様の手続きで実験を行った。その結果,PP条件,NP条件,PN条件の順で,知識獲得が促されやすくなることが判明した。加えて,やりとりにおける思考上の積極性を示す指標に関しても,PP条件が最も高く,やりとりを通した知識獲得においては,相手の考えを賞賛することで,個の中に自他の考えに対する柔軟な姿勢を作っていくことが重要であることが判明した。ただし,ネガティブ感情にも,自身の考えを振り返り,見直させる働きがあり,NP条件のように,こういった働きを強化していくことで,知識獲得をある程度は促すことができることも判明し,ポジティブ感情による知識獲得の促しとは異なった過程で,知識獲得が促される過程があることも明らかになった。
著者
金綱 祐香 濱口 佳和
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.87-102, 2019-06-30 (Released:2019-12-14)
参考文献数
43
被引用文献数
5 6

中学生のいじめ問題は深刻であり,学校現場における道徳的判断力の育成が求められている。本研究では,中学生に攻撃動機や形態の異なる四つの攻撃場面を提示し,場面の違いによって,加害者の悪さの程度の判断及びその判断理由がどのように異なるかをTurielの社会的領域理論に基づいて検討した。また,そうした善悪判断に影響を与えると考えられる個人要因・環境要因を取り上げ,善悪判断への影響を調査した。はじめに,中学生410名への予備調査をもとに判断理由尺度を作成し,その後,中学生1,022名を対象に,作成した判断理由尺度を用いて本調査を実施した。その結果,仕返しを動機とした攻撃は,慣習領域や個人領域の理由から加害行為が許容されやすいこと,言語的攻撃よりも関係性攻撃の方が道徳領域の理由が多く用いられ,より悪いと判断されることが明らかとなった。また,個人要因では,特に女子における罪悪感特性の高さが,環境要因では,教師の自信のある客観的な態度が,望ましい善悪判断を促進することが明らかとなった。以上の結果から,いじめ抑止に向けた指導や学級運営について議論された。
著者
中西 良文
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.127-138, 2004-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
22
被引用文献数
17 1

本研究では, 方略帰属が方略を介して動機づけに影響を与えるという過程を想定し, 成功/失敗の方略帰属が自己効力感にどのような変化をもたらすのか, さらに, そのような変化はどのような方略を介してもたらされるのかについて検討した。被験者は高校生80名であった。そのうち60名を対象に面接を行い, 自ら考えさせる形で失敗の方略帰属 (SAF) もしくは成功の方略帰属 (SAS) を促し, 面接前後の自己効力感の変化, および, 面接での方略帰属を通じて思いつく「今後用いようとする方略」の特徴について検討した。その結果, 面接後においてSAS群の自己効力感がSAF群よりも有意に上昇していることが見いだされた。また, 今後用いようとする方略について質的分析を行った結果, SAS群はSAF群に比べ, 直接的に学習に関わるような方略を挙げる傾向があることが見いだされた。
著者
杉本 明子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.347-361, 2022-12-30 (Released:2022-12-30)
参考文献数
57

本研究は,小学校教員に対する質問紙調査により,(1)日本語のディスレクシア児の書字に関する特徴的な認知障害を包括的に検討すること,(2)それらの認知障害を測定する尺度を作成し,その信頼性・妥当性を検討すること,(3)日本語のディスレクシアの書字障害にはどのようなサブタイプが存在するのかを明らかにすること,(4)各々のサブタイプは読み書き能力とどのように関係しているのかを検討することを目的とした。書字特性の因子分析の結果から,日本語のディスレクシア児では書字に関して4つの主要な認知障害――心的辞書障害,視覚性障害,音韻性障害,書字運動障害――が存在すること,および,これらの認知障害を測定する「ディスレクシア児の書字障害尺度」(WDS-DC)は,信頼性・妥当性が高いことが示唆された。さらに,クラスタ分析により発達性書字障害のサブタイプを分析したところ,重度多重障害群,中度多重障害群,視覚処理障害群が存在することが示唆され,重度多重障害群と中度多重障害群は全ての文字種の読み書き能力において,視覚処理障害群,ボーダー群,障害なし群より低いことが示された。
著者
柴 里実
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.231-245, 2022-09-30 (Released:2022-10-20)
参考文献数
30
被引用文献数
2

問題解決の失敗後に自分の思考過程を振り返り,次の問題解決に役立つ知識を獲得することは,効果的に学習を進めていくために必要である。一方,先行研究では,振り返りを通して自分の間違いから適切に学ぶことができない学習者の存在も指摘されている。そこで本研究では,問題解決の失敗後の振り返りにおいて,学習者がどのような知識を学んでいるのかという振り返りの質を検討するために,メタ認知的方略「教訓帰納」に焦点を当て,学習者が引き出した教訓の質を評価した。教訓の質を評価するために新たな評価基準を作成し,中学2年生を対象に,文章題を題材とした教訓帰納課題と質問紙調査を実施した。評価された教訓の質得点と数学の学業成績との関連の検討と,数学教師による評価結果との比較検討から,本研究で作成した評価基準が教訓の質を捉えるために有用といえることが示された。また,参加者が引き出した教訓の質の評価から,自分の間違いを的確に分析することや,問題解決の転移に役立つ汎用的な知識を抽出することが困難であるという実態が示された。さらに,教訓の質と学習者特性との関連を検討した結果,意味理解志向や失敗活用志向などの深い認知処理を重視する学習観が,質の高い教訓の引き出しにかかわっている可能性が示唆された。
著者
遠藤 久美 橋本 宰
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.86-94, 1998-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
27
被引用文献数
3 2

This study aimed at clarifying the relationship between sex-role identity and self-actualization in terms of mental health. Subjects consisted of 86 male and 128 female undergraduate students, and they answered Self Actualization Scale (SEAS) and Bern Sex Role Inventory (BSRI). Our results suggested that female were more self-actualized than male, and that Androgynous and/or Masculine group were more self-actualized than Feminine and/or Undifferentiated group. The results of multiple regression analyses indicated that high masculinity was conductive and high femininity was detrimental to self-actualization. It was also suggested that masculinity was necessary for male to accept themselves and their weaknesses, and that femininity gave a positive effect on male only in company with masculinity. In contrast, for female, masculinity would provide some difficulties to accept themselves. Moreover, female would be required efforts to integrate the demands out of social values and sex-role that they possess.
著者
内田 伸子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.327-336, 1989-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
27

The purpose of this study was to examine the role of “deficit-complement” schema played in a semantic integration of narrative sequences and the development of the same schema. Eighty-four 4-year-old and 5-year-old children were divided into three homogeneous groups, and assigned to one of three conditions: a non-restricted information with an undetermined deficit, a restricted information, or a non-information. The children were shown an abstract drawing story and were asked to describe each picture and perform a free-recall of the story and comprehension tasks. The results showed that the hypothesis,“the deficit information facilitating semantic integration of narrative sequences” was supported. It also showed that for the 4 year-old, influenced by the perceptual feature of each picture, in order to reconstruct interpretation the restricted infomation was difficult to utilize, while the 5 year-old could utilize the information and construct coherent interpretation. As a result, qualitative differences of cognitive basis for story production between the two age groups were shown.
著者
生田目 光 沢宮 容子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.131-144, 2023-06-30 (Released:2023-06-14)
参考文献数
61

本研究ではポジティブボディイメージの一種であるボディ・アプリシエーションを高める心理教育的支援の開発に向けた基礎的な研究を行うこととした。具体的には,ボディ・アプリシエーションを促進すると考えられる感謝,セルフ・コンパッションおよびメディアの影響を扱い,適応的調和食行動や人生満足度への影響を含めて,統合的支援モデルを検討することを目的とした。264名の大学生を対象に構造方程式モデリングをおこなった結果,仮説モデルがおおむね支持された。感謝はセルフ・コンパッションを促進し,セルフ・コンパッションはボディ・アプリシエーションを促進した。また,感謝はボディ・アプリシエーションを直接的にも促進していた。メディアの影響は,ボディ・アプリシエーションを促進しなかったが,適応的調和食行動を促進した。さらに,ボディ・アプリシエーションは適応的調和食行動と人生満足度を促進していた。これらの結果は,ボディ・アプリシエーションの発達と介入ターゲットの理解の促進に貢献しうる。
著者
直原 康光 安藤 智子 菅原 ますみ
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.117-130, 2023-06-30 (Released:2023-06-14)
参考文献数
66

本研究の目的は,第1に,離婚後の父母コペアレンティングと子どもの適応の相互関係,第2に,子どもの適応のうち「外在化問題行動」,「内在化問題行動」,「向社会的な行動」の相互関係について,交差遅延効果モデルを用いて,経時的な相互関係について検討することであった。離婚して2年未満で2―17歳の子どもと同居する母親500名に,3か月後,6か月後に追跡調査を行った。3時点のデータを用いて,交差遅延効果モデルによる分析を行った結果,「葛藤的なコペアレンティング」は,「外在化問題行動」に正の影響を及ぼし,「外在化問題行動」は「内在化問題行動」に正の影響を及ぼし,「内在化問題行動」は「向社会的な行動」に負の影響を及ぼすことが明らかになった。また,「内在化問題行動」と「向社会的な行動」の間には,互いに負の影響関係が認められた。変数相互間の関係性については,発達カスケードを踏まえて考察を行った。本研究の結果を踏まえた介入や支援への示唆として,離婚後の「葛藤的なコペアレンティング」を抑制することの重要性および子どもの「外在化問題行動」に着目することの重要性が示された。
著者
大平 勝馬
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.34-36,57, 1969-10-15 (Released:2013-02-19)
被引用文献数
1 1

The present paper is a report on the study of the correlation between the degree of physical maturation, determined by the planimetric method of carpal bones, and personal character which is appraised by using Kraepelin numeral addition test, adjustment test and moral judgment test. The research and experiment were made during the period from May, 1952 to October, 1952. The number of subjects is 102-from 4th grade to 6th grade of elementary school children.The abstract of the result is as follows:1) the author found that there is correlation coefficient. 311 between the degree of physical maturation (indicated by growth quotient=G. Q) and the result of Kraepelin numeral addition test (indicated by Standard Score) and the γ is significant at 1 percent level.2) The γ between physical maturation degree and the result of adjustment test is. 195 and the γ is insignificant at the 5 percent level. But there is correlation ratio. 423 and the difference between r and n is significant at the 5 percent level.3) The result of moral judgment test indicates γ. 228 orη. 505 between the result and the physical maturation degree; then the γ and the difference between γ and η are respectively significant at the 5 percent level.4) There are deeper correlations between the result of three tests of personal character which were used in this study and the intelligence than the correlation between the test results and bodily maturation degree. Furthermore, the author studied last year that there is the low correlation between the physical maturation degree and intelligence. So if we recognize the common factor of intelligence between personal character and physical maturation degree, and remove the common intelligence factor, there is no correlation between personal character and bodily maturation degree. However if we do not consider about the intelligence factor, the author may conclude that there is actually a low but considarable correlation between personal character and physical maturation degree.
著者
藤原 健志 村上 達也
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.311-321, 2020-09-30 (Released:2021-02-18)
参考文献数
45
被引用文献数
5 6

本研究の目的は,小学生を対象として,抑うつに関連する認知と抑うつ症状,そして特性感謝の関連について,短期縦断デザインを用いて検討することであった。小学4年生から6年生598名に対し,対人的感謝と抑うつスキーマ,そして抑うつ症状に関する質問紙調査を2回行った。構造方程式モデリングを用い,交差遅延モデルについて,学年間の多母集団分析を行った。その結果,小学4年生においては抑うつスキーマよりも特性感謝の方がその後の抑うつ症状と強く関連していた。一方小学6年生になると特性感謝よりも抑うつスキーマの方が,その後の抑うつ症状を強く予測することが明らかとなった。抑うつ症状に与えるポジティブ要因とネガティブ要因の影響について考察された。また,抑うつスキーマと抑うつ症状の関連では,抑うつ症状がその後の抑うつスキーマを高めることが明らかとなり,児童期における抑うつ症状形成のメカニズムについても考察された。
著者
生田目 光 八島 禎宏 沢宮 容子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.205-220, 2022-06-30 (Released:2022-07-12)
参考文献数
74
被引用文献数
4

本研究の目的は,わが国における児童を対象に,ボディイメージの実態を調査し,ポジティブボディイメージを育成するプログラムを開発し,効果を検証することである。研究1では,児童のボディイメージに関する基礎的な検討を行った。まず,小学3年生から小学6年生の児童232名を対象として質問紙調査を行ったところ,わが国においても,ボディイメージの問題は児童期から生じていること,およびその深刻さが示され,早期介入が必要であると考えられた。研究2では,児童を対象としたポジティブボディイメージを育成する全3回の1次予防プログラムを開発し効果を検証した。小学3年生から小学6年生の児童161名を対象に,学級単位で有効性を検討した結果,プログラムによってポジティブボディイメージが高まり,その効果は3ヵ月間維持されることが示された。