著者
鬼頭 誠 吉田 重方
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.511-516, 1992-10-05
被引用文献数
2

セイタカアワダチソウ,ヨモギ,ススキ,ダイズおよびトウモロコシ茎葉等の緑農地から排出する植物性廃棄物を主材料として製造した培養土の理化学性と植物生育に対する影響を調査した.1)供試した植物性廃棄物のC/Nはススキ>セイタカアワダチソウ>トウモロコシ>ヨモギ>ダイズの順であった.無機成分のなかでは,窒素含量がヨモギ,ダイズにおいて,リン含量がススキ,トウモロコシにおいて,カリウム含量がトウモロコシ,セイタカアワダチソウにおいて,カルシウム,マグネシウム含量がダイズにおいてそれぞれ他の草種に比べて高い値を示した.2)製造した各培養土はpH6.42〜7.24,EC0.10〜0.22mSであり,植物生育に対して良好な範囲内にあった.3)培養土の硝酸窒素含量およびCa型リン酸含量はともにダイズを材料としたものにおいて最も高く,ススキを材料としたものでは最も低かった.また,材料とした植物性廃棄物の成分含量と製造した培養土の成分含量の間には,C/Nとカルシウム含量以外有意な相関は認められなかった.4)各培養土に栽培した4種(コマツナ,シュンギク,ダイズ,トウモロコシ)の作物の生育は,栽培期間の短いコマツナでは対象とした土壌区以上の生育を示さなかったが,栽培期間の長い作物(ダイズ,トウモロコシ)では土壌区の生育を凌駕した.5)上記の4種の作物の平均生育量と培養土のCa型リン酸および交換性カルシウム含量との間に正の有意な相関が認められた.以上の結果から,緑農地から排出する各種植物性廃棄物と浄水廃棄物を組み合わせて堆積することにより培養土の製造は可能であるが,さらにリン酸およびカルシウムの添加により高品質のものが製造できるものと考えられた.
著者
建部 雅子 及川 勉 松野 宏治 清水 恵美子 米山 忠克
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.139-146, 1996
参考文献数
22

One of the main factors determining the taste of cooked rice grain is the protein content in the polished grain, usually high-taste grains have a low protein content. In the rice grain, two protein bodies, PBI and PBII are included. Glutelins are in PBII, and prolamins are in PBI which is not digested by pepsin. A recent interest is which proteins have a greater influence on the rice taste. In this study, several varieties of rice were cultivated with different treatments of nitrogen ranging from 0 to 12 gm^<-2> and the effect of these nitrogen treatments on the protein contents in the grain was investigated. The proteins in the polished rice(polishing yield of 90%)were analysed by the extraction method including the pepsin digestion. Prolamin was the residual proteins after pepsin digestion. The contents of albumin(water-soluble protein)+ globulin(salt-soluble protein), glutelin and prolamin were increased with increasing nitrogen fertilizer particularly by late application, but the proportions of the individual proteins in the total protein were almost constant at any nitrogen treatment. However, the percentages of prolamin in the total protein changed with varieties and years. They were about 18% in Takanari, an indica variety, and about 10% in Koshihikari and Kinmaze, japonica varieties, in 1994, and those in Koshihikari were 10.0-11.2% in 1991 and 1994, and 6.2-7.3% in 1990, 1992 and 1993. They were lower in unfilled rice(brown rice size below 1.8mm)than in filled rice(more than 1.8 mm)and were lower in the inferior spikelets that the superior spikelets when examined in Koshihikari. Since prolamins accumulate in the later stage of grain filling than gluatelin, it is inferred that the grains which mature late have the low prolamin fraction.
著者
上薗 一郎 加藤 直人 森泉 美穂子
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.252-255, 2010-06-05
被引用文献数
5

近年、土壌診断によって土壌蓄積養分を適正に評価し、診断結果に基づいた施肥管理を行う必要性が増している。土壌診断測定項目のなかで可給態窒素含量は、土壌の窒素肥沃度を表す重要な項目であるにも関わらず、土壌分析機関において、可給態窒素含量が測定項目に含まれていることはほとんどない。これは、測定法が煩雑で長時間を要するためと考えられるが、土壌の窒素肥沃度に応じた窒素施肥の実施を妨げる要因の一つとなっている。80℃16時間水抽出法においてCOD簡易測定キットを用いた可給態窒素含量の推定を試み、良好な結果を得たので報告する。さらに、前報の結果を併せ、生産者自らが測定可能な畑土壌の可給態窒素迅速評価法を提案する。
著者
関本 均 有馬 泰紘 熊沢 喜久雄
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.p427-432, 1985-10
被引用文献数
1

水稲葉から揮散する窒素化合物(NH_3,NO_x)の水稲葉中での起源を調べるため,培地窒素を^<15>Nで標識して揮散窒素化合物の^<15>N濃度を測定した.揮散窒素化合物の^<15>N濃度は培地に^<15>N濃度51.0atom %のNH^+_4-N,NO^-_3-Nを8時間与えた場合でも0.1〜0.5atom %excessにすぎなかった.揮散窒素化合物のうち,アルカリ補修画分-Nが酸補修画分-Nよりも標識されにくく,NO^-_3区水稲の揮散窒素化合物の^<15>N濃度はNH^+_4区水稲よりも低くなる傾向がみられた.また,培地の^<15>N濃度を96.7,98.5 atom %にあげて32時間吸収させた場合でも,揮散窒素化合物の^<15>N濃度はNH^+_4区水稲,NO^-_3区水稲いずれも0.1〜0.2 atom % excessにすぎなかった.一方,このときの水稲葉内のNH^+_4-N,アミド-N,NO^-_2-N,NO^-_3-Nは^<15>N供与後16時間で10〜25 atom % excessで標識された.このことから揮散する窒素化合物の主要部分は,このような吸収直後あるいは同化初期過程にある窒素に由来しているのではないと考えられた.40 atom %の^<15>N標識化合物を8日間吸収させ,その後無標識培地に移して12日間,20日めまで揮散窒素化合物の^<15>N濃度を測定したが,0.1〜0.5 atom % excess で標識されたにすぎなかった.また,無標識培地に交換しても揮散窒素化合物の^<15>N濃度は,測定期間中にすみやかに希釈されることはなかった.これらのことからも,揮散する窒素化合物の主要部分は,吸収直後あるいは同化初期過程にある窒素ではないと思われた.^<15>N標識培地から無標識培地に植物を移す際にシクロヘキシミドによるタンパク合成阻害処理をくわえると,水稲が黄化するにしたがって揮散窒素化合物の^<15>N濃度が高くなる傾向がみられた.このとき,タンパク-Nは16〜20 atom % excessで標識され,揮散窒素化合物の^<15>N濃度よりもはるかに高かったが,^<15>Nで低い程度でしか標識されない代謝回転のおそいタンパク-Nの異化,分解過程で生じたNH_3やNO_xが,水稲葉から揮散する窒素化合物の主要な起源ではないかと推定された.
著者
大塚 紘雄 君和田 健二 上原 洋一
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.629-636, 1994-12-05
被引用文献数
6

桜島噴火から噴出した新鮮火山灰に腐植の給源と思われるススキ,ササ,カシワの植物遺体を添加し,反応速度を高めるために加湿して培養し,腐植酸の生成過程を追跡した.さらに,腐植酸の生成に関して反応速度論的解析を試みた.結果を要約すると次のとおりである. 1)培養による植物遺体の色の変化は,新鮮火山灰・水添加区(新鮮火山灰+植物遺体+水)では,培養日数が増加するにしたがい,黄色から褐色,黒褐色へと変化した.植物遺体区(植物遺体+水)も黄色から,赤黄色を経て黒褐色に変化するが,その速度は新鮮火山灰水添加区より著しく遅かった.新鮮火山灰・水無添加区(新鮮火山灰区+植物遺体)では黒褐色にはならなかった. 2)新鮮火山灰・水添加区の色は,90℃,75℃,65℃の順に早く黒褐色に変化した. 3)90℃培養ススキの腐植酸の形態変化は,新鮮火山区では202日間でA型に達したが,植物遺体区(ススキ+水)ではB型にとどまった.75℃についても,同様なパターンがみられた. 4)ササの腐植酸への形態変化のパターンもススキの場合に類似し,培養の初期にΔlog K の大きな現象が起こった後に,RFの増加が始まった.しかし,カシワではΔlog K の現象変化が小さく,培養の初期からRFの増加が起こった.しかし,カシワにおいても,ススキ,ササと同様に,新鮮火山灰・水添加区ではA型の生成が早かった. 5)75℃培養区の微生物測定の結果,微生物の影響はほとんどないと判断した.したがって,ススキ,ササ,カシワの各植物遺体の腐植酸はすべて,(1)新鮮火山灰と水が存在する無菌的条件下で,培養温度が高いほど早くA型腐植酸を生成できること,(2)水が存在しないと,腐植酸の腐植化の程度は進行しないこと,(3)新鮮火山灰は腐植化の程度を進行させることが明らかとなった. 6)反応速度論的解析によって,ススキの新鮮火山灰区,35℃では約150年でRF80以上のA型腐植酸になることを推定した.ススキを有機物の給源とする土壌では,植物遺体中のA型腐植酸の基質量と反応速度が十分に大きく,活性化エネルギーはササよりも小さい.ススキはA型腐植酸が容易に生成できる条件を備えていることが明らかとなった.
著者
浦嶋 泰文 堀 兼明
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.163-168, 2003-04-05

PGPRを用いて,生育遅延型の連作障害を解決することを目指している。農業利用に当たってはPGPRを何らかの形で土壌に導入しなければならない。本研究では,軟弱野菜としてホウレンソウを対象とし,ホウレンソウの生育を促進するPGPRの作物根圏における挙動,根への定着性および接種方法について検討した。1)浸漬する菌懸濁液の菌密度が10^5cfu m L^<-1>以上では,菌密度にかかわらず,種子に付着した菌密度には差異が見られなかった。種子の菌密度にかかわらず,ホウレンソウ根に定着した接種菌の菌密度には顕著な差異が見られなかった。2)ホウレンソウ種子を10g L^<-1>メチルセルロース(重合度100)で処理し4℃で保存することで,菌密度の低下を抑えられ,比較的長期(6ヵ月)にわたり種子の接種菌密度を高く維持することが可能であった。6ヵ月保存後の種子の発芽率を見ると,いずれの処理区においても種子の発芽率は90%以上と高く,種子バクテリゼーションの方法として適当であった。3)ホウレンソウの生育を促進する機能をもつ蛍光性シュードモナスを土耕(ポット試験)のホウレンソウに供試したところ,水耕の場合には見られた根重および地上部新鮮重に関し顕著な生育促進効果が見られなかった。生育促進効果が認められなかったのは接種菌が根に定着しなかったためと推察される。4)稲わら牛糞堆肥,おがくず馬糞堆肥および稲わら馬糞堆肥を接種菌と同時に添加した場合は,接種菌株の土壌中での菌密度の低下が有機物無施用区に比べて緩やかで,有機物の同時施用で接種菌の土壌中の菌密度が維持可能であった。
著者
浦嶋 泰文 堀 兼明
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.157-162, 2003-04-05
被引用文献数
1

連作障害軽減を最終的な目標としつつ,有用微生物の農業利用をめざして研究を進めている。そこで,対象として軟弱野菜であるホウレンソウを用い,蛍光性シュードモナス属細菌のなかからホウレンソウの生育を促進する菌株の検索を試みた。1)プレパラート用染色バットを用いた幼植物段階の生物検定法を用いることでホウレンソウ根の生育に影響を与える蛍光性シュードモナスの選抜が可能であり,幼植物段階の生物検定法として適当であった。2)収穫期までホウレンソウを栽培した生物検定法で,ホウレンソウの生育(地上部および根部)を約50%以上促進する蛍光性シュードモナス菌株が数菌株得られた。3)分離したPGPRのなかには2種のタイプが存在し,Aタイプ(生育初期より根の生育を促進)とBタイプ(生育の初期は根の生育を抑制)に分けることができた。4)水耕栽培条件においては接種した蛍光性シュードモナス属細菌はホウレンソウ根に十分定着しており,根に十分に定着しているためにホウレンソウに対する生育促進機能を発揮しうると推察された。5)BタイプであるD23株に関しては,培養した培地中に,多量でホウレンソウ根の生育を抑制し,少量で根の生育を促進する物質の存在が示唆された。
著者
安藤 豊 小南 力 藤井 弘志 岡田 佳菜子
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.618-625, 1998-12-05
参考文献数
15
被引用文献数
5

To clarify the growth of rice plants grown under no-tillage and conventional tillage conditions, N absorption pattern and tillering habit at the early growth stage, and N absorption, photosynthetic and exudation rate of rice plants at the middle and late growth stages were examined. Results obtained were as follows ; 1) There was no difference in the number of tillers between no-tillage (NT) and conventional tillage (CT) grown rice within 3 weeks after transplanting. However, the increasing rate of tillers in CT was more than that in NT. No significant difference was observed in basal N absorption by rice plants between NT and CY from transplanting to the middle of June. In the NT plants, the amount of basal N at the end of June was almost same as that at the middle of June. On the other hand, in CT plants, the amount of basal N at the end of June was two times higher than at the middle of June.2) The relationship between soil hardness, plant shoots and root dry weight was presented by linear equations. Increasing soil hardness caused a decrease in the dry weight and amount of N in the rice plant. 3) The rate of N absorption and exudation by rice plants under NT conditions was more than that under CT conditions at the middle and late growth stages. In addition, the photosynthetic rate of rice plants under NT conditions at the late growth stage was more than that under CT conditions.
著者
村上 圭一 篠田 英史 丸田 里江 後藤 逸男
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.53-58, 2004-02-05
被引用文献数
4

東京都三鷹市内において転炉スラグを利用した根こぶ病対策試験を実施した.酸性改良区にはさらに殺菌剤無散布区,PCNB区,フルジアナム粉剤区,フルスルファミド粉剤区を設けた.これらに,ブロッコリー苗を定植し,3ヵ月後に収穫した.定植時の土壌pH(H_2O)は5.9であったが,転炉スラグの施用により7.5程度に,収穫時には7.9となった.転炉スラグ施用区では,顕著な発病抑制効果が認められ,とくにフルスルファミド粉剤との併用が効果的であった.また,ブロッコリー外葉部の無機成分分析と花蕾部の栄養分析を行った結果,改良区におけるブロッコリー葉部のボウ素含有量は無改良区の約2倍に達した.転炉スラグを多量施用しても,ブロッコリーの生育や品質に悪影響を及ぼすことはなかった.すなわち,ブロッコリー根こぶ病対策のための土壌酸性改良資材としての転炉スラグの有効性と実用性が確認された.
著者
山本 洋司 朴 光来 中西 康博 加藤 茂 熊澤 喜久雄
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.18-26, 1995-02-05
被引用文献数
14

Nitrate concentration and δ^<15>N value in the groundwater in Miyakojima islands, Okinawa, were measured during 1992-1993. Waters from the shallow and the deep wells at ten separate sites were sampled. Mineral contents and natural nitrogen isotope abundance (δ^<15>N) were analyzed using liquid chromatography and the mass spectrometry (Finnigan MAT 252). Except for the waters which were directly influenced by sea water invasion, most of the groundwater showed small variations among their mineral contents and δ^<15>N values. Average nitrate nitrogen concentrations were 1.4-l1.5 mg L^<-1> and average δ^<15>N values were+4.3-+9.7‰. From the nitrate concentration and δ^<15>N value observed, the type of groundwater could be categorized into four groups, such as high δ^<15>N and high nitrate, high δ^<15>N and medium nitrate, low δ^<15>N and medium nitrate, and low δ^<15>N and low nitrate, reflecting the main source of nitrate contamination, such as animal and domestic waste, animal waste and soil organic matter, soil organic matter and chemical fertilizer, and chemical fertilizer, respectively. It was discussed that the lowest δ^<15>N value was higher than the δ^<15>N value of the chemical fertilizers used in this islands ( -3.9- -1.4‰). Therefore, considerable amounts of nitrogen must be lost by ammonium evaporation or denitrification after fertilization.