著者
桜井 芳次郎
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.102-110, 1960

わが国の南西諸島で始められた換金作物としてのバナナ栽培も, たびたびの台風の試練を受けて, 農家の副業として10~20アールぐらいの範囲で, 防風施設の利用と, 台風対策管理の進歩により, ささやかな地方産業としてその生産, 移出, 消費市場の関係が漸く軌道にのるようになつた.<BR>パインアップルの罐詰産業は, その将来の生産目標が, 年産琉球100万函, 奄美大島50万函, 合計150万函とされても夢ではなくなつて来た.<BR>南西諸島のパパヤは植物防疫法により日本内地へ移出禁止になつているが, 漬物やパパイン其他の加工品とすればますます増産の価値がある.<BR>南西諸島の柑橘類も移出禁止品になつているが, よくできる「ぽんかん, 晩白柚, 麻豆文旦」などを, 病虫害防除につとめて増産して行く必要がある.<BR>ローゼルは南西諸島及び温室などで生産可能であるから, 栽培をおすすめする.<BR>高知県におけるパッシヨン・フルーツのジュース事業, ビニールハウスによる生食用パインアップルの増産, 観賞と実益を兼ねた三尺バナナのビニールハウスもしくは温室栽培などは, 限られた狭いわが国内にあつて, 暖地園芸の新分野を開くものである.
著者
林 英夫
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.90-94, 1960-10-10 (Released:2010-03-19)
著者
諸見里 秀宰
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.135-140, 1971-02-28 (Released:2010-03-19)
参考文献数
9

ヤシ類の種子および発芽適温について研究した.結果を要約すると次の通りである.1.本研究には次の3属3種の種子を用いた.a.ビロウLivistona chinensisb.ダイオウヤシRoystonea regia O.F.Cookc.シンノウヤシPhoenix roebelenii O'Brien2.種子の大きさおよび重量は樹種によつて異なる.各樹種の種子の大きさ, 重量および容積重を第1表, 第2表で示した.3.発芽試験は各樹種の種子の発芽適温を知るためになされた.その結果を第3表で示した.4.各樹種の発芽最適温度は, ビロウおよびダイオウヤシは35℃, シンノウヤシは30℃であつた.
著者
安田 茂 坂 久美子 夏秋 啓子
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.85-93, 1998-06-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
14

葉脈沿いに進展した退緑モザイクを主な症状とするアルストロメリアから分離されたウイルスの性状を調べ, その同定を行った.汁液接種によって調査した本ウイルスの宿主域は, 12科34種の試験植物のうち, 3科4種であった.感染葉汁液の電子顕微鏡観察では, ウイルス粒子は長さ700nm, 幅12nmのひも状で, 併せて層板状封入体も認められた.また, 超薄切片の電子顕微鏡観察では, 葉肉細胞細胞質に散在したウイルス粒子とともに, 渦巻状および風車状の封入体も観察された.本ウイルスは, モモアカアブラムシおよびネギアブラムシによって, 非永続的に伝搬された.SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によってウイルスの外被たんぱく質の分子量を調べたところ, 約33kDであった.本ウイルスを精製し, 家兎に注射して抗血清 (As-AlMV-Y) を作製した.本ウイルスはBOUWENおよびBRUNT両博士より分譲されたアルストロメリアモザイクウイルスに対する抗血清と反応した.以上の結果から本ウイルスはPHILLIPSら (1986) , およびわが国では井上ら (1992) が報告したアルストロメリアモザイクウイルスと同定された.さらに, As-AIMV-Yを利用した発生調査で, 本ウイルスは栽培圃場あるいは市販の切り花からも検出されることから, わが国でも広く発生していると考えられた.本ウイルスは, ティッシュブロット法などによって根茎や貯蔵根からも血清学的に診断可能であることが示された.アルストロメリアはプラジル, チリなど南アメリカに広く自生し, これらから多くの園芸品種が作出されている.また, アルストロメリアおよびこれと近縁で熱帯・亜熱帯に多く見られるヒガンバナ科植物ウイルスについての研究は少ない.したがって, アルストロメリアのウイルス病に関する研究は, これら植物の栽培や育種上も重要な課題の一つであると考えられた.
著者
川鍋 祐夫
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.45-53, 1980-06-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
22

18種の重要雛作物を含む, 128種の繊維作物について, 所属する属科, 目を調べ特定の分類群から多くが出ているか, 出ているとすればそれはどんな群か, を検討した.アオイ目, イラクサ目, ユリ目のように繊維作物にかかわる科, 属が多いものと, フトモモ目, パイナップル目のよう1こその少ないものがある.繊維作物が多く出ているアオイ科, シナノキ科, クワ科, イラクサ科, リュウゼツラン科などは, 茎の靱皮雛や葉の維管束繊維の発達が著しい, とされている群である.経済的に重要な栽培作物は一年生が多く, 半野生ないし野生の低木, 中高木からは自給用又は市場性の狭い繊維が生産されている.温帯性の繊維作物はアマ, アサ, ニュージーランドアサの三種で, それ以外の多くのものは熱帯性である.
著者
新関 三郎
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.55-59, 1963-11-30 (Released:2010-03-19)
著者
村田 治重
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.5-9, 1962

1.スムース・カイエンのサラワク種を用いて生育状況を調査した.<BR>発蕾時期は4月下旬~7月下旬, 8月下旬~11月上旬の2期にわかれ, したがて収穫時期も9~12月, 2~3月の2期となる.<BR>果実の大きさは夏実より冬実が大きく, 夏実は冠芽がのびすぎる.えい芽は夏実にのみ発生し, 冬実には発生しない.<BR>2.スムース・カイエン (サラワク) は吸芽の発生が悪く, 第1回果実収穫後第2回目の果実収穫まで長くかかるので, 暖地のパイアップルの品種としては, 本種以上に芽立ちのよい種類を選択して生産性を高める必要がある.<BR>3.スムース・カイエン (サラワク) とアバガシー, スペシャル, アマレーロとの生育状況の比較をおこなつた.<BR>アマレーロは生育が旺盛で, 果実収穫までの期間が短く, 吸芽塊茎芽の発生および生長がよい.葉にとげがあり, 果実・苗が腐敗しやすい欠点はあるが暖地のパイン栽培品種としてはスムース・カイエンより適品種のようにおもわれる.<BR>4.暖地パイン栽培にあたつては, 冬期が生育に不良環境にあるので, 品種の選択の条件として耐寒性, 第2次芽の発生, 生長の旺盛ということが重要な要素としてとりあげられなければならない.
著者
金沢 尚美 星川 圭介 縄田 栄治
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.133-141, 2006

近年, 東南アジア大陸部山地部においては, 地域住民をめぐる自然・社会・経済環境が急激に変容しつつある.地域住民がこのような急速な状況の変化にどのように対応しているかを明らかにする目的で, タイ北部チェンマイ県のカレン人村落において, 土地利用図と住民に対する聞き取り調査により, 近年の土地利用と農業の変化を分析した.調査村では, 20世紀半ばまで, 長期休閑の焼畑による自給作物 (陸稲) 生産が行われてきた.1960年代, 低地住民により焼畑休閑地がケシ畑へ転換され, このことが焼畑休閑期間の短縮化をもたらした.1970年代の終わりに, 調査村全域が国立公園に指定され, ケシ畑の没収とその跡地での植林により森林面積は増加したが, 休閑期間の短縮と耕地の不足は深刻化した.その後焼畑は姿を消し, 以前の焼畑耕地ならびに休閑地は常畑地または植林地となった.一方, 焼畑よりも生産が安定している水田稲作の技術が導入され, 村内の水田面積は徐々に増加した.現在では, 自給作物であるイネと商品作物の両方が生産されている.焼畑の常畑化にともなう連作による陸稲の生産性の低下を補うため, 化学肥料が使用され始め, さらに化学肥料の使用により増大した雑草に対し除草剤の使用が始まり, 農業が急速に集約化している.近年導入された商品作物は, 主として集約化にともなう化学肥料・除草剤購入のためである.このように, 調査村の住民は, 農業の多様化により, 自給作物生産の集約化を可能にし, 新たな状況に対応していることが明らかとなった.
著者
Edi SANTOSA 杉山 信男 中田 美紀 河鰭 実之 久保田 尚浩
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.220-226, 2005-09-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
9

西ジャワ州クニンガン県におけるカキ栽培の経済性を明らかにするため, 農民へのインタビューを実施した.その結果, カキ栽培からの所得が農業所得の19~35%を占めていることが明らかになった.カキの樹齢は1年生から100年生で, 平均29年生であった.農民は除草と収穫のために年に1ないし2回, 果樹園に出かけるが, 施肥, 農薬散布, 灌水は行っていなかった.カキの樹間でチャ, コーヒー, ショウガ, 野菜などを間作する農民もいた.新梢は雨季が始まる9月から11月に萌芽し, 11月に開花した.収穫は4月下旬から6月下旬の間に行われていた.7月から8月の乾季には多くの樹が落葉した.1樹当りの収量は94から130kgであった.農民や仲買人は収穫した果実を生石灰入りの水に5日間漬けて脱渋処理を行っていた.農民はカキ栽培が土壌浸食を防止する効果があることを認識していた.これらの結果から, 急傾斜地のカキ栽培は環境を破壊せずに農民の所得を向上させる上で有効であることが明らかになった.
著者
佐藤 啓一 安富 徳光 野入 重春 上地 勝則
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-5, 1982-03-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
6

沖繩で試験栽培されている果樹マカダミアの成木を調査し, 沖繩における本種の開花盛期, 果実の肥大期, 収穫期を明らかにし, 沖繩で本種の経済栽培を図る上で検討すべき問題点としては, 防風林対策と生理落果の防止が重要であることがわかった.
著者
井之上 準 望月 俊宏
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.125-131, 1980

バングラデシュ, タイおよびベトナムの代表的な浮稲各2品種ずつを用い, 浸水処理によって節間伸長が促進された主稈の各節部からの冠根について調査を行った.浸水処理は各品種において, 節間伸長が起りはじめる苗令に達した時 (バングラデシュ: 8葉期, タイ: 11葉期, ベトナム: 12葉期) に開始し, 毎日0cm (無処理) , 2cmおよび4cmずつ約70日間 (7月上旬~9月中旬) 行った.実験は1978, 79年の2回行われたが, ほぼ同様の結果が得られた.なお, 供試した品種は実験終了時には未だ幼穂を分化していなかった.得られた結果の概要は次の通りであった.<BR>1.浸水処理は節間伸長および出葉速度を促進した.その結果, 浸水処理終了時における主稈葉数は4cm/日浸水処理区は無処理区に比較して2~6葉多かった.<BR>2.浸水処理によって節間伸長が促進された個体では水中にある節の上部の根帯から太い根 (上位根) が, 下部の根帯から細い根 (下位根) が発生した.根の太さは品種や節位によって異なったが, 上位根はほぼ0.88~1.15mm, 下位根は0.33~0.48mmであった.なお, 後生大導管数は上位根では3.0~5.5個, 下位根では1.0~2.5個であった.<BR>3.品種や節位の違いによってもやや異なったが, 概して, 下位根の発生はそれより2節上位の葉身が半分またはそれ以上抽出した頃に始まるのに対し, 上位根の発生は4節上位の葉身の抽出中に始まった.すなわち, 第15葉抽出中の植物体を例にとれば, 第15葉 (第15節からの葉) の伸長と第13節からの下位根および第11節からの上位根の発生はほぼ同調して起った.<BR>4.各節部から発生する根数については, 下位根は節位が上るほど多かったが, 上位根ではこのような傾向はみられず, 分げつが発生した節で多いようであった.<BR>5.下位根はほぼ水平 (茎に対して直角) に発根し伸長するのに対し, 上位根は斜め下方へ向って発根し伸長した.また, 下位根は発根直後から分岐根を発生するのに対し, 上位根では伸長初期には分岐根の発生はみられなかった.
著者
岡 彦一
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.10-14, 1965-08-16 (Released:2010-03-19)
参考文献数
6
被引用文献数
1
著者
Santosa Edi 杉山 信男 彦坂 晶子 高野 哲夫
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.25-34, 2004-03-01
参考文献数
11

インドネシア政府はジャワに自生しているイロガワリコンニャクを食品工業用の原料として利用することを計画しているが,その遺伝的変異については未だ十分調べられていない.本研究の目的は西ジャワの6つの地域から採集したイロガワリコンニャク63系統について形態的な特徴を明らかにすることである.花柄の長さは13.5〜75cmで,肉穂花序の付属体(肉穂花序のうち雄花部と雌花部以外の部分)の長さと直径はそれぞれ5.5〜42.5cmと0.7〜3.2cmであった.雄花部は長さ2.5〜8cmであり,系統によっては花粉嚢に囲まれた部分が雄花部の他の部分とは異なる色を呈するものがあった.仏炎苞の長さは8〜24cmで,通常は緑色であった.花序の10の形態的特徴を基にした主成分分析の結果,変異の69%は上位4成分によって説明できることが明らかとなった.第2,第3成分を基に散布図を描くと,63の系統はAからGまでの7グループに分類することができた.一方,クラスター分析により,63系統は4つのクラスターに分類できた.クラスターIはグループB,C,及びグループAの2系統から構成され,クラスターIIIはグループDとEで構成された.クラスターIIはグループFに対応し,グループAとGに属する系統がクラスターIVを構成した.花序の形態的特徴に基づくイロガワリコンニャクの分類結果は系統の地理的分布とは関係がないようであった.異なるクラスターに属する幾つかの系統が同一地域に共存することはイロガワリコンニャクの遺伝的変異が大きいことを示唆している.
著者
高田 直也 杉浦 健介 Irham Irham 岩本 純明 大賀 圭治
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.162-168, 2003-09-01
参考文献数
36
被引用文献数
2

インドネシアは1980年代後半にFAO,世界銀行などの援助を受けて総合的病害虫防除(IPM)を本格的に開始した.一方,IPM本格化以前の1980年から日本はインドネシアに対し技術協力援助として病害虫発生予察制度を主体とした作物保護強化計画を行っていた.この日本の援助に対しては,農薬の使用が前提であったという批判がある.本研究は,インドネシアの作物保護における発生予察制度とIPM導入に至るまでの過程を歴史的事実に基づき検証することを目的とした.1980年から実施された病害虫発生予察制度を主体とした技術協力援助は,1974年〜1977年にかけてのインドネシアにおけるトビイロウンカ大発生に対応するために,インドネシア政府の強い要請によって開始された純然たる技術協力援助であり,農薬の供与とは直接的な関係を有しない.1984年にインドネシアはコメの自給を達成したものの,この直後にトビイロウンカが大発生した.農薬の過剰な投入がトビイロウンカの大量発生の一因であるとされ.1986年11月,大統領令により有機リン系を中心とした57品目の殺虫剤が水田で使用禁止となるとともに,インドネシア政府は農薬への補助金を削減しはじめた.その後1989年から国家開発企画庁の主導で普及活動を中心としたIPMプロジェクトを世界銀行の融資を得て開始し,1994年以降は業務を農業省に引き継ぎ現在に至っている.現在インドネシアの作物保護行政は,国の専門組織とこれを補助する地方自治体の担当部門,さらに農民の連携により進められている.この中で発生予察制度は否定されているわけではなく,作物保護政策の重要な一環として位置づけられている.しかし,発生予察制度整備のための技術協力と同時期に有機リン系殺虫剤の水田使用禁止を補うための食糧増産援助(2KR)が日本から行われており,インドネシア政府はこの2KRを利用して天敵等に影響のない農薬等を準備した.発生予察は病害虫発生の初期段階に適期防除を目指す技術協力であり,2KRで援助された農薬等は資材援助であったという違いを見なければならないが,これらは日本からの作物保護に関する援助であったゆえに同一視されてしまった.このことは,日本の援助における要請主義の再検討など今後の援助のあり方に対して教訓を与えている.