著者
石橋 英二 金野 隆光 木本 英照
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.664-668, 1992-12-05
被引用文献数
10

水田土壌におけるコーティング肥料(LP 140, LP100, LPS 140, U-L)からの窒素溶出パターンについて反応速度論から導かれる温度変換日数法を用いて解析した.その結果,コーティング肥料の溶出は一次反応式で説明でき,五つの特性地(溶出速度,溶出速度の温度依存性,誘導期,誘導期の温度依存性,最大溶出率)を用いて,予測できることを明らかにした.1)反応式:コーティング肥料からの窒素溶出は次の一次反応式にしたがった.[chemical formula] ただし,k : 溶出速度定数(d^<-1>),TAU : 窒素が溶出を開始するまでの期間(誘導期),TAU_1 : 溶出開始までに要する期間のうち温度に無関係な部分,TAU_2 : 溶出開始までの期間のうち温度に依存する部分,A : 最大溶出率.2)溶出速度:溶出速度定数は0.0177〜0.0326(25℃,d^<-1>)で土壌窒素の無機化速度の2〜5倍であった.3)溶出速度の温度依存性:溶出速度に関わる見かけの活性化エネルギーは69,900〜98,000 Jmol^<-1>であり,土壌窒素の無機化と同等の温度反応性を示した.4)誘導期および誘導期の温度依存性:誘導期には温度に依存しない誘導期(TAU_1)と温度に依存する誘導期(TAU_2)があり,LP 140はおのおの10.9日,0.0日であり,LP 100は8.0日,0.0日,LPS 140は12.2日,26.4日,U-Lは0.0日,26.2日であった.また,TAU_2の見かけの活性化エネルギーはLPS 140で114,300 J mol^<-1>,U-Lでは126,800 J mol^<-1>であった.5)最大溶出率:最大溶出率はLP 140,LP100,LPS140では100%で,U-Lは90%であった.
著者
西尾 隆 荒尾 知人
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.493-499, 2002-10-05
被引用文献数
7

畑土壌に施用したアンモニア態窒素の有機化に関する土壌間差を明らかにするために,硫酸アンモニウムを添加した土壌の長期インキュベーションを行い,有機化量の経時的推移を求めた.典型淡色黒ボク土,多腐植質厚層黒ボク土,細粒質普通灰色低地土,細粒質台地黄色土の4種類の土壌に対して,重窒素標識硫酸アンモニウムを200mg N kg^-1或いは2000mg N kg^-1添加して実験を行った.また,重窒素同位体希釈法を用いてそれぞれの土壌の無機化,有機化,硝化速度の測定を行った.土壌中にアンモニア態窒素が残存している条件下では,2種の黒ボク土の有機化速度は,灰色低地土や台地黄色土よりも速かった.硫酸アンモニウム添加量2000mg N kg^-1の時には,総ての土壌で180日後になってもアンモニア態窒素が残存していたため,2種類の黒ボク土で有機化量がアンモニア態窒素施用量の5.2%となったが,台地黄色土では1.4%であった.しかし,硫酸アンモニウム添加量200mg N kg^-1の場合は,台地黄色土以外の土壌はアンモニア態窒素がほぼ20日以内に硝化されてしまったために,窒素有機化量が施用量の3%前後だったのに対し,台地黄色土では最後までアンモニア態窒素が残り,有機化量は施用量の12%以上まで到達した.重窒素同位体希釈法で求めた土壌の有機化速度と,長期インキュベーション実験で土壌にアンモニア態窒素が残存した期間との積をとると,同実験の最終的な重窒素標識窒素有機化量と,良い相関関係が得られた.また,アンモニア態窒素が残存する条件下では,窒素有機化量がバイオマス窒素の値を超えても,なお有機化量が単調増加してゆくことから,いったん微生物に取り込まれた窒素が,死菌体残さ,空の胞子等として残ったり,或いは腐植化したりしている可能性が考えられた.
著者
後藤 茂子 林 浩昭 山岸 順子 米山 忠克 茅野 充男
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.391-396, 2002-08-05
被引用文献数
11

2種類の下水汚泥コンポストを20余年連用した試験圃場の深さ10cmまでの土壌中の亜鉛,銅,カドミウム,鉛含有量の経年変化と水平方向(試験区外)への移行について調べ,下水汚泥由来重金属の土壌への蓄積について棟討した.(1)下水汚泥コンポスト中の含有量が土壌中のそれよりも高かったモミガラコンポスト区,オガクズコンポスト区両区の亜鉛およびカドミウムと,モミガラコンポスト区の鉛は,施用によって土壌中に蓄積が認められたが,試験開始後10年が経過したころからは蓄積の鈍化あるいは停滞の傾向がみられた.一方,含有量が土壌より低かった両コンポスト区の銅およびオガクズコンポスト区の鉛は,土壌中に蓄積が認められなかった.(2)土壌に蓄積した重金属の水平方向の移行もまた,蓄積と同様に下水汚泥中含有量の高い亜鉛およびカドミウムで明らかに認められた.これは耕うんに伴う土の移動によると推定した.(3)下水汚泥の施用に伴ってモミガラコンポスト区に添加された亜鉛の分配を,隣接する化学肥料区との間で検討したところ,累積添加亜鉛量の約53.4%が区内の深さ10cmまでの土壌に,約6.5%が隣接する化学肥料区の深さ10cmまでの土壌に存在した.また,累積添加亜鉛量のほとんどが20cmまでの表層土中に存在し,下方への溶脱はそれほど多くはないと考えられた.
著者
熊澤 喜久雄
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.207-213, 1999-04-05
被引用文献数
61
著者
長谷部 亮 飯村 康二
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.42-48, 1986-02-05
被引用文献数
3 3

水稲の生育にとって重要な役割を果たすケイ酸が土壌溶液中にどのくらいの濃度であれば健全な水稲が生育するのかをみる目的で,水耕培養液を土壌溶液に模してケイ酸供給濃度を一定に保ち水稲の生育経過,収量およびケイ酸吸収量を調べた。水耕培養は容量300lの流動水耕培養装置を用いた。試験区として水耕培養液のケイ酸濃度0,3,10,30,100 ppmの5区を設けた。ケイ酸濃度は移植後から収穫期までほぼ毎日調べ,常に所定の濃度に保つようにした。結果を要約すれば次のとおりである。1)ケイ酸濃度は3 ppmに保たれていれば,10,30および100 ppm区と比べ水稲の生育に大差はなく健全な水稲となった。2)ケイ酸濃度30 ppm区および100 ppm区では葉身のケイ酸含有率30%以上,全ケイ酸含量13gという大量のケイ酸の蓄積があった。3)ケイ酸濃度0 ppm区ではケイ酸欠乏水稲の生育症状を呈し,収穫も低く稔実歩合も75%と最低であった。4)水稲葉身,葉鞘+茎のケイ酸含有率は30 ppm区までは水耕液中のケイ酸濃度の対数に比例した。5)水稲はケイ酸を積極的に吸収し,受動的に吸収する場合ははるかに小さく,また積極吸収は生育初期よりも後期のほうが強かった。
著者
金田 吉弘 粟崎 弘利 村井 隆
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.385-391, 1994-08-05
被引用文献数
29

育稲箱全量施肥は,初期の溶出が少ないタイプの被覆尿素を利用して本田の施肥窒素分全量をあらかじめ育苗箱内に施用しておき,移植苗とともに本田に施肥する方法である.本報告では,グライ土水田での水稲不耕起栽培における育苗箱全量施肥の適応効果を検討し,以下の結果を得た. 1)不耕起区の土壌無機態窒素は,慣行区に比べて少なく推移した. 2)無加温育苗34日間における被覆尿素からの累積溶出率は2.8%であった. 3)被覆尿素区では,,本田施肥量を化成肥料区の基肥と追肥の合計窒素量の50〜60%に減肥しても茎数は多く推移した. 4)被覆尿素区における窒素吸収量は化成肥料区より多く推移し,成熟期における利用率は79%と高かった. 5)被覆尿素区における水稲根は下層まで深く伸長し,接触施肥による伸長抑制は認められなかった. 6)被覆尿素区では化学肥料区に比べて総籾数が多く,増収効果が高かった.以上のことから,育苗箱全量施肥法は不耕起植栽培にきわめて有効であることが認められた.
著者
山崎 慎一 木村 和彦 本吉(手嶋) 博美 武田 晃 南條 正巳
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.30-36, 2009-02-05
被引用文献数
3

筆者らは土壌中における各種元素の分布と挙動に関する研究は周期律表に沿ってなるべく多くの元素を対象に、理想的には全元素を対象に、組織的、系統的に行うべきであるとの立場で研究を実施してきている。したがって、ある特定の元素のみを取り上げて研究を進めることには一定の距離を置いてきていた。しかし、コーデックス委員会による食品中のCd(カドミウム)基準値が議論されたことが契機となって、目下日本国内においてはCdに関して数多くの調査研究が実施されている。それに関連し、土壌中におけるCd濃度に関しても種々議論されているが、中には不正確な情報すら流されている現状がある。さらには、我々のこれまでに提供してきたデータが誤って解釈されている例もみられることから、今回はすでに公表している1500点余りの各種土壌試料中の40〜60種類の元素濃度の情報の中からCdを中心により詳細に検討し、発表することにした。
著者
鬼頭 誠 吉田 重方
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1-8, 1993-02-05
被引用文献数
7

前報において植物性廃棄物と浄水場発生土を組み合わせることにより培養土が容易に製造できることを明らかにした.しかし材料とした浄水ケーキがリン酸固定を起こすために可給態リン酸含量がきわめて低く,かつ,交換性カルシウム含量も低い培養土となり,そのことが作物生育の制限因子として働くことを明らかにした.この点を改善し,より良好な培養土を製造することを目的として,本試験では過リン酸石灰および発泡ケイ酸カルシウム材を加えた培養土の製造を試みるとともに,その培養土製造過程における物質変動を調査した.なお,供試植物残さとしては前報と同じ草種(セイタカアワダチソウ,ヨモギ,ススキ,ダイズ,トウモロコシの茎葉)を用いたが,それ以外にモリシマアカシアのせん定枝も供試した.1)供試した植物材料の乾物分解,炭素消失および窒素消失はいずれも埋設1ヶ月間で急激に起こり,その分解,消失率はいずれもダイズ,トウモロコシ,セイタカアワダチソウにおいて高く,ススキ,モリシマアカシアにおいて低かった.また,乾物分解率と植物材料の成分との間には,全炭素含量との間に負の相関が認められた.2)供試植物材料の違いによって製造した培養土の硝酸態窒素含量は異なり,ダイズを植物材料としたものでは最も高く,ススキを材料としたものではきわめて低含量であった.また,ダイズ,トウモロコシを材料としたものでは培養土の堆積に伴い低下傾向を示し,ヨモギ,モリシマアカシアの材料としたものでは高まる傾向を示した.3)過リン酸石灰と発泡ケイ酸カルシウム材の添加により,Ca型リン酸含量と交換性カルシウムの含量の高い良好な培養土が製造できた.4)それら培養土で栽培したコマツナの生育は化学肥料を施肥した土壌に栽培したものに比べて良好な生育を示し,特に根部生育は高まった.したがって,植物の生育反応の点からみても良質な培養土が製造できたことがうかがわれた.以上の結果から,植物性廃棄物を主材料とした培養土の製造に際しては,材料とする植物性廃棄物の種類によって堆積時間を多少考慮することが必要であるが,果・葉菜類等の育苗用培養土として利用可能であるものと推察された.
著者
村上 圭一 中村 文子 後藤 逸男
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.453-457, 2004-08-05
被引用文献数
10

全国の根こぶ病発生地域では土壌中の可給態リン酸の過剰が進んでいたことから,土壌中のリン酸と根こぶ病発生との因果関係について検討した.根こぶ病の発病抑止土壌である黒ボク下層土に0〜50g kg^<-1>のリン酸を添加して,可給態リン酸が0.01〜3.57g kg^<-1>に及ぶ5段階のリン酸添加土壌を調整した.これらの土壌に0〜10^7 g^<-1>(8段階)の休眠胞子を加えた人工汚染土壌を作り,リン酸の増加に伴う土壌への休眠胞子吸着率,ハクサイの根毛感染率,ポット栽培によるチンゲンサイ根こぶ病の発病を調査した.その結果,土壌リン酸の増加に伴い,土壌への休眠胞子吸着率が低下するとともに,根毛感染率が上昇し,根こぶ病の発病度が高まった.以上の結果より,大量の陽電荷を有ずる黒ボク下層土は陰電荷を有する休眠胞子を吸着してその動きを抑制するため根こぶ病の発病を抑止する.しかし,その土壌にリン酸を施用すると,土壌コロイドの陽電荷が減少して休眠胞子の吸着率が低下するため休眠胞子が遊離し,アブラナ科野菜の根毛への感染確率が高まり根こぶ病の発病を助長する.すなわち,土壌へのリン酸過剰施用が根こぶ病の発病を助長することが明らかになった.
著者
水上 里美 武田 潔 赤田 辰治 藤田 隆
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.633-641, 2001-10-05
被引用文献数
2

水田土壌の糸状性酢酸利用メタン生成菌の存在形態を検討するとともに、水田土壌から糸状性酢酸利用メタン生成菌K-5菌株を分離し、菌学的特徴を明らかにした。また各地の水田土壌を採取し、糸状性酢酸利用メタン生成菌の分布について検討した。 1)水田土壌の糸状性酢酸利用メタン生成菌の菌数は湛水期、落水期ともに球状酢酸利用メタン生成菌より1桁少なかった。しかし酢酸培地で繰り返し培養を行い、糸状性酢酸利用メタン生成菌を選択的に集積させることができた。 2)水田土壌の糸状性酢酸利用メタン生成菌は土壌粒子と植物遺体に生息したが、湛水下の水田では植物遺体に多く生息していると思われる。糸状性酢酸利用メタン生成菌はフロックを形成せず、伸長した糸状性の細胞形態で生息した。 3)分離されたK-5菌株は短い糸状性細胞形態を特徴とする菌種であった。超薄切片の電子顕微鏡観察から、K-5菌株は細胞膜の外側に電子密度の濃い2層の鞘を持つことが明らかにされた。 4)K-5菌株の菌学的特徴は、メタン生成菌特有の緑青色の蛍光を示す短い糸状性細胞形態であること、コロニーを形成すること、酢酸を唯一の基質としメタンを生成することである。K-5菌株は好気的環境下ですぐに死滅しなかったが、乾燥に対しては耐性がなかった。 5)北海道から九州までの各地の水田土壌から糸状性酢酸利用メタン生成菌を分離することができた。水田土壌の糸状性酢酸利用メタン生成菌は土壌の理化学性の特徴や気温の差異にかかわらず、広く水田土壌に生息するメタン生成菌であることを示唆している。
著者
谷田沢 道彦 東野 正三
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.193-196, 1953-12-20
被引用文献数
1

In the preceeding paper, the authors have found the rapid incorporation of inorganic phosphate absorbed through lear epidermis into some organic combinations including acid soluble-barium soluble phosphorus compounds primarily. In the present paper, resting on the basis of fine separation of phosphorus compounds in the use of paper-chromatography, the discussion on the forms of transferring phosphate after the foliar absorption are made. Thus one of the leaves of shakshina (Brassica chinensis L.) grow in field, about 30cm high, was applied with ca 1.5ml. of 1/75 M potassium dihydrogen phosphate containing P-32 in the strengh of 5 micro curie/ml. on a fine day. After 4 hours of this application, the poetiole was cut, and the exudation from this cut end was used for paper-chromatography as it was recommended by R. S. BANDURSKI and B. AXELROD. The developed paper strip was examined for its phosphorus spots by spraying HANES-ISHERWOOD reagent and its radio-activity by means of Geiger-Muller counter as it was reported by R. M. TOMARELI and K. FLOREY. Obtained paper-chramatograms and radiograms are shown in Fig. 1 and 2. Compared with Rf value of each particular known phosphorus compounds that had been determined in the same condition as that employed in the experimental procedure, transferring chief phosphorus compounds which have been newly synthesized in leaves are estimated to be confined to a few other compounds than any of ortho-phosphoric acid, glucose-1-phosphate, and fructose-6-phosphate. Under the condition which have been made, the sum of radio ortho-phosphoric acid, glucose-1-phosphate, and fructose-6-phosphate in the exudate is concieved less than 10% of total radio phosphorus in the exudate. S.ARONOFF has shown that the primary products of phosphate assimilation by soybean roots is fructose-1,6-diphosphate together with some phosphorylated organic acids, and also in our experiment, inorganic phosphate absorbed through leaf-surface is illustrated to be easily assimilated in leaf tissue and converted to such products.
著者
川崎 晃 織田 久男 山田 宗孝
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.667-672, 2004-12-05
被引用文献数
5

カドミウム(Cd)の安定同位体(^<113>Cd濃縮金属,94.8%)をCdトレーサーとして利用する手法を確立するため,土耕ポット栽培のダイズ試験における最適トレーサー添加量を求めるとともに,Cdがダイズ子実へ移行しやすい生育時期について調べた.^<113>Cdの0.1M硝酸溶液(1,000mg Cd L^<-1>)を蒸留水で希釈し,ポット(1/5,000アール)あたりの^<113>Cdトレーサーの添加量が0.2mgもしくは1mgになるように注入した.収穫期のダイズ子実のトレーサー由来Cd濃度は,ポットあたり0.2mg添加時が0.01未満〜0.04mg kg^<-1>,ポットあたり1mg添加時が0.01〜0.10mg kg^<-1>となり,ほぼすべての処理区で^<113>Cdトレーサーが定量できた.また,トレーサー示加に伴う収量の低下や土壌pHの変化は認められなかった.すなわち,ポットあたり0.2mgの^<113>Cdトレーサーの添加により,ダイズの生育に影響を及ぼすことなく,Cdの吸収をトレースできることが明らかになった.ここで開発した^<113>Cd安定同位体を用いたトレーサー法は,従来のRIトレーサー法と異なり,RI管理及びRI半減期の制約を受けない利便性の高い試験法である.さらに,トレーサー出来のCdだけでなく,土壌、由来のCdも同時に定量できるという利点がある.この手法を用いて,生育時期の異なるクイズのポットに注入した^<113>Cdトレーサーの子実吸収量から,経根吸収されたCdがクイズの子実に移行しやすい時期は,粒肥大始め期より以前であることが示唆された.
著者
川崎 晃 織田 久男 山田 宗孝
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.667-672, 2004
参考文献数
23
被引用文献数
5

カドミウム(Cd)の安定同位体(^<113>Cd濃縮金属,94.8%)をCdトレーサーとして利用する手法を確立するため,土耕ポット栽培のダイズ試験における最適トレーサー添加量を求めるとともに,Cdがダイズ子実へ移行しやすい生育時期について調べた.^<113>Cdの0.1M硝酸溶液(1,000mg Cd L^<-1>)を蒸留水で希釈し,ポット(1/5,000アール)あたりの^<113>Cdトレーサーの添加量が0.2mgもしくは1mgになるように注入した.収穫期のダイズ子実のトレーサー由来Cd濃度は,ポットあたり0.2mg添加時が0.01未満〜0.04mg kg^<-1>,ポットあたり1mg添加時が0.01〜0.10mg kg^<-1>となり,ほぼすべての処理区で^<113>Cdトレーサーが定量できた.また,トレーサー示加に伴う収量の低下や土壌pHの変化は認められなかった.すなわち,ポットあたり0.2mgの^<113>Cdトレーサーの添加により,ダイズの生育に影響を及ぼすことなく,Cdの吸収をトレースできることが明らかになった.ここで開発した^<113>Cd安定同位体を用いたトレーサー法は,従来のRIトレーサー法と異なり,RI管理及びRI半減期の制約を受けない利便性の高い試験法である.さらに,トレーサー出来のCdだけでなく,土壌、由来のCdも同時に定量できるという利点がある.この手法を用いて,生育時期の異なるクイズのポットに注入した^<113>Cdトレーサーの子実吸収量から,経根吸収されたCdがクイズの子実に移行しやすい時期は,粒肥大始め期より以前であることが示唆された.
著者
福本 勉 石沢 謙哉 武藤 直紀
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.325-331, 1992-06-05
被引用文献数
6

非マメ科木本植物に共生して窒素固定を行う放線菌フランキアを効率よく分離し,かつ分離フランキアの根粒着生や窒素固定能を簡便に評価する方法として,試験管内養液栽培法を検討した.1) 表面殺菌した自生オオバヤシャブシ根粒より調製した根粒磨砕液を,試験管内で無窒素 H_<OAGLAND> 培地による養液栽培法を用いて無菌的に育てたオオバヤシャブシ幼植物に接種したところ,効率よく根粒着生することを認めた.2) 試験管内養液栽培によって得たオオバヤシャブシ根粒を表面殺菌後二分し,フランキア培地で培養することによってフランキア様微生物が効率よく分離できた.改良 Qmod 培地で継代培養した同微生物は培養特性,形態的特徴および再接種試験により根粒を着生し,アセチレン還元法により窒素固定能をもつことが確認されたことからフランキアと同定した.3) 分離したフランキアの接種によって,試験管内養液栽培した無菌オオバヤシャブシ植物体に効率よく根粒が着生した.4) フランキアの純粋分離および分離フランキアの評価を行ううえで,本試験管内養液栽培法は下記のような利点があった.(1) 実験室内において無菌的な植物栽培ができ,かつ小面積で大量の試料を同時に取り扱うことができる.(2) 根粒の着生状況や植物地下部の生育状況を経時的に観察でき,かつ生育途中の管理が容易である.これらの結果から,試験管内養液栽培法による接種試験評価法はオオバヤシャブシ以外のフランキア植物からのフランキアの純粋分離や共生窒素固定系の解析に対しても広く応用できるものと考えられる.
著者
唐澤 敏彦 笠原 賢明 建部 雅子
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.357-364, 2001-06-05
被引用文献数
3 2

AM菌との共生程度が低い作物を栽培した跡地では、後作物のAM菌感染率が低くなるために、その生育が劣る。そこで、翌春まで裸地になる上記作物の収穫跡地に、宿主作物を緑肥として降雪時まで栽培することによって、翌年の作物生育を改善できるか検討した。結果の概要は次の通りである。 (1)生育初期における後作トウモロコシの生育、リン吸収、AM菌感染率は、裸地あるいは非宿主作物(シロガラシ)跡地に比べて、宿主作物(ヒマワリ、ベッチ)を栽培した跡地で著しく優れ、収穫時にも優る傾向がみられた。 (2)後作トウモロコシの生育、リン吸収、AM菌感染率は、緑肥作物のすき込みの有無の影響を受けなかった。 (3)以上の結果から、宿主の栽培によって増殖したAM菌が、後作物のAM菌感染率を高め、それが、ヒマワリやベッチの導入効果の主な原因になっていると考えられた。そこで、緑肥作物を選定する際の基準に、AM菌との共生程度を加えることが有効である。 (4)ヒマワリを9月以降に播種した場合、トウモロコシに対する効果は認められなかった。そこで、緑肥としてAM菌の宿主作物を導入する場合、8月に播種する必要がある。
著者
秋友 勝 本名 俊正 増永 二之 藤山 英保
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.269-274, 2007-06-05
被引用文献数
1

熔成微量要素複合肥料(FTE)の長期連用試験を実施し,その施肥効果や利用率,土壌への蓄積経過,ホウ素の残効,無施用で栽培を続けた場合のホウ素欠乏の発生程度などについて検討した.1)FTE区では作物が健全に生育し,ホウ素の過不足とみられる症状は発現しなかった.無施用区では,試験開始から2〜4年目以降,ほとんどの作物でホウ素欠乏症状が発生した.このためFTE区の収量は無施用区をつねに上回った.2)FTE区の熱水可溶性ホウ素含有率は,3種類の土壌ともに10年間は0.6mg kg^<-1>前後で推移し,その後やや上昇し,淡色黒ボク土と普通黒ボク土では1.0mg kg^<-1>前後,陸成未熟土では0.8mg kg^<-1>前後で推移した.土壌および作物中ホウ素含有率の推移より,施肥ホウ素が土壌中に過剰蓄積する傾向は認められなかった.3)土壌の熱水可溶性ホウ素含有率の推移は,雨量とそれに伴う溶脱量との関連性が示唆され,ホウ素肥料の施肥にあたっては当該地域の雨量を考慮する必要がある.4)FTEの連用を中止すると,土壌の熱水可溶性ホウ素含有率は,はじめ数年間は急速に低下し,その後は徐々に低下する傾向を示した.セルリー茎葉中ホウ素含有率は,FTEの連用中止から4〜5年後には無施用区とほぼ同じ濃度まで低下した.長期間ホウ素肥料を施用した場合でもそのホウ素の残効は数年間と考えられた.5)FTEを16年間連用した場合の施肥ホウ素利用率は,淡色黒ボク土で9.9%,普通黒ボク土で10.6%,陸成未熟土で8.2%であった.普通黒ボク土の20年間連用では13.5%であった.
著者
西尾 道徳
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.513-521, 2001-08-05
被引用文献数
24

農林水産省統計情報部の行った農業生産環境調査で収集された個別作物ごとのN施肥の実態を解析した。解析に際しては、無機態N供給量(有機質肥料および堆肥から生育期間中に放出される無機態Nと化学肥料Nの和)と、作物体地上部に吸収されたN量(吸収N量)、並びに両者の差(非吸収N量)を算出した。多くの野菜とその他一部の作物について明らかな過剰施肥が認められた。 1)品目別の非吸収N量の全国平均値では、露地セロリー732、露地ナス483、露地キュウリ482、施設セロリ-455、チャ350、露地日本ナシ317、施設ナス314、施設キュウリ311kgNha-1が突出していた。 2)全国平均値で露地野菜と施設野菜を比較すると、露地野菜では施設野菜に比べて、施肥N量が多くかつ収穫量が少ない結果、非吸収N量が多く、施用したNの利用効率も低かった。 3)慣行露地栽培の野菜とチヤについて無機態N供給量と単収の都道府県別平均値をプロットした。露地ナスとチヤでは無機態N供給量が1100kgha-1であっても、収量の低下が認められなかった。そして、無機態N供給量の増加とともに、N利用効率が低下した。なかでも露地のキュウリとナスでは,広い範囲にわたってN利用効率が20%あるいはそれ以下の事例が多かった。