著者
池永 幸子 遠藤 好恵 稲村 達也
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.207-214, 2010-06-05

田畑輪換を実施する集落営農において土壌特性値の空間変動を考慮した局所管理を行うための基礎情報を得ることを目的として,連続圃場の集合体(16ha)を対象に9つの土壌特性値の空間変動解析を行った.2ha圃場群を対象にした10×10mメッシュ上での土壌サンプリングに基づく空間変動解析の結果から,調査対象とした土壌特性値の最短レンジが46mとなった.この結果に基づいて,124圃場の集合体では,10×33.3mメッシュ上で土壌サンプリングを行い,9つの土壌特性値について空間変動解析を行った.その結果,土壌有機物,全窒素,全炭素および粒径組成は,地形の影響を受けた空間依存性を示し,年次間で比較的安定していると考えられ,これらの土壌特性値は,輪換ブロックを決定するための指標として有効性が示唆された.pH,EC,CECおよび可給態窒素は,栽培管理の前歴の影響を受けた空間変動を示し,年次間の変動が大きいと考えられ,輪換ブロック内での局所管理の指標として有効であると考えられた.田畑輪換がコムギやダイズなどの畑作物と水稲を栽培することを考慮すると,集落単位で田畑輪換を行う際には,第一に,土壌有機物や粒径組成など複数の土壌特性値を用いて,土壌からの養分供給と畑作物生育に強い影響を及ぼす排水性などを同時に評価した輪換ブロックを設定して,効率的な肥培管理や排水対策といった土壌管理を行い,第二に,各輪換ブロックで作物に応じて,可給態窒素等の土壌特性値に基づく可変施肥など局所管理を決定する必要があると考えられた.
著者
矢内 純太 松原 倫子 李 忠根 森塚 直樹 真常 仁志 小崎 隆
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.61-67, 2008-02-05
被引用文献数
3

土壌特性値の評価は,農耕地における土壌の適切な管理のために不可欠である.そのためには通常土壌サンプリングが行われるが,圃場の土壌全体を常に調べることは不可能であり,時空間的に一部のみを調べて全体を予測することが必要となる.そこで本研究では,日本の主要な農地形態の一つである水田について,各種土壌特性値の空間的・時間的変動を評価するとともに,土壌診断のための合理的土壌サンプリング法の検討を行うことを目的とした.広さ50m×100mの水田圃場(灰色沖積土)において,春先の基肥前に5m×10mの区画ごとに深さ0〜15cmの表層土を1999年から2002年に毎年100点,合計400点採取した.採取した土壌は風乾および2mm篩別後,pH,EC,全炭素,全窒素,C/N比,可給態窒素,可溶性窒素,交換性塩基,可給態リン酸を測定した.得られたデータについて,空間的および時間的変動に関する評価を行った.その結果,以下のような知見が得られた.1)全400点の土壌特性値の変動係数は,pH,C/N比で10%以下,全炭素,全窒素,可給態リン酸,交換性Ca,Mg,Kで10〜20%,EC,可給態窒素,交換性Na,可溶性窒素で20%以上となり,土壌特性値によりその変動は様々であった.特に窒素関連特性値では,C/N比6%,全窒素13%,可給態窒素24%,可溶性窒素31%の順となり,可給度あるいは可動性が高いほど大きな変動を示した.2)同時期に採取した土壌の空間変動を評価すると,各特性値の変動係数は全変動の結果とほぼ同様の傾向を示した.データの推定誤差とサンプリング数の関係を解析すると,その関係は土壌特性値により大きく異なった.すなわち,推定誤差を5%以内に抑えるためには,pHで3点,交換性Caで20点,全窒素で29点,交換性Kで32点,可給態リン酸で34点,可給態窒素で78点,可溶性窒素で134点必要であり,逆に5点サンプリングの場合,推定誤差はpHで2.3%,交換性Caで14%,全窒素で16%,交換性Kで17%,可給態リン酸で18%,可給態窒素で27%,可溶性窒素で36%となることなどが明らかとなった(危険率5%).したがって,現実性を考えると,5点程度のサンプリングを行った上で,得られた平均値に10%以上の推定誤差を伴う可能性のあることを十分認識しておくのが望ましいと考えられた.3)同地点から採取した土壌の時間変動を評価したところ,全変動や空間変動と同様の傾向が見られた.また,年次間でデータの相関分析を行ったところ,ほとんどの特性値で有意な正の相関が見られるが,年数がひらくほど相関係数は低くなった.4)空間的および時間的なばらつきに由来する変動係数を比較した結果,pH,EC,C/N比,交換性Ca,Mg,Naは時空間変動がほぼ等しいのに対し,可給態窒素,可溶性窒素は空間変動の方がやや大きく,全炭素,全窒素,有効態リン酸,交換性Kは空間変動の方が顕著に大きかった.したがって,今回の時空間スケールでは,土壌サンプリングにおいて時間変動よりも空間変動を重視すべきであることが示された.以上の結果,対象とする土壌特性により,許容する誤差範囲,危険率に応じて,空間的および時間的なサンプリング頻度を決定することが重要であると結論された.
著者
高木 浩 有田 重明 マテオ ルン・ジー
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.152-158, 1987-04-05

オオムギ地上部からのメタノール抽出物の塩基性画分について, TLC(n-ブタノール:酢酸:水=4 :1 : 2)を行うと, いくつかのエールリッヒ試薬に反応するスポットが検出された. 亜鉛欠除区から得られたスポット1は標準トリプタミンと同じRf値を示した. TLCにより精製されたスポット1は, 紫外部吸収スペクトル法, 電気泳動法, GC-MSによりトリプタミンの定量は, ガスクロマトグラムのピーク面積から算出する方法で行った. 亜鉛欠乏の症状が進んだオオムギの地上部には, 大量のトリプタミンが存在した. (11.3μg/新鮮重g). 対照区では0.8μg/新鮮重gであった. 明らかな欠乏症状が認められた窒素, リン, カリウム欠除区のトリプタミン含量は, それぞれ, 2.1, 2.8, 1.7で, 対照区に比較して高い値が得られた. カルシウム, マグネシウム, 鉄欠除区では, それぞれ, 0.5, 0.6, 0.5で対照区よりも低い値であった. イオウ欠除区のトリプタミン含量は, 5.7と各種要素欠除区のうちでは, 亜鉛欠除区についで高い値を示した. なお, NK_4-N区のトリプタミン含量も4.5と高い値であった. (単位はそれぞれμg/新鮮重g).
著者
加藤 俊博 奥山 治美 徳留 信寛 織田 久男 渡辺 和彦 木村 眞人
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.192-200, 2009-04-05
被引用文献数
1

健康志向が世界的に高まりつつあり、わが国においても、国民の食育、食と健康に関する関心は益々高くなっており、食生活の重要性が強く認識されつつある。一方、国民の「栄養と健康」に関する知識の現状はなお不十分で、野菜摂取量不足等によるビタミン、ミネラル不足あるいは油脂・脂肪(リノール酸、トランス脂肪酸)の取りすぎ等による栄養摂取のアンバランスががん、心疾患等の生活習慣病を助長している。他方で、消費者の健康食品・機能性成分に対する関心は高く、栄養補助食品としてビタミンやミネラル成分が摂取されている。しかし、ミネラル等の栄養補助食品では過剰摂取による弊害も発生しており、野菜等の食物からの摂取を積極的に勧める必要がある。このため、行政サイドからも、野菜摂取量の増加が叫ばれているものの、食生活の変化から、こども、若者高齢者を中心に野菜を十分に摂取できていないのが現状であり、流通と消費の両サイドから十分量のミネラル強化野菜の周年安定供給が望まれている。
著者
武田 甲 白木 与志也 舩橋 秀登 北 宜裕 山田 良雄
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.49-52, 2013-02-05

日本における茶栽培の主要産地は関東以南であり,作什面積は平成22年度に全国で46,800ha,神奈川県では274haである(社団法人日本茶業中央会,2011)。茶栽培は鳥獣被害を受けないことなどから中山間地域における重要な作目のひとつとなっている。2011年3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震に伴う福島第一原子力発電所の事故により,3月15日および3月21日に放射性物質が拡散した(青山ら,2011)。当該原子力発電所から239~310kmの距離にある神奈川県内では,葉根菜および果樹類への影響は軽徴であり,2011年3月17日に設定された食品衛生法に基づく放射性セシウムの暫定規制値である500Bqkg-1を超えた作物はなかった。しかし茶生産においては,関東地域内のほとんどの茶産地で生産された一番茶の荒茶から放射性セシウムが検出され,暫定規制値を超えた産地では出荷制限に至った(原子力災害対策本部長神奈川県知事宛通知,2011など)。これまで茶の放射能汚染に関する研究としては,1954年のビキニ環礁での水爆実験が日本の茶葉および浸出液に及ぼした影響に関する報告(河合ら,1956),チェルノブイリ原子力発電所の事故がトルコの黒海沿岸部で生産された茶に及ぼした影響に関する報告(Gedikoglu and Sipahi,1989),同地域で生産された茶葉の生物学的半減期の報告(UEnlue et. al.,1995),および 1961年~1979年に生産されたインドのアッサム茶で行われた核種別濃度推移に関する報告等がある(Lalitet. al.,1983)。また,放射性セシウムの移行係数を算出した報告(近澤・宅間,2005),汚染茶葉から抽出した放射性セシウムの挙動を砂質土で試験した報告(Yuecel and OEzmen,1995),茶樹体内での部位別の放射性セシウム濃度を調査した報告(Topcuoglu et. al.,1997)等がある。しかし,国内の茶園土壌あるいは茶樹根圏における放射性セシウム動態については詳細な検討がなされていないことから,著者らは降下後6ヶ月後(1地点)および8ヶ月以後(5地点)の神奈川県内の茶園土壌における放射性セシウムの垂直分布調査を行ったので報告する。
著者
北村 秀教 米山 忠克
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.660-669, 1994-12-05
被引用文献数
3 2

作物の生体液の養分濃度の変化から栄養生理や栄養診断の情報を得ることを目的とした.ここでは培地の Ca 濃度を 2 mM と 7mM に変えてコマツナと節木キュウリを水耕栽培し,両作物の導管液や作物下位と上位の葉柄と葉身の汁液の pH, EC, カオチン (Ca^<2+>, Mg^<2+>, K^+)とアニオン (NO_3^-, H_2PO_4^-, SO_4^<2->, Cl^-) の濃度の変化を分析した.pH は,導管液でやや低下したが,葉柄と葉身汁液では培地とほぼ同じ (コマツナ) か,やや上昇 (キュウリ) した.EC は導管液,葉身汁液,葉柄汁液と上昇した.培地の Ca 濃度が 2 mM から 7 mM になると,両作物で生体液の Ca 濃度が上昇, Mg 濃度が低下したが,キュウリはさらに K 濃度が低下した.コマツナ葉身では全 Ca の 60〜88%, 全 Mg の76〜103% が汁液に分布していたが,キュウリ葉身では全 Ca の 5〜11%, 全 Mg の 15〜34% が汁液に分布していた.K は葉柄と葉身の汁液で 100〜150 mM と変わらず葉身 K の約 60〜80% が汁液に分布していた.キュウリの葉身汁液の NO_3^- の濃度はコマツナより低く,またコマツナ葉身では全 N の 11〜25%, キュウリでは 2〜10% が NO_3-N であり,キュウリの活発な NO_3^- 還元能が示唆された.H_2PO_4^- は,導管液で 2〜4 mM, 葉柄汁液で 4〜9 mM, 葉身汁液で 10〜15 mM となり,培地 Ca 濃度の上昇はキュウリの葉柄や葉身の汁液の H_2PO_4^- 濃度を低下させたが,導管液や葉身の全 P への影響はなかった.全アニオン/全カチオンの当量比は,両作物の導管液でほぼ1, コマツナの葉柄汁液でもほぼ1であった.しかし,キュウリの葉柄汁液および両作物の葉身汁液で 0.2〜0.8 となり,他のアニオン (CO_3^<2-> やリンゴ酸) の存在が示唆された.キュウリの台木がクロダネとスーパー雲竜では,養分の吸収,移動,代謝には差がほとんどないので,ハウスで認められたスーパー雲竜台木キュウリ葉の黄白化症は台木根の生理的特性ではなく,養分が富化した上位土層に根が分布したためと考えられた.
著者
松中 照夫 熊井 実鈴 千徳 あす香
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.31-38, 2003-02-05
被引用文献数
16

バイオガスプラント消化液由来Nの肥料的効果を,乳牛由来液状きゅう肥および化学肥料と比較することを目的としてOG栽植条件下のポット試験を実施した.得られた結果は以下のとおりである.1)消化液の施与は,OGの収穫部位である刈取り部乾物重を無施与より明らかに増加させた.その効果は,液状きゅう肥のそれとほぼ同等であり,NH_4-N施与量が同じであっても,化学肥料に比較すると劣った。2)消化液や液状きゅう肥に含まれる有機態Nは,見かけ上,OGのN吸収や土壌の可給態Nに影響を与えなかった。したがって,消化液の有機態NはNからみた肥効に大きな寄与をしないと考えられた。3)施与された資材からのNH_3-N揮散は,消化液と液状きゅう肥からだけに認められた。このため,施与されたNH_4-N量からNH_3-N揮散損失量を差し引いた量(正味のNH_4-N施与量)は,消化液区や液状きゅう肥区より化学肥料区のほうが多かった。この差異が刈取り部乾物重の処理間差をもたらしたと思われた.4)正味のNH_4-N施与量がOGに明らかなN欠乏を与えない程度であるたら,その単位NH_4-N量当たりの刈取り部乾物重増加量は,消化液,液状きゅう肥および化学肥料の各資材間に大差がなかった。5)以上の結果から,消化液のNからみた肥料的効果は,液状きゅう肥や化学肥料のそれと本質的な違いはなく,消化液の肥料的効果の発現程度は,NH_3-N揮散損失を考慮した正味のNH_4-N施与量に依存すると結論づけられる。
著者
柴田 英昭 田中 夕美子 佐久間 敏雄
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.406-412, 1994-08-05

雪面に対する乾性降下物の沈着速度および積雪内部における物質の再分配を明らかにするために,1991年12月〜1992年4月に苫小牧市高丘に立地する森林地帯の開放露場において降雪および積雪の量と化学性を観測した.H^+ を除く,ほとんどのイオンにおいて降雪の平均イオン濃度は降雨のそれよりも高い値を示し,降雪による月間イオン負荷量は降雨に匹敵する大きな値を示した.乾性降下物の沈着フラックスを積雪中に存在する物質量と降雪によって供給される積算湿性降下物量の増加速度の差から見積もった.得られた沈着フラックス(μmol_c m^<-2> d^<-1>)は Cl^<-1>>Na^+>NH_4^+ の順に大きかった.SO_4^<2-> の乾性沈着フラックスは 27 μmol_c m^<-2> d^<-1> と見積もられ,海水起源以外の汚染源から主として供給されたものと推定された.また,雪面からわずかに雪が溶けることによって積雪中の物質が積雪内部を移動したことが推定され,これらの物質はざらめ雪上部で高濃度で集積する傾向にあった.また,その移動フラックスは乾性沈着フラックスの大きいイオンほど大きかった.イオンの移動速度係数(cm d^<-1>)は K^+,NH_4^+ が高い値を示した.