著者
田平 一行 関川 則子 岩城 基 河戸 誠司 関川 清一 川俣 幹雄 大池 貴行
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.59-64, 2007-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
19

症状の安定した慢性閉塞性肺疾患患者16名を対象に胸郭モビライゼーションを行い,即時効果について検討した。治療手技は米国Rancho Los Amigos病院で体系化された徒手胸郭伸張法を一部変更して実施し,治療前後の肺機能検査,胸郭拡張差,動脈血酸素飽和度,脈拍数,呼吸困難感を比較した。その結果,治療後に有意に第10肋骨部の胸郭拡張差は増加,心拍数は減少したが,その他の項目には変化を認めなかった。対象者の中から拘束性換気障害を合併した11症例を抽出し検討すると,更に腋窩部,剣状突起部の胸郭拡張差,肺活量,比肺活量でも有意な改善が認められた。これらは胸郭モビライゼーションによって,呼吸筋の柔軟性,関節可動性などが改善することによる効果と考えられた。慢性閉塞性肺疾患患者でも,特に拘束性換気障害をも合併した混合性換気障害の症例が胸郭モビライゼーションの良い適応になると思われた。
著者
高取 克彦 梛野 浩司 山本 和香 下平 貴弘 森下 慎一郎 立山 真治 庄本 康治
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.352-356, 2003
参考文献数
15
被引用文献数
2

変形性膝関節症にて全人工膝関節置換術(total knee arthroplasty:以下TKA)を受けた症例に対して,深部静脈血栓症(deep venous thrombosis:以下DVT)の予防を目的とした下肢の神経筋電気刺激(neuromuscular electrical stimulation:以下NMES)を実施し,その臨床的実用性を検討した。対象は,本研究に対して同意を得られた16例(男性2名,女性14名,平均年齢68.6 ± 8歳)とした。NMESは術直後から離床まで継続的に実施し,その臨床的実用性を以下の3項目(1.電気刺激に対するコンプライアンス,2.刺激強度の定常性,3.電極の皮膚への影響)で評価した。DVTの有無については,腫脹,Homan's徴候などの理学的所見と凝固線溶系マーカーのFDP D-dimer(以下D-dimer)値によるスクリーニング評価にて実施した。刺激に対するコンプライアンスは15例が手術直後からドレーンチューブ抜去までNMESが実施可能であり良好であった。1例のみ刺激に対する不快感によりNMESを一時中断した。刺激強度は麻酔の影響,発汗などにより定期的な調節が必要であった。電極の皮膚への影響は1例のみ皮膚の発赤が認められた。DVTスクリーニング評価では明らかな下肢腫張が3例,腓腹筋把握痛が3例に認められたが,D-dimer値は全症例正常範囲内であった。今回の結果から,本法は刺激強度の定常性や皮膚への影響などの課題を改善することで,臨床的実用性が獲得できるものと考えられた。
著者
村山 淳 村山 悦子 竹中 弘行 佐々木 泰仁 寺見 彰洋
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C0102, 2008

【はじめに】人工股関節全置換術(以下THA)を施行された患者では胡座坐位での靴下着脱動作練習後に、歩容の改善をしばしば経験する。今回は、足部の知覚と動作の関係に着目し,THA患者の靴下着脱動作練習前後の片脚立位能力および歩行能力を比較し若干の知見を得たので報告する。<BR><BR>【対象】片側THA患者17名。男性2名、女性15名、平均年齢66.9±9.8歳、平均体重56.6±9.8kg、平均身長153.2±7.5cm。全荷重可能となり杖歩行自立した者で胡座坐位での靴下着脱練習が可能な者とした。<BR><BR>【方法】靴下着脱練習前後における片脚立位保持時間とTimed up and go test(以下TUG)を測定し比較した。靴下着脱練習はセラピストと一緒に胡座坐位をとり、両側足部の可動性を確認した後、靴下の中に足部が入り込んでいく感覚を感じながらの着脱を両側共おこなった。片脚立位保持時間は2m前方の壁のマークを注視しながら片脚立位を保持し30秒可能で終了とした。TUGは5__m__前方に棒を立てセラピストの合図で立ち上がり、棒を回って戻り、イスに座るまでの時間を測定した。靴下着脱練習前後の差の検定はt検定にて行った。<BR><BR>【結果】術側片脚立位平均時間は靴下着脱前平均12.7±1.0秒、着脱後平均17.3±11.7秒と練習着脱後の方が長くなり有意差を認めた(P<0.01)。非術側片脚立位平均時間は靴下着脱前平均20.1±11.9秒、着脱後22.8±10.6秒と着脱後の方が長くなったが有意差を認めなかった。TUG平均時間は靴下着脱前平均19.8±4.9秒、着脱後平均18.2±4.1秒と着脱後の方が速くなり有意差を認めた(P<0.05)。被験者の主観は練習後靴下着脱がしやすくなり、歩きやすいと答えた者が多かった。<BR><BR>【考察】今回の結果ではTHA患者に対し靴下着脱練習をセラピストと一緒におこなった後の術側片脚立位時間が有意に延長し、TUGが短縮した。胡座坐位は脱臼肢位の股関節屈曲、内転、内旋を取らないということを理解しやすいことと,支持面上で安定しており、足部に手、頭部が向かっていける姿勢のため触運動覚及び視覚での足部の知覚と足関節自体の運動が引き出しやすい姿勢と考えられる。靴下着脱は靴下から受ける触、圧感覚に対し足部が無自覚に反応して行われる。THA患者は術後疼痛が軽減し筋力、可動域が改善しても術前同様の非術側主体の姿勢、動作となり易く術側足部の反応が乏しい。靴下着脱を練習する事により術側足部の活動性を促した結果、足部で支持面を探索し知覚することができバランス反応を引き出す事が出来たと考えられる。このことにより、術側の片脚立位時間が延長し、立ち上がり、歩行し、座るという一連動作であるTUGも短縮したと考えられる。THA後の後療法としてROM改善、筋力強化、歩行練習が主体であるが、術側下肢をADLの中で自分の脚として使えるようになるという視点が大切であることが再認識された。
著者
杉本 彩 杉若 明則 田口 恭子 川端 徹
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.B1579, 2008

【はじめに】<BR>ギランバレー症候群(以下GBS)発症後に妊娠が判明した症例を担当する機会を得たので報告する。<BR>【症例紹介】<BR>23歳、女性。2006年6月9日より扁桃炎症状出現し、下肢脱力、歩行不能を認め、6月16日当院受診後GBSと診断され入院となった。神経伝達速度(以下NCV)において、感覚神経は正常であったのに対し、運動神経では上肢に著明な脱髄型GBSを認めたため、ガンマグロブリン大量療法が施行された。<BR>【理学療法経過】<BR>入院後4日目の6月20日より、理学療法(以下PT)を開始した。初期評価時において、筋力は上肢MMT3レベル、下肢MMT1~2レベルであった。またADLにおいて、起き上がり動作は全介助(FIM1)、端坐位は監視~軽介助(FIM4~5)、食事動作は自助具を用いて自立~監視レベル(FIM5~6)であった。上肢機能は良好な改善を認め、箸での食事動作も早期自立となった。しかし下肢機能の改善は停滞し、6月21日のNCVにて脱髄型GBSが認められ、7月19日には、重症型と言われる軸索型GBSと診断された。その後、車椅子による動作獲得を目指し、8月10日にアームレスト着脱式車椅子およびトランスファーボードを用いての移乗自立レベル、上肢優位での平行棒内立位監視レベルとなり、回復期病院へ転院となった。しかし、転院後妊娠5ヶ月目と判明し、8月29日に当院再入院となった。PT再開後、腹圧をかけ過ぎない等の医師からの指示もあり、ベッド上訓練を中心に施行した。また、出産・出産後に向けての動作訓練も併せて行った。臨月に入り、動作緩慢となり介助を要する状態となったが、12月20日経膣分娩にて出産。分娩翌日より、育児および自宅退院に向けてのADL訓練を中心としたPTを施行し、2007年1月9日、固定型歩行器歩行にて自宅退院となった。その後、訪問リハビリテーションを1月16日より開始し、9月14日に屋内独歩自立獲得となった。<BR>【考察】<BR>本症例は上肢の機能改善は良好であったが、下肢機能の改善は停滞した。その原因については、疾患的側面から軸索型GBSに多いGM1抗体が陽性であったことや脱髄の炎症が長期化し、軸索変性に移行したことが考えられる。また、身体的側面からは妊娠中による運動負荷量制限や妊婦体型による腹壁弛緩や骨盤前傾、および体重増加による下肢や体幹への過剰負担が影響していたと考えられる。出産後は体型変化に伴い下部体幹筋収縮が可能となり、また運動負荷量の増大が歩行獲得につながったと考える。さらに、妊娠中であっても身体負荷量が過剰にならないよう考慮しながら、運動を継続したことで廃用による機能低下も最小限に留められたのではないか。自宅退院後は、育児を含む日常生活での活動量が増加し動作獲得に至っている。しかし、下肢末梢筋群の筋力低下は依然として残存しており、今後も経過観察が必要であると考える。<BR>
著者
小林 孝誌
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.374-379, 1995-11-30 (Released:2018-09-25)
参考文献数
16
著者
吉田 剛
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.226-230, 2006-06-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
12
被引用文献数
1
著者
木口 大輔 坂根 照文 田内 秀樹 首藤 貴 吉野 一弘 片木 祐志 渡辺 好隆 門田 詩織
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.A1203, 2007

【目的】暗い色が明るい色に比べ重く感じるという重さ判断に及ぼす色の違いは様々な分野で述べられているが、報告されている先行研究は少ない。そこで、リハビリテーションで使用されている重錘バンドの色に着目し検討した。<BR><BR>【方法】参加者:2006年9月から2006年10月の間に当院に入院し、リハビリテーションを受けた患者22名とした。男性9名、女性13名、平均年齢63.8±16.0歳であった。手続き:OG技研社製1kgの重錘バンドで通常販売品のGF-115黄色と、同社製で特別注文品である濃紺色で1kgの重錘バンドを使用した。重錘バンドは長さ435mm×幅120mmであった。当院で行なわれている通常のリハビリテーションの一環として下記の実験を行なった。実験は午前10時頃から開始された。まず、参加者に現在の下肢の疲労感を尋ねた。疲労感は、「非常に疲れている」、「かなり疲れている」、「やや疲れている」、「あまり疲れていない」、「全然疲れていない」の内から1つ選択させた。次に参加者を端座位にさせ、両側下腿遠位部に重錘バンドを巻き、膝関節完全伸展位を左右の足で交互に5秒間ずつ保持させた。これを10分間行なわせた。このリハビリテーション終了直後に、下肢の疲労感をリハビリテーション開始前に行なわせたのと同じ評定用紙に回答させた。続いて、リハビリテーションで使用した重錘バンドの重さの印象を「かなり重い」、「やや重い」、「どちらともいえない」、「やや軽い」、「かなり軽い」の内から1つ選択させた。このリハビリテーションを4日間行なった。黄色と濃紺色の2種類の重錘バンドを、交互に使用した。参加者の半数については黄色の重錘バンドでリハビリテーションを始め、次の日には濃紺色の重錘バンドでリハビリテーションを行なった。残り半数の参加者は濃紺色の重錘バンドでリハビリテーションを始め、次の日には黄色の重錘バンドでリハビリテーションを行なった。<BR><BR>【結果】下肢の疲労感は、「かなり疲れている」から「全然疲れていない」の5段階尺度を、それぞれ5点から1点と得点化し、リハビリテーション開始前と終了直後の差を求め、Wilcoxonの符号付順位検定を行った。その結果、重錘バンドの色の違いの効果はp>.05で、有意ではなかった。リハビリテーション後での疲労感に色の違いは影響しなかった。重錘バンドの重さ判断は、「かなり重い」から「かなり軽い」の5段階尺度を、それぞれ5点から1点と得点化し、Wilcoxonの符号付順位検定を行った。その結果、重錘バンドの色の違いの効果はp<.05で有意であった。暗い色がより重く感じられた。<BR><BR>【考察】リハビリテーションにおける重錘バンドを利用した筋力トレーニング場面において、重錘バンドの色の違いは、下肢の疲労感には影響がないが、重さの印象に影響があった。一般的に重錘バンドは、重量別に色分けされ販売されていることが多いが、明度の高い色の使用が望ましいことが示唆された。<BR><BR>
著者
河島 常裕 玉木 彰 木村 雅彦 石川 朗
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.D0851, 2007

【はじめに】<BR>アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(以下ABPA)は、気管支内にアスペルギルスが腐生しアスペルギルス抗原に対するアレルギー反応で、多量の喀痰と喘息様発作、肺浸潤を繰り返す疾患であり、急性増悪を予防するためには喀痰喀出が重要である。今回、毎日の喀痰喀出が必要な症例において、修学旅行先で理学療法士の連携により無事に修学旅行を終了できた症例を経験したので報告する。<BR>【症例および経過】<BR>16歳女性。疾患名:ABPA。小学生の頃から「喘息」「副鼻腔炎」と言われ、治療を受けてきたが改善が見られず、平成16年12月近医にてABPAと診断され、平成17年5月当院初診。以降、当院にて内服治療、排痰を中心とした呼吸理学療法、家庭内での排痰手技、生活指導等を実施。その後ABPAの急性増悪と肺炎を発症し入退院を繰り返す。平成18年2月、右肺全摘術の外科的治療を考慮して入院。医師から本人、家族に対して厳しい病状説明があったが、結果的に外科的治療はせず、内服治療と呼吸理学療法を続けていく方針となる。8月、本人の高校入学時からの楽しみであった、北海道から京都、東京への修学旅行を迎えるにあたり、「人生最後の旅行になるかもしれない」「どうしても行かせてあげたい」という家族や当院スタッフの意向により準備を開始した。学校側とは担任教諭、学年主任、養護教諭と十分に話し合いをもち、緊急対応時などの確認などを行った。学校側は非常に協力的であり、旅行会社、航空会社に対して協力を依頼。病院側からは病状の急性増悪を防ぐための薬物調整、緊急時の紹介状の発行、連絡体制の確認、旅行先でのリハビリテーション支援体制の依頼などを行った。リハビリテーション支援体制においては、修学旅行のスケジュールや本人の体調を考慮して、一日おきに実施できるように調整した。また、旅行先では本人、担任教師、滞在地の担当理学療法士、当院理学療法士と常に24時間連絡が取れる体制をとった。その結果、京都、東京の滞在ホテルにて各1時間排痰を実施し、4泊5日の修学旅行をトラブルなく終了できた。<BR>【考察】<BR>毎日、昼は学校の保健室での自己喀痰、朝と夜は母親の排痰手技による痰の喀出を行っており、自分だけでは不十分である。加えて、修学旅行では活動量の増加、生活パターンの変化、環境の変化などにより、急性増悪が予想された。これに対し、一日おきにPTでの対応、緊急時の体制を確立することにより、無事に終了できたと考えられる。今回は、すべてボランティアでの対応であり、特別な症例と考える。しかし、QOL向上のためには適切な対応であったと思われる。<BR>
著者
藤川 博樹 宮下 浩二 浦辺 幸夫 井尻 朋人 島 俊也
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, 2007-04-20
被引用文献数
1

【はじめに】野球は全身を使うスポーツであり、ピッチングやバッティングは特に身体の回旋運動が重要となる。この回旋運動には股関節の内旋が関与しており、その制限は腰痛や投球障害などの外傷発生やパフォーマンスの低下につながると考えられている。しかし、野球選手のなかには、非荷重位で股関節内旋可動域に制限がないにも関わらず、荷重位で骨盤を回旋させると股関節内旋に制限が発生し、結果として骨盤回旋運動が制限される者がみられる。そこで、今回は荷重位での骨盤回旋運動制限の影響について3名の選手の例を提示し、その問題点と対応について報告する。<BR>【症例紹介】選手Aは27歳、身長178cm、体重75kg、右サイドスローの投手である。主訴はピッチングのフォロースルーにおける右肩棘下筋の痛みであった。非荷重位での股関節内旋可動域は左右とも10°だった。しかし、荷重位で骨盤を回旋させると左股関節の内旋が不十分で骨盤の左回旋運動に制限がみられた。ピッチングのフォロースルーでも同様に骨盤の左回旋運動が制限され、代償的に右肩関節の水平内転、内旋運動が過剰になっていた。選手Bは22歳、身長175cm、体重75kg、右オーバーハンドスローの投手である。主訴はピッチングの加速期における右肩関節前方の痛みであった。非荷重位での股関節内旋可動域は左右とも30°だった。しかし、荷重位で骨盤を回旋させると左股関節の内旋が不十分で、骨盤の左回旋運動に制限がみられ、これを代償するように脊柱の左回旋運動が強まっていた。ピッチングの加速期でも骨盤の左回旋運動が制限され、代償的に脊柱の左回旋運動が大きい、いわゆる「上体の開いた」フォームとなり右肩関節の水平外転、外旋運動が強まっていた。選手Cは29歳、身長176cm、体重78kg、左投、左打の内野手である。主訴はバッティングのインパクト時に生じる右腰部の痛みであった。非荷重位での股関節内旋可動域は左右とも20°であったが、荷重位で骨盤を回旋させると右股関節の内旋が不十分で、骨盤が右に水平移動して脊柱の左側屈が強まっていた。バッティングのインパクト時にも同様の運動がみられた。<BR>【問題点】上記の3選手は、荷重位での股関節内旋が不十分で、これが骨盤回旋運動を減少させていた。その結果、投球動作や打撃動作に変化が生じ、肩関節や腰部への負担が増大し、痛みが発生したと考えた。<BR>【経過】荷重位でのみ股関節内旋に制限がみられたことから、関節可動域ではなく、いわゆる「身体の使い方」に問題があると考えた。これらに対し、股関節を中心とした骨盤回旋運動のエクササイズを実施した。その際、足部の荷重位置、脊柱や骨盤のアライメントも意識して行わせた。その結果、3選手とも荷重位での骨盤回旋運動制限は消失し、主訴であったプレイ中の肩関節や腰部の痛みが解消した。また、パフォーマンス面でも満足感が得られた。<BR>
著者
名塚 健史 遠藤 浩士 長瀬 エリカ 佐々木 良江 鮫島 菜穂子 竹中 良孝 北村 直美 浦川 宰 根岸 朋也 山田 智教 藤縄 理 高倉 保幸
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, 2007-04-20

【はじめに】今回、埼玉県理学療法士会スポーツリハビリテーション推進委員会(以下スポリハ委員会)では埼玉県高等学校野球連盟(以下高野連)の依頼により、第88回全国高等学校野球選手権埼玉大会(以下選手権大会)、秋季埼玉県高等学校野球大会(以下秋季大会)でメディカルサポートを実施した。そこで、実際の活動内容と今後の課題について考察し報告する。<BR><BR>【方法】選手権大会は準々決勝、準決勝、決勝の7試合、2球場で各日程4名、秋季大会は準決勝、決勝の3試合、1球場で各日2名の体制でサポートを行った。サポートスタッフはスポリハ委員会の中から甲子園でのサポート、スポーツ現場での活動経験があるメンバーを中心に構成した。サポート内容は試合前後のコンデショニング・テーピングなど、試合中は所定の場所で待機し、デッドボールなど緊急時の対応を行った。実際に行ったサポートの内容はすべて記録し、1日毎終了後高野連側へ提出した。<BR><BR>【結果】実際の活動は、テーピング、外傷に対するチェックと応急処置、試合後のコンディショニングが活動の中心であった。選手権大会はテーピング2件、外傷後のチェック約15件、アイシング2件、熱中症の対応数件、コンディショニング1件であり、秋季大会はテーピング1件、外傷後のチェック約8件、アイシング1件、コンディショニング4件であった。最も多かったのは外傷後のチェックとコンディショニングであり、1試合平均3~4件程度の活動を行った。部位の内訳は、テーピングは肘関節2件、手関節1件、コンディショニングを利用したのは2チーム5名で下肢1件、肩関節2件、腰部2件であった。<BR><BR>【考察】全体的に活動の件数が少ない傾向にあった。外傷のチェックは圧痛や運動痛など疼痛の問診を中心に行ったが、選手は試合を続けたいがために症状を正確に伝えていない可能性が考えられた。また、今回の活動は埼玉県の高野連では初めての試みであり、事前の説明が不足していたことも加わって選手や監督にサポートの内容が浸透していなかった可能性が考えられる。このため、潜在的には今回関わった以上の傷害が生じていた事が予測された。このことより、事前の組み合わせ抽選会などで理学療法士が直接サポートの説明やストレッチのデモンストレーション、障害予防の講演などを行い、サポート活動や障害予防に対する認識を向上させる必要があると感じた。今後も春季大会、夏の選手権大会、秋季大会とサポートを行うことが決まっており、サポート内容、質の向上、事前の啓蒙活動などが今後の検討課題となった。<BR>
著者
阿部 長 丸山 泉 原 直哉 明吉 康則
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.232-236, 1996
参考文献数
10
被引用文献数
1

脳卒中片麻痺患者(CVA患者)21例を対象に,下肢筋の能力の一部である筋持久力が歩行耐久性に及ぼす影響について検討した。対象は屋内歩行自立以上の歩行能力を有するCVA患者の内,麻痺側下肢のBrunnstrom stageがIV・Vの者に限定した。両側下肢の筋持久力及び歩行耐久性の指標として,膝伸展最大収縮20回前後の膝伸展筋力と300m最速歩行前後の歩行速度の低下率を用いた。また,歩行耐久性評価時に歩行率・重複歩距離に関しても前後比を求め,それぞれ比較した。その結果,麻痺側下肢のみ,筋持久力と歩行耐久性とに正の相関関係を認めた。また,歩行率及び重複歩距離の前後比はt検定で有意差を認めなかった。これらの結果より,麻痺側下肢の筋持久力が高い者程,歩行耐久性も高いと考えられた。