著者
甲能 直樹 長谷川 善和
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.162, pp.801-805, 1991-06-28
被引用文献数
3

埼玉県東松山市付近に分布する中部中新統神戸層下部の礫岩層より, イマゴタリア亜科に属する鰭脚類の臼歯化石が発見された。当該標本は歯冠高が低く, 歯冠の遠位舌側に極めて発達のよい歯帯を持つことなどから, セイウチ科のイマゴタリア亜科に属する鰭脚類の, 左上顎第2もしくは第3前臼歯と判断される。北太平洋沿岸域におけるこの仲間の記録としては, これまでに知られる限り最も古いものの一つとなる。当該標本は, 単離した1個の臼歯であるため属種を決定できないが, プロトコーンシェルフがよく発達していることや, 2歯根であるなど原始的特徴を保持しており, ほぼ同時代から知られているセイウチ類の祖先とされる, ネオテリウム類の臼歯に最もよく類似している。このことから, 当該標本は最古の鰭脚類であるエナリアルクトス類から, セイウチの系統に分かれた初期の仲間のひとつであったろうと思われる。
著者
大村 明雄
出版者
日本古生物学会 = Palaeontological Society of Japan
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
vol.1984, no.135, pp.415-426, 1984
被引用文献数
3

琉球弧の中でも西南琉球ブロック中のもっとも海溝側に位置する波照間島の琉球石灰岩について, その形成時代を明らかにするため, 74個の礁性サンゴ化石から<SUP>230</SUP>Th/<SUP>234</SUP>U年代値を求めた。その結果, 本島の琉球石灰岩は更新世後期の4回の高海水準期(おおよそ81, 000年と103, 000年前の2度の亜間氷期と, 128, 000年と207, 000年前の2回の間氷期)に形成されたことが明らかになった。本研究で得られた最古のものは, 300, 000<SUP>+</SUP>40, 000<SUB>-</SUB>31, 000年で, この年代値は, より以前の(深海底有孔虫酸素同位体比ステージ9に対比される)間氷期に現在の波照島の位置にすでにサンゴ礁が形成されていたことを示唆している。潮汐平底を構成している石灰岩から採集された5個のサンゴ化石は, いずれも10, 000年以若の年代(920±50年~6, 000±500年)を示した。すなわち, 現在島の周囲を縁取って発達している潮汐平底は, 過去数千年間にわたって形成されてきたものといえよう。このように, 波照間島の琉球石灰岩を, 西インド諸島のBarbaJos島, ニューギニアHuon半島や中部琉球ブロック中の喜界島などの更新統隆起サンゴ礁に対比することが可能になった。各段丘から採集されたサンゴ化石の年代測定結果にもとづき, Ota et al. (1982)によって8段に細分された海成段丘(T1~T8)のうち, 上位から2段目(T2)と下位の5段(T4~T8)は, 侵食面と考えられる。さらに, 彼らは地形学的手法によって, 各段丘形成時の旧汀線高度を求め, 本島が西方へ傾動していると結論した。今回, 最終間氷期に形成されたことが確証されたT3面の旧汀線高度と, 隆起運動の等速性および当時の古海水準を現在より6m高かったと仮定することにより, 本島の最大隆起速度は, おおよそ0.3m/1, 000年と計算される。以上の事実を考えあわせると, 波照間島は, 最終間氷期以降, 造構造的には圧縮場におかれてきたと思われる。
著者
早坂 一郎
出版者
PALAEONTOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
vol.1965, no.57, pp.8-27, 1965

既に記載した2種のオウムガイ類の外に, 新たに1種を記載し.アムモノイド類8種の記載と共に発表する。産地付近の地質状況についての, 柳沢一郎・根本守両氏の記事は, ここの化石の産出の状況を知るために極めて有益である。岩質に依って3分された高倉山層群は, 古生物学的には, はっきり区分され得ぬもののようで, 全体としてSosio stageを示すものであろう。
著者
早坂 一郎
出版者
PALAEONTOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
vol.1953, no.12, pp.89-95_1, 1953

北上山地中部の二畳系と称せられる地屑中に産した<I>Streptorhynchus</I>に似た形の, 腕足類は, Tinlorの<I>Str.allus</I> HAMLETと共に, <I>Meekella</I>に特有な一対の平行なdelthyrial supporting-plates を痂えている。HAMLETTはそれな新属とすべきであろうとの憲見であつたが, 資料不足のためさし控えた。Timorと北上とに別々に発見なれたのだから, HAMILETの考は正しいとされなけんばならぬと思うので, 新属名<I>Hamletella</I>な提案し北上のものを新所<I>H.kitakaucnsis</I>として記載した。なおカウカサス北部の上部二畳系中からLICHAREWが<I>St.allissimus</I>として報告した撰本は, 形は全く北上のものと同様であるが, beakと切つて調べたら, delthyrial supporting-platesが発見されそうな気がする。そうすればこれも<I>Hamletella</I>となり, 恐らくは北上産のものと同一の種になるであろう。
著者
速水 格 川沢 啓三
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
vol.1967, no.66, pp.73-82_1, 1967

高知県須崎市北方の仏像構造線に沿って分布する堂ガ奈路層からNeithea(1新種を含む), Plicatula, Amphidonte, Pterotrigoniaよりなる海棲二枚貝が発見されたので報告する。これらの化石の多くはこれまでに日本各地の宮古統および最近発見された台湾のAptian層の二枚貝群に共通または近縁である。本層分布地域からはかってMyophorellaが報告されたことがあり, ジユラ紀後期を暗示するとも考えられたが, 今回の発見により, 当地域における四万十川層群最下部(堂ガ奈路層)の時代は, 甲藤(1961)が推察した通り, 宮古世主部(AptianまたはAlbian)であろうと結論される。
著者
松本 達郎 宮内 敏哉 蟹江 康光 宮田 雄一郎 植用 芳郎
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
vol.1984, no.134, pp.335-346_1, 1984
被引用文献数
1

その5-7を含む, その5.下部白亜系産同類。A.宗谷と大夕張産の1種 : Cymatoceras sp. aff. C. virgatum (Spengler).インドのアルビアン産模式標本に類似するが, 殻側面がそれ程膨れずB/Hが1に近く, 肋は2分岐を何回か示すが3分岐は認められない。大夕張のはアルビアン;宗谷のは層位未定。B.浦河地域産の1種 : Cymatoceras sp. cf. C. sakalavum Collignon.浦河北々西17kmの鳧舞川支流の1地点, 中部エゾのMla砂岩産。二次変形しているがマダガスカル島アルビアン産の標記種に類似。C.礼文島ネオコミアン産1種 : Cymatoceras sp. aff. C. mikado (Krenkel).タンザニアのネオコミアン産のに類似するが, 螺環断面が準梯形でへそも広い。地蔵岩近傍の礼文層群最下部層産。その6.サントニアン産の追加1種 : Cymatoceras sharpei (Schluter).ドイツのセノマニアン産原標本よりはむしろオーストリアGosau層群サントニアンから最近報告のものによく似る。幾春別川上流サントニアンより高橋武美氏採集。その7.北海道産白亜紀オウムガイ類成果の要約。(1)記載した15種を表示, 産出層の時代を併記(p.341). (2) Kummeloceras属を設立し, 系統分類について新知見を提示(第4図の系統樹参照). (3)各階ごとに異なる種が産しており, 中には化石帯構成種のメンバーたり得るものもある。海外類似種との対比のできるものもある。(4)古生物地理, (5)古環境についても, 若干のまとめを試みた。
著者
松本 達郎 利光 誠一 川下 由太郎
出版者
PALAEONTOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.158, pp.439-458, 1990-06-30 (Released:2010-05-25)
参考文献数
31

本属は世界諸地域の上部白亜系に産し広く知られている。しかし私は次の3点が未解決であることに気付いた。これに対する研究結果を記す。(I)模式種Ammonites pseudogardeniの概念が不明確であった。今回後模式を指定して再定義した。外側部に短肋(時に小突起)があるのが本種の1特質である。(II)二型性の存否が問題であった。本邦産H. angustumについて殼口縁の保存されているM殼・m殼の好例を示し, 模式種やH. gardeniにおいても二型のあることを説いた。(III)本属の系統上の位置付けが未解決であった。本属における二型M・m殼の大きさの比とM殼の絶対値はPuzosiaのそれにほぼ匹敵するが, Desmocerasの場合(研究中)とは異なる。コニアシアンにキールは無いが殼形がHauericerasに似て狭い平板形で肋の発達の悪いPuzosiaの種, 他方キールがあり短肋がその両側にあるHauericerasの種が産する。さらに稀ではあるがチューロニアンに短肋が外面部だけにあり初生的のキールをもつ種(Puzosia serratocarinata)が最近報告されている。また個体発生をたどるとHauericerasの幼殼はキールを欠きその形質はPuzosiaの幼殼と酷似する。これらの諸事実から, Hauericerasの初期の種はPuzosiaの中で殼形が挾い平板状で肋の発達が不十分な部類(subgroup)の種から由来したとみなされる。短肋や小突起は亜属H.(Hauericeras)では残存しているが, 亜属H.(Gardeniceras)では全く消失した。また亜科PuzosiinaeとHauericeratinaeとを併せて, 科Puzosiidaeとするのがよい。
著者
山口 寿之
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
vol.1982, no.125, pp.277-295, 1982
被引用文献数
1

Balanus sendaicusは仙台付近に分布する中新世茂庭層から得られた殻の一部分の1つの楯板(scutum)に基づいて畑井, 増田, 野田(1976)により新種として記載された。その標本は仙台の斉藤報恩会博物館に保管されているはずだが, そこには見つけられなかった。その名前のもとに殻の他の部分, 背板(tergum)および周殻(shell wall), は記載されなかった。原産地標本(topotype)および畑井ら(1976)に図示された標本調査で, 畑井らがB. rostratusとして記載・図示した周殻はB. sendaicusに属す。それゆえ, 本論文では畑井らによって記載されなかった背板を含めてB. sendaicusを明確にする。B. sendaicusは畑井らの指摘のとうり既知の分類群から異なる。B. sendaicusは漸新世から更新世に地中海地域テーチス海に繁栄したde Alessandri (1906)の意味合いでの絶滅種B. concavusと近縁である。B. sendaicusは周殻の壁管(longitudinalまたはparietal tubes)に直交副隔壁(transverse septa)を持つことおよび楯板の特徴的な表面装飾によってB. concavusに代表される種群に属す。この種群に属す"4種"が東部太平洋に生息している(Newman, 1979)けれども, 大西洋・地中海地域からのB. concavus種群の消滅はPilsbry (1916)の指摘のようにミステリアスである。化石の日本のB. sendaicusは, 中新世に限られ, B. concavus種群の東アジアからの最初の化石記録となり, そしてテーチス海と東アジアの間のつながりの存在を指摘する。
著者
小池 敏夫
出版者
日本古生物学会
雑誌
Transactions and proceedings of the Palaeontological Society of Japan. New series = 日本古生物学会報告・紀事. 新篇 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.173, pp.366-383, 1994-04-30
参考文献数
39
被引用文献数
5

愛媛県東宇和郡城川町田穂上組に分布する, 田穂石灰岩から産するEllisonia dinodoides (Tatge)を検討したところ, M, Sa, Sb, Scの4つの構成エレメントからなり, それらは2 : 1 : 2 : 6の割合の数で存在することが判明した。しかしSaエレメントがノリアンでは極めて少ないか, 失われるようである。各エレメントは, スミシアンからアニシアンまで大きさが減少するが, アニシアンからノリアンにかけてはほぼ一定の大きさを保つ。エレメントの大きさと歯の数の相関係数は0.09から0.75で, 標本ごとにかなりのばらつきを示す。この相関係数について, 時代的な傾向は認められない。三畳紀において, 個体の大きさが時代とともに減少するのは, 比較的生存期間の長い複歯状コノドントに見られる一般的な傾向である。
著者
首藤 次男
出版者
PALAEONTOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
vol.1958, no.31, pp.253-264_1, 1958-08-15 (Released:2010-08-11)
参考文献数
13

黒田と波部 (1952.54) はFusinus niponicus SMITH を模式種として, 新属Granulifususを創設した. 横山 (1928) の記載した宮崎罔群のFusus dnalisはこの属に含まれるのである. 宮崎罔群からは. このdualisのほか, 二新種が産出する. Grannlifusus に特徴的な形熊とその発生の比較にもとづいて, これら二種と, 既知の現生および化石の種との関係を検討した.
著者
平野 弘道
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
vol.1973, no.90, pp.45-71, 1973
被引用文献数
1

豊浦層群産のアンモナイト10種を記載し, これにより, その1よりひき続いたアンモナイトの記載をすべて終了した。本層群の時代は, アンモナイトならびにイノセラムスより, SinemurianからBathonianに及ぶと結論される。アンモナイト化石を多産する西中山層は, 下位よりFontanelliceras fontanellense帯, Protogrammoceras nipponicum帯, Dactylioceras helianthoides帯の3帯が識別される。これらは, 調査地域の北半では松本・小野(1947)の3帯に各々相当するが, 南半では特にその下半部が岩相とかなり斜交することが明らかである。欧州標準地域と類縁種に基づき比較すると, F. f.帯はMargaritatus帯のStokesi亜帯からSpinatum帯の下部に, P. n.帯はSpinatum帯上部からFalcifer帯に, D. h.帯はFalcifer帯のExaratum亜帯からBifrons帯のFibulatum亜帯に対比される。本層群のアンモナイト動物群は, 種数個体数ともにHildoceratidaeの優越で特徴づけられる。これをSIMPSONの公式により他域のものと比較すると, Domerian亜階の動物群はシシリー島のものに, 一般には地中海地方のものに高い類似度を示す。Whitbianでは欧州各地と等しく高い類似度を示し偏りがない。Yeovilianではコーカサス地方のものとのみ, かなり高い類似度を示す。北米西部から本層群のDomerianとWhitbianのものに比較されると報告されたものは, 動物群としてみた場合さほど高い類似度を示さない。本層群および北米西部のアンモナイト動物群はともに地中海系の特徴をもつが, 欧州で広くみられるような岩相と生相の一定の組合せを示さず, ボレアル系の堆積物より産する。
著者
平野 弘道 岡本 隆 服部 幸司
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.157, pp.382-411, 1990
被引用文献数
2

後期白亜紀の北太平洋には, デスモセラス亜科のアンモナイト類が繁栄した。北西太平洋の白亜紀前弧海盆堆積物の一代表とされる蝦夷累層群からは, このデスモセラス亜科のものが多数産出する。これらのうち, 産出頻度の高いセノマニアン期のD. japonicum, D. ezoanum, チューロニアン期のT. subcostatusについて, 主として大夕張および小平地方のサンプルを用いて, 相対成長解析を主たる方法として, 各種の形態進化および各種間の関係を考察した。すなわち, D. japonicumとD. ezoanumは, 各々生存期間を通じて形態の有意の変化はない。T. subcostatusは, D. japonicumと一二の形質を除いて差はなく, 後者から進化したものと考えられる。また, T. subcostatusもその生存期間を通じて形態に有意の変化は無いが, チューロニアン期中頃までに種分化しT. matsumotoi, n. sp.を生じた。D. japonicum, T. subcostatus, T. matsumotoiの進化系統を通じて, 縫合線の長さの螺環断面積に対する相対成長は, 漸次加速されているが, 種分化のつど成体のサイズが減少し, 生息域の東方限界が西方の陸よりに移動した。また, これらの種の分化や絶滅は, 海退・海進や海洋無酸素事変とタイミングが一致することから, このような海洋環境との関係についても論じた。
著者
平野 弘道 佐野 弘好
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
vol.1977, no.106, pp.100-105, 1977

熊本県八代郡東陽村美生からは, かって赤津健によりアンモナイト3個が採集され, 松本達郎により当地域に中部ジュラ系の存在することが示唆されていた。最近, 佐野は当該地域の調査を行い, 問題とされていた地層の分布範囲と層序を明らかにした。また新たにベレムナイト1個が得られた。これの化石はいずれも断片的ではあるが, 検討の結果アンモナイトの1個はCadomites sp., 他の1個はPlanisphinctes? sp.と鑑定された。ベレムナイトはジェレツキー博士の鑑定によりParahastites ? sp.といえる。以上の三者の共通の生存期間は中期ジュラ紀であり, 調査された地層の主部は中部ジュラ系を含むと考えられる。得られた化石の保存はよくないが, 化石産出層の岩相及び構造上の位置をあわせ考えると地史考察上貴重な資料となるので, 図示し記載した。
著者
SPILLMANN Franz
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
vol.1941, no.20, pp.27-32, 1941

本化石はエクアドル國太平洋岸サンタ・エレナ半島, ラ・リベルタ戸附近の崖に露出するデルタ堆積中の化石帯に發見さる。本化石帯の時代はPleistoceneに屬し, 筆者はβ化石帯と呼ぶ。化石帯の厚さ約50cm, アスファルトの存在により化石は茶褐色を帯ぶ。随伴せる動物群は主として草原性にして<I>Neohippus・Protauckenia・Smilodon。Protolycaloper・Palaeospeothus-Palaeoodocoileus・Megatherium・Mylodon</I>・數種の小型齧齒類・其他鰐・龜・多數の昆蟲・現棲種の鳥類・蛇・蛙等發見さる。<BR>。化石は大臼齒を完全に有する左側下顎骨1個及び3個の分離せる下顎臼齒にしてCaviidae科の亜科・Hydrochoerinaeに屬す。<BR>著者は本化石により<I>Prohydrochoerus sirasakae</I>なる新屬新種を創れり。現生<I>Hydmhoerus</I>屬は水中及び濕地に棲息し, 短頭, 短躯, 四肢短し。齒隙は下顎に於て齒列より短し。<I>Protohydrochoerus</I>屬は草原性にして, 頭骨及び四肢長く, 齒隙は齒列より長し。<I>Hydrochoerus</I>及び<I>Protohydrochoerus</I>に於てはlamellaeに狹き連絡あるも<I>Prohydrochoerus</I>は純然たるelasmodontなり。齒隙及び齒の構造より見て<I>Prohydrochoerus</I>は<I>Hydrochoerus</I>及び<I>Protohydrochoerus</I>の中間型なるべし。<BR>本稿をエクアドル・エスメラルダス州に於て調査に從事中不幸にも犠牲となりし故白坂虎吉技師の靈に捧ぐ。
著者
棚部 一成
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
vol.1975, no.99, pp.109-132_1, 1975

北海道中軸北部達布地域のチューロニアン(Inoceramus hobetsensis帯)から連続的に採集された16サンプルに, 南樺太内淵地域および北海道中部の大夕張地域産の8サンプルを加えた計24サンプル, 約150個体のOtoscaphites puerculusについて正中断面, 横断面での詳細な形態解析を行なうとともに, 保存のよい数個体について実際に体積を測定し, 近似的に殻の浮力を算出した。その結果, 殻口に顕著なラペットのある成年殻のフラグモコーンの直径および5.5π以降の全回転角に対するら環の半径のアロメトリーの成長比は, 時間的に増加するが, 逆に正常巻きに補正した住房の長さは1.6πから1.2πに減少することがわかった。また半径に対する隔壁および腹壁の厚さのアロメトリーの成長比についても時間的に浮力の増大したことを示す。浮力計算の結果, 下位層準の標本ではフラグモコーンに水が入らない状態でも, 全体の比重は水より大きくなるが, 上位層準の標本ではフラグモコーンに約30~47%水を入れた状態で殻の比重は水と等しくなる。これらの事実から本種は上述の形態変化に伴って成年時の生活様式を底生から浮遊ないし遊泳性に変えたものと思われる。また下位層準のサンプルでは, ら環のほどける約1π前(約7.5π)付近から腹壁および隔壁の厚さが急に厚くなるから, 個体発生中に生活様式を遊泳・浮遊性から底生に変えたことが推定される。
著者
水谷 伸治郎 木戸 聡
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.132, pp.253-"262-1", 1983-12-30

岐阜県加茂郡七宗町上麻生の飛騨川沿いに露出するチャート, 珪質頁岩および砂岩・頁岩からなる三畳・ジュラ系を調査し, 岩相層序学的に, また, 生層序学的に検討した。このうち, 珪質頁岩にはUnuma echinatus群集とDictyomitrella (?) kamoensis-Pantanellium foveatum群集の2放散虫群集が認められる。筆者らは, 後者を代表する特徴種を選び, 4種の放散虫(うち3種は新種)を記載した。このうちDictyomitrella (?) kamoensis n. sp.とPantanellium foveatum n. sp.は代表種であり, 日本の各地にも広く産出する。Pachyoncus kamiasoensis n. sp.は上記の2種と共存するが, 他の地域ではまだ報告されていない。このDictyomitrella (?) kamoensis-Pantanellium foveatum群集に含まれるRistola (?) turpiculaは, 北米オレゴン州のSnowshoe層(Bathonian上部)より産することが知られている。
著者
松丸 国照
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.64, pp.338-"350-1", 1966-12-15

舟伏山石灰岩から産出する紡錘虫化石は12属43種が鑑定され, そのうち1種が新種である。これらの紡錘虫化石は下位のParaschwagerina (Acervoschwagerina)亜帯から上位のYabeina igoi亜帯まで識別される。本地域の紡錘虫化石と青海, 赤坂, 伊吹山のそれとの対比を試みた。
著者
岡本 隆
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.154, pp.117-139, 1989-06-30
被引用文献数
1

Nipponitesおよび近縁種Eubostrychoceras japonicumについて, 層序学的な形態変化をできる限り詳細に検討したところ, 各々の系統では, 時代と共に少しずつ, しかしながら段階的に殼表面の彫刻が変わっていくことが明らかになった。一方, Nipponitesの系統で最も原始的な形態型の殼彫刻やその他の形質は, 同時代のEubostrychocerasのそれと, ほとんど区別できない。両者は, 殼の三次元的構造が全く異なっており, これらの中間的形態も知られていないが, 前者は後者から派生したことが強く示唆される。本研究で示されたデータは, 先に筆者によって理論形態学的に帰結された, "Nipponitesは, Eubostrychocerasから全く突然に(中間型なしに)生じた"という仮説を, 比較形態学的および層序学的側面から支持するものである。
著者
松岡 数充
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
vol.1974, no.94, pp.319-340_1, 1974

奈良盆地東縁部に分布する中下部中新統の藤原層群から検出された双鞭毛藻化石とアクリターカ化石14属19種(うち4新種, Diphyes latiusculus, Hystrichokolpoma elliptica, H. denticulata, Tanyosphaerdium fusiform)を記載・分類した。これらの微化石は藤原層群上部の豊田累層に多産し, その群集組成から2つに区分される。一つは豊田累層下部に認められ, 種類数・個体数ともに貧弱である。一方同累層上部では種類も多様になり, また個体数も増加する。また記載されたAreoligera senonensis, Diphyes colligerum (DEFLANDRE & COOKSON)やGonyaulacysta属, Tanyosphaeridium属, Schematophora属は, これまでヨーロッパ, 北アメリカ, オーストラリア地域の上部白亜系から古第三系に普遍的に認められており, 中新統よりの報告は, これが最初であろう。
著者
胡 忠恒
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.135, pp.395-"400-1", 1984-10-15

ウォルコット採石場より採集した中期カンブリア紀の三葉虫Ehmaniella burgessensisの個体発生を記載した。E. burgessensisの原楯期はSao hirsuta, Crassifimbra walcotti, Glyphaspis cf. parkensis, Yuknessaspis santaquinensis, Trymataspis convexus及びEhmaniella sp.の原楯期と良く似る。しかしその中年期は二組の形態群に分けられる。即ちE. burgessensis, Sao hirsuta, Glyphaspis cf. parkensis, Yuknessaspis santaquinensis, Ehmaniella sp.が一組, Crassifimbra walcotti及びTrymataspis convexusがもう一組である。この現象は, これらの三葉虫が共通の祖先より由来し, その後二つの異なる群に分かれたことを示すものであろう。