著者
鈴木 正昭 テップンポン マリーワン モラクン ポンレック 五十嵐 孝典
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.55-62, 1982-06-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
7

タイ国の河川に繁茂するホテイアオイ (Eichhornia cyassipes, Solms) の実用的な堆肥化方法を検討した.すなわち, ホテイアオイ, 野草, 稲わら, 水牛糞などを主な材料とした各種の堆肥を製造し, その性状を経時的に調べて, 品質や熟度等を論じた.得られた結果は以下のように要約される.1.ホテイアオイだけを材料として堆肥を製造すると, 品温は42℃に達しただけであったが, 水牛糞や稲わらを混じて堆肥を製造すると容易に50℃以上の高温を得ることができた.2.ホテイアオイは窒素, リン酸, カリ等の養分に富むため, これを他の資材と混用することにより堆肥の品質が向上した.3.稲わらを堆肥化する場合にホテイアオイを混用すると, 水牛糞や石灰窒素を用いるのと同等の効果を発揮した.4.ホテイアオイは堆肥資材として良好であり, タイ国の農民に勧めうる.また, その適切な製造法について述べた.5. (付録) タイの中央平原と東北部で集めたホテイアオイを比較すると, 前者は後者よりも植物養分の含量が高い傾向を示した.茎葉部と根部について養分含量を比較すると, 茎葉部では窒素, リン酸, カリ, カルシウム, マグネシウム, 銅などが根部よりも高かったが, マンガンや亜鉛は根部の方が高かった.
著者
杉井 四郎
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.301-304, 1973-03-31 (Released:2010-03-19)
著者
サハ ウタム クマール ハスナット モハマド アブル ハイダー ジャミル サハ ルパ ラニ 河合 成直
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.71-77, 1998

1993~1994年にかけ, Bangladesh, Gazipur, SalnaにあるInstitute of Postgraduate studies in Agricultureの圃場においてキャベツ (<I>Brassica oleracea</I> var. <I>capitata</I> L.) の潅漑試験を行った. 供試品種としてAtlas 70を用いた. また, 試験地の土壌はシルト質埴壌土, Plinthic Paleustultである. 潅漑区として圃場容水量に対する不足割合 (DASM) を60, 45, 30, 15%に設定した区とpanによる積算水分蒸発量に対する潅漑水の比 (IW/CPE) を0.6, 0.9, 1.2に設定した区の7区を設け, さらに対照区として無潅漑区を設けた. 試験の結果, キャベツの総収量はDASM 30%, 15%区とIW/CPE比0.9, 1.2区で他の処理区に比べて明らかに高くなり, これらの値がキャベツ栽培における潅漑基準となりうることが分かった. 最も収量の多かったこれら4つの潅漑区におけるキャベツの総水分利用量は158.44~183.23mmであった.また, 市場価値のある収量 (602.35 kg/ha/mm) についての潅漑水利用効率は, 30%DASM区で最大となった.
著者
横田 博実
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.202-208, 1990

アラブ首長国連邦 (UAE) はアブダビ, ドバイ, シャルジャ, アジュマン, ウムアルカイワイン, ラスアルハイマ, フジャイラの7首長国からなる連邦であり, アラビア湾の東南部に位置している (図1) .その国土面積は約80, 000km<SUP>2</SUP>である.気候的には亜熱帯乾燥地に属し, 石油産出によって成り立っている国であるが, 国の政策として砂漠の緑化や農業振興に力を入れている.このため農業生産は増加し, 野菜などの自給率は向上したが, それに伴って乾燥地域の農業に共通の問題である土壌の塩類集積, 灌漑水の汲み上げによる地下水位の低下, さらに季節的な野菜の過剰生産などが問題となっている.ここではUAEの主要な農業地域の一つであるアルアイン地域を中心にして同国の農業の現状について報告する.
著者
鎮西 忠茂 大屋 一弘
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.106-114, 1972

天ぐ巣病罹病サツマイモと健全なサツマイモ地上部の無機成分組成の相違を調べる目的で, 健全株8サンプル, 罹病株10サンプルを採集し, それぞれの葉・葉柄・茎についてN, P, K, Ca, Mg, Fe, Mn, Zn, B, Mo, Cu, Na, Alなどの13元素を分析した.<BR>葉においてはN, K, B, Cu含量が, 葉柄においてはK, Ca, Mo, Cu含量が, 茎においてはNおよびMg含量が罹病株より健全株において高いことがわかった.<BR>葉・葉柄・茎における各成分の含量を比較した場合 (1) NおよびMn含量は健全株・罹病株共に葉において高かった. (2) Znの含量は建全株・罹病株共に葉・葉柄・茎の間に相違がなかった. (3) 他の10元素については, 健全株と罹病株の間で葉・葉柄・茎間の差にそれぞれ異なった傾向がみられた.<BR>葉・葉柄・茎間の成分含量相関をみると, 健全株および罹病株の両方においてK, Ca, Zn, Fe, Mn, Naなどの含量は, 葉と葉柄, 葉と茎、葉柄と茎の間で有為な相関関係があった.また健全株・罹病株共に葉柄と茎間において最も多くの成分が相関を示した.<BR>サツマイモ天ぐ巣病の診断に植物分析を行なうことが一つの方法として考えられるので適当なサンプリング部位および分析すべき成分について検討した.
著者
河野 和男
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.54-60, 1995-03-01

熱帯の大作物キャッサバ(Manihot esculenta CRANTZ)は, 農学研究先進地の温帯諸国には全くなじみのない作物であるのと, 熱帯でも小農がやせ地で作り貧乏人が食べる作物との伝統的なイメージが手伝って, 過去に組織的な研究の対象になる事は少なかった.食料としての重要性と, 加工性の高さから, 近年アフリカ及びアジアでの生産の増加が著しく, 原産地南米のコロンビアのCIATに世界を対象とする育種プログラム, アフリカ, ナイジェリアのIITAにアフリカを対象とする育種プログラムが1970年代初頭に設立された.その後, ようやく各国の育種研究体制も設立整備の方向に向かいつつある.アジアのキャッサバについては, CIATのアジア支所がタイ国研究機関と共同で基礎育種材料の育成を行い, 各国育種プログラムはこの育種材料を利用して育種を進めるという研究ネットワーク, 役割分担が効率よく進みつつある.ここから生まれた品種のいくつかは, タイ国, インドネシア等でそれぞれ数万ヘクタールに栽培面積を延ばし, 社会経済的効果を上げるところまで到達している.この間, 実際の育種遂行にCIAT側も積極的に加わる事により各国育種プログラムの育種能力は着実に向上した.著者はこれらのほぼ総ての過程に加わる事が出来た.本報文シリースでは, この仕事の奥行きと広がりを, 熱帯で農業技術協力プロジェクトに従事する研究者および技術者や, これから熱帯農業研究にたずさわる次代の農業技術者に, 経験を通して伝える事が目的である.初回はコロンビアCIAT, タイCIATの育種プログラムを, 遺伝資源の収集保全及び有用性検定とその利用を通じて紹介した.
著者
渡辺 慶一 井上 弘明 立石 亮 司馬 肇 桜井 英敏 有賀 豊彦 名取 正彦 SABETA C.T. DUBE B.N.
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.186-191, 2000-09-01
被引用文献数
1

ジンバブエで収集したトウガラシ5系統と日本の3品種の果実のカプサイシノイドを高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて分析した.カプサイシノイドはノルジヒドロカプサイシン, カプサイシン, ジヒドロカプサイシン, バニラリデカンアミド, ホモジヒドロカプサイシンおよびホモジヒドロカプサイシンの異性体が検出されたが, カプサイシンの占める割合が多かった.カプサイシノイドは果肉より胎座に多く含まれていた.日本の'八房'果実の胎座の総カプサイシノイドは5105.2mg/100gD.Wであったが'ししとう'では非常に少なかった.ジンバブエで収集した果実が小さく, 直立するB, C, D, E系統の果実の胎座の総カプサイシノイド含量は高く, '八房'の5倍の値を示した.
著者
Oko Bernard Flannan Daniel SHIYAM John Okokoh ENEJI Anthony Egrinya 本名 俊正 山本 定博
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.167-170, 2000-09-01
被引用文献数
1

本研究は, ナイジェリア南東部の湿潤熱帯地域(年間降雨量2,000mm, 気温23〜33℃)に位置するカラバー大学内の農場で3種類の低木樹種(Enterolobium cyclocarpum, Dialium guianense, Sesbania macrantha ; 0.5×3m間隔)の違いが.間作した調理用バナナ(Musa spp.), ササゲ(Vigna unguiculata)およびトウモロコシ(Zea mays)の生長と収量に及ぼす影響を評価した.間作物の生育量と収量および低木樹種の生長率とバイオマス量を測定した.繁茂性の低木樹種であるE.cyclocarpumのバイオマス量は17.3t/haで最も高かった.一方, 生長が早いマメ科のS.macranthaのバイオマス量は11.9t/ha, 生長が遅いマメ科のD.guianenseのバイオマス量は7.4t/haであった.低木樹種による間作物の収量を比較すると, E.cyclocarpumを低木樹種とした時, 調理用バナナの生長が促進され, 収量が高くなった.一方, S.macranthaを低木樹種とした時, 調理用バナナの収量が9%低下した.また, ササゲの収量は低木樹下で高くなった.それに対してトウモロコシの収量は低下した.生育初期の低木樹種との効果的な間作は調理用バナナおよびササゲとの間作組み合わせであった.
著者
三本木 一夫 安田 武司 山口 禎
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.149-152, 1986-09-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
8

1年生のコーヒー (Coffea arabica var Typica) の実生に0, 30, 50, 80%の遮光処理を行ない, 光合成の光・温度反応及び暗呼吸の温度反応を調べた.みかけの光合成速度は無遮光条件下で栽培されたものが最も高く, 遮光の程度が増すにしたがって低下した.光飽和点, 光補償点及び暗呼吸速度も遮光処理にしたがい低下した.光合成の最適温度は, 20℃であったが, 15~25℃でも高い活性を示した.温度の上昇による光合成の低下は無遮光区のものが大であった.即ち, 高温下では遮光区のものが高い光合成活性を示した.このみかけの光合成の低下には暗呼吸の増大が関係しているものと思われた.
著者
荒井 克祐 ラグハベンドララオ S.N. デシカチャー H.S.R.
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.7-14, 1975-10-30 (Released:2010-03-19)
参考文献数
16
被引用文献数
1

日本型米2種類, インド型米1種類を試料に選び, パーボイル処理条件の検討を行ない.各処理区の精米特性, 物理的特性, 炊飯特性, 官能評価の測定を行なった.いづれの品種もパーボイル処理により精米特性が著しく上昇する.炊飯特性はインド型米では短時間の蒸煮処理で著しい効果が認められたが, 日本型米ではパーボイル処理によりわづかな向上が認められる程度と判断される.しかし, 現地の住民による日本型米のパーボイルドライスの嗜好性については, 出身地, 階層により, その好みは異なるが, 南インドのパーボイルドライス常食者にも十分に受入れられるという結果を得た.本研究は著者の一人荒井が1969年6月より1971年6月までインド国中央食糧技術研究所において, 同所研究者と共同研究を行なったもので, 貴重な機会と助言を与えられた同国, 科学工業研究会議ならびに中央食糧技術研究所所長H.A.B. PARPIA博士に感謝の意を表する次第である.
著者
カンサ ジョージ オデュロ 丸尾 達 篠原 温 伊東 正
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.118-122, 1996-09-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
21

スイカ (Citrulus lanatus Thunb.) 2品種 (‘Baoguan’, ‘Xinlan’) を供試し, 光照度 (50%, 100%) と気温 (33℃, 38℃) が, 光合成速度 (Pr) , 蒸散速度 (E) , 気孔伝導度 (gs) , 細胞内CO2濃度 (Ci) , および果実収量・糖度に及ぼす影響を調査した.高照度下で生育した植物体のPr, E, gsは, 低照度下でのものより高かった.品種について比較すると, いずれの気温でも高照度条件下で, ‘Baoguan’のPr, E, gsおよび収量が, ‘Xinlan’よりも高かった.光合成速度と蒸散速度, および気孔伝導度と収量の間には, 統計的に有意な正の相関が, また, 光合成速度と細胞内CO2濃度との間には負の相関が認められた.果実糖度 (Brix) は, 両品種ともに12.0~13.5の範囲にあり, 処理による影響は認められなかった.スイカの生育, 収量は, 遮光により低下したが, 50%遮光条件下でも実際栽培上の問題はなく, さらに光強度が高い熱帯アグロフォレストリー地域においては, 適度な遮光下でも十分に栽培が可能と推察された.
著者
星野 正生 新城 健 佐藤 一紘
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.248-252, 1989-12-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
7

アカメガシワ, ウラジロアカメガシワ, オオバギ, ウラジロエノキの4樹種を飼料資源として利用するため収穫方法を検討した.その結果, これらの木本植物の再生長は草本の牧草に比し緩るやかであり, ウラジロアカメガシワを除く樹種で年2回刈り取り利用 (7か月間隔) , ウラジロアカメガシワで年3回 (3.5か月間隔) で最高の収量が得られた.樹種により再生力に差があり, オオバギの再生力は他の樹種に比べて劣った.アカメガシワを供試して, 刈り取り程度が再生収量に及ぼす影響について検討した.その結果最も実用的と思われる新梢を緑色部分から生長点, 未展開葉ともに刈り取る方法が最も多収であった.樹幹を1.2mの高さから切り取るような収穫方法では, 再生は著しく劣った.アカメガシワは再生力が強く, 樹幹を切断するような強度の利用方法, また年3回刈の利用にも耐え正常な再生を示した.
著者
山川 寛 藤井 啓史 川上 潤一郎 佐本 四郎
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.40-42, 1977-10-25 (Released:2010-03-19)

受賞の栄に浴した3品種の育成は, 日本マレイシァ両国の関係各位の絶大なる御協力の賜である.紙数の関係でこれらの方々の氏名を記し得ないが, 心からなる謝意を表する.またこれら品種が両国の友好の礎の一つとなることを願うものである.
著者
中田 美紀 杉山 信男 Tanachai PANKASEMSUK
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.140-146, 2005-06-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
16

北部タイにおいて, 塩素酸カリウム (KClO3) の施用がリュウガンの開花を促進し収量を増大しているのか, どうかを明らかにするため, チェンマイ県のSarapeeとChaiprakarnにおいて, リュウガン生産者を対象に聞き取り調査を行った.チェンマイ県中部のSarapeeでは, 塩素酸カリウムの施用によって着花枝率 (全新梢に占める花序の割合) が上昇し, 収量が増加したが, 果実が小さくなり果皮が薄くなったために価格が低下し, 果実売上高は増加していなかった.県北部Chaiprakarnでは, 12月の施用によって時季外れの出荷が可能になり, 販売価格が上昇したため, 果実売上高が増加した.リュウガン栽培における塩素酸カリウム施用の有効性は, 気象条件によって異なることが示唆された.