著者
岡野 清志 富田 常義 久米田 裕子 松丸 恵子 一戸 正勝
出版者
マイコトキシン研究会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.107-114, 2008-07-31
被引用文献数
1 4

わが国に輸入される生落花生のうち,主要輸入国の試料について,年間,約2,300-3,000 検体について2002 年から2006 年までのアフラトキシン(AF)検査の結果をとりまとめた.5年間の調査期間において,中国,南アフリカ,米国およびパラグアイ産の落花生についてAFB<sub>1</sub>,B<sub>2</sub> が検出されるものとAFB<sub>1</sub>,B<sub>2</sub>,G<sub>1</sub>,G<sub>2</sub> が検出されるものと比較するとともに,わが国のAFB<sub>1</sub> 単独10 μg/kg 規制した場合と,国際的に採用されているB 群,G 群AF を総量15 μg/kg で規制した場合を想定して検査試料数に対する規制値を超える試料の比率を集計した.結果として,試料数の多かった中国産落花生ではAFB<sub>1</sub> 単独規制では0.4-0.8 %が規制値を超え,AFBG 総量規制では0.4-1.1 %が規制値を超えていて,ほとんど同様であった.南アフリカ産落花生でも同様で,AFB<sub>1</sub> 単独規制では0.3-1.0 %,AFBG 総量規制で0.3-1.2 %が規制値を超えていた.輸入落花生由来菌につき,AF汚染の原因となる<i>Aspergillus</i> section <i>Flavi</i> に所属する菌について形態的,AF およびシクロピアゾン酸の産生性,heteroduplex panel analysis(HPA)による識別を検討したところ,中国産AFBG 検出試料の汚染原因は<i>A. parasiticus</i> であったのに対し,南アフリカ産AFBG 検出試料から分離した菌株には<i>A. prasiticus</i> のほかに小型の菌核を多数形成し,AFBG 群を産生する非典型的な<i>A. flavus</i> が存在した.この菌種はsection <i>Flavi</i> に関するHPA においてAfF4 に属する菌株であった.
著者
杉浦 義紹
出版者
マイコトキシン研究会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.49-61, 2012-07-31
被引用文献数
2

フザリウム属菌はごくありふれた糸状菌で,世界的に広く作物畑に分布している.その中のいくつかの菌種はトリコテセン類,ゼアラレノン,フモニシン類などのカビ毒を産生することで知られ,それらはヒトや動物のカビ毒中毒症と係わりがある.1980年以来,数種のフザリウム属菌の化学的な特徴を研究して来た.その研究にはフザリウム・クロックウェレンスの植物病原性とフザリウム・ソラニのマウス病原性も含まれている.本総説ではこれまでの実験的なフザリウム研究の概略とその研究中に得た経験をいくつか紹介する.
著者
前田 一行 中嶋 佑一 市川 雛代 鬼頭 良幸 古﨑 貴大 斎藤 臣雄 本山 高幸 長田 裕之 小林 哲夫 木村 真
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.69-74, 2014-01-31 (Released:2014-06-21)
参考文献数
21

赤かび病菌Fusarium graminearumはトリコテセン系かび毒を産生し穀類を汚染する病原菌である.トリコテセン類は安定性が高く,分解・除去が困難であるため,かび毒の産生そのものを制御する手段の確立が望まれている.我々は赤かび病菌のトリコテセン系かび毒の産生制御に向けた制御化合物の探索を行っている.理化学研究所天然物化合物バンク(NPDepo)から供与される化合物を直接,毒素誘導条件下の菌体に処理してトリコテセン産生への影響を調べる方法に加え,化合物アレイを用いてトリコテセン生合成酵素の阻害剤を探索している.本稿では,これらの手法によって現在までに得られつつある有用化合物に関する活性評価と作用機作についての概要を紹介する.
著者
Masashi Yamaguchi
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.81-99, 2015-07-31 (Released:2015-09-01)
参考文献数
43
被引用文献数
2 8

Three topics from electron microscopic studies of microorganisms carried out in my laboratory in recent ten years are described. 1) Influenza A virus was observed in water by an ice-embedding method using phase contrast electron microscopy developed in Japan. Virions appeared as spherical or elongated particles consisting of spikes, an envelope, and a core with high contrast. 2) A new term the “structome” was introduced and defined as “the quantitative and three-dimensional structural information of a whole cell at electron microscopic level.” We performed structome analyses of Saccharomyces cerevisiae by using freeze-substitution and serial ultrathin sectioning electron microscopy. We found that there were one to four mitochondria and about 195,000 ribosomes in a cell. 3) In the deep-sea off the coast of Japan, we discovered a unique microorganism appearing to have cellular features intermediate between prokaryotes and eukaryotes. The organism, named as the Myojin parakaryote, was two orders of magnitude larger than a typical bacterium and had a large “nucleoid”, surrounded by a single layered “nucleoid membrane”, and bacteria-like “endosymbionts”, but it lacked mitochondria. This organism exemplifies a potential evolutionary path between prokaryotes and eukaryotes, and the presence of the organism supports the endosymbiotic theory for the origin of mitochondria and the karyogenetic hypothesis for the origin of the nucleus. These studies show that the electron microscopy is a powerful tool for studying a wide range of problems of microorganisms.
著者
福島 昭治 魏 民 アンナ 梯 鰐渕 英機
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.119-128, 2008 (Released:2008-10-07)
参考文献数
14

魚や肉などの焼けこげに含まれている2-amino-3,8-dimethylimidazo[4,5-f ] quinoxaline(MeIQx)のラット肝臓における低用量発がん性を中期発がん性試験法で検討した.その結果,MeIQx?DNA 付加体形成は微量からみられ,より高い用量で8-hydroxy-2′-deoxyquanosine 形成,lacI 遺伝子変異,イニシエーション活性等が誘発された.また,肝臓の前腫瘍性病変であるglutahione S-transferase placental(GST-P)陽性細胞巣は,さらにより高い用量で誘発された.N- ニトロソ化合物であるN-nitrosodiethylamine やN-nitrosodimethylamine でもGST-P 陽性細胞巣の発生は微量では発生しなかった.次に大腸発がん物質である2-amino-1-methyl-6-phenylimidazo [4,5-b] pyridine(PhIP)のラット発がん性を検討すると,大腸粘膜におけるPhIP-DNA 付加体形成は微量から認められたが,前腫瘍性病変の代替マーカーである変異クリプト巣は,かなりの高用量でのみ誘発された.非遺伝毒性肝発がん物質であるphenobarbital は,GST-P 陽性細胞巣の発生を高用量では増加,逆に低用量ではその発生を抑制した(ホルミシス現象).これらの結果から,遺伝毒性発がん物質には閾値,少なくとも実際的な閾値が,また,非遺伝毒性発がん物質には真の閾値が存在すると結論する.
著者
Tomoyasu Taguchi Atsushi Ishihara Hiromitsu Nakajima
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.131-142, 2015-07-31 (Released:2015-09-01)
参考文献数
37
被引用文献数
1

Fungal contamination of food is one of the most important food safety concerns, however effective techniques to prevent fungal contamination and/or control fungal growth in foods have not yet been established. Some endogenous volatile compounds in plants have antibacterial and/or antifungal activities. For example, when some plants are damaged, they release aliphatic aldehydes with six or nine carbons to protect themselves from microbial infection. Patulin is the major mycotoxin that contaminates apples and apple juice worldwide, and it is regulated in many countries. Patulin has been shown to be immunotoxic and neurotoxic by animal experiments. Many species of Penicillium and Aspergillus produce patulin, but P. expansum is the most typical species responsible for patulin contamination in apples. We attempted to assess the effects of aliphatic aldehydes on P. expansum. Aliphatic aldehydes composed of 3–6 carbons bearing an E double bond at the α-position completely inhibited the fungal growth and suppressed colony formation from spores at relatively low concentrations. On the basis of the structure-activity relationship, the antifungal activity of the compounds is probably attributable to the interaction of the aldehyde group with biological macromolecules. On the other hand, aliphatic aldehydes with 8–10 carbons stimulated patulin production by P. expansum. The results of a reverse transcription-quantitative polymerase chain reaction analysis suggested that the stimulation was partially due to enhanced transcription of some patulin biosynthetic genes. The effects of volatiles of apple on patulin production by P. expansum were also studied. Some volatile compounds, that is, 2-mehtylbutanoic acid and ethyl 2-methylbutanoate, were found to stimulate patulin production. These findings will contribute to the development of new techniques to prevent and control fungal and mycotoxin contamination of foods.
著者
駒井 信一郎 細江 智夫 野沢 幸平 オカダ カオル デ・カンポス・タカキ ガルバ・マリア 福島 和貴 宮治 誠 堀江 義一 河合 賢一
出版者
Japanese Society of Mycotoxicology
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.11-18, 2003-01-31
被引用文献数
3 18

新たに分離された糸状菌102菌株の培養エキスについて病原性糸状菌2種および病原性酵母2種を用いて抗真菌性を調べた結果,35菌株に抗真菌活性が認められた.今回は,APBAをはじめとする各種アスペルジルス症の原因菌であるアスペルジルス·フミガツスに対して特異的に抗菌活性を示したアスペルジルス·ベルシカラー·グループに属するIFM 51759株に着目し,その成分検索を行ったところ,3種のピラノン誘導体,アスペルリンとその立体異性体及びアセチルフォマラクトンとともに新規フラノン誘導体エピムサシンDを得たので,その構造を各種機器データの解析から推定した.今回得られた4化合物について抗アスペルジルス·フミガツス活性を検討したした結果,アスペルジルス·フミガツスに対してのみ抗菌活性を示したアスペルリンとアセチルフォマラクトンがその生産量と活性の強さからIFM51759株の活性本体と想定した.また,フラノン誘導体エピムサシンDはピラノン誘導体とは異なり,弱いながらアスペルジス·ニガーにも抗菌活性を示した.
著者
伊藤 綾子 渡辺 康 中島 正博
出版者
マイコトキシン研究会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.7-13, 2008-01-31
被引用文献数
1

チョコレート中のアフラトキシン(アフラトキシンB<sub>1</sub>, B<sub>2</sub>, G<sub>1</sub>, G<sub>2</sub>;AFs)分析法を確立し、室内再現精度の確認を実施した。チョコレート中のAFsは、アセトニトリル-メタノール-水(60+10+40, v/v/v)で抽出し、イムノアフィニティカラムにより精製後、蛍光検出HPLCにて定量を行った。試料にAFs標準液を0.1および10.0 μg/kgの濃度となるように添加し、日内および日間における繰り返し試験を行った結果、全てのAFsにおける回収率は90-97 %、併行再現性の相対標準偏差は1.7-3.3 %、日間再現性の相対標準偏差は0-4.1 %、異日分析における室内再現性の相対標準偏差に対するHorRatは、全て0.2以内であった。以上の結果から、チョコレート中のAFsは本法により精度良く分析できる事が確認された。
著者
作田 庄平
出版者
マイコトキシン研究会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.79-86, 2010-07-31
被引用文献数
16 4

<i>Aspergillus parasiticus</i>によるアフラトキシン生産あるいは<i>Fusarium graminearum</i>によるトリコテセン生産に対する阻害活性を指標として,微生物の代謝物および精油を対象に活性物質の探索を行った.その結果,放線菌の生産するアフラスタチン類,ブラストサイジンAおよびS,ジオクタチンAがアフラトキシン生産を強く阻害することを見出した.また,精油成分であるディルアピオール,アピオールおよびスピロエーテルがアフラトキシンG<sub>1</sub>を特異的に阻害することを見出し,さらにスピロエーテルはトリコテセン生合成の鍵酵素であるTRI4の酵素活性を阻害しトリコテセン生産を抑制することを示した.また,特異的なトリコテセン生産阻害物質として精油からプレコセン類およびピペリトンを単離した.得られた阻害物質はアフラトキシンあるいはトリコテセン汚染防除剤開発におけるリード化合物として有用であり,それらの作用点はより効果的な薬剤を得るために重要であるばかりでなく,カビの二次代謝産物生産調節機構を解明する上での貴重な情報を与える.
著者
新国 佐幸 ウトモ ジョコ・スシロ アンタルリナ スリ・サティア ギンティング アリアナ 後藤 哲久
出版者
Japanese Society of Mycotoxicology
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.13-22, 2002-01-31
被引用文献数
3

インドネシアの醤油ケチャップおよび発酵大豆タウチョの大豆麹を採取した.収集試料6点のうち,5点からは <i>Aspergillus</i> が主要菌として分離された.収集試料からは,アフラトキシンは検出されなかったが,2株のアフラトキシン生産菌が分離された.アフラトキシン汚染防止の観点から種菌の開発を行うため,<i>Aspergillus</i> 属の優良菌株2株を選択し,さらに,紫外線照射により,それらの白色変異株を造成・取得した.白色変異株は,アフラトキシン生産菌とは,外観から容易に識別された.これらの変異株には,アフラトキシン生産性は認められず,また,これらを用いて調製した諸味のフォルモール窒素の値は,親株を用いた場合とほとんど変わらなかった.アフラトキシン生産菌の常在地では,麹菌白色変異株の種菌としての利用は有用である.
著者
中里 光男
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.1983, no.18, pp.6-11, 1983-12-30 (Released:2010-02-04)
参考文献数
31
被引用文献数
1 2
著者
白井 誠
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.42, pp.3-5, 1996-01-31 (Released:2009-08-04)
参考文献数
8
被引用文献数
1
著者
小中 龍一郎
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.103-107, 2001 (Released:2009-03-13)

In Japan, an import amount of pistachio nuts, from the United States is increasing every year, because there is hardly contamination with aflatoxin in the pistachio nuts. On the basis of the local information, I introduce a process from the harvest of pistachio nuts to manufacture at California. As the result of manual, standard, machine harvest, machine dryness and industry-university collaboration, we can have high quality pistachio nuts with little aflatoxin contamination. So as to prevent contamination with aflatoxin, pistachio nuts need to be isolated from fungus. Therefore, it is necessary to have the consistent control system that is from farm to factory.
著者
小西 良子
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.31-36, 2007 (Released:2007-04-12)
参考文献数
4
被引用文献数
1

オクラトキシンAは、Penicillium 属および Aspergillus属が産生するカビ毒である。ヒトにおいては腎毒性があることが疑われており、実験動物では腎毒性、腎臓がんを起こすことが実証されている。ヨーロッパでは、オクラトキシンAの実態調査が精力的に行われ、それを基に基準値の設定がなされている。コーデックス委員会でも、その基準値の策定が秒読み段階に来ている。しかし、わが国ではいまだ基準値設定が行われていない。そこで、本稿では国際的動向、オクラトキシンAの毒性、わが国での汚染実態、その分析法を紹介し、なぜオクラトキシンAは食品衛生上問題となるのか、今後基準値設定に向けてどのようにわが国は対処していくのかを述べる。
著者
亀井 克彦 落合 恵理
出版者
Japanese Society of Mycotoxicology
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.47-51, 2008-01-31
被引用文献数
1

屋内環境中には多種多様な真菌が生息している。これらの真菌の多くはマイコトキシンを産生するが、マイコトキシンとヒト疾患との関連性については未解明の点が多い。例外としては、近年、<i>Aspergillus fumigatus</i> によって産生されるグリオトキシンがアスペルギルス症の発症に関与していることが明らかにされた例がある。<i>Stachybotrys chartarum</i> は住環境内でも見受けられるほど広範に分布する真菌である。この真菌の吸入によって乳児特発性肺出血が惹起される可能性が報告されているが、その詳細は未だ明らかになってはいない。<i>S. chartarum</i> はトリコテセンのような種々の二次代謝産物を産生することから、我々は本菌の反復吸入がヒトの肺に何らかの影響を与えるものと考えた。<i>S. chartarum</i> を長期間吸入することによる影響を明らかにするために、我々は2週間に3回の頻度で本菌の胞子をマウスに経気管的に反復投与した。その結果、病理組織学的検討によってマウスで肺高血圧が惹起されることが明らかになった。これらのマウスでは肺動脈壁が肥厚し、内腔の狭窄や閉塞が生じていた。さらに、右室圧の上昇も確認された。トリコテセン産生の有無が異なる<i>S. chartarum</i> の株を用いた検討では、トリコテセン産生株を投与した場合で肺高血圧が惹起され、肺動脈病変の形成にはトリコテセンが関与する可能性が示唆された。このことについては今後更なる検討を行う必要がある。
著者
須永 恭之
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.65-69, 2011-07-31 (Released:2011-09-23)

わが国の気候条件は麦類の生育後期に降雨が多く,麦類に赤かび病が発生しやすいものであるため,気候条件によっては赤かび病がまん延し,麦類中に病原菌が産生するデオキシニバレノール(DON)及びニバレノール(NIV)の含有量が高くなる可能性があります. このため,国内産麦類中に含まれるDON・NIVによる健康被害の発生を未然に防止することを目的として,麦類の播種前から収穫までの栽培段階,乾燥調製,貯蔵の各工程で活用できる「麦類のDON・NIV汚染低減のための指針」を公表し,この指針に示した低減対策が各産地に導入されるよう普及を進めています.
著者
須崎 浩一 伊藤 伝 兼松 聡子
出版者
Japanese Society of Mycotoxicology
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.137-141, 2008-07-31
被引用文献数
1 3

果樹研究所内のリンゴ園から傷害を受けた果実を採集し,リンゴ青かび病菌<i>Penicillium expansum</i> の分離を試みた.その結果,果皮に裂開があり地面に落ちていた果実から青かび病菌を分離した.さらに国内の複数リンゴジュース工場においても,貯蔵中の原料果実から青かび病菌の分離される場合があった.次いで果実表面の傷の種類と発病との関係を調べた.その結果,果肉が露出するような大きな傷を与えた果実では全て発病した.人為的な付傷処理を行っていない果実においても接種により発病がみられ,腐敗は「つる割れ」,「果面の荒れ」および「果点」から始まっていた.また,リンゴ青かび病の防除技術について,生物農薬の利用および貯蔵法の改良を検討した.市販の複数の生物農薬において<i>Erwinia carotovora</i>製剤が本病に対して高い予防効果を示した.青かび病の発生抑制にはCA(controlled atmosphere)貯蔵が有効である.近年「鮮度保持フィルム」を用いてCA 貯蔵と同様な環境を再現するMA(modified atmosphere)包装が実用化されていることから,MA 包装により青かび病防除が可能かどうかを検討した.青かび病菌を接種したリンゴ果実を,鮮度保持フィルムを用いて作製した袋(以下,MA 袋)に収納し,一定期間放置後に生じた腐敗の大きさと腐敗中に蓄積したパツリン量を調べた.MA 袋に収納した果実では腐敗の進展が抑制されたとともにパツリンの蓄積も著しく抑制された.
著者
スウィウェク・ リピゴルゴソン ノルハヤティ・ アリ 芳澤 宅實
出版者
Japanese Society of Mycotoxicology
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.95-101, 2003
被引用文献数
9

タイ,パキスタン,バングラデッシュからわが国に輸入された白米を汚染するアフラトキシン(AF)の分析を,モノクローナル抗体を用いた直接競合ELISA 法ならびにイムノアフィニティーカラムとHPLC(IAC-HPLC)法により行なった.ELISA(検出限界2.8 μg/kg)では,分析した20 検体からアフラトキシンB<sub>1</sub>(AFB<sub>1</sub>)は検出されなかった.しかし,IAC-HPLC(検出限界0.1 μg/kg)においては,20 検体中5 検体(タイ3検体,パキスタン2検体)から0.1 - 0.3 μg/kg のAFB<sub>1</sub> が検出され,またAFB<sub>1</sub> 0.3 μg/kg で汚染したパキスタン米からはAFB<sub>2</sub>(0.1 μg/kg)も認められた.輸入米のAF 汚染レベルはわが国の基準値(10 μg/kg)に比べきわめて低いレベルであったが,アジア地域の主食としてのコメのAF 汚染はヒトのAF 暴露を精確に評価する上で重要な課題である.