著者
高木 史人 南 清司
出版者
農業食料工学会
雑誌
農業機械学会誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.349-360, 1986

大量の穀物を長期間安全に貯蔵するためには, 穀物がサイロへ投入されてから排出されるまでの段階で発生する様々なトラブル (偏析・固結・破砕・発熱・閉塞・変質等) の中で, 他のトラブルの原因となる穀物をサイロへ投入する際の偏析や貯蔵中の固結に対して, 適切な防止策を講ずることが重要である。<br>そこで, 輸入大豆サイロによる偏析と固結の実態調査と貯蔵物である丸大豆・割豆・ダスト・夾雑物・豆皮に関する各種の物性実験をおこなった。実験の結果, (i) ダストは吸湿性・固結性・発熱性等が高く第1に除去すべき物質である。(ii) 割豆は流動性が悪くダストと共に固結物を形成しやすい物質である。等が明らかになった。以上の結果を基にして, 偏析・固結の防止策を検討し, サイロ投入時に偏析を起こさない粉粒体供給装置を提案した。
著者
山本 博昭
出版者
農業食料工学会
雑誌
農業機械学会誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.3-12, 1994
被引用文献数
1

不整地走行車両には多様な形態が考えられるが, ハウジング揺動型の小型クローラ4基で走行する車両の試作開発を試みた。各クローラは, 走行駆動と同時にそれ自体を回転・揺動させて車体地上高を変え, 路上の段差・障害を踏破しようとする構想である。また, 前後にある左右クローラ揺動軸を差動装置で連結し, 互いに逆方向に差動するそれらの揺動運動を利用して, 車体左右の地上高の差を修正し, 両輪の常時接地と車体の水平化を図った。本報では, 試作車両の構造・機能の特徴, 差動機構を利用した走行部の機構学的特性及び各クローラ接地反力 (接地荷重) の変動に関する解析結果について報告する。
著者
北野 昌則 渡辺 啓二 篠村 和也 藤島 明宏
出版者
The Japanese Society of Agricultural Machinery and Food Engineers
雑誌
農業機械学会誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.23-31, 1994 (Released:2010-04-30)
参考文献数
7

本報文では, 装軌車の超堤性能, すなわち垂直段差障害に対する装軌車の走行性能を明らかにすることを目的としており, 車両諸元および履帯と地盤間のすべり特性などから超堤運動の理論モデルを確立するとともに, 理論解析と模型実験の両面から比較検討した。その結果, 履帯と路面の相互作用を考慮した超堤運動の理論モデルにより装軌車の超堤性能の解明が可能となった。また, 装軌車の超堤性能は車両の幾何学的形状と地盤特性に大きく影響を受けることが明らかとなった。
著者
アルカラス ジョエル マツサレム 山下 淳 佐藤 員暢
出版者
農業食料工学会
雑誌
農業機械學會誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.80-89, 2008-03-01
参考文献数
3

グリーンハウスにおいて, トラクタ・トレーラからなる連結車両 (TTC) の運転操作を容易にするため, 機械式けん引制御システム搭載のトレーラ車両を開発した。このTTCは, 旋回角が小さく, 狭い通路で運転するとき, 旋回半径を減じること, 直進後退時に発生するジャックナイフ現象やジグザグ走行を防止することを目的にして考案されたものである。コンクリート路面上でTTCの旋回半径及びヨーレートを測定した結果, 旋回半径は従来の一点ヒッチ式に比して約16%, 内輪差は約20%と小さくなること, 直進後進時には従来型はジグザグ走行し, 無操舵の場合にはジャックナイフ現象が現れるが, TTCはトラクタとトレーラが一体構造になるため, ヨーレートは0.025~0.05deg/sと小さいことが判明した。
著者
今野 博
出版者
農業食料工学会
雑誌
農業機械学会誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.328-335, 1970-03-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
4
著者
松田 郁生 森嶋 博 瀬尾 康久 相良 泰行
出版者
The Japanese Society of Agricultural Machinery and Food Engineers
雑誌
農業機械学会誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.75-82, 1990
被引用文献数
2

食パン工場のオーブンから未利用のまま排出されている130~180℃の排ガスの再利用を検討するために, オーブンの熱および物質収支を計測した。そのデータからエクセルギを算出し, 排熱エネルギの質を明らかにした。排熱エネルギを吸収冷凍機の熱源として利用したエネルギリサイクリングを想定し, 冷凍能力を試算した。その結果, 冷却工程においてパンを冷却するのに必要な冷熱が得られることが分かった。
著者
加藤 宏郎 坂口 守彦 大井 康之 丸尾 信 豊田 薫
出版者
The Japanese Society of Agricultural Machinery and Food Engineers
雑誌
農業機械学会誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.76-83, 2000-05-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
21
被引用文献数
6

魚介類の官能的鮮度評価法に代わる迅速かつ簡便な鮮度評価方法の1つとして, 10kHz以上の高周波域での電気的評価方法の開発を試みた。電気インピーダンスやその要素の周波数特性による材料評価法はインピーダンススペクトロスコピー法とも呼ばれ, 生物組織では損傷や鮮度低下など細胞レベルの劣化情報を迅速に得ることができる。本報では, マダイ背肉部分の抵抗・リアクタンスなどの周波数特性や複素インピーダンス軌跡の氷蔵期間中の変化を測定し検討した。その結果, 鮮度変化に伴い明らかに変動する実用的鮮度指標として, 電極分極インピーダンスが微小となる10kHz~1MHzの高周波域から算出した Cole-Cole の円弧半径, 異なる周波数 (10kHzと1MHz) における抵抗比と差, 中心緩和周波数, リアクタンスのピーク値などを選び出した。
著者
高木 浩一 齋藤 達也 日下 智博 坂本 裕一 高橋 久祐 成松 眞樹 長根 健一 山口 諒
出版者
農業機械學會
雑誌
農業機械學會誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.483-489, 2012-11-01
参考文献数
11

食用きのこの増収を目的に,電気刺激用パルス電源の開発と,それを用いて増収効果を検証した。木材腐朽菌のシイタケ,ナメコ,クリタケ,ハタケシメジの4種類を実験に用いた。パルス電源は,軽量コンパクト化が可能な誘導性エネルギー蓄積方式で構成した。電源出力は100kV以上,パルス幅は約100nsである。この電源でホダ木や菌床に高電圧を印加し,収量を調べた。電圧印加により,収量は1.3&sim;2.0倍に増加した。シイタケの4シーズンの累積収量は,電圧50または100kVの1回印加で,160から320gへ増加した。しかし電圧130kVでは240gに減少した。他のきのこも,50&sim;100kVで増収となった。
著者
川村 登 並河 清 藤浦 建史 浦 元信
出版者
The Japanese Society of Agricultural Machinery and Food Engineers
雑誌
農業機械学会誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.353-358, 1984 (Released:2010-04-30)
参考文献数
3
被引用文献数
7

トマト等の果菜類の自動収穫を目的として比較的安価で, 消費電力の小さい小型の農業用知能ロボットの試作を行った。マニピュレータは自由度5で, 直流モータ駆動の人間腕型のものとし, その動きを数値制御して果実の把握を行えるようにした。テレビカメラにはMOS形固体撮像素子を用いたものを使用し, 赤信号と輝度信号をコンパレータで比較し2値化してDMAにより画像メモリに入力した。画像入力はカメラを移動して2度行い, ステレオ写真の方法で果実の3次元位置を得た。このロボットを用いて野外で連続した果実収穫実験を試みた。本報では主にマニピュレータのハードウェアとソフトウェアについて, また果実収穫の基本動作の実験結果について報告する。
著者
ロイ スワパン クマル 澁澤 栄 ラヒム アノアール アドゥル 下保 敏和
出版者
農業食料工学会
雑誌
農業機械學會誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.88-95, 2004-07-01
参考文献数
31
被引用文献数
1

西マレーシアの水田において2000年に土壌特性と収量を格子状に取得した。ジオスタティスク解析の結果, 土壌特性と収量には強い相関があり, レンジは土壌特性より収量の方が短かかった。代用データ (土壌特性) を用い, 収量の空間的ばらつきをコクリギングにより推定したが, このほ場ではそれほど精度を高める効果がなかった。クリギングにより得られた収量マップでは, プロット値の中央部は長辺方向両端に対して低収量 (3.5t/ha未満) であった。5t/ha以上の高収量を得るために, 低収量領域への特別な処置として, 土壌中のN及びP含有量を増加させる必要性が示唆された。
著者
水島 晃 野口 伸 松尾 陽介
出版者
農業食料工学会
雑誌
農業機械學會誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.136-144, 2004-11-01
参考文献数
8

GPSを利用した農業用アプリケーションの開発が国内外で盛んに行われている。本研究では方位センサなどを使用せずGPSのみを使用して方位を計測する手法を考案した。方位角推定には車両のステアリングなどの車両情報も使用できない環境であることを想定した。まず, 直線走行, 曲線走行試験を行いGPSの測位点から直接方位を計算して精度を評価・検討し問題点を明らかにした。その結果, GPSによる方位計測はノイズが大きく, 時間遅れの影響も無視できないことが明らかとなった。そこで, 自己回帰モデル (ARモデル) による方位推定手法を考案し, 方位計測精度の改善を試みた。その結果, 直進走行における方位計測で30%, 曲線走行における方位計測で50%精度を改善することができた。
著者
繆 冶煉 アガド マルシャルD. 吉崎 繁
出版者
農業食料工学会
雑誌
農業機械學會誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.43-48, 1996-09-01
参考文献数
11
被引用文献数
1

95%相対湿度の空気中, あるいはまき床で培養した玄米試料の遊離アミノ酸を定量分析した。空気中で培養した玄米に蛋白質および遊離アミノ酸の含有量の変化は見られなかった。一方, 15, 30および40℃のまき床での培養により玄米の遊離アミノ酸総量は23.05mg%からそれぞれ31.18, 54.79および40.75mg%に増加した。遊離アミノ酸の生成は蛋白質の分解に由来し, その過程は一次反応モデルで近似できた。各遊離成分の生成速度は温度によって異なり, それらの含有量は温度および時間の制御によって調整できることが明らかになった。