著者
向井 利典 三宅 亘 寺沢 敏夫 平尾 邦雄 MUKAI T. MIYAKE W. TERASAWA T. HIRAO K.
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集: 宇宙観測研究報告 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.59-74, 1986-03

本論文は, ハレー彗星探査機「すいせい」に搭載された太陽風観測装置の最初の2ヶ月間のイオン観測をまとめたものである。探査機はハレー彗星への巡行中であり, 最接近に向けて太陽風そのものの観測を行っている。現在は太陽活動極小期にあるため, 太陽風の状態は太陽自転に同期した典型的な変動を示している。観測器の性能は予期した以上のものを発揮し, H^+とHe^<++>の区別は勿論, O^<+6>, Si^<+7>, Si^<+8>等, 極微量成分の弁別まで可能である。これら重粒子イオンは太陽コロナの情報をもたらす貴重なデータであり, 特に低速度の太陽風で明瞭に観測されている。又, 太陽風のミクロな物理現象として, アルヴェン波やプロトンの温度異方性の存在も見出された。さらに, 流速が低速から高速に変化する時に速度ベクトルが西向きに大きく変化することも判った。これは低速域に高速流が追いついてきたときの相互作用によって生じたものと考えられる。
著者
林 友直 市川 満 関口 豊 鎌田 幸男 豊留 法文 山田 三男
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集: M-3SII型ロケット(1号機から3号機まで)(第1巻) (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
no.29, pp.173-184, 1991-06

M-3SII型ロケット(1&acd;3号機)打上げに用いたレーダ系の構成は, 基本的には地上装置及び搭載機器共に従来のM-3S型ロケットと同様であるが, レーダ搭載機器の性能改善, 小型軽量, 簡素化等信頼性向上の観点から見直しを行ない次のような変更を打なった。(1) 1.6GHz帯レーダトランスポンダ(1.6RT)アンテナの送受共用化(2) 5.6GHz帯コマンドデコーダ(5.6DEC)の更新(3)レーダトランスポンダ電源電圧の18V系への変更レーダ地上装置系(1.6GHz帯4mφレコーダ及び3.6mφレーダ, 5.6GHz帯精測レーダ)はロケット第二段計器部に搭載された各々のレーダトランスポンダからの電波を自動追跡し, 実時間におけるロケットの飛翔経路標定を打なった。さらに, 精測レーダからは飛翔中のロケットに対し電波誘導コマンドコードの送出を行ない, 総べて正常に作動した。しかし, このM-3SII型ロケットでは第二段ロケットエンジンの燃焼ガスによる電波減衰が従来のM型ロケットに比べて大きく生じた。本文では, これらのロケット追跡に用いた地上装置と, 今回変更したレーダ搭載機器の概要と追跡結果並びにデータ処理により得られたロケットの速度・加速度の大きさ及びそれらの方向等について報告する。資料番号: SA0167009000
著者
林 友直 横山 幸嗣 井上 浩三郎 橋本 正之 河端 征彦 大西 晃 大島 勉 加藤 輝雄 瀬尾 基治 日高 正規
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集: M-3SII型ロケット(1号機から3号機まで)(第1巻) (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
no.29, pp.141-171, 1991-06

M-3SII型ロケットでは, M-3S型と異なり, 新たに装備されたサブブースタSB-735の性能計測等のために, サブブースタにテレメータ送信機を搭載した。また, サブブースタの分離状況を画像伝送するため第2段計器部に画像伝送用テレメータ送信機を搭載し, さらに3号機では新たに開発された第3段モータの性能計測のために, 第3段計器部を設けてテレメータ送信機を搭載する等の大幅なシステム変更がなされている。搭載テレメータ送信機で新規に開発されたのは, 画像伝送用テレメータ送信機で, M-3SII型ロケットの試験機であるST-735ロケットで予備試験を行い, 地上追尾系を含めて総合的に性能の確認を行ったのち, M-3SII型1号機から本格的に搭載された。地上系では, 第2段モータの燃焼ガスが通信回線に大きな障害をもたらす等の問題が生じ, 2号機から高利得の18mパラボラアンテナを使用し, 従来の高利得16素子アンテナに対する冗長系を構成した。また, 第3段目の機体振動計測データ等を伝送していた900MHz帯テレメータは3号機から送信周波数がS帯へ変更されたのに伴い, 地上受信アンテナとしてはこれまで使用していた3mφパラボラアンテナをやめ衛星追跡用10mφパラボラアンテナを使用する事となった。データ処理系では, 計算機によるデータ処理が本格化し, 姿勢制御系, 計測系, テレメータ系のデータ処理のほか, 従来のACOSやRS系へのデータ伝送に加えM管制室へもデータ伝送が出来るようになった。コマンド系では, 1&acd;2号機は従来と同様であるが, 3号機から第1段の制御項目等を増やす必要からトーン周波数を増し, コマンド項目を3項目から6項目にし, さらに操作上の安全性を向上させた。集中電源は, 充電効率や管理の点等から見直しをはかり, 従来M-3S型で用いられていた酸化銀亜鉛蓄電池に替わりニッケルカドミウム蓄電池が使用されるようになった。資料番号: SA0167008000
著者
矢島 信之
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
宇宙科学研究所報告 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
no.40, pp.19-26, 2000-03

本論文では, ゼロプレッシャ気球とスーパープレッシャー気球を組合せた複合気球システムについて考察する。このシステムでは, ゼロプレッシャー気球がペイロード重量を支え, スーパープレッシャー気球が全体の浮力を制御する。この気球システムは, 単一構成のスーパープレッシャー気球と同様にバラストを捨てずに高度を維持できる。利点は(1)総気球重量が減少する, (2)スーパープレッシャバルーンが小型になる, (3)生産コストが下がる, ことである。他方, 欠点としては, (1)スーパープレッシャー気球は単独のシステムに比べ大きな圧力に耐えなければならず, (2)昼, 夜間で高度が僅かに変化する。こうした特徴を詳しく解析する。一般的には, 利点が欠点を上回る。解析結果は, 観測目的に応じて気球システムを選ぶ際に有効となる。資料番号: SA0167154000
著者
矢島 信之 YAJIMA Nobuyuki
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集: 大気球研究報告 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.19-26, 2000-03

本論文では, ゼロプレッシャ気球とスーパープレッシャー気球を組合せた複合気球システムについて考察する。このシステムでは, ゼロプレッシャー気球がペイロード重量を支え, スーパープレッシャー気球が全体の浮力を制御する。この気球システムは, 単一構成のスーパープレッシャー気球と同様にバラストを捨てずに高度を維持できる。利点は(1)総気球重量が減少する, (2)スーパープレッシャバルーンが小型になる, (3)生産コストが下がる, ことである。他方, 欠点としては, (1)スーパープレッシャー気球は単独のシステムに比べ大きな圧力に耐えなければならず, (2)昼, 夜間で高度が僅かに変化する。こうした特徴を詳しく解析する。一般的には, 利点が欠点を上回る。解析結果は, 観測目的に応じて気球システムを選ぶ際に有効となる。
著者
太田 茂雄 松坂 幸彦 鳥海 道彦 並木 道義 大西 晃 山上 隆正 西村 純 吉田 健二 松島 清穂
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
宇宙科学研究所報告 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
no.34, pp.1-15, 1997-03

低温性能に優れたポリエチレンフイルムの出現により, プラスチック気球による宇宙科学の観測は大幅な進歩を遂げてきた。気球の容積も10^6m^3級のものが実用化され, 2&acd;3トンの観測機器を搭載して高度40km程度の観測が行われるようになってきた。最近ではその成功率はほぼ100%に近い。ポリエチレン気球は優れた安定性を持っているが, ゼロプレッシャ気球であるために夜間気球内のガス温度が低下して, バラストを投下せねば一定高度を保つ事はできない。バラストの投下量は緯度にもよるが, 日本のような中緯度の上空では一晩に10%弱のバラスト投下が必要である事がこれまでの数多くの実験で確かめられている。したがって数日間の浮遊の後には, バラストは使い果たし, 観測を続けることはできない。この欠点を避けるために提案されたのがスーパープレッシャ気球である。スパープレッシャ気球は内圧のかかった気球で, 夜間気球内のガス温度が低下しても, 内圧が低下するだけで容積は変わらず, 水平浮遊の高度を保つ事ができる。バラストの投下が不必要で, 長時間にわたる観測が可能になる。ただし, 内圧がかかるために気球被膜はゼロプレッシャ気球に比べて, 強度の高いものが必要となり, またガスの漏洩があってはならない。最初に着目されたのはポリエステルフイルム(マィラー)である。ただし, マイラーはポリエチレン気球に比べると低温性能がわるく, また気球製作も難しいので, 現在のところ実用上は5000m^3程度の小型の気球のものにとどまっている。より性能の優れた気球用フイルムの研究は現在世界各国で行われており, 近い将来, 高性能の気球が出現し, 観測項目によっては人工衛星にくらべて極めてコストパーフォーマンスのよい気球が出現するものと考えられている。わが国では, クラレ社のEVALフイルムに着目し, その性質を調べると共に, 実際に気球を試作してその性質を調べている。EVALフイルムの際立った特徴はマイラーとほぼ同じ程度の強度を持つと同時に, 熱接着が可能な事, 特異な赤外線吸収バンドを持っている点である。スーパープレッシャ気球の材料として有望である。また同時に, 赤外線吸収バンドの関係で, 夜間での気球内ガス温度の低下がポリエチレン気球に比べてほぼ半減し, バラストの消費量が著しく節約できる事が期待出来る[1]。1996年の初めに小型のEVAL気球の試験飛翔を行なったが, その結果は良好であった。今後, 更に小型気球の飛翔試験を行い, 大型化して長時間観測のための優れた性能を持つ長時間観測用の気球を完成したいと考えている。ここではまず長時間観測システムの現状を概括する。ついでEVALフイルムについての特性, 特に熱接着法, 低温における接着強度と赤外の吸収バンドについて述べる。最後に昨年行われた, 試験飛翔の結果の解析, ついで将来のEVAL気球の展望について触れる事とした。資料番号: SA0167081000

1 0 0 0 OA エバール気球

著者
太田 茂雄 松坂 幸彦 鳥海 道彦 並木 道義 大西 晃 山上 隆正 西村 純 吉田 健二 松島 清穂 OHTA Sigeo MATSUZAKA Yukihiko TORIUMI Michihiko NAMIKI Michiyoshi OHNISHI Akira YAMAGAMI Takamasa NISHIMURA Jun YOSHIDA Kenji MATSUSHIMA Kiyoho
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集: 大気球研究報告 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.1-15, 1997-03

低温性能に優れたポリエチレンフイルムの出現により, プラスチック気球による宇宙科学の観測は大幅な進歩を遂げてきた。気球の容積も10^6m^3級のものが実用化され, 2&acd;3トンの観測機器を搭載して高度40km程度の観測が行われるようになってきた。最近ではその成功率はほぼ100%に近い。ポリエチレン気球は優れた安定性を持っているが, ゼロプレッシャ気球であるために夜間気球内のガス温度が低下して, バラストを投下せねば一定高度を保つ事はできない。バラストの投下量は緯度にもよるが, 日本のような中緯度の上空では一晩に10%弱のバラスト投下が必要である事がこれまでの数多くの実験で確かめられている。したがって数日間の浮遊の後には, バラストは使い果たし, 観測を続けることはできない。この欠点を避けるために提案されたのがスーパープレッシャ気球である。スパープレッシャ気球は内圧のかかった気球で, 夜間気球内のガス温度が低下しても, 内圧が低下するだけで容積は変わらず, 水平浮遊の高度を保つ事ができる。バラストの投下が不必要で, 長時間にわたる観測が可能になる。ただし, 内圧がかかるために気球被膜はゼロプレッシャ気球に比べて, 強度の高いものが必要となり, またガスの漏洩があってはならない。最初に着目されたのはポリエステルフイルム(マィラー)である。ただし, マイラーはポリエチレン気球に比べると低温性能がわるく, また気球製作も難しいので, 現在のところ実用上は5000m^3程度の小型の気球のものにとどまっている。より性能の優れた気球用フイルムの研究は現在世界各国で行われており, 近い将来, 高性能の気球が出現し, 観測項目によっては人工衛星にくらべて極めてコストパーフォーマンスのよい気球が出現するものと考えられている。わが国では, クラレ社のEVALフイルムに着目し, その性質を調べると共に, 実際に気球を試作してその性質を調べている。EVALフイルムの際立った特徴はマイラーとほぼ同じ程度の強度を持つと同時に, 熱接着が可能な事, 特異な赤外線吸収バンドを持っている点である。スーパープレッシャ気球の材料として有望である。また同時に, 赤外線吸収バンドの関係で, 夜間での気球内ガス温度の低下がポリエチレン気球に比べてほぼ半減し, バラストの消費量が著しく節約できる事が期待出来る[1]。1996年の初めに小型のEVAL気球の試験飛翔を行なったが, その結果は良好であった。今後, 更に小型気球の飛翔試験を行い, 大型化して長時間観測のための優れた性能を持つ長時間観測用の気球を完成したいと考えている。ここではまず長時間観測システムの現状を概括する。ついでEVALフイルムについての特性, 特に熱接着法, 低温における接着強度と赤外の吸収バンドについて述べる。最後に昨年行われた, 試験飛翔の結果の解析, ついで将来のEVAL気球の展望について触れる事とした。
著者
西村 純 矢島 信之 藤井 正美 横田 力男 Nishimura Jun Yajima Nobuyuki Fujii Masami Yokota Rikio
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集: 大気球研究報告 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.13-19, 1990-12

この論文では金星大気の運動や組成を観測する金星気球を開発するため, 金星気球のモデル試験の方法を提案する。金星浮遊気球としては, いくつかの形態が提唱されてきたが, ここでは適当な液体をつめた相転移気球について詳しく検討する。金星大気の主成分は炭酸ガスで, 高度が下がるとともに温度が上昇するので, 気球内に入れた液体が蒸発して浮力を生ずる。ある高度を境として蒸発と液化が起こるので, 気球は一定高度に安定に浮遊することができる。金星大気から金星気球への熱伝達について詳しく解析するとともに, 温度勾配をつけた小型の水槽にモデル気球を浮かべて, 相転移気球の試験を行えることを実証した。
著者
湯元 清文 斎藤 尚生 中川 朋子 平尾 邦雄 青山 巌 瀬戸 正弘 YUMOTO Kiyohumi SAITO Takao NAKAGAWA Tomoko HIRAO Kunio AOYAMA Iwao SETO Masahiro
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集: 太陽風と彗星の相互作用研究報告 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.45-57, 1986-09

「さきがけ」に搭載されたリングコア磁力計は, Halley彗星最接近時の磁場変化や微小IMF変動を成功裡に観測した。この日本初の深宇宙探査機に搭載する為に, 計画的な地上, 大気球, ロケット実験がなされた。これらの研究から, 飛翔体を用いた磁場測定における磁力計設計製作において次の五項目;(1) 磁力計自体の電気的精度, (2) 検出器の機械精度, (3) 飛翔体の磁気バイアス, (4) 飛翔体の姿勢精度, (5) データ伝送量に留意し, 総合的な性能に仕上げる必要があることが確認された。
著者
山中 大学
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
no.20, pp.p43-59, 1987-08

1986年7月から実行段階に入った日中協同大洋横断気球実験に関連した, 盛夏季東支那海付近の気象学的知見(予測および実際)についてまとめる。鹿児島宇宙空間観測所(内之浦町)付近の地上気象は, 積雲対流や海陸分布に由来すると考えられる複雑な地上風と天候の日変化がある。上部対流圏の風向には大規模波動によると考えられる5-10日周期の時計回り回転がある。成層圏の風には, 東西波長200km 程度の重力波によると考えられる±5m/s 程度の風速変動がどの風向にも存在している。
著者
林 友直 市川 満 関口 豊 鎌田 幸男 豊留 法文 山田 三男
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.173-184, 1991-06

M-3SII型ロケット(1&acd;3号機)打上げに用いたレーダ系の構成は, 基本的には地上装置及び搭載機器共に従来のM-3S型ロケットと同様であるが, レーダ搭載機器の性能改善, 小型軽量, 簡素化等信頼性向上の観点から見直しを行ない次のような変更を打なった。(1) 1.6GHz帯レーダトランスポンダ(1.6RT)アンテナの送受共用化(2) 5.6GHz帯コマンドデコーダ(5.6DEC)の更新(3)レーダトランスポンダ電源電圧の18V系への変更レーダ地上装置系(1.6GHz帯4mφレコーダ及び3.6mφレーダ, 5.6GHz帯精測レーダ)はロケット第二段計器部に搭載された各々のレーダトランスポンダからの電波を自動追跡し, 実時間におけるロケットの飛翔経路標定を打なった。さらに, 精測レーダからは飛翔中のロケットに対し電波誘導コマンドコードの送出を行ない, 総べて正常に作動した。しかし, このM-3SII型ロケットでは第二段ロケットエンジンの燃焼ガスによる電波減衰が従来のM型ロケットに比べて大きく生じた。本文では, これらのロケット追跡に用いた地上装置と, 今回変更したレーダ搭載機器の概要と追跡結果並びにデータ処理により得られたロケットの速度・加速度の大きさ及びそれらの方向等について報告する。
著者
高野 忠 山田 隆弘 周東 晃四郎 金川 信康 田中 俊之
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.1-10, 1991-03

1990年1月24日に打ち上げられた「ひてん」OBC(搭載コンピュータ)を用いたフォールトトレランス実験の概要及び結果について報告する。本実験は, (1)人為的に発生させた誤りへのシステムの対応, (2)軌道上での稼働状況を見るものである。人為的に発生させた誤りに対してはシステムは設計仕様通り動作することを確認した。軌道上での稼働状況監視については, 誤り発生を記録する機能を打ち上げ後にOBCへのリモートローディングにより追加した。この機能により7月5日14 : 16(UT)から8月3日10 : 05(UT)の28.86日間に, RAMでSEUによって8回の1ビット誤りが観測された。このうち7月26日02 : 09 : 14(UT)にCell Cで発生したSEUは, 7月25日22 : 00&acd;7月26日01 : 51(UT)に発生した重要度2Nの太陽フレアの影響と見られ, 他のSEUは太陽フレアとの相関は認められず, 銀河宇宙線に由来するものと考えられる。
著者
牧野 忠男 山本 博聖 関口 宏之
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.63-71, 1984-03

1981年9月5日, 1000JSTに内ノ浦から打ち上げられたロケットS-520-4号機でIR Atmospheric Band Dayglowの測定を行った。搭載された装置は1984年に予定されている人工衛星EXOS-Cにおいて中間圏オゾン観測に使用される装置と同種であり, 今回のロケット実験はこの装置のフライトテストの目的で行われた。用いられたフィルター分光による1.27μm赤外放射計は, 3枚の平面鏡, カメラレンズ, チョッパー, PbS array検出素子から成っている。PbS arrayは4素子×5素子から成り, サーモクーラーで&acd;-4℃に冷却して使用した。ロケット実験によって以下の結果が得られた。(1) この装置はフライト中順調に動作した, (2) 海及び雲による1.27μm太陽光散乱強度が得られた, (3) 衛星からの測定において, さまたげとなる視野外からのもれこみ光量は十分低く押えられていた。またロケット下降時のデータから導出された昼間における中間圏オゾン密度は, 従来の薄明時での様相とほぼ一致するものであった。
著者
宇宙科学研究所編 山田 隆弘
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
pp.3-200, 1997
被引用文献数
1

本報告は, 宇宙実験・観測フリーフライヤー(SFU)の成果をまとめたものである。SFUは, 汎用・多目的のフリーフライヤーであり, 飛行後に回収され, 再飛行を行うことができる。SFUは, 1995年3月18日に宇宙開発事業団のH-IIロケットにより種子島宇宙センターより打ち上げられ, 軌道上で各種の実験・観測を行った。その後, 1996年1月13日にNASAのスペースシャトルにより回収され, 1月20日にケネディ宇宙センターに帰還した。本報告は, SFUのコアシステム(共通部分)について飛行の成果をまとめたものである。SFUの搭載実験の成果については, 別の報告書にまとめられる。本報告書の第1章では, SFUミッションの概要, SFUの開発の経緯, SFUの運用の概要について述べる。第2章では, SFUコアシステムの各々の部分について, (1)概要(主要な機能性能等), (2)軌道上での運用の結果, (3)回収後の試験・検査で判明したことを述べる。第3章では, 打上げ前から帰還後までの各運用のフェーズ毎に運用の結果を説明する。
著者
平山 淳 浜名 茂男 徳家 厚 今井 英樹 清水 一郎 守山 史生 吉田 安徳 佐下橋 市太郎 丹羽 登
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.93-105, 1982-08

Direct photographs of the solar granulation near the limb were obtained with a 30cm balloon-borne telescope. The observed position on the solar disk was at cosθ=0.7,where θ is the angle between the observer and the normal to the solar surface and the wavelength used was 545nm with a pass band of 40nm. Total half-width (FWHM) of the autocorrelation function of the contrast of the granulation was found to be 780km and 660km in radial and tangential direction to the solar limb, respectively. Although the latter value agrees with the older determination at the disk center, the distance, 2000km, to the minimum value of the auto-correlation function was much larger than those obtained by Leighton at the disk center. Two dimensional power spectrum was obtained and after corrections due to noise spectrum and finite resolution of the optical system, the root-mean-square brightness fluctuation of the granulation was found to be 7.0-7.9%. It is to be noted that the modulation transfer function of the optical system was determined at the partial eclipse of July, 30,1981. Two dimensional power spectrum per unit frequency area (arcsec^2) was fonund to be proportional to exp (-1.9f) where f is the frequency (cycles/arcsec). Further the autocorrelation function as determined from the earlier balloon flight with the use of a 10cm telescope showed a positive maximum around 24&acd;45Mm, which roughly coincides with the size of the supergranulation.
著者
伊藤 富造 本田 秀之 富永 健 巻出 義紘 八巻 竜太郎 中澤 高清 橋田 元 酒井 均 提 眞 蒲生 俊敬
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.49-61, 1989-12
被引用文献数
2

1988年5月21日に, 三陸大気球実験場でクライオジェニックサンプラーを用いて成層圏大気採取実験を行なった。高度19kmから30kmにわたる7高度で採取された大気の精密分析を行った結果, CFC-11,CFC-12,CFC-113,CCl_4,CH_3CCl_3,CO_2,CH_4,δ^<13>C, δ^<18>Oの高度分布が得られた。
著者
渡辺 勇三 雨宮 宏 中村 良治
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.191-204, 1989-03

昭和61年2月1日22時40分00秒に内之浦から打ち上げられた観測ロケットS-310-16号機に搭載された固定バイアス・ラングミュアプロープによって電離層電子密度の高度分布, および, 波長が3mから300mの電子密度のゆらぎが高精度で測定された。ロケット上昇時の高度74kmから93kmの領域のゆらぎのデータを周波数解析した結果, (1)ゆらぎのスペクトル指数は0.9&acd;1.8である, (2)ゆらぎの大きさは1&acd;15%である, (3)ゆらぎの大きさが最大になる高度は88kmであることがわかった。今回, 観測された電離層E層下部領域の電子密度のゆらぎは中性大気乱流の理論で説明することができる。また, プローブがロケットウェイクの端の領域に近づいた時に観測される大きな電子密度ゆらぎの特性が調べられた結果, (1)ロケット上昇時のアンテナ展張直後の低電子密度の領域から現われている, (2)ロケット下降時にはプローブが大小二つの連続した複雑なロケットウェイクの影響を受けている, (3)降下時の低高度領域では電子密度ゆらぎの信号には特にロケットウェイクの影響が認められない様な時でもその周波数解析の結果にはウェイクでの擾乱の特徴が大きく現われることが明らかとなった。ロケット降下時のプローブ観測の結果から電離層のことを検討するのは危険であることがわかる。