著者
田口 東
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.433-438, 2008-08-01
被引用文献数
2

東急田園都市線では2007年春より,朝の急行を各駅停車に格下げした.混雑による遅れを緩和する目的である.田園都市線の混雑のハードさは"鉄"にはよく知られており,某メーカが,電車内でPC液晶が破損した原因を調べたところ,想定をけるかに上回る圧力が測定され,設計を変更したという話もある.社会環境を考えると,線路の増設などのハードウェアではなく,電車の利用方法というソフトな解決策を考えるのは合理的であろう.そのためには,電車の運行を詳細に既述できるモデルが重要である.本文では,時空間ネットワークと応用例を紹介し,乗り換え案内だけではない,計画の分野への応用の可能性を述べる.
著者
田村 直樹
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.723-728, 2006-12-01
被引用文献数
4

本稿では,インターネットが広く一般家庭に浸透するようになった1990年代半ばから現在までの間,いかに消費者を自サイトヘ「誘導」していくかの取組みを中心に述べていくことで,インターネットマーケティングの進化の過程を俯瞰したいと考えている.
著者
廣津 信義 仲村 明 金子 今朝秋
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.5-10, 2012-01-01
参考文献数
8

箱根駅伝予選会では,出場校は出走選手12名中上位10名の合計タイムを競い,上位9校(ないしは10校)が予選通過となる.本稿では,各選手のタイムが独立な正規分布に従うという前提の下で,各校のレースタイムの確率分布,予選通過タイムの確率分布ならびに各校の予選通過確率を求めるための計算方法を提案する.数値例として,第88回箱根駅伝予選会のデータを基に,選手のタイムの標準偏差を設定したときの,予選通過タイムや各校の予選通過確率の計算結果を示すとともに,選手個々が予選通過に与える影響についても言及する.
著者
品野 勇治
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.247-253, 2014-05

最適化研究におけるアプリケーション駆動研究サイクルを紹介する.アプリケーション駆動研究サイクルは,学術機関での研究と企業における研究成果の利用とのつながりを良くする点では優れている.一方で,ソフトウェア開発・維持に多大な労力を要するため,日本の大学や研究機関における実施には困難さが伴う.ZIBにおいてアプリケーション駆動研究サイクルが,比較的うまく機能している背景を説明する.また,日本においてアプリケーション駆動研究サイクルを活性化するための第一歩として,論文投稿時に,論文中の数値実験に利用した全データ提出の義務化を提案したい.
著者
湯田 聴夫
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 = [O]perations research as a management science [r]esearch (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.529-535, 2008-09-01
参考文献数
19
被引用文献数
1

ネットワーク構造からリンクが密な部分集合を抽出することを,複雑ネットワーク科学ではコミュニティ抽出と呼ぶ.密につながる集団は,同じ属性や傾向をもつ集団であることが多いため有用な情報となる.古くはグラフ理論や数理社会学から近年のWebサイエンスまで幅広くコミュニティ抽出手法として全体を俯瞰し,近年提案された高速なニューマン法とその派生法を概説する.オンライン上には既に数千万から億の単位でユーザがつながっており,集団間の情報流や効果的なマーケティング法の研究などORにおいてもコミュニティ抽出法は有効と考え,その可能性を解説し,今後を展望したい.
著者
作田 誠
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.27-34, 2007-01-01
被引用文献数
1

不完全情報ゲーム研究の動向を以下の内容でレビューする.まず不完全情報ゲームがどういうものかを説明した後,研究の意義と重要性について触れる.次に研究手法として,ゲーム理論によるもの,相手モデル化によるもの,論理プログラミング,シミュレーションや探索を主体とした手法,完全情報問題として解く手法などを紹介する.最後に,スクラブル,ポーカーやブリッジ,麻雀,衝立将棋を始めとする主要な問題領域における現状と展望を示す.また新しいゲームであるDI将棋についても言及する.
著者
水山 元
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.215-220, 2010-04-01

予測市場とは,市場メカニズムの持つ情報集約機能を予測のためのツールとして利用する技術であり,「集合知に基づく予測」を実現し得る手段の一つとして注目されている.需要予測への応用を考えると,新製品の需要を予測したい場合や,需要パターンに構造変化が生じやすい場合など,過去の需要実績に頼った予測が難しい場合に特に有効になると考えられる.本稿では,まず,予測市場技術の概要を述べた上で,それを需要予測に応用した事例を紹介する.また,予測市場を用いた需要予測の従来法をさらに発展・洗練させていくための研究開発の現状についても触れる.
著者
平井 力
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.446-452, 2008-08-01
被引用文献数
2

列車ダイヤに乱れが生ずると,たいへん多くのお客さまに影響が生ずる.列車の運行を管理する指令室では,運休や,到着番線の変更など,列車ダイヤに対して一連の変更を加えることで,その影響を最小限にする努力がなされる.運転整理と呼ばれるこの業務を支援するため,各鉄道会社では専用のコンピュータシステムが導入されつつあるが,ダイヤ変更の内容を決定しているのは,実は,指令員と呼ばれる人間である.運転整理の根幹であるこの判断を,コンピュータが自動的に提案することはできるのであろうか.本稿では,この運転整理案の自動作成に関する研究動向と,筆者らの取組みを紹介する.
著者
氏田 博士
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.646-654, 2006-10-01

まず最近多発する組織事故や不祥事とは何かを考察する.次に安全を担保するための深層防護やりスク概念などの方法論を整理しさらにその基本となるリスク論の問題点を摘出する.リスク論が安全・安心の考え方の基本として認められるためには,人間信頼性評価や組織の信頼性評価の方法論としての十分な検証が必要である.さらに,安全性向上のためには,組織として技術的に考慮すべき安全文化や技術者倫理やりスタリテラシーなど,また社会側から組織や技術システムへ働きかける仕組みも不可欠である.最後に,安全性を向上するための安全ファンドなどの積極的な枠組みの動向についても述べる.
著者
小田 一博
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.681-687, 2005-10-01

わが国の年金制度は「社会的扶養」を基本とし, 全国民に共通した「国民年金(基礎年金)」をベースに「被用者年金」および「企業年金」の3階建ての体系となっている.この「国民年金」と「被用者年金」は公的年金, 「企業年金」は私的年金と位置づけられている.公的年金においては, 今後少子高齢化が進行するため, 制度の支え手である現役世代が減り保険料収入が減少する一方, 高齢者の増加や平均寿命の伸びで給付費が増大することが見込まれており, 平成16年において, 将来にわたり安心できる持続可能な年金制度の構築を目指し, 給付と負担のあり方を見直す等の制度改正が行われた.
著者
牛田 貢平
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.407-413, 2012-08-01

運行管理システムに記録された運行実績データから,日々の列車の運行状況や遅延量を秒単位で把握することが可能になった.遅れに強い安定した列車運行を実現するには,このデータを活用し,遅延によって生じる個々の列車間の影響を詳細に分析することが不可欠である.ところが,従来のように遅延量に基づく分析手法では限界があり,これに代わる新たな遅延の評価指標が必要であった.そこで,東京地下鉄(以下「東京メトロ」という)ではバッファインデックス(Buffer Index)を考案し,列車遅延の評価・分析および列車ダイヤの頑健性向上の手掛かりとしての有効性を示した.
著者
松井 彰彦
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 = [O]perations research as a management science [r]esearch (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.576-582, 2011-10-01
参考文献数
9

本稿では,筑波大学の金子守氏と筆者が創始した帰納論的ゲーム理論の枠組みを紹介し,その応用を考察する.まず第1節でゲーム理論のメタレベルでのアプローチ法について3類型を示したうえで,第2節では,具体的な社会問題に入る前に帰納論的ゲーム理論のエッセンスを「協調ゲーム」を用いてみる.第3節は障害者等の隔離と烙印の問題に帰納論的ゲーム理論を用いて切りこむ.第4節はいわれのないいじめの問題への応用を考える.第5節は帰納論の起源としてプラトンと仏陀に触れる.