著者
深田 亮 村田 淳
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11633, (Released:2020-01-09)
参考文献数
21

【目的】長母指屈筋(以下,FHL)の損傷で母趾と示趾にClaw toe 変形が後遺し,Forefoot rocker 機能が破綻した歩行障害に対する理学療法について報告する。【対象】左FHL を切除後に,母趾と示趾にClaw toe 変形を認めた40 歳代前半の男性である。Terminal Stance(以下,TSt)において中足趾節関節が伸展するとFHL が伸張し,母趾と示趾のClaw toe 変形が増悪し疼痛が発生した。【方法】Forefoot rocker 機能を再獲得するために中足趾節関節の伸展を抑制したヒールレイズ,片脚膝立ち位でのステップ,8 の字固定バンドつき足底板を試みた。【結果】術後175 日後,母趾と示趾のClaw toe 変形は後遺したが歩行時の母趾底側先端の疼痛は消失し海外旅行が達成できた。【結語】TSt においてFHL を伸張させずに,かつ足底外側荷重を促すことで歩行時の疼痛は消失し,歩容の改善が得られた。
著者
大畑 光司 市橋 則明 竹村 俊一
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.175-181, 2004-06-20 (Released:2018-09-25)
参考文献数
19

本研究の目的は外側ウェッジが歩行中の下肢筋活動,足圧中心,骨盤の運動に与える影響について,明確にすることである。健常成人10名を対象とし,被験者にトレッドミル上を時速3kmで歩行させ,立脚期の下肢筋電図,足底圧と足圧中心移動,歩行中の骨盤中心の移動距離に生じる変化を測定し,外側ウェッジの有無により比較した。筋電図解析では,通常の歩行と比較して外側ウェッジ歩行では,長腓骨筋が立脚初期から中期にかけて有意な筋活動の増加を認めた。足圧中心は踵接地時に有意な外側変位を認め,立脚後期から有意な内側変位を認めた。しかし歩行時の側方への骨盤中心の移動には変化がなかった。本研究の結果,外側ウェッジにより,踵接地時に足圧中心を外側に変位させ,その後,腓骨筋の筋活動を増加させることが示された。
著者
峯松 亮 羽崎 完
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.128-129, 2011-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
6
被引用文献数
2

本研究は,デイサービス利用高齢者を対象に,足底への振動刺激(FVS)がバランス機能に与える影響を調査することを目的とした。対象高齢者は要支援1から要介護4のいずれかの介護認定を受けている18名(84.9 ± 5.0歳)であった。対象者へのFVSを15分間/回,2回/週で3ヵ月間実施した。対象者へのFVSの介入前後に,重心動揺計にて開眼時と閉眼時の重心動揺パラメータを測定した。また,10 m自然歩行時間(10 m歩行),Timed Up & Goテスト(TUG),ファンクショナルリーチテスト,体重負荷率を測定した。さらに足底の痛覚および二点識別覚を調べた。その結果,開眼時の総軌跡長,外周面積,実効値面積,実効値,Y方向最大振幅および閉眼時の総軌跡長はFVS介入後に有意に低値を示した。10 m歩行,TUGはFVS介入後に有意に低値を,体重負荷率は有意に高値を示した。痛覚は小指球および踵部はFVS介入後に有意に低値を示した。本研究では,FVSの実施によりバランス機能の改善が認められた。FVSは足底感覚を改善することにより,体重負荷率の増加をもたらすと考えられ,これにより重心動揺が減少(特に前後方向動揺)し,立位時の安定性が改善したと考えられる。また,10 m歩行,TUGの有意な減少は動的バランス機能が改善したためと考えられ,FVSの実施による足底感覚の改善,体重負荷率の増加が下肢の運動機能に何らかの影響を与えた可能性が考えられる。
著者
石毛 里美 柴 喜崇 上出 直人 大塚 美保 隅田 祥子
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.417-423, 2010-10-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
25

【目的】介護予防事業において,自己効力感(self-efficacy: SE)を向上させる4つの情報源に対応した取り組みを行い参加者のSEの変化を観察した。【方法】1回90分,週1回,3ヵ月間行われた介護予防事業の運動教室に参加した虚弱高齢者9名(男1名,女8名,平均年齢72.6 ± 6.4歳)に対し,4つの情報源である遂行行動の達成,代理的体験,言語的説得,生理的・情緒的状態に着目した取り組みを行い,3ヵ月間の前後において虚弱高齢者の身体活動SE,老研式活動能力指標(以下TMIG-IC),WHO-5精神的健康状態表(以下WHO-5),身体機能を聴取,測定した。【結果】虚弱高齢者の身体活動SE合計点は有意に向上し,下位項目の歩行SEにおいて大きな効果量が得られた。またTMIG-IC,WHO-5,8項目中6項目の身体機能に有意な改善,大きな効果量が得られた。また身体活動SEと歩行時間に有意な相関がみられた。【結論】介護予防事業におけるSEに着目した取り組みを紹介した。今後は統制群を設定するなどさらに検証が必要である。
著者
辻井 洋一郎
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.69-75, 1993-03-01 (Released:2018-09-25)

理学療法の痛み治療の効果判定のため,痛みを生理学的に解説し,理学療法の治療効果判定の基盤を探った。近年,痛みの問題は痛覚の話にとどまらず,鎮痛系や神経性炎症及び神経・免疫連関をも含む生体防御系の領域にまで広がっている。そのような痛み研究の展開・進歩にしたがって,治療は鎮痛機構を促通させて一時的な痛みの軽減・消失をえる“症候治療”と,痛みの原因病変の改善を目的とした“原因治療”とに明確に分類されるようになったといえる。現在,理学療法は両方の“治療”を行っているが,鎮痛系の生理的作用の存在からして,痛みなどの原因である病変に対する“原因治療”がこれからもより発展されるべきである。
著者
藤田 信子 桝田 康彦 山野 薫 三木 晃 糠野 猛人 鎌谷 秀和
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.27-30, 1990-01-10 (Released:2018-10-25)

中枢神経疾患に見られる姿勢運動パターンを正しく理解し,より効果的な治療を行なう指標にするため,健常人9名,平均年齢23.6歳を対象に椅坐位にて側方傾斜刺激を加え頚部・体幹・四肢の筋活動を表面筋電図によって分析した。測定は椅坐位にて坐面の右側を下降させて行ない,その刺激は角速度2.2゜/sec,角度を0〜30゜の範囲とした。結果は以下の通りである。1. 傾斜上位側の頚部・体幹筋群に筋放電の増加を認めたが,両側の上下肢筋群では特に筋放電を認めなかった。2. 傾斜下位側の体幹筋群は 被験者に安静を保たせている時より自発的な持続放電を認めた。これらより,姿勢を保持する上で頚部筋・体幹筋の活動が重要であることが示唆された。
著者
藤田信子 桝田 康彦 山野 薫 三木 晃 糠野 猛人 鎌谷 秀和
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.27-33, 1990
被引用文献数
1

中枢神経疾患に見られる姿勢運動パターンを正しく理解し, より効果的な治療を行なう指標にするため, 健常人9名, 平均年齢23.6歳を対象に椅坐位にて側方傾斜刺激を加え頚部・体幹・四肢の筋活動を表面筋電図によって分析した。測定は椅坐位にて坐面の右側を下降させて行ない, その刺激は角速度2.2゜/sec, 角度を0〜300の範囲とした。結果は以下の通りである。1, 傾斜上位側の頚部・体幹筋群に筋放電の増加を認めたが, 両側の上下肢筋群では特に筋放電を認めなかった。2. 傾斜下位側の体幹筋群は. 被験者に安静を保たせている時より自発的な持続放電を認めた。これらより, 姿勢を保持する上で頚部筋・体幹筋の活動が重要であることが示唆された。
著者
只石 朋仁 鈴木 英樹
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.351-359, 2019 (Released:2019-10-20)
参考文献数
46

【目的】高齢在宅パーキンソン病(以下,PD)患者45 名を対象に,生活空間の評価と関連する因子を検証した。【方法】評価項目はLSA,MDS-UPDRS part Ⅲ,転倒予防自己効力感尺度(以下,FPSE),10 m 歩行テスト,Timed up & go test とした。MDS-UPDRS part Ⅲの下位項目を振戦,固縮,無動,軸症状にそれぞれ割りあてた。LSA と各項目の関連性をスピアマンの相関係数で検討し,LSA を従属変数とする階層的重回帰分析を行った。【結果】LSA に関連したのはFPSE(β = 0.39, p < 0.01)と軸症状(β = –0.54, p < 0.01)であり,自由度調整済み決定係数は0.66 であった。【結論】軽症から中等症のPD 患者において生活空間の狭小化にはFPSE と軸症状が関係していた。PD 患者の活動支援には軸症状に対する理学療法と,運動能力に見合った自己効力感を保つための心理的支援が必要と考える。
著者
加藤 倫卓 森 雄司 光地 海人 森本 大輔 角谷 星那 鬼頭 和也 濱 貴之 小鹿野 道雄 田邊 潤
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11375, (Released:2018-05-23)
参考文献数
32

【目的】植込み型除細動器(以下,ICD)あるいは両心室ペーシング機能つき植込み型除細動器(以下,CRT-D)を装着した慢性心不全(以下,CHF)患者に対するストレッチング体操が,血管内皮機能と運動耐容能に与える影響を検討した。【方法】対象をICD あるいはCRT-D が植え込まれた運動習慣のないCHF 患者32 名(男性27 例,平均年齢69 ± 9 歳)とし,ストレッチング体操を実施するストレッチング群と対照群に無作為に分類した。4 週間の介入前後の反応性充血指数(以下,RHI)と6 分間歩行距離(以下,6MWD)を評価した。【結果】ストレッチング群のRHI と6MWD は,介入前と比較して介入後に有意に増加した(P <0.01,P <0.01)。介入前後のRHI と6MWD の変化量は,有意に正相関(r =0.53,P < 0.05)を示した。【結論】ICD あるいはCRT-D 患者に対するストレッチング体操の効果として,血管内皮機能障害と運動耐容能の改善が考えられた。
著者
赤澤 直紀 原田 和宏 大川 直美 岡 泰星 中谷 聖史 山中 理恵子 西川 勝矢 田村 公之 北裏 真己 松井 有史
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.71-78, 2013-04-20 (Released:2018-04-12)
参考文献数
27

【目的】健常成人男性のHip Flexion Angle(HFA)値にハムストリングスのマッサージ部位の違いが及ぼす効果を検証することである。【方法】健常成人男性32名(32肢)へのマッサージ部位について無作為に筋腱移行部群(11名),筋腹群(11名)およびコントロール(対側下肢筋腹)群(10名)に割りつけ,3分間のマッサージ介入を同一の圧迫圧で行った。アウトカムは盲検化された評価者によって測定された介入前,介入直後,3分後,6分後,9分後,15分後のHFA値とした。【結果】マッサージ介入直後,3分後,6分後の筋腱移行部群のHFA値はコントロール群より有意に高値を示した。【結論】ハムストリングス筋腱移行部へのマッサージはHFA値を拡大させる可能性を示唆した。
著者
日髙 恵喜 青木 光広 村木 孝行 泉水 朝貴 藤井 岬 鈴木 大輔 辰巳 治之 宮本 重範
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.325-330, 2008-12-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
20

【目的】本研究の目的は,未固定遺体8股を用いて腸骨大腿靭帯の上部線維束と下部線維束を選択的に伸張することができる股関節肢位を明らかにすることである。【方法】変位計測センサーを各線維束の中央部に設置し,伸び率を測定した。また3次元動作解析装置を用いて股関節角度の測定を行った。靭帯を伸張させた際に緩みがなくなったときの変位の値を開始距離(L0)として計測を行った。上部線維束は6肢位,下部線維束は7肢位で伸び率を測定した。【結果】上部線維束の伸び率は内転20°+最大外旋,最大外旋,内転10°+最大外旋の順に大きく,最大伸展の伸び率より有意に大きな値を示した。下部線維束の伸び率は最大伸展,外旋20°+最大伸展の順に大きく,最大外転の伸び率より有意に大きな値を示した。【考察】上部線維束では最大外旋,内転位の最大外旋,下部線維束では最大伸展,外旋位の最大伸展が腸骨大腿靭帯のストレッチング肢位として有用であると考えられた。本研究結果は腸骨大腿靭帯の解剖学的走行に基づいた伸張肢位と一致した。
著者
有田 真己 岩井 浩一 万行 里佳
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11477, (Released:2019-02-08)
参考文献数
27

【目的】在宅運動の実施者・非実施者における運動効果の実感の有無および自己効力感の差を明らかにし,運動効果の実感を認識する日常生活場面および身体部位を特定する。【方法】要支援・要介護者117 名を対象に質問紙調査を行った。調査項目は,属性,在宅運動実施状況,運動効果の実感の有無,在宅運動セルフ・エフィカシーとした。運動効果を実感する者に対しては,実感する日常生活場面および身体部位について聞き取った。【結果】運動効果の実感有りと回答した者は運動の実施者に多く,自己効力感の得点も有意に高かった。運動効果を実感する日常生活場面は,「歩く」,「立ち上がる」,「階段昇降」であり,実感する身体部位は,「下肢」,「腰」,「膝」であった。【結論】実感といった内在的報酬は,身近な日常生活の中で獲得されており,運動の継続に関与していることが示唆される。今後は,運動による効果を実感するタイミングについて明らかにする必要がある。
著者
堤 文生 半田 一登 下畑 博正
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.51-54, 1990-01-10 (Released:2018-10-25)

毎日のリハビリ施行患者数の動向を把握することは,病院経営の面で重要なことである。リハビリ診療箋の集計作業の繁雑さは,どこの病院でも頭の痛い課題である。当院では,受付業務の省力化としてパソコンを用いてリハビリ診療箋の集計作業を行っている。今回,昭和63年4月の社会保険及び老人診療報酬の一部改定に伴い,従来のプログラムを大幅に改正したので紹介する。入力操作は,↓キー・↑キー・リターンキー・テンキーを主に用い簡素化した。
著者
藤澤 宏幸 末永 直樹 三浪 明男 石田 和宏
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.75-81, 1997-03-31 (Released:2018-09-25)
参考文献数
8

肩関節内旋運動時の肩甲下筋などの筋活動を検討した。対象は成年男性8名(平均年齢28.3 ± 4.4歳)の右肩,被験筋は肩甲下筋,大胸筋鎖骨部・胸肋部線維,広背筋,三角筋前部・中部・後部線維,棘上筋,棘下筋の9筋とした。テスト肢位はlift-off test(以下,LOT)middle・low・high position,下垂位,90度外転位,最大屈曲位の6種類で,運動の種類は自動運動と等尺性最大抵抗運動(以下,抵抗運動)とした。結果,各LOTにおける自動運動では肩甲下筋活動が他の筋活動よりも有意に高かった。抵抗運動では広背筋活動も高く肩甲下筋活動と有意な差はなかった。その他のテスト肢位における自動運動では,肩甲下筋活動が平均で2.0〜12.1%とLOT middle positionの場合と比較して有意に低かった。抵抗運動では,肩甲下筋活動が全ての肢位で高く,各肢位間で有意な差はなかった。また,最大屈曲位では肩甲下筋活動が他の筋活動と比較して相対的に高かった。以上より,3種類のLOTでは自動運動において肩甲下筋活動が選択的に高いこと,また肩甲下筋損傷・筋力低下の臨床テストとして,最大屈曲位での抵抗運動がLOTと相補的な役割を果たせる可能性のあることが示唆された。
著者
河津 弘二 槌田 義美 本田 ゆかり 大田 幸治 緒方 美湖 吉川 桂代 山下 理恵 山鹿 眞紀夫 古閑 博明 松尾 洋
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.23-29, 2008-02-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
18

本研究は,地域における一般高齢者向けの,介護予防を目的とした運動プログラム「長寿きくちゃん体操」の紹介をするとともに,地域主体での教室運営による運動プログラム介入前後の身体機能面と精神活動面で変化がみられたことを報告する。教室の対象は,老人クラブの21名(74.1 ± 3.7歳)で,期間は3ヶ月問であり,教室は他機関の健康運動指導士が運営した。身体機能面の変化に対し,教室の前後で,10m全力歩行,開眼片脚立ち,握力,長座位体前屈,Timed Up & GO Test(TUGT),6分間歩行を評価した。また,日常生活活動や精神活動の変化に対し,アンケート調査で,主観的健康観,Falls Efficacy Scale(FES),MOS Short-Form-36-Item Health Survey(SF-36),グループインタビューを実施し,また痛みの変化ではNumeric Rating Scale(NRS)を実施した。結果は,身体機能面で,10m全力歩行,TUGT,6分間歩行,握力で有意な改善を認めた。また,精神活動面は,主観的健康観で有意な変化を認め,他項目でも改善傾向があった。地域リハビリテーションでの介護予防教室に対し,ポピュレーションアプローチでの間接的な運動プログラムの提供により,心身の変化の可能性を示唆したと考えられた。
著者
鶴見 隆正 川村 博文 辻下 守弘
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.635-638, 1991-11-10 (Released:2018-10-25)
被引用文献数
2

多忙な臨床現場の中で関節可動域訓練(以下 ROM訓練)が実際にどのように行なわれ, その科学性をどのように感じているか, などについてアンケートを実施し, また ROM訓練時にどのような筋活動が生じているかを中心に電気生理学的な検討を行なった。
著者
尾田 敦 上村 豊 麻生 千華子 伊良皆 友香 成田 大一
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C1454, 2008

【はじめに】外反母趾の発生率は女性が男性の約10倍で,ハイヒール靴の影響とされるが,近年ではハイヒールを履いたことのない小中学生の発生が増加し,中学生では女子の4人に1人,男子の7人に1人が外反母趾との報告がある。学童期の外反母趾には,靴以外に成長期特有の足部形態やアライメントの影響が推測されるが不明な点が多い。そこで本研究では,小学生を対象とした外反母趾の実態を調査し,足部形態因子の影響を検討した。<BR>【対象と方法】市内の某小学校(全校生徒614名)において,あらかじめ保護者から同意を得た1~6年生までの218名(男子112名,女子106名)を対象とした足部形態・アライメントの調査を行った。足部形態の評価は,Pedoscope上自然立位で撮影した画像から,足長・足幅,外反母趾角(第1趾側角度),内反小趾角(第5趾側角度)を計測し,外反母趾角13゜以上を外反母趾群とした。また,足底接地状況は,野田式分類とともに接地面積を求めて接地率を算出した。アーチ高の評価にはアーチ高率を用いた。さらに,踵骨長軸と下腿長軸のマーキング後,足位をneutralとして踵部後方から撮影した画像を用いてLeg heel angle (LHA)と踵骨外反傾斜角(FHA)を計測した。統計処理は,SPSS 11.0Jを用いχ二乗検定及び外反母趾角を従属変数としたStepwise法による重回帰分析を行い,外反母趾に関与する因子の抽出を行った。説明変数には,多重共線性を考慮して学年,性別,BMI,足示数(足幅/足長),LHA,FHA,アーチ高率,接地率,野田式分類,内反小趾角の各因子を用いた。<BR>【結果】対象者の両足436足の外反母趾角の平均は10.4±5.3゜で,外反母趾群は,1年9足(13.6%),2年12足(20.7%),3年31足(27.2%),4年24足(30.8%),5年25足(41.7%),6年27足(45.0%)と学年進行に伴い有意に増加し(p<0.01),全体では128足(29.4%)であった。扁平型footprintの数は外反母趾群で41足32.0%を占め,非外反母趾群62足20.1%に比べて有意に多かった(p<0.01)。重回帰分析により抽出された変数(標準偏回帰係数)は,学年(0.308),アーチ高率(-0.145),接地率(0.139),性別(0.115)の4因子で,重相関係数はR=0.389(p<0.01)であった。<BR>【考察】学童期の外反母趾は学年の進行に伴って増加し,アーチ高率が低く接地率の大きい扁平足ほど母趾の外反が強いことを示している。一般に外反母趾は横アーチの低下した開張足が主な原因とされ,扁平足は二次的なものと考えられている。本調査ではその指標として足示数を用いたが,成長に伴う足のプロポーション変化は顕著ではなく,重回帰分析では有意な因子として抽出されなかった。また,アーチが未形成で,土踏まず部分の接地面の広い扁平型footprintに外反母趾が多いことから,学童期における外反母趾の発生には,アーチ形成の遅れが最も重要な要因であることが示唆され,正しい靴の選択により,アーチ形成を促進していくことの重要性が推察された。<BR>