著者
城 仁士 近藤 徳彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.418-423, 1995-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
8
被引用文献数
1

This study was designed to estimate the effect of computer game on responses in the autonomic nervous system in children by using power spectral analysis of heart rate (HR) variability. We used two different games that contained a battled, excited game (S) and a relieved, mild game (M). The results obtained were as follows: 1) HR in S during game tended to be higher than tnat in M. An index of sympathetic nervous system (SNS) during game was higher than during recovery in S, but showed an opposite change in M. Therefore, S might induce stress response during game while M might do it after game. 2) HR during individual mode in S tended to be higher than during mode in playing against other player. 3) HR, SNS and an index of parasympathetic nervous system (PNS) at 10th min. after game were similar to rest-level in both games. 4) There was positive, significant correlation between level of game master and PNS (y=0.091x+4.111, r=0.765, p<0.05). The results suggested that the responses in the autonomic nervous system in children during game were influenced by the type of game and the level of master.
著者
西田 順一 大友 智
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.285-297, 2010 (Released:2012-03-07)
参考文献数
30
被引用文献数
10 2

運動・身体活動の実施により, 生理的・社会的恩恵と同様に心理的恩恵が得られることが示されている。本研究では, 学校教員の運動・身体活動実施程度および学校ストレス経験がメンタルヘルスにどの程度影響を及ぼすかどうかについて, 個人的特性を考慮した上で検討した。管理職を除いた常勤の小・中学校教員を対象にメンタルヘルス, 運動・身体活動, そしてストレス経験の質問紙調査を実施し, 255名の有効回答を分析対象とした。個人的特性の違いから分析した結果, 女性に比べ男性のメンタルヘルスが良好であることが示された。従って性差を考慮し, メンタルヘルスヘの影響を構造方程式モデリングにより分析した結果, 男女共に「運動・身体活動」は「生きがい度」に有意な正の影響を及ぼし、「ストレス]度に有意な負の影響を及ぼすことが示された。「運動・身体活動」は, 男性では「運動・スポーツ」が影響を及ぼしていたが, 女性ではこれに加え「時間の管理」が影響を及ぼしていた。また, 男女共に「ストレス経験」が「運動・身体活動」を介しメンタルヘルスに影響するという過程は示されず, 運動・身体活動の実施によるメンタルヘルスヘの直接的影響のみが示された。
著者
田中 瑛津子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.117-130, 2022-06-30 (Released:2022-07-12)
参考文献数
28
被引用文献数
2

理科教育において,学習内容と日常場面における現象との結びつきを認識させ,深い理解や興味を育むことは,重要な課題である。本研究では,中学生を対象とした実験授業において,授業冒頭で日常場面における発展的な問題を達成目標課題として提示し,講義後にその問題にグループで協同的に取り組ませることが,生徒の理解や興味に与える影響について検討した。日常場面の問題を取り扱うことの効果を検証するため,実験場面を題材とした問題を扱う「実験的問題群」と,問題の構造自体は同じだが問題の文脈を日常場面に当てはめた問題を扱う「日常的問題群」の2つの群を設定し,比較した。結果,「日常的問題群」の方が,問題提示後の一時的な興味や,授業後および1ヶ月後における日常関連型興味(理科の学習内容と身近な現象が関連づいていることに基づく興味)が高いことが示された。また,講義後および協同後のテスト正解率には群間差が見られなかったものの,「日常的問題群」においてのみ,協同的問題解決を通じて正解率に有意な伸びが見られた。
著者
星野 喜久三
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.14-20,62, 1969-10-15 (Released:2013-02-19)
参考文献数
13

自然の美的場面を描写した短文にたいする意味の把握を通じて, 美的情操を発達的に跡附けることが本研究の目的である。その結果の要約と結論は次の通りである。1. 感情表現章において学年間の差は有意である。性差は有意でない。男女とも中IIIから高Iへ, 女子において高IIIから大学へ増加量が顕著である。表現のヴアライテイーは漸進的に豊富になってくるようであるが, 高I から高IIへの発達が著しいようである。女子は男子より表現の多様性に富んでいるらしい。2. 場面 (1)(牛が憩っている春の牧場),(7)(月の光に明るく照された夜の花園),(2)(急流をさかのぼる鯉, 青空に泳ぐ鯉のぼり),(5)(庭の片隅に咲いている小さな花) に表現量が多く, これらに各々含まれる“のどかな”,“美しい”,“勇しい”,“かわいらしい”の表現は他の表現より著しく多く出現する。これらの場面及び表現は低学年でもかなりの量をもち, その後の発達は急激なもの, 漸進的なもの, 恒常的なものに分れる。これにたいし, 場面 (4)(薄墨で書き流された竹の絵) の表現量は少く, とくに (10)(床の間におかれた相馬焼の陶器) の表現量は目立って少く, 両者の場面に含まれる“淡白な”,“素朴な”,“渋い”,“奥ゆかしい”,“おごそかな”,“高貴な”,“古風な”等の主に日本的美的感情の出現量は僅少であり, 発達的にかなりおくれて (高II, 高III) 出現する。3. 場面 (9)(コツプの水にさされた一輪の菊),(5),(6)(朝日を浴びて目を醒ました店先の人形) において女子が男子より多いようであるが, それらに各々含まれる“静かな”,“かわいらしい”,“にぎやかな”の表現が女子に多いようである。これらの表現は低学年でもかなり多く出現している。これにたいし,(13)(急傾斜を滑行するスキー),(2) のような場面では男子が女子よりも多く,(13) に含まれる爽快なは男子に圧倒的に多い。4.“恐しい”,“無気味な”等の否定的感情は学年が進むにつれて減少する。(3),(10),(12)(山奥の木立に囲まれた寺院) に多い。Hurlock (6) は, 青年期後期へ入ると十分な知的発達によつて抽象的なものの価値を見出すことができるようになり, ここに美的情操の発達をみるといつているが, 本研究のような, 文章表現に含まれる美的価値の意味を理解することでは, 児童期では極めて困難であり, 青年期へ入つてから, とくに中期, 後期における著しい上昇を伴って, 発達していくことが認められる。
著者
村石 幸正 豊田 秀樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.395-402, 1998-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
32
被引用文献数
1

古典的テストモデルを考慮に入れた遺伝因子分析により学力の因子構造を調べるため, 100組の一卵性双生児と25組の二卵性双生児と703人の一般児の標準学力テストのデータを分析した。この際, 豊田・村石 (1998) の方法を用い, 一般児のデータを因子の共分散構造を安定させるために利用した。遺伝的影響・共有環境・非共有環境は, それぞれ国語の学力の分散を0.0%, 64.5%, 2.9%, 社会の学力の分散を 52.3%, 17.0%, 4.7%, 数学の学力の分散を0.0%, 47.7%, 10.4%, 理科の学力の分散を56.1%, 0.0%, 13.3%説明しており, 教科によって学力の構造が大きく異なることが示された。また, 古典的テスト理論によるモデルの比較の結果, 同族モデルが最もよくデータの性質を説明しており, 信頼性係数を計算する際,τ等価測定を仮定するα係数の無批判的使用に疑問を呈した。
著者
千葉 堯
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.82-90,125, 1965-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
7

The purposes of this study were (a) to consider Jean Piaget's theory on conservation (especially conservation of liquid and weight), and (b) to analyse the role or meaning of nonconservation.Hypotheses: (1) Even if the child does not exhibit conservation in Piaget's classic experiments, we cannot say that he has no conservation.(If we admit, as Piaget, that the child cannot acquire conservation without logical multiplication or conceptual coordination, we must reject our hypothesis.)2) Because of perceptual and (other conditions inhibiting the child from exhibiting conservation, the child who has acquired conservation cannot exhibit conservation if conditions change.Procedure: Our Subjects were 71 primary school pupils (6-9 years old).1) Piaget's classic ex (periments of conservation2) Conservation of liquid by usin g screened beakers: Two standard _beakers are partly filled so that the child judges them to contain equal amounts of water.Another beaker which is hidden by a screen except for the top is introduced.The Experimenter pours from a standard beaker into the screened one.Then the child is asked which has more to drink, or do they have the same amount.(3) Quantification of liquid: Two beakers, A and B (A is wider than B) are partly filled, and two empty beakers (one is identical with B and the other is smaller than A and B in both height and width) are introduced.The child is asked,“Which has more to drink, A or B?”, and informed,“If you want to use these empty beakers, you may use them.”Results: (a) In comparison with the classic experiment, there is a striking increase in correct equality judgment in the screened experiment.(b) Without a concept of conservation, it is impossible for the child to quantify liquid.(c) The child justifies his correct judgment not by logical multiplication but by noting that “You only poured it” or “Its the same water.” (d) When the child acquires conservation and his concept of conservation is f ixed to some extent, he exhibits nonconservation.Judging from out results, we cannot explain result (a) and (d) by Piaget's theory.The child discovers essential causality by falling into nonconservation. In this way, he generalizes and develops his concept of conservation, and in this sense, the role of nonconservation is very important for the development of concept of conservation.
著者
西林 克彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.365-372, 1991-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
7

In order to examine affirmative and negative processes in the function of the complexity of the cognitive structure, in experiment I college students were presented place names on CRTs and were asked whether they had been to such places. In experiment II tasks identifying place names were added. Affirmative RTs were relatively constant with distant and close places. Negative RTs, however, were fast with distant places where the cognitive structure was hierarchically simple and slow with close places where the cognitive structure was complex. Results confirmed that fast negative responses with distant places were made by stopping further inspection when negative superordinates of the places were retrieved. Negative processes with near by places took time to search in comparison to peripheral places, because studied places had stored no information to negate with them.
著者
河崎 美保 白水 始
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.13-26, 2011-03-30 (Released:2011-09-07)
参考文献数
25
被引用文献数
5 2

本研究では, 算数授業において発表された複数の解法を, 各自がそれでなぜ答えが求まるかを説明することによる学習促進効果を検討した。小学5年生を対象に算数文章題の授業を行い, 実験1では, 解法提示後に聞き手の児童に説明を求める条件と単に評価を行う条件, および, 非規範解法と規範解法という複数解法を提示するIF条件と規範解法のみを提示するFF条件とを組み合わせ, IF-説明条件, FF-説明条件, IF-評価条件, FF-評価条件の4条件を比較した。授業前後のテスト結果より, 規範解法の意味を高い割合で記述できるようになった児童がIF-説明条件では有意に多く, FF-説明条件では有意に少なかった。評価条件には複数解法提示の効果が見られなかった。実験2では, 説明活動をペアで行うIF条件とFF条件を検討し, 転移課題に複数解法提示の効果が見られた。この結果から複数解法提示は, 各自が内的に説明を考える活動と考えた結果を外化してペアで話し合う活動という内外相互作用の二要素を伴うときに最も学習促進効果を持つことが示唆された。説明活動が複数解法の対比を促し, 規範解法の重要な構成要素の把握を容易にするメカニズムをプロセスデータから考察した。
著者
星野 崇宏
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.491-499, 2001-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
17
被引用文献数
2

教育評価・心理測定では測定対象である特性に複数の下位特性がある場合がしばしばである。また, 特に入学試験などの何らかの決定を求められる場合は, 複数の下位特性をそのまま多次元として評価するのではなく, 測定者が設定した重みによる下位特性の線形結合という1次元の評価がなされることがある。本研究では相関のある複数の特性の線形結合についての評価を容易にするために, 項目反応理論を用いたテスト編集において重要な意味をもつテスト情報関数, 及び項目情報関数の提案を新たに行った。本研究で提案された情報関数は局外母数の積分消去により, 多次元の特性があってもテストを行う前に1次元で評価でき, 特性間の相関を考慮できるという点で複数の下位特性を有する特性の評価のためのテスト編集を可能にする。また本研究では, 異なる重みや相関係数の下での情報関数の比較のための方法が提案された。数値例によって重み付け, 相関係数を様々に変化させても導出できることが確認され, 本方法による多次元項目反応理論での項目選択法の有用性が示唆された。また, アメリカ国立教育統計センターの作成した幾何学と統計学についての項目プールから選択した項目群に対して本方法が適用された。
著者
道田 泰司
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.41-49, 2001-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
19
被引用文献数
14 4

本研究では, 日常的な題材に対して大学生が, 批判的思考能力や態度をどの程度示すのか, それが学年 (1年・4年) や専攻 (文系・理系) によってどのように異なるかを明らかにすることを目的とした。大学生80名に対して, 前後論法という論理的に問題のある文章3題材を読ませ, その文章に対する意見を自由に出させることで批判的思考態度を測定した。その後で, 「論理的問題点を指摘せよ」というヒントに対してさらに意見を求めることにより, 批判的思考能力を測定した。分析の結果, 全240の回答のうち, 批判的思考能力の現れと考えられる意見は88回答 (36.7%), その中で批判的思考が要求されていない場面でも批判的思考態度を発揮していたものは20回答 (22.7%) と少なかった。一貫した学年差や専攻差は見られなかった。多くの学生は, 情報の持つ論理よりも内容のもっともらしさや自分の持っている信念の観点から文章を読んでおり, この点を踏まえて批判的思考が育成されるべきであることが示唆された。
著者
田島 充士
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.318-329, 2008
被引用文献数
1

本研究では学習者が, 科学的概念と日常経験知との関係を, 対話を通して解釈できることを「理解」と捉えた。そして, この理解達成を促進する方法として, 教師が学習者らの発話を引用しながら, より深い解釈を行う対話へ誘導する「再声化(O'Connor & Michads, 1996)」に基づいて作成した介入法を取り上げ, その効果の検討を行った。大学生26名を対象に, 2名1組の実験参加者組に分かれ, 対話を通して課題とした科学的概念と日常経験知の関係を解釈するよう求めた。そして, ここで作成された解釈が両者の関係を十分に説明できないものであった場合, さらに対話を続けてもらい, 同時に調査者が再声化介入法に基づいた介入を行った。その結果, 再声化介入には, 1) 理解の達成に効果があるトランザクション対話 (Berkowitz & Gibbs, 1983) を増加させ, 2) 説明内容における日常経験知のメタファーも増加させる効果があり, 最終的に概念理解を達成できる実験参加者を有意に多く生じさせたことが明らかになった。以上の結果から再声化介入法には, 理解達成を促進する効果があると考えられ, 本介入を活用した新たな授業実践の可能性について考察がなされた。
著者
中井 大介 庄司 一子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.49-61, 2009-03-30 (Released:2012-02-22)
参考文献数
26
被引用文献数
8 4

本研究では, 中学生の教師に対する信頼感の規定要因を検討するため, 中学生の過去の教師との関わり経験と教師に対する信頼感との関連を検討した。中学生374名を対象に調査を実施した。その結果, (1) 生徒の教師に対する信頼感のポジティブな側面である「安心感」「正当性」と, 「教師からの受容経験」「教師との親密な関わり経験」が正の関連を示すこと, (2) 生徒の教師に対する信頼感のネガティブな側面である「不信」と, 「教師との傷つき経験」が正の関連, 「教師からの受容経験」が負の関連を示すことが明らかになった。また, 「教師との関わり経験尺度」の下位尺度得点で調査対象者を類型化し, 教師に対する信頼感との関連を検討したところ, (3) ポジティブな経験をしている群は教師に対する信頼感が高いこと, (4) ネガティブな経験のみしている群, ポジティブな経験・ネガティブな経験共に少ない群は教師に対する信頼感が低いことが明らかになった。以上, 本研究の結果から, 生徒の教師に対する信頼感には, 従来指摘されてきた教師の信頼性の側面だけではなく, 生徒側の個人的な心理的要因も関連している可能性が明らかになった。
著者
近藤 龍彰
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1-18, 2022-03-30 (Released:2022-03-30)
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究では,幼児はなぜ答えられない質問に「わからない(DK)」反応を行わないのかを検討した。本研究の参加児は3歳児24名(男児10名,女児14名),4歳児31名(男児12名,女児19名),5歳児35名(男児18名,女児17名)であった。参加児は,クローズドおよびオープン形式で答えられるあるいは答えられない質問が尋ねられた。次に,なぜ答えがわかったのか(わからなかったのか)を尋ねられ,その答えが正しいのかが確認された。その結果,5歳児のクローズド形式の答えられない質問へのDK反応は3歳児および4歳児よりも少ない,ただしオープン形式の答えられない質問へのDK反応に年齢差は見られない,5歳児はクローズド形式の答えられない質問の答えがなぜわかったのかを説明するのに推測したことに言及することが示された。5歳児は確認質問に対して「回答の変更」や「推測」の反応をする傾向はあったものの,これらの反応に年齢と関連した違いは見られなかった。これらの結果は,2つの異なった認知プロセス(「推測の無自覚」と「推測の自覚」)が,なぜ子どもがDK反応を行わないのかを説明しうることを示唆していた。
著者
豊田 秀樹 中村 健太郎 大橋 洸太郎 秋山 隆
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.304-316, 2019
被引用文献数
1

<p> 本研究では,大学における授業評価アンケートについて,学生が授業において最重要視する知見は何かを明らかにする方法として,一問一答形式を用いた自由記述による意見収集に着目した。</p><p> ここでの一問一答形式とは,全員がそれぞれ最初に1つ挙げる評価,印象に焦点を当て,これを知見と呼び,自由記述型授業評価データにおいて得られる主要な知見を得る方式を指している。この際における知見の得られ方の寡占的(支配的)な程度を,ジップ分布の母数によって表現した。また,ジップ分布から算出される累積確率を用いて,観測された印象の飽和度について,特定の飽和度を達成するために必要な異なる要素(評価,印象)の数と併せて結果を示した。分析には,教授者が想定しないような意見の回答に対応するため,要素数を無限とする場合と,あらかじめ決まった要素から回答するそれぞれの場合に対応したジップ分布を用いた計算結果を示した。実際の講義の評価データの分析を通じ,本方法によって,自由記述による授業評価で得られる知見に対し,少ない特定の知見が全体の中で支配的であるのか,それとも印象,評価が定まらず,多様な知見が散見されているのかについて,客観的な指標に基づく考察が可能となることが示された。</p>
著者
栗原 慎二
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.243-253, 2006

本研究は, 摂食障害で不登校に陥った女子高校生に対して教員が支援チームを作って関わり, 無事卒業していった事例を通じて, 学校教育相談における教員によるカウンセリングやチーム支援のあり方について検討することを目的とした。本事例の検討を通じてチーム支援の有効性が確認されるとともに, 以下の点が示唆された。(1) 学校や教員の特性を生かしたチーム支援の有効性と可能性,(2) 学校カウンセリング独自の目標設定と方法選択の重要性,(3) コアチームのメンバー構成の重要性,(4) 学校における秘密保持のガイドライン作成の必要性。
著者
上野 直樹 塚野 弘明 横山 信文
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.94-103, 1986-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
10
被引用文献数
1

Preschoolers' understanding of number conservation in a signif icant context was studied in a series of 2 experiments. In experiment I, nonconservers in pretest (standard number conservation task) participated in a “puppet” experiment in which the conservation task was placed in the context of a puppet skit. Half of them were tested in a condition where the transformation was made by one of the puppets with an explicit reason, while for the other half transformation was made by the tester without any apparent reason. The mean success rates were 67% and 24% respectively. In experiment II, nonconservers in pretest were tested in 3 conditions in the puppet experiment: whether the transformation was made by the tester with a reason, or by one of the puppets without any apparent reason, or by the tester without any apparent reason. The mean conservation rates were 73%, 67%, and 21% respectively. Implications of these results were discussed concerning children's understanding of the significance of transformation in a conservation task.
著者
三島 知剛
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.341-352, 2008-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
24
被引用文献数
11 1

本研究の目的は, 教育実習生を対象に教育実習前後での授業観察力の変容を授業・教師・子どもイメージとの関連から検討することであった。本研究では, 授業観察力を問題指摘数, 代案生起数, 授業評定力の3観点から捉えることとし, 小学校の算数の授業ビデオを用い, 53名の協力者に実習前後で調査を行った。その結果, 授業観察力に関しては,(1)実習生の授業観察力 (問題指摘数・代案生起数) は全体的に向上すること,(2) 授業観察力 (代案生起数) の向上と実習生の授業・教師に対するポジティブなイメージとの間に密接な関係があること,(3)実習生の授業評定力は, 実習前後で一貫して熟練教師に及ぼず, 授業評定の仕方が甘いこと, などが示唆され, 教育実習の効果に関する示唆と合わせて検討された。
著者
寺岡 隆
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.32-39,63, 1969-10-15 (Released:2013-02-19)
参考文献数
7

The present study was primarily designed to investigate on “the standard score of sociality” devised as a sociometric index based upon the distribution of sociality. Secondly, to find out the relationships among the school records, intelligence and sociality indicated by this index.1. The standard score of sociality (S. S. S.):The scores of usual indices generally indicate only the relative heights of sociality. A index indicated by the standard score was devised, as it is convenient in practical use for the score of index to be ranked on the standardized scale.An, individual sociality was defined as a social status determined by choice-rejection responses from members of class. Accordingly, subjects were instructed to check responses for all. members (n) one another on the 5-grades scale under a certain criterion. It was all but conformed to the usual indices.It is assumed that the scores on a valuation scale, being the basis of personel feeling, is normally distributed: each grade (i), in case of arrangement, is represented by z score transformed from summations of checked frequency (f) at the grade. An individual score is generally indicated as follows:_??_Assuming the sociality is normally distributed, X is replaced with S. S. S. indicated by Z score, So,_??_The normality was confirmed by x2 test in 209 pupils of a secondary school. The reliability coefficient, by the re-test method, was 0.97 while it was 0.90 in case of the split half one.2. The relations among school records, intelligence and sociality:Subjects were the pupils described in 1. At first, the correlation and partial correlation coefficients among the school records (1), intelligence (2) and sociality (3), were calculated. Also each score of the former two elements was indicated by the standard score.Results are shown as follows: Correlations: γ12=0.62. γ13=0.60, γ33=0.41 partial correlations: γ12.3=0.51, γ13.2=0.48, γ23.1=0.07 They are all significat at 1% level except γ23.1.These results suggest that the correlation between the sociality and school records is relatively high and, moreover, that the former is naturally independent of the intelligence. In other words, the sociality relates to the factors of being the over- or underachiever. Over- and under-achievers were, therefore, selected out under a criterion. In regards to both groups, the mentioned deduction was confirmed at 1 % level of significance.Secondly, to investigate the developmental transition, 4 groups, selected out of primary, secondary and high schools, were examined with the same procedure. The same tendency was found also in all groups but a group of high schools.
著者
及川 恵 坂本 真士
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.106-119, 2007-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
28
被引用文献数
13 9

本研究では, 認知行動療法の理論に基づき, 抑うつ予防を目的とした心理教育プログラムを考案し, その効果を検討した。プログラムでは, 大学の心理学関連の講義時間を活用し, 計7回の介入授業を実施した。プログラムの効果を検討するため, プログラム実施前後に, 介入群と統制群に対して, 抑うつに関連する思考や情動にうまく対処することができるという確信, すなわち抑うつ対処の自己効力感と複数の適応指標からなる質問紙を実施した。まず, 各授業終了時の感想シートの検討から, 授業内容はよく理解され, 興味関心を持って臨める内容であったと思われる。次に, 抑うつ対処の自己効力感を従属変数とし, 群と時期を独立変数とする二要因分散分析を行った。その結果, 交互作用が有意であり, 介入群は統制群に比べ, プログラム実施後に効力感が増加していることが示された。下位目標ごとの検討においても概ね同様の結果が得られ, 本プログラムの有効性が示唆された。なお, プログラムの間接的な効果を把握するため, 自己効力感と適応指標の変化量の相関を検討した結果, 介入群において自己効力感の増加が現状満足感の増加と関連することが示唆された。