著者
村上 祐介 時田 春樹
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11316, (Released:2017-09-06)
参考文献数
23

【目的】慢性期の脳卒中片麻痺患者に対して就労支援を行った経験について報告する。【症例紹介】症例は右片麻痺と失語症を呈した40 代の女性である。2012 年10 月,左の被殻出血を発症した。他院にて6 ヵ月間の入院リハ実施後,2013 年3 月に退院し,以後,当院外来リハが開始となった。来院時の移動能力は4 点杖利用下にて短距離歩行自立,その他は車椅子自走レベルであった。【経過】理学療法では,歩行能力の向上や公共交通機関の利用に関するリハを実施した。結果,T 字杖利用下での屋内外の歩行が可能となり、介入36 ヵ月目にはバスや電車の利用が可能となった。また,多職種とも連携を図り,結果として新規の就労が可能となった。【結論】就労支援の問題点は多岐にわたるため,個々の症例の問題点を把握し,包括的に支援することが重要と思われた。
著者
今井 亮太 大住 倫弘 平川 善之 中野 英樹 福本 貴彦 森岡 周
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-7, 2015-02-20 (Released:2017-06-09)

【目的】術後急性期の痛みおよび運動に対する不安や破局的思考は,その後の痛みの慢性化や機能障害に負の影響を及ぼす。本研究は,術後急性期からの腱振動刺激による運動錯覚の惹起を起こす臨床介入が痛みの感覚的および情動的側面,ならびに関節可動域の改善に効果を示すか検証することを目的とした。【方法】対象は,橈骨遠位端骨折術後患者14名とし,腱振動刺激による運動錯覚群(7名)とコントロール群(7名)に割りつけて準ランダム化比較試験を実施した。課題前後に,安静時痛,運動時痛,Pain Catastrophizing Scale, Hospital Anxiety and Depression Scale,関節可動域を評価した。介入期間は,術後翌日より7日間,評価期間は,術後1日目,7日目,1ヵ月後,2ヵ月後とした。【結果】反復測定2元配置分散分析の結果,VAS(安静時痛,運動時痛),関節可動域(掌屈,背屈,回外,回内),PCS(反芻),HADS(不安)の項目で期間要因の主効果および交互作用を認めた(p<0.05)。期間要因では,両群ともに術後1日目と比較し,7日目,1ヵ月後,2ヵ月後に有意差を認めた(p<0.05)。【結論】術後翌日から,腱振動刺激を用いて運動錯覚を惹起させることで,痛みの程度,関節可動域,痛みの情動的側面の改善につながることが明らかにされた。また,痛みの慢性化を防ぐことができる可能性を示唆した。
著者
新田 收 俵 紀行 妹尾 淳史 来間 弘展 古川 順光 中俣 修
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.A1269, 2007
被引用文献数
2

【目的】腰痛を予防する方法として姿勢の改善が重要とされ,近年体幹深部の筋が姿勢保持に重要な役割を果たしているとする研究成果が多く報告されている.これらの報告で姿勢の保持に重要な役割を果たす筋として大腰筋が取り上げられている.現在様々な大腰筋強化トレーニング方法が提案されている.しかし体幹深部筋活動評価を体表面から行なうことは困難であるために,どのようなトレーニングが有効であるかの実証がなされてない.本研究では不安定板を用いたトレーニング方法を採用し,トレーニング前後のMR(MAGNETIC RESONANCE信号の変化を指標として,大腰筋に対するトレーニングの影響を検討することを目的とした.<BR><BR>【方法】対象者は腰痛等既往のない男性14名,女性3名,平均年齢20.9歳(20-22)とした.本研究は首都大学東京倫理審査委員会の承認を得て行った.分析対象とした筋は大腰筋とし,対照として表在筋である腹直筋と脊柱起立筋を取り上げた.トレーニングは背臥位にて骨盤下に直径320mmの不安定板(専用器具)を置き,骨盤の肢位を保持したまま下肢を左右交互に各20秒,約20mm挙上する動作を20分行うこととした.なお股関節・膝関節は30度程度屈曲位とした.使用装置は1.5T Magnetom Symphony(SIEMENS社製)で,撮像法はTrue FISP(TR=4.30ms,TE=2.15ms,NEX=1,FA=50°,Scan Time=10sec,FOV=400mm)を用いた.なお分析部位は第4腰椎位としSlice厚=10mm,gap=2mmとした.専用器具は全て非磁性体であり,信号変化のみで筋の活動様相を評価するため,被検者と専用器具とをMR装置内に配置させた状態で実験の全てを施行した.信号強度の計測は画像分析ソフトウエアー(OSIRIS)を用いた.分析は左右の大腰筋,腹直筋,脊柱起立筋内に関心領域(ROI)を設定し,ROI内の信号強度平均値をMR信号とした.統計処理はトレーニング前後の平均MR信号を,対応のあるt検定にて比較した.有意水準は5%とした.<BR><BR>【結果】トレーニング前後のMR信号は,前平均111.1(SD13.6),後平均119.0(SD16.4)であり有意差が認められた.これに対して腹直筋では前平均291.7(SD64.9),後平均281.5(SD58.2),脊柱起立筋では前平均98.7(SD11.6),後平均94.5(SD11.2)であり差はなかった.<BR><BR>【考察】今回の撮影条件では比較的撮影時間が短いため腹部など動きの抑制が困難な部位の撮影に適している.また画像はT2*強調となり水分が白く強信号となる.このことから信号が強く変化することは筋活動直後の変化を示すとされている.今回の結果から本トレーニングにより大腰筋が選択的に活動することが示唆された.<BR>
著者
高木 庸平
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C1422, 2008

【目的】<BR>社会の急速な高齢化に伴い大腿骨近位部骨折の発生件数は年間10万人を超えると推測される。急増する大腿骨近位部骨折の患者様に対し、急性期治療から在宅支援に至るまでの包括的かつ効率的なアプローチ行うことは、重要な課題の一つである。そこで今回、当院が運用する大腿骨近位部骨折の連携パスを紹介すると共に、約10ヵ月間の臨床実績をもとに、後方支援施設における役割と課題を報告する。<BR>【方法】<BR>2006年3月急性期K病院より連携パスの運用についての提示を受け、双方の運営会議を経て、2006年12月より連携パスの運用を開始した。その後、急性期K病院、大腿骨頚部骨折術後(3週目以降)の患者様を受け入れている。また、連携パス評価には双方の意見を組み込み、人工骨頭・骨接合術・DSSの3パターン、A3判の紙によるスタッフ用と症例・家族用の連携パスの2つに分けて統一・運用し、連携パス導入前後の経過を調査した。<BR>【結果】<BR>症例数:18例(内約、男性:6 女性:12)、平均年齢:82.6歳(61~94歳)、術式:骨接合術=10例、人工骨頭=6例、DSS=2例、転帰:自宅退院8例、リハ中止3例、施設転院4例、平均在院日数:導入後91.1日(17~123日)、導入前129日<BR>在宅復帰率:導入後47%、導入前26%、Brathel Index推移:(入院時)45.6点、(入院中)63.2点、(退院時)69.4点<BR>【考察】<BR>今回、連携パスを通じて平均在院日数、在宅復帰率、Barthel Index推移における臨床実績の改善を認めた。このことから、導入前後の経過を比較してみると、当院は後方支援施設として、訪問リハビリテーション、介護老人保健施設、デイサービスセンター、短期集中型通所リハビリテーション等の多くの関連施設を併設し、回復期~在宅復帰までの重要な役割を担っている。そこで、連携パスを導入したことに伴い、これまで以上に他職種との情報交換が密接に行え、フォローアップの体制が充実したことが伺えた。よって、情報の共有化が円滑に行え、症例・家族へのインフォームドコンセントを通じて、退院への心理的不安を可能な限り解消でき、結果として導入前に比べ導入後は、医療保険~介護保険への受け渡しが十分に行えていたことが考えられる。<BR>【まとめ】<BR>当院で使用している大腿骨近位部骨折の連携パスについて紹介した。連携パスを開始して約10ヵ月が経過し、大きなトラブルもなく運用されている。現在のところ、パス導入に伴い『地域連携体制の強化』が進行してきており、その経過について検証していくことで、より良いものへと改訂していくべきではないかと考える。最後に、当院では退院者に対して連携パスに対する満足度調査を実施している。現在、情報収集中であるが、今後フィードバックされた情報を集積・分析し、在宅ケアを含めたパスの延長、内容の更なる検証に繋げていきたい。
著者
佐藤 瑞騎 倉田 昌一 岩倉 正浩 大倉 和貴 新田 潮人 照井 佳乃 佐竹 將宏 塩谷 隆信
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.197-202, 2018 (Released:2018-06-20)
参考文献数
27

【緒言】片麻痺患者に対する部分免荷型トレッドミル歩行練習(以下,BWSTT)の即時効果を明らかにする。【方法】片麻痺患者10 名(平均年齢71 ± 11 歳)にBWSTT と非免荷型トレッドミル歩行練習(以下,FBWTT)を施行し,10 m 歩行試験の結果を比較・検討した。評価項目は歩行速度,歩幅,歩行率,左右・上下重心移動距離,左右・上下RMS,麻痺側脚・非麻痺側脚の1 歩行周期変動係数とし,3 軸加速度計を用いて抽出した。【結果】BWSTT により最大歩行速度,歩幅,歩行率,麻痺側脚の1 歩行周期変動係数,上下RMS が有意に改善した。また同様の項目と非麻痺側脚の1 歩行周期変動係数においてBWSTT がFBWTT より有意な改善が認められ,歩行速度変化率は歩行率変化率と正の相関が認められた。【結論】BWSTTは片麻痺患者に対して歩行能力向上の即時効果が期待され,FBWTTよりも有意であった。また歩行速度の改善は歩行率の改善が寄与していた。
著者
吉田 英樹 永田 順也 傳法谷 敏光
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.F0189, 2008

【目的】本研究の目的は、星状神経節(SG)近傍への経皮的キセノン光照射(Xe照射)が四肢末梢皮膚温に与える影響について検討することであった。<BR>【方法】同意の得られた健常例30名に対して、以下の二つの実験を実施した。実験1:15分間の安静仰臥位での順化後に、安静仰臥位のまま両側のSG近傍へのXe照射(SG-Xe照射)を10分間実施した。実験2:前述の順化後に、Xe照射を伴わない安静仰臥位を10分間保持した(コントロール)。測定項目として、四肢末梢皮膚温は、測定部位を上下肢ともに第3指遠位指節間関節腹側中央とし、放射温度計を用いて順化中は3分毎、SG-Xe照射中及びコントロール中は1分毎に測定した。また、心拍数は、R-R間隔測定が可能な心拍計を用いて、実験開始から終了まで連続測定した。四肢末梢皮膚温の解析では、各実験における対象者の順化中の上下肢ごとの末梢皮膚温平均値を基準値として、SG-Xe照射中及びコントロール中の1分毎の上下肢末梢皮膚温について基準値からの変化量を算出した。心拍数の解析では、R-R間隔の周波数解析を実施し、低周波成分(LF)と高周波成分(HF)のパワースペクトルを求め、HFを副交感神経活動、LF/HFを交感神経活動の指標として用いた。<BR>【結果】心拍数の解析では、実験1では順化終了時と比較してSG-Xe照射終了時のHFの有意な増加及びLF/HFの有意な減少を認めたが、実験2では順化終了時とコントロール終了時との間でHF及びLF/HFの明らかな変化を認めなかった。上肢末梢皮膚温の解析では、SG-Xe照射中を通して上肢末梢皮膚温が基準値を下回らない傾向を示したが、コントロール中は開始5分以降に上肢末梢皮膚温が基準値を下回る傾向を示した。上肢末梢皮膚温の基準値からの変化量については、SG-Xe照射及びコントロール開始7~10分後での各条件間の変化量に有意差を認め、全体としてSG-Xe照射中の後半の上肢末梢皮膚温がコントロール中の後半のそれを上回る傾向を示した。下肢末梢皮膚温の解析では、SG-Xe照射中は開始1分以降、コントロール中は開始4分以降に下肢末梢皮膚温が基準値を下回る傾向を示した。下肢末梢皮膚温の基準値からの変化量については、SG-Xe照射及びコントロール開始7~9分後を除く全ての測定点で各条件間の変化量に有意差を認め、全体としてSG-Xe照射中の下肢末梢皮膚温がコントロール中のそれを下回る傾向を示した。<BR>【考察】R-R間隔の周波数解析結果は、SG-Xe照射が交感神経活動を抑制することを示唆している。さらに、星状神経節を発する節後ニューロンの分布を考慮すると、コントロール中と比較したSG-Xe照射中の上肢末梢皮膚温の上昇傾向は、SG-Xe照射による上肢末梢血管拡張に伴う上肢循環血液量増加が基盤にあると考えられる。一方、コントロール中と比較したSG-Xe照射中の下肢末梢皮膚温の低下傾向は、SG-Xe照射による上肢循環血液量増加に伴う下肢循環血液量の相対的な減少に基づくのではないかと推察される。
著者
鷲田 清一
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 = The Journal of Japanese Physical Therapy Association (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.8, 2004-12-20

古代以来,西洋各地域の言語が複雑に交叉し分岐してきた歴史のなかで,「癒す,治す」(heal/heilen)や「健康」(health)という語が,「全体」(whole)や「聖なる」(holy/heilig)という語と同族語として生成してきたという事実は,われわれをさまざまな想いへといざなう。傷が癒える過程,病を治す過程に,テクノロジーというものがこのうえなく深く介入するようになった現代社会では,<健康>でないもの,つまり病や傷は,局所(=部分)に原因をもつそれとしてとらえられる。また,それは生体の機能不全という視点からみられ,病に侵され傷を負っているという状態が,そのひとにおけるなにか別の意味の現われ(たとえば「罪業」や「試練」)としてとらえられることもない。これは治す側の問題である。他方,患者の付添人からすれば,患部の状態以上に(どんな苦しみなのかといった)患者自身がどういう状態にいるかが気がかりなところであり,また苦しみからの解放を祈ったり,「苦しみとともにする」(sympathyの語源である)ために何かを絶ったりする。そこにはhealとwholeとholyのからみあいがはっきりある。Healがwholeと切り結ぶところまでは分かるとして,なぜholyとまでつながるかというと,そこでは付添人は想いをそのひとの生のなかだけでなく生の彼方にまでもはせるからである。そのひとがいなくなるという事態,さらには身体の生を超えたそのひとの存在の意味にまで,である。つまり,治す側は身体の生の内部をみている。付き添う側は身体の生をあふれ出ているものをみている。そして,付き添う側の想いは「治療過程」の外側に置かれる。付き添うひとの気持ちはわかるが,病気を治すということはそういうことではない,と。その裏返しとして,<健康>もまた,器官や四肢の集合体としてとらえられた身体が総じて故障がないこととしてイメージされ,ふだんから血液検査やレントゲン撮影によって生体の機能不全のチェックをするという対処を求められる。健康が,身体の生の,治療するところのない「正常」な状態とされるのである。健康か不健康かの区別が医療機関での「健康診断」に託されるのだ。こうしてひとの身体は,医療テクノロジーの高度な装置のなかにますます深く挿入されていった。医療の行為や制度を断罪しようというのではない。<健康>が身体の「正常」に還元されている事態が,<健康>のイメージをどれほど損なっているかを,あらためて考えたいのである。たとえば医療テクノロジーの「暴走」を口にするひとがいる。「暴走」は,医療のあるべき様態を超えてしまっているということの表現であろう。が,しかし,われわれが自身の「よりよき」生を求めてそれに依存することにしてきた医療テクノロジーがもはや「人間的」でないかどうかは,われわれが「人間的」ということで何を考えてきたかという,歴史的な文化の問題である。<健康>の問題を身体の「正常」に還元する見方のひとつの問題は,それが個人の生を,生なきもの,つまり器官のモザイクー「死のモザイク」として表象させるというところにあるが,その見方のもうひとつの問題は,<健康>への視点をもっぱらひとの身体の内部に向け,そのことで他者との交通という場面を見えなくさせてしまうという点にある。こういうときはこういう草を煎じて飲むとか,こういうときはここのつぼを押すとか,かつて日常世界のなかにあった「相互治療」の文化は,民間医療,素人医療として,公的な医療機関のなかに呑み込まれ,消えた。身体と身体とのあいだの交通を超個人的なシステムが代行するようになることで,ひとは自分の身体のあり方への判断力のみならず,他の身体への通路をも見失いかけている。おおよそこのような視点から,今回,<健康>というテーマをめぐって,次のような問題を考えてみたい。「正常」でなくとも<健康>であるような生のあり方とはどういうものか。ひとは中年にさしかかると,ちょうど若いひとたちが自分の体格や身なりや身体感覚に強い関心をもつのとおなじくらいに熱っぽく,自分の「体調」や「健康体操」について語りはじめるそういえば,老人の「健康談議」を「老人の猥談」と揶揄するひとたちがいるが,ひとはなぜ,これほど<健康>に,あるいは自分の身体の状態に,熱い関心をもつようになったのか。身体に熱中するというよりも,「健康な身体」という観念,「正常値」という観念に,と言ったほうが正確ではあろうが。(当日の講演内容は次号に掲載予定です)
著者
松永 玄 山口 智史 宮本 沙季 鈴木 研 近藤 国嗣 大高 洋平
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.106-111, 2018 (Released:2018-04-20)
参考文献数
12

【目的】本研究は,脳卒中者において,リハビリテーション特化型の通所リハビリテーション(以下,デイケア)の終了理由を利用期間別に調査し,デイケアの役割や利用の在り方を検討することを目的とした。【方法】脳卒中者114 名のデイケア終了理由を改善,死亡,入所,拒否,入院,その他に分類し,利用期間別に検討した。【結果】終了理由は,改善が24 名,死亡が16 名,入所が15 名,拒否が14 名,入院が9 名の順であった。その他は36 名であった。利用期間別でもっとも多い終了理由では,1 年未満では拒否,1 年以上2 年未満では死亡,2 年以上3 年未満および3 年以上4 年未満では改善と入所,4 年以上5 年未満では拒否,5 年以上では改善であった。【結論】終了理由は利用期間により異なることから,リハビリテーション特化型デイケアの役割が,脳卒中後の心身状態や生活環境の変化に関連して変化することが示唆された。サービス提供にはこの点に配慮が必要である。
著者
飛田 良 園田 悠馬 谷口 匡史 前川 昭次 越田 繁樹
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.97-105, 2018 (Released:2018-04-20)
参考文献数
25

【目的】NICU におけるリハビリテーションスタッフによる介入(以下,リハ介入)の現状と課題について調査する。【方法】近畿圏内の周産期母子医療センター62 施設・各2 診療科(新生児科・リハ科)に対しアンケート調査を行った。【結果】全体回答率55.6% で,リハ実施率は新生児科74.4%,リハ科86.7% であった。多種多様な疾患を対象とし,介入内容はポジショニングが各々最多を占めた。非実施の理由として,新生児科は,対象患者がいない,自施設の役割ではない等の問題を挙げた一方で,リハ科は,専門性が高く人員・技術不足などの問題を挙げた。リハ介入の必要性がないと回答したのは新生児科で多かった(60% vs 25%)。【結論】NICU のリハ介入率は高く,近年の障害の重度化および多様化に対し相応の介入で対応していた。しかし,非実施施設では介入の必要性がない理由として,専門性が高い領域と認識されており,人材等の課題が明らかとなった。
著者
中澤 理恵 坂本 雅昭 中川 和昌 猪股 伸晃 小川 美由紀 武井 健児 坂田 和文 中島 信樹
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C0562-C0562, 2008

【目的】<BR> 我々は,応急処置および傷害予防を目的とし,平成16年度から年間4大会開催される群馬県高等学校体育連盟(高体連)サッカー競技大会において,理学療法士(PT)によるメディカルサポートを行ってきた。それらの内容はすでに,第40回・第41回本学会で報告済みである。本研究の目的は,過去3年間の群馬県高体連サッカー競技におけるメディカルサポートの内容を整理し,今後の課題を明らかにすることである。<BR>【対象及び方法】<BR> 対象は平成16年度(H16),平成17年度(H17),平成18年度(H18)に開催された群馬県高体連サッカー競技12大会に出場した544校703試合とした。年間に開催される大会は,群馬県高校総合体育大会,全国高校総合体育大会群馬県予選,全国高校サッカー選手権大会群馬県予選,新人大会兼県高校サッカーリーグの4大会である。PTのボランティア参加の募集は群馬県スポーツリハビリテーション研究会を通じて行い,各会場2名以上常駐するように配置した。また,メディカルサポートの内容は,試合前の傷害予防・リコンディショニング目的のテーピング等のケア,試合中(原則選手交代後)及び試合後の外傷に対する応急処置,ケアの指導とした。<BR>【結果及び考察】<BR> 参加したPTの延べ人数はH16:205名,H17:167名,H18:153名の計525名であった。メディカルサポートで対応した総学校数は延べ343校65%であり,H16:124校68%,H17:115校68%,H18:104校60%と各年とも6割以上の学校がサポートを利用していた。H18の対応校割合の減少は,PTが専属に所属する学校数が増加したことが要因と考える(H16:5校,H17:6校,H18:8校)。また,対応選手数は延べ1355名(H16:514名,H17:481名,H18:360名)であり,対応件数は2461件(H16:847件,H17:938件,H18:676件)であった。その傷害部位の内訳は上肢221件,体幹232件,下肢1944件であり,足関節が753件31%と最も多く,サッカー選手の傷害に関する過去の報告と同様の結果となった。また,サポート内容の内訳はテーピング1327件54%(H16・H17:各54%,H18:53%),アイシング550件23%(H16:23%,H17:22%,H18:21%),ストレッチング266件11%(H16:11%,H17:10%,H18:12%),止血処置31件1%(H16:2%,H17・H18:各1%),傷害確認及び今後のケア指導287件12%(H16:8%,H17・H18:各13%)であり,H17からは傷害確認及び今後のケア指導の割合が増加した。傷害に対するその場での対応のみならず,今後のコンディショニングやリコンディショニングに関する指導技術の向上を図る必要性が示された。
著者
井上 優 原田 和宏 佐藤 ゆかり 樋野 稔夫
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.158-159, 2016 (Released:2016-04-20)
参考文献数
4

本研究の目的は,二重課題処理能力,転倒リスク,転倒発生率に対する二重課題トレーニング(Dual-task training:以下,DTT)の効果に与える脳機能障害の影響を検証することである。本研究に参加した脳卒中患者は18 名で,DTT 実施後,Dynamic gait index(以下,DGI)得点は有意に改善し,転倒リスクが軽減する傾向が示された。前頭葉機能はFrontal assessment battery,注意機能はTrail making test part A とpart B の差分により評価し,DGI 得点変化量との関連性を相関分析により検証した。その結果,両者ともに有意な相関関係は示さなかった。この結果は,加齢や脳の損傷により生じた脳機能障害の程度に影響を受けずDTT の効果が得られることを示唆するものであり,DTT 導入に対する基礎資料として有用な結果と推察された。
著者
北澤 保之 志賀 典之
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C0564-C0564, 2008

【はじめに】森川嗣夫らの報告では、サッカーの傷害は特殊なポジションであるゴールキーパーやヘディングでの競り合いの際生じる頭頚部および顔面の傷害を除くと下肢に大半の外傷が発生している。日本サッカー協会の統計からも足関節靭帯損傷、ハムストリングスの肉離れ、膝内障が多く、サッカーチームのメディカルサポートにあたっては外傷発生に関与した下肢の動きの観察と対応が必須となる。今回成人男子及びJr.サッカーチーム選手のメディカルチェックにあたり、外観上の形態観察で回内・外足を分類する木田貴英らの推奨するDr.Anthony Redmondの視覚的足部アライメント測定方法Foot Posture Index(以下FPI法)とダイナミックアライメントの指標とされるKnee in toe out(以下KITO)およびKnee out toe in(以下KOTI)と負傷との関連性について検討した。 <BR><BR>【対象と方法】成人レギュラー選手 15名 30脚 (男性のみ、平均年齢24才)両内果間1グリップ幅の自然立位とし写真撮影を行った。FPI法に基づき8項目を右・左評定し、各素点の合計で+16から-16の範囲で回内・外足の総合判定を行った。また、膝内・外反、下腿内・外旋の程度を膝蓋骨中央よりの垂線の偏移程度で+10から-10の範囲に分類し、静的(static)アライメント(以下sKITO、sKOTI)の素点とし、クロス集計により3×3の9群にカテゴリー分類を行い、シーズン中の足・膝部捻挫、骨折等の怪我の有無と比較検討した。<BR><BR>【結果】負傷選手は3名、受傷率20%であり、FPI法では15脚が回外足でその内、当該負傷脚を含む11脚が「回外足かつsKOTI」のカテゴリーに属した。Yates補正カイ二乗検定で、危険度5%未満で有意差があると判定された。よって今回の評価法及びカテゴリー分類において「回外足かつsKOTI」群は足・膝部捻挫、骨折等の怪我にハイリスクであると言える。<BR><BR>【考察】従来の踵骨角評価では、Rexxamによると日本人の70%は回内足と報告されている。そのためunhappy triad(不幸の3症候)に代表する扁平回内によるKITO過負荷での外傷の注目度が高いが、今回の対象および評価法では足底筋他の筋肉が良く発達し、足部アーチ機能がしっかりしており、総合判定で回外足が多かった。そして「回外足かつsKOTI」の形態的な個体要因は外傷を誘発しやすい原因基盤のひとつとして考えられた。<BR><BR>【まとめ】足部における生体力学作用は非常に複雑で難解である。FPI法は形態観察から足部を総合的に評価でき安全かつ簡便な為、サッカー選手のトレーナー活動として下肢の動きを観察する上での一助として有用性を感じた。また、当該カテゴリー選手の運動量調整に際しては疲労度を含めたより繊細なマネージメントの必要性が確認された。
著者
川口 浩太郎 梶村 政司 門田 正久 金子 文成 佐々木 真 弓削 類 浦辺 幸夫 佐々木 久登 富樫 誠二
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.291-298, 1996-07-31
被引用文献数
1

(社)広島県理学療法士会は,第12回アジア大会組織委員会より依頼を受け,選手村診療所内に理学療法室を設け理学療法サービスを行った。約4週間の開村期間中に延べ541名の理学療法士が参加し,34ケ国の延べ731名の選手が理学療法室を利用した。処方されたスポーツ外傷の内容は筋疲労に対するものが179件(外傷種類別分類の約60%)と圧倒的に多かった。急性外傷後の処置も約27%含まれていた。治療目的は疲労回復,リラクセーション,除痛などが多かった。理学療法の内容はマッサージ,超音波治療,ストレッチングなどの順に多く,総数は1,512件にのぼった。参加した理学療法士の感想では「語学力不足」や「スポーツ理学療法に対する勉強不足」という項目が多くあげられた。これらは,効果をすぐに出すということが期待されるスポーツ選手に対する理学療法を,公用語である英語を用いて行わなければならなかったためであろう。 本大会はわが国における国際的なスポーツ大会で理学療法士の活動が最も大がかりにかつ組織的に行われた最初のものと位置づけられる。
著者
飛田 良 園田 悠馬 谷口 匡史 前川 昭次 越田 繁樹
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11346, (Released:2018-02-02)
参考文献数
25

【目的】NICU におけるリハビリテーションスタッフによる介入(以下,リハ介入)の現状と課題について調査する。【方法】近畿圏内の周産期母子医療センター62 施設・各2 診療科(新生児科・リハ科)に対しアンケート調査を行った。【結果】全体回答率55.6% で,リハ実施率は新生児科74.4%,リハ科86.7% であった。多種多様な疾患を対象とし,介入内容はポジショニングが各々最多を占めた。非実施の理由として,新生児科は,対象患者がいない,自施設の役割ではない等の問題を挙げた一方で,リハ科は,専門性が高く人員・技術不足などの問題を挙げた。リハ介入の必要性がないと回答したのは新生児科で多かった(60% vs 25%)。【結論】NICU のリハ介入率は高く,近年の障害の重度化および多様化に対し相応の介入で対応していた。しかし,非実施施設では介入の必要性がない理由として,専門性が高い領域と認識されており,人材等の課題が明らかとなった。
著者
藤本 修平 大高 洋平 高杉 潤 小向 佳奈子 中山 健夫
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.38-47, 2017 (Released:2018-02-20)
参考文献数
27

【目的】理学療法士(以下,PT)の診療ガイドラインの利用,重要度の認識とエビデンスに基づいた実践(以下,EBP)への態度,知識,行動との関連性を明らかにすることとした。【方法】対象は千葉県のPT1,000 名としEBP や診療ガイドラインの利用,重要性の認識の項目を含む無記名自記式質問紙を用いた郵送調査を行った。統計解析は診療ガイドラインの利用,重要性の認識に関連するEBP の関連項目を明らかにするために多重ロジスティック回帰分析を行った。【結果】診療ガイドラインの利用,診療ガイドラインの重要性の認識と関連が強いものは「EBP に関する必要な知識や技術を学びたいと思いますか」(OR = 10.32, 95%CI: 1.82–197.16) であった。【結論】千葉県のPT において診療ガイドラインの利用は十分ではなく診療ガイドラインの利用や重要性の認識に関連する要因は,EBP の必要性の認識とEBP を行ううえで必要な行動であった。
著者
中江 誠 藤本 一美
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.G0553-G0553, 2005

【目的】教員が教授方法について学ぶFaculty Development(以下FD)は臨床経験とともに教員条件としては双璧である。しかしながら厚労省の教員基準は「臨床経験が5年以上」のみであり、本来有する個人の教授能力については未知数である。そういう観点から今回教員一年生として講義を担当し、それが当該科目テスト成績にどう影響するかを見ることで、FDが教育機関としての組織的な戦略上必要な視点となりうるかを検証してみた。<BR>【方法】当学院理学療法学科1年82名を対象とした。方法は「理学療法概論」の講義を通じ、当該テスト終了後に学生に対し無記名設問形式にて全般的な理解度(以下全体)とその講義の構成因子として1)講義中の言語理解(以下言語)2)使用資料の量(以下資料)3)プレゼン方法(以下プレゼン)4)座学と実技の比較(以下実技)5)授業時間(以下時間)6)全体の進捗性(以下進捗性)について10段階評定をチェック形式で行った。記述テスト結果に基づき、Aランク(80点以上:10名)Bランク(70点以上:13名)Cランク(60点以上:19名)Dランク(59点以下:40名)の4段階に層化し、設問により得た構成因子の評定数値と層化した各ランクとの関連をみた。<BR>【結果】ランク別評定値はA 4.35±0.19 B 3.77±0.38 C 3.84±0.26 D 3.67±0.23であり、A-C間(p<0.05)およびA-D間(p<0.01)で有意差を認めた。また各構成因子では、実技および(A-D間p<0.01、A-C間p<0.05)言語(A-C、A-D間p<0.01、A-B間p<0.05)で有意差を認めた。<BR>【考察】入学し最初に接する専門分野科目である理学療法概論の主たる目的は、「理学療法士としてのやりがい感を惹起させる」重要な位置づけにある。その講義形態は主に認知領域教育であるがゆえ、ほぼ一般人と同レベルの時期にある学生への理解度を深めるため、教授方法に工夫を加えることは必須である。同時に教員歴のない理学療法士にとって、如何に講義をシリーズ化していくかという労力は、個人的度量の域を超えるものである。今回、実技と言語に有意差を認めた。これは認知領域にとどまらず、精神運動領域も含めた教育方法に工夫を要することが示唆された。本来、教育は非アルゴリズム性を有するが、単に座学で終始するのではなく、多角的教育の必要性を裏付けていると考える。<BR>【まとめ】FDは理学療法学生教育上、組織的に取り組む必要性を認めた。