著者
宮下 一博 小林 利宣
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.297-305, 1981-12-30

本研究では,疎外感尺度を作成し,青年期における疎外感の発達的変化および疎外感と適応との関係を検討した。主な結果は,次の通りである。1.疎外感は青年期において発達的に減少する。2.疎外感は自我同一性(古沢の尺度による)と負の有意な相関がある。3.問題児は,問題を持たない者に比べ有意に高い疎外感を示す。しかし,次のような問題や限界も考えられる。第1に,疎外感の発達的変化は,横断的方法により分析されたが,これは,対象の選択の仕方により,結果が若干異なる可能性もある。今後さらに,縦断的研究によって,この点を検討することが必要であろう。第2に,疎外感と適応との関連を分析する場合に,疎外感の強弱という量的側面からの接近のみでは,十分でないことが考えられる。たとえば,疎外感をどうとらえるか(受容できるもの,或は拒絶すべきものと感じるなど)により,適応の様相も異なってくると想定される。このような観点からは,疎外感は問題行動などのネガティヴな心理側面と密接な関わりを持つと同時に,独創性や創造性や創造性などの人問の積極的な行動特性との関連において,ポジティヴな側面から問題にすることも可能であろう。
著者
宮下 一博
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.214-218, 1991-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
8
被引用文献数
2

The purposes of the present study were to explore the possibility of typing need for uniqueness proposed by Snyder and Fromkin, and to examine the characteristics of these types. New items measuring need for uniqueness, the Japanese version of the need for uniqueness scale developed by Snyder and Fromkin, and the mental set scale for creativity by Mishima et al. were administered to 224 university students. By means of various statistical analyses, a new reliable and valid scale for measuring need for uniqueness (Uniqueness Scale) was constructed. In accordance with this scale, need for uniqueness was divided into four types: (a) going my way (calm) type; (b) repressed type; (c) self-exhibited type, and (d) self-centered type. Among these types, going my way and self-exhibited types were seen showing higher scores in mental set scale for creativity.
著者
徳舛 克幸
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.34-47, 2007-03-30
被引用文献数
2

本研究では,若手小学校教師(教師歴1年目〜3年副の教師の実践共同体への参加の過程を正統的周辺参加(Lave & Wenger,1991)概念を主な分析の視点として検討した。半構造化面接によって調査を実施し,トランスクリプションを作成した。そして,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(木下,1999,2003)を分析方法として用い,若手小学校教師の認知に基づく実践共同体への参加(学習)過程モデルを作成した。若手小学校教師は,教師として身につけるべきスキルや知識があると語る一方で,他の教師や児童,保護者,地域との相互交渉によって教師としての学習がなされると考えていることがわかった。そのため,「教師になる」とは,個人主義的に達成されるものではなく,社会的相互交渉によって社会的に達成されることが示唆された。さらに,学習の概念とは,従来の個人主義的な達成に加え,社会的達成物であることも示された。
著者
田村 綾菜
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.13-23, 2009-03-30
被引用文献数
4

本研究は,加害者の謝罪の言葉と表情が児童の謝罪認知(怒りの変化および罪悪感の認知)に及ぼす影響について,その発達的変化を検討したものである。大学生を対象とする予備調査により表情図の妥当性を確認した後,小学校1,3,5年生(N=346)を対象に質問紙調査を行った。仮想場面における加害者の表情(罪悪感あり顔,罪悪感なし顔)×謝罪の言葉(あり,なし)の4条件を被験者内要因とし,怒りの変化と罪悪感の認知についての回答を求め,その学年差を検討した。その結果,加害者の表情は怒りの変化と罪悪感の認知の両方に影響すること,その影響は3年生以降にみられることが明らかになった。他方,謝罪の言葉は怒りの変化にのみ影響すること,その影響は1年生でもすでにみられることがわかった。これらの結果から,謝罪を識別することが可能となる3年生以降においても,「ごめんね」と言われたら「いいよ」と答えるという言葉のやりとりが強く根づいている可能性が示唆された。
著者
杉澤 武俊
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.150-159, 1999-06-30
被引用文献数
2

日本でなされている教育心理学の研究では, 統計的検定によって有意な結果が得られる確率(検定力)はどのくらいであろうか。本研究では, 1992年から1996年までに発行された『教育心理学研究』に掲載されている論文で用いられている検定について調査し, ある特定の大きさの母集団効果量(小・中・大)が存在するときに, その研究で用いられた大きさの標本によって有意な結果が得られる確率を求めた。その結果, 対象となった論文の60%は中効果量を検出できる確率さえ.8にも満たないことがわかった。実験的方法を用いることが多い認知的側面を扱った研究は, 調査による研究を行うことの多い情緒的側面を扱った研究に比べて, 同一の母集団効果量に対する検定力が低くなっていた。また, 帰無仮説を研究仮説とした場合は, 特に高い検定力が必要であるにもかかわらず, 有意でない結果をもって仮説を支持できるほど検定力が高いとはいえなかった。また, 標本効果量を算出し, Cohen(1992)の効果量の基準の見直しを試みた。一部基準が不適切であるようにも考えられるものがみられたり, 研究領域や研究方法によって異なった基準を用いるべきであることを示唆する結果が得られたが, この点に関しては今後更なる検討が必要である。さらに, 標本効果量と標本の大きさの関係について分析した結果, 研究者は検定力を明確に意識こそしていないが, 効果量の小さいものに対しては標本を大きくして検定力を高めていることが示唆された。検定力は日本ではほとんど問題とされてこなかったが, 統計的検定が分析の中心となっている以上, もっと検定力に目をむけていかなければならない。
著者
佐藤 有耕
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.347-358, 2001-09-30
被引用文献数
1

本研究では, 大学生の自己嫌悪感と自己肯定の間の関連を検討した。目的は, どのような自己肯定のあり方が, 大学生の自己嫌悪感を高めているのかを明らかにすることである。自己嫌悪感49項目, 自尊心48項目, 自愛心56項目から構成された質問紙が, 18才から24才までの大学生ら535名に実施された。その結果明らかにされたことは, 以下の通りである。(1)自己嫌悪感は, 自分を受容的に肯定できるかどうかと関連が強い。(2)自己に対する評価も低く, 自己に対する受容も低いというどちらの次元から見ても自己肯定が低い場合には, 自己嫌悪感が感じられることが多い。(3)しかし, 最も自己嫌悪感を感じることが多くなるのは, 自分を高く評価するという点では自己を肯定している一方で, 受容的な自己肯定ができていない場合である。本研究では, 自己嫌悪感をより多く感じている青年とは, 自分はすばらしいと高く評価していながら, しかし現在の自分に満足できず, まだこのままではたりないと思っている青年であると結論した。
著者
宮下 一博
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.p455-460, 1991-12
被引用文献数
2

the purposes of the present paper were to examine the relations of narcissistic personality to Ss' present recollections concerning their parents' earlier attitudes and home environment. The Narcissistic Personality Inventory (NPI) revised by Miya-shita and Kamiji (1985), and three other questionnaires measuring mother's and father's attitudes together with the home environment were administered to 270 college students. Correlations were performed between NPI scores and the other three measures. The results showed that in case of females, a significant negative correlation was found between narcissism and the emotional acceptance of the mother : such result supported the theory of narcissism. In the case of male subjects a significant positive correlation was found between narcissism and the father's dominating attitude. With such a result, it was suggested that the father could not be neglected in the theory of narcissism.
著者
加藤 司
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.225-234, 2000-06

本研究の目的は, 友人関係を起因としたストレスフルなイベント, すなわち, 対人ストレスイベントに対するコーピングの個人差を測定する対人ストレスコーピング尺度(Interpersonal Stress-Coping Inventory;ISI)を作成し, その信頼性と妥当性を検証することである。因子分析の結果から, ISI(34項目)はポジティブ関係コーピング(16項目), ネガティブ関係コーピング(10項目), 解決先送りコーピング(8項目)の3つの下位尺度から構成されていることがわかった。信頼性に関しては, 内的整合性がα=.79-.87, 再検査法による信頼性係数がγ=.86-.92であった。妥当性に関しては, 内容的妥当性, 及びラザルス式ストレス・コーピング・インベントリー、尾関のストレス反応尺度, 抑うつ傾向を測定するCES-D, 友人関係に関する満足感との比較による構成概念妥当性の検証がなされた。その結果, 妥当性に関して幾つかの課題が残るものの, ISIの信頼性と妥当性を確認することができた。
著者
一柳 智紀
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.373-384, 2009-09-30
被引用文献数
1 2

本研究の目的は,児童の聴くという行為および学習に対する教師のリヴォイシングの影響を明らかにすることである。小学5年生2学級の社会科を対象に,直後再生課題と異なるタイプの問題からなる内容理解テストを行った。結果,話し言葉ならびに板書を伴う教師のリヴォイシングが,児童に発言を自分自身と結びつけて聴く機会を与え,聴くという行為を支援していることが明らかとなった。さらに教師のリヴォイシングの違いが,話し合いの中で1)何を,2)どのように聴くかという,聴くという行為の2つの側面に影響を与え,児童の内容理解の仕方にも影響することが明らかとなった。リヴォイシングにより発言児が主題に沿って位置づけられる学級では,児童が話し合いの流れを捉えて聴いており,授業内容を授業の文脈に沿って統合的に理解していた。一方教師のリヴォイシングが位置づけの機能を持たないもう一方の学級では,リヴォイシングにより個々の発言内容が明確化されており,児童は発言の「著者性」を維持したまま自らの言葉で捉えて発言を聴いていた。テストにおいても後者の学級の児童は授業内容を自らの言葉で積極的に捉え直せるように理解していた。
著者
香川 秀太 茂呂 雄二
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.346-360, 2006-09-30
被引用文献数
1

本研究は,密接に関連する状況間の移動と学習に関する状況論的な諸議論に新たな知見を追加するため,看護学校内学習から周手術期の臨地実習へ移動する看護学生の学習過程を検討した。研究Iでは観察を行い,「校内では,学生は,根拠に基づいて看護することの重要性が実感できず,その学習が希薄になってしまう傾向にあるが,臨地実習に入ると,その重要性をより実感して厳密に実施することを学習する。それはなぜか。」という問いを設定した。研究IIでは,実習期間終了直後の学生に半構造化面接を実施し,修正版グラウンデッドセオリーに基づく分析を行い,この学内と臨地の差異の背景と考えられるものの一つを,【時間の流れ】の相違(異時間性)として概念化した。臨地では,学生の現在の行為が未来の患者の容態変化と繋がっている(共時)上,学生は,患者の変化のつど,継続的に行為を調整していく(通時)が,学内では,学生の現在の行為は看護対象の未来の容態変化ではなく,合格・不合格と繋がっている(共時)上,対象と行為の関係が一時点で終わる(通時)。こうした異時間性が,根拠立ての重要性の実感の差異を説明することが示唆された。
著者
安西 祐一郎 内田 伸子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.323-332, 1981

The purpose of this paper is to identity children's internal process during production of writings. A new procedure was devised to deal with the problem of estimating the internal dynamics of chidren from 8 to 12 years of age. At first, a simple procedural model of discourse production was presented ; then, where and how long pauses were generated during writing was recorded for each child subject. Each child was also interviewed for the introspective report of what he or she thought at each pause.
著者
山森 光陽
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.71-82, 2004-03-31

本研究では,中学校1年生の英語学習に対する学習意欲はどの程度持続するのか,また持続させている生徒とはどのような生徒なのかについて検討を行った。具体的には,中学校1年生の英語学習に対する学習意欲はどの程度持続するものであるのかを生存時間分析を用いて検討し,さらに,学習意欲を持続させている生徒とはどのような生徒なのか,またどのようなことが切っ掛けとなって学習意欲が失われるのかを検討した。その結果,中学校1年生の英語の学習においては,初回の授業では9割以上の生徒が英語の学習に対して高い学習意欲を有していることが確認された。しかし,それを持続させることが出来たのは6割程度の生徒であったことが確認された。また,1年間の中でも,特に2学期において学習意欲が低くなる生徒が顕著に多いことが,本研究の結果明らかになった。さらに,試験で期待通りの成績が得られたかどうかではなく,「もうこれ以上がんばって勉強できない」と感じることの方が,その後の学習意欲の変化に影響を及ぼす可能性のあることが示唆された。さらに,学習意欲が上昇する生徒についても考察を行った。
著者
松岡 弥玲 加藤 美和 神戸 美香 澤本 陽子 菅野 真智子 詫間 里嘉子 野瀬 早織 森 ゆき絵
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.522-533, 2006-12-30

本研究では,成人期を対象に,複数の他者(子ども,配偶者,両親,友人,職場の人)から望まれている自己(他者視点の理想自己)と現実自己のズレが自尊感情に及ぼす影響について,性,性役割観,世代,就業形態との関連から検討した。調査参加者は就学前もしくは大学生の子どもを持つ成人期(子育て期,巣立ち期)の男女計404名。自尊感情を基準変数,5つの他者視点の理想-現実自己のズレを説明変数とした重回帰分析を行った結果,際立った性差がみられ,全体的に男性は職場のみ,女性は複数の他者(子ども,友人,両親のうち2者)の視点からの理想-現実自己のズレが自尊感情に影響していた。また,性役割観の違いによってどの他者視点から影響を受けるのかが異なり,子育て期の男性では伝統主義の場合は職場が影響していたが,平等主義群では子どもが影響していた。女性においては性役割観の違いが両親と友人の影響の差として現れ,世代差は子どもと職場の影響の違いにみられた。就業形態別では,専業主婦は両親のみが影響していた。以上のことから他者視点の理想-現実自己のズレが自尊感情に及ぼす影響は性,性役割観,世代,就業形態によって異なることが示された。
著者
池田 幸恭
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.487-497, 2006-12-30

本研究の目的は,青年期における母親に対する感謝の心理状態について明らかにすることである。そのため,母親に感謝しているときに感じる気持ちと,自分が苦労しているのは母親のせいだと感じる気持ちを合わせて検討した。中学生,高校生,大学生の585名に質問紙調査を実施した結果,次の3点が示された。(1)母親に感謝しているときに感じる気持ちとして,援助してくれることへのうれしさ,産み育ててくれたことへのありがたさ,負担をかけたことへのすまなさ,今の生活をしていられるのは母親のおかげだと感じる気持ちという4種類の気持ちが抽出された。(2)援助してくれることへのうれしさ,産み育ててくれたことへのありがたさ,今の生活をしていられるのは母親のおかげだと感じる気持ちは,青年期のどの時期でも感じられていた。(3)青年期における母親に対する感謝には,自分が苦労しているのは母親のせいだと感じる傾向がみられる要求的な心理状態から,負担をかけてすまないと感じる自責的な心理状態が現れ,そして負担をかけたことへのすまなさと自分が苦労しているのは母親のせいだと感じる傾向が小さくなる充足的な心理状態が現れるという変化の順序性がみられた。
著者
安藤 史高 布施 光代 小平 英志
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.160-170, 2008-06-30
被引用文献数
1

本研究の目的は,児童の積極的授業参加行動に対する動機づけの影響について,自己決定理論の枠組みを用いて検討することであった。小学校3年生から6年生までの1064名を2群に分け,国語または算数いずれかの積極的授業参加行動と動機づけに関する調査を実施した。分析の結果,「注視・傾聴」「挙手・発言」「準備・宿題」の3つの積極的授業参加行動がどちらの教科でも確認され,その尺度得点についても教科差は見られず,積極的授業参加行動は両教科において共通してみられるものであることが示された。積極的授業参加行動に対する動機づけの影響について構造方程式モデリングによる検討を行ったところ,内発的動機づけは全ての積極的授業参加行動を促進しているが,低自律的外発的動機づけは積極的授業参加行動を抑制することが明らかとなった。また,高自律的外発的動機づけは「挙手・発言」と関連しておらず,子どもの授業に対する意欲・動機づけを判断するためには,多様な行動を考慮する必要があると言える。さらに,学年差についても検討を行ったが,学年が上がることに伴う何らかの方向性を持った変化は確認されなかった。
著者
野口 隆子 鈴木 正敏 門田 理世 芦田 宏 秋田 喜代美 小田 豊
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.457-468, 2007-12-30

本研究では,教師が実践を語る際に頻繁に用いる語に着目し,語が暗黙的に含み込む多様な観点を明らかにするとともに,幼稚園及び小学校教師が用いる語の意味について比較検討をおこなった。対象となる語として「子ども中心」,「教師中心」,「長い目で見る」,「子ども理解」,「活動を促す」,「環境の構成」,「仲間作り」,「トラブル」の8語を選択。幼稚園計9園に勤務する保育者計92名(平均経験年数6.33年,SD=7.27),小学校計6校に勤務する教師101名(平均経験年数17.1年,SD=9.68)に対し語のイメージを連想し回答する質問紙調査を実施した。各語毎に内容をカテゴリー化し,幼稚園・小学校教師の発生頻度を比較したところ,全ての語において有意な偏りがみられた。全体的に,幼稚園教師は子どもの主体性や自発性を重視し,内面や行動について教師側が読み取りをおこない共に活動をおこなっていく観点を持っている。一方,小学校教師は教師側の指導,方向付けを重視し,子どもを理解する際直接な対話を重視する観点を持っていた。同じ語を対象としながらも,幼稚園・小学校の教師間では語の受けとめ方や理解に相違があることが示唆された。
著者
若松 養亮 大谷 宗啓 小西 佳矢
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.219-230, 2004-09-30
被引用文献数
1

本研究は, 小・中学生を対象に, 学習意欲と「現在の学習活動が自身の成功や幸福の実現のために有効であるとの認知」(学習の有効性認知)との関係について検討した。学習の有効性認知は, 「学習内容や活動の意義や正統性を認める(a)」, 「将来の職業や生活で役立つ(b)」, 「進学や就職の試験で役立つ(c)」, 「有効性を認めない(d)」という4カテゴリーを設定した。分析の結果, 小・中学生どちらにおいても, (1)学習の有効性認知と学習意欲の間には正の関係があること, (2)各カテゴリーの有効性認知を強く有する人を比較すると, a, b, c, dの順で学習意欲が高いこと, (3)「好きな教科の多少」で統制しても, 学習意欲は有効性認知a, b, c, dの順に高いこと, が明らかとなった。
著者
橘 春菜 藤村 宣之
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.1-11, 2010-03-30
被引用文献数
1 1

本研究では,高校生のペアでの問題解決に焦点をあて,他者と相互に知識を関連づける協同過程を通じて,概念的理解をともなう知識統合が個人内の変化としてどのように促進されるかを検討した。問題解決方略の質的変化(複数の知識を個別に説明する方略から複数の知識を関連づけて包括的に説明する方略への変化)が想定される数学的問題を事前課題-介入(協同または単独)-事後課題のデザインで実施した。実験1では(1)協同条件では単独条件よりも事前から事後にかけての解決方略の質的変化が生じやすいこと,(2)協同場面での複数の要素を関連づけた説明が事後課題での包括的説明方略の適用と関連が強いことが示された。実験2では,方略の質的変化をより促進するため,介入課題において,実験1の教示(以後,一括教示)と比べて,要素の関連づけ過程やその前段階の要素の抽出過程の活性化を目指した段階的教示を行った。その結果,(1)段階的教示では,事前から事後にかけての方略変化が一括教示よりも生じやすく,協同条件でその促進効果が顕著であること,(2)方略の質的変化が生じる協同過程では,ペアで相互に知識を構築する協同過程がみられることが示された。