著者
和田 崇 松本 浩実 谷島 伸二 萩野 浩
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11361, (Released:2018-03-24)
参考文献数
30

【目的】術前腰部脊柱管狭窄症患者における痛みの破局的思考の実態および関連因子を明らかにすること。【方法】腰部脊柱管狭窄症の手術予定患者45 名(男性:25 名,女性:20 名,平均年齢:68.4 ± 9.4歳)を対象に横断研究を行った。基本属性を収集し,下肢痛,腰痛,Pain Catastrophizing Scale(以下,PCS),歩行速度,Timed Up and Go test,握力測定,筋量測定,連続歩行距離を評価した。PCS のカットオフ値を30 点とし「重度PCS 群」と「軽度PCS 群」に分け比較し,多変量解析を行った。【結果】PCS は平均34.7 点であった。多変量解析の結果,歩行速度(OR: 0.036,95%CI: 0.001–0.937,p = 0.046)がPCS 関連因子として抽出された。【結論】本患者群のPCS は高値であり,歩行速度がPCS の関連因子であることが示唆された。
著者
山根 裕司 山本 泰雄 菅 靖司 当麻 靖子 鈴木 由紀子 川越 寿織 澤口 悠紀 高橋 聡子 手倉森 勇夫 山村 俊昭 谷 雅彦 中野 和彦
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.C0010-C0010, 2005

【目的】北海道サッカー協会では、優秀選手の発掘と育成、全道の選手・指導者の交流、選手・指導者のレベルアップ、トレーニングセンター制度の充実・発展を目的に、サッカー北海道選抜U-18合宿を行っている。我々は2001年から合宿に帯同し、メディカルサポートを行っている。今後の合宿におけるサポートの充実のため、4年間の活動内容について発生部位、疾患、処置内容の分析を行った。<BR><BR>【方法】対象は2001~04年に行われたサッカー北海道選抜U-18合宿。参加登録者は4年間で延べ900名(15~18才)であった。毎年7月上旬に4日間にわたって行われた。内容はトレーニング及び1日1~2回の試合を行った。メディカルスタッフは医師2名、理学療法士2名、看護師4名である。合宿初日に医師、理学療法士が講義を行い、傷害予防の啓蒙活動を行った。スタッフは練習中ピッチサイドに待機し、発生した傷害に対して診断や治療、希望者に対するコンディショニング指導を行った。<BR><BR>【結果】4年間で延べ293名(33%)の選手に367件の傷害が発生し、784回の治療を行った。部位は足関節・足部35%、膝関節22%、大腿11%、下腿7%、股関節5%と下肢が8割を占めた。内訳は外傷65%、障害29%、その他6%であった。外傷では打撲38%、捻挫38%、筋腱損傷10%であった。障害では、筋腱炎が57%と最も多く、次いで腰痛13%であった。処置はRICE処置が37%、テーピング24%、ストレッチ指導16%、投薬11%であった。救急車搬送3例(下顎骨骨折1例、熱中症2例)で、1ヶ月以上試合出場不可能な重症例は4例(下顎骨骨折、撓骨遠位端骨折、肘関節脱臼、前十字靭帯損傷各1例)発生した。4日間の期間中、処置件数は3日目が42%と最も多く、2日目30%、1日目と4日目が各14%であった。また各年度別の傷害発生件数は、2001年は外傷51件、傷害24件、2002年は外傷59件、傷害28件、2003年は外傷79件、傷害35件、2004年は外傷47件、傷害22件であった。<BR><BR>【考察】4年間の合宿において、重症例は少なく、傷害悪化例はなかった。これは現場で受傷直後から治療が出来たこと、一日数回の診察と治療を行えたこと、的確な練習復帰の指示が行えたこと、合宿初日に行った傷害予防の講義による啓蒙活動などの効果であると思われた。実際、初期症状のうちに治療に訪れる選手が多く、選手のコンディショニングの意識は高いと感じた。傷害の重症度によっては理学療法士によるテーピングやストレッチ指導などの処置を行ってプレーを続行させた。しかし傷害を悪化させた選手はいなかった。どこまでの時間や負荷の練習が出来るかの傷害レベルについて指導者とうまく連携できたことと、ピッチサイドにてプレーを観察できたことが要因であると考える。
著者
辻本 直秀 阿部 浩明 大鹿糠 徹 大橋 信義
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.340-347, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
31

【目的】本研究の目的は,pusher syndrome(以下,PS)を呈した脳卒中片麻痺者におけるsubject visual verticality(以下,SVV)の偏倚量の推移とPS の重症度およびPS の改善経過との関連について明らかにすることである。【方法】対象は,理学療法初回介入時にSVV の測定が可能であったPS 例14 名とした。調査期間はSVV の初回評価から3 週間とした。週2 回,計6 回の各測定時のPS の重症度とSVV の偏倚量の変化の推移,ならびに2 項目の相関関係を調査した。【結果】PS の重症度とSVV の偏倚量は有意に改善した。しかし,両者の改善する時期は異なり,すべての測定時期で有意な相関を認めなかった。【結論】SVV の偏倚量の推移はPS の重症度とその改善経過に関連しない可能性が高いと思われた。
著者
真塩 紀人 平林 弦大 梅津 聡 小山 裕司
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.G1148-G1148, 2005

【目的】近年、在宅での吸引に関してヘルパーや家族が医療行為を行う事に対する可否が問われる中、病院の臨床でも我々リハビリスタッフ(以下、スタッフ)は、吸引に限らず日々患者の体調急変などの問題に直面する。そこで今回、医療安全管理の観点から、現場の声として如何にスタッフがこれらの不安要素を感じながら仕事をしているのかに着目し、また他職種への要望を含めアンケート調査を行ったので以下に報告する。<BR>【対象・方法】当院スタッフ50名を対象とし、経験年数も考慮した。無記名選択記述方式にて以下のアンケート調査を実施。1.呼吸リハビリなどをリハ室でも行いたいが、吸引の頻度が多い為病棟で実施している。2.糖尿病患者のリハ中、低血糖症状に遭遇したことがあるか。対応して不安はあるか。3.リハ室でバイタルサインの変化に苦慮したことがあるか。DrやNrsに助けて欲しいと思ったことはあるか。4.講習会など開いて欲しい事。Nrsなど他職種に教えて貰いたい事はあるか。<BR>【結果】有効回答率は96.0%。「はい」と回答した人数は、1.病棟で実施せざるを得ない7名(14.0%)であった。2.低血糖症状に遭遇し、不安はある14名(28.0%)であった。3.バイタルサインへの苦慮は、28名(56.0%)。また、職種別に見てもPT、OTに関しては25名(50.0%)で全体の半数であった。経験別に見ると1年目のスタッフに関して「はい」と回答したものが、1・2の項目で13.3%(2/15)と少数であった。経験2,3年目でも同様に1~2の項目に関して25%以下の結果となった。それに比し、4年目では項目3.で57%。5年目以上では1・2の項目で25%、3.で75%であった。<BR>【考察】日頃のリハビリ業務の中で、スタッフが苦慮している事が前述のアンケート結果から推察される。着目すべき点は、1.に関してはリスクを背負うより、病棟のDrやNrsの元でリハビリを行いたいという意見もあり、現状としてNrsに吸引などの医療処置に関して依頼せざるを得ないことが伺える。また、3.に関してはバイタルサイン(特に血圧)の変化に苦慮した経験があり、DrやNrsの指示を必要としている。また職種・経験年数に関係なく、一応に経験している。結果、全体の半数以上28名(56.0%)であった。一方、項目1・2に関しては経験年数が上がるごとに「はい」の回答が多い。当然、患者に接している期間・人数の差によると考えられる。他職種への要望としては、点滴関連・痰の吸引・人工呼吸器・急変時のリスク管理が主たる要望であった。今回の結果を通して、日常我々は職種・経験を問わず共通する意見や不安を抱えている事が分かる。しかしながら、業務として必要に迫られても施行可能な範囲に限定があるのも事実である。今後、リスク管理も含め知識の習得が必要と思われる。
著者
岡本 恵子 井上 美智子 大政 里美 新井 志津子 山口 美穂 錦織 絵理 川崎 光記
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.E1171-E1171, 2007

【はじめに】軽度運動機能障害児(以下、軽度児)は、運動制限や学習の遅れに加え、ソーシャルスキル獲得や自我発達の遅れの課題も抱えているが、運動機能以外の課題に対する支援や周囲の障害理解が不足している。この結果、集団の中で自分を認められる経験や達成感を積めず、小学校高学年頃から孤立することが多くなる。当センターでも、学校の中で自己実現できない学童児が多いことが個別治療を通じて見えてきた。<BR> よって今回、軽度児が集団の中で認められる経験を積み、学校の中で主体的な生活を送れるように、「わいわいクラブ」を立ち上げ、集団による生活支援に取り組んだので報告する。<BR>【目的】軽度児同士の仲間を作り、集団の中で自己実現ができるように支援する。集団の中で軽度児の課題を明確化し、主体的に生活する力を蓄えられるように支援する。<BR>【対象】小1~小6の応用歩行から杖歩行可能な軽度運動機能障害児11名。地域の小学校に通い、知的障害の程度も軽度。<BR>【支援内容】月に1回、放課後に1.5時間のクラブを開催。活動は、楽しくて達成感を積めるもの・集団や仲間を意識しやすいものとし、1年目はクッキング、2年目は太鼓の演奏を行った。1回の内容は、ウォーミングアップのゲーム→メインの活動→クールダウンのおやつタイム。支援スタッフは、保育士6名とPT1名。<BR>【支援経過】第1に、環境設定と精神的サポートを支援の土台とした。環境設定として、活動中の姿勢変換を減らし楽な姿勢で活動に集中できるようにした。説明や指示は単純明確にし絵や具体物も提示して、内容を十分に理解した上で活動を開始した。精神的サポートとして、自分なりにやってみることが大事だと伝え、その後に認められる嬉しさを実感できるようにした。これらの結果、苦手意識を持たず十分に達成感を積め、受身ではなく積極的に活動参加できる児が増えた。<BR> 第2に、発表や意見交換の場を設け集団意識が芽生える工夫をした。集団の中で自分について話すことから始め、徐々にクラブの仲間について発表するテーマに変えていった。すると、自分中心の言動が多かった児が、友達にも目を向け周囲の状況に沿った言動をとることが増えた。<BR> 第3に、チーム制の活動を通じ集団の中で主体性を引き出す工夫をした。チームで一人ずつに役割を作り、相談し工夫する場面も設けた。この積み重ねにより、大人の介入が減り児同士で活動を展開することが増えた。<BR>【まとめ】今回の支援を通じて、児が自分を出せる場・自信を持てる場を作ることが必要だと分かった。今後は、低学年児には精神発達のサポート・高学年児にはソーシャルスキル獲得という生活年齢課題別の支援を工夫することが課題である。<BR> また、生活支援をするには個別治療だけでは限界があり集団での取り組みが重要であると実感した。今後も、軽度児に関わることの多いPT自身が広い視点を持ち、集団による生活支援に取り組んでいきたい。
著者
内田 智也 大久保 吏司 古川 裕之 松本 晋太朗 小松 稔 野田 優希 石田 美弥 佃 美智留 土定 寛幸 藤田 健司
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11373, (Released:2018-01-24)
参考文献数
22

【目的】投球中の肩関節ストレスの軽減には,良好な下肢関節動作が重要となる。そこで,本研究はFoot Contact(以下,FC)以降のステップ脚膝・股関節の力学的仕事量と肩関節トルクの関係について検討した。【方法】中学生の投手31 名の投球動作解析で求められた肩関節内旋トルクについて,その平均から1/2SD を超えて低い群(以下,LG)10 名と1/2 を超えて高い群(HG)10 名の2 群に分け,ステップ脚膝・股関節の力学的仕事量(正・負仕事)を群間比較した。【結果】FC から肩関節最大外旋位(MER)におけるLG の膝関節屈曲-伸展の負仕事量が有意に低値を示した。【結論】ステップ脚膝関節伸展筋力は良好な投球動作獲得に寄与し,FC 以降の膝関節の固定および下肢関節からの力学的エネルギーを向上させることは肩関節ストレスを軽減させると考えられた。
著者
朝山 信司
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.A0630-A0630, 2008

【はじめに】Timed Up & Go(以下TUG)テストは、総合的なバランスを評価するパフォーマンステストとして用いられている。椅子から立ち上がり、前方の目標物まで歩いて回転して戻り、椅子に座るという複合的な動作に要する経過時間で評価されている。多様な要素を簡便に評価できるメリットは大きいが、一連の動作をまとめて評価しているために、それぞれの要因につての検討ができていない。そこで本研究では、このテストにおいて要素の違いにより動作を分け、それぞれにおいて健常者と脳卒中片麻痺者の違いについて検討した。<BR>【対象】脳血管障害による片麻痺者で、独歩にて室内歩行が可能な6名と50歳以上の健常者6名を対象とした。測定に関する指示理解に問題のある者は除外された。<BR>【方法】対象者には本研究の参加において、趣旨および内容について予め説明し同意を得た。TUG テストでは、椅子に座位をとり、「スタート」の合図にて立ち上がり、前方に歩き出し3メートル先に置かれた目標物を回って引き返し、椅子に戻って座るという一連の動作の経過時間を測定した。測定中の様子は側方にDVDカメラを設置して撮影し、測定後、動作を1) 立ち上がり期2) 往路歩行期 3) 回転期 4) 復路歩行期 5) 着座期 の5つの相に細分化し、それぞれの動作にかかった時間について映像をコマ送りして正確に導き出した。<BR>【結果】TUGテストにおける健常者の所要時間は 12.33±1.01秒、一方片麻痺者の所要時間は 15.51±2.52 秒で健常者よりも有意に長くかかっていた(p<0.05)。各相における比較をしたところ、回転期と着座期において片麻痺群が、健常者群より有意に長くかかっていた(p<0.05) 。立ち上がり期、往路歩行期、復路歩行期については片麻痺群が健常者群より時間が長くかかっていたものの有意差はみられなかった。<BR>【考察】本研究に参加した対象者は脳血管障害による片麻痺者であったものの、独歩による室内移動が可能な機能障害は軽い者であった。しかしTUGテストにおける所要時間において健常者よりも有意に長い時間がかかっていたことから総合的なバランス能力は低下していたと考えられる。動作の違いについて検討すると健常者と片麻痺者間で回転期と着座期に結果の有意な違いがみられた。この2つの動作はTUGの一連の流れの中でスピードを減速させて動きをコントロールする要素を含んでいる。一方それ以外の動作においては運動を開始して動きを加速する起立期や安定した移動を続ける往路と復路の歩行期には有意差はみられなかった。これらのことから片麻痺者では、減速して動きをコントロールする要素の強い動作において、その遂行の難易度が増したためにパフォーマンスが低下したのではないかと考えられる。よって片麻痺者は日常動作の中でも歩行時の方向変換や椅子に座るなどの減速しながら動きをコントロールするような動作により注意することが重要と考えられた。<BR><BR><BR>
著者
中西 由起子
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.439-444, 1993-11-01
被引用文献数
1

過日の理学療法士学会では, WHOのコンサルタントとしてCBRを推進したパドマニ・メンディス博士と, インドネシアのジャワ島の CBRプロジェクトを成功に導いたハンドヨ・チャンドラクスマ博士を迎えて, 特別シンポウムが開催された。CBRの概念自体が日本であまり知られていないこともあって, シンポジウムは理論の紹介を中心にすすめられた。それ故, ここではシンポジウムで触れることができなかった, アジアの国々を中心とした CBR実践の現状と, 展望とについて述べ, より広範な CBR理解の一助としたい。
著者
山口 雅子 徳永 結
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.E0345-E0345, 2007

【はじめに】当院併設老健通所リハビリテーション(以下リハ)では、H15年度より定員100名という大規模事業所ながら、個別リハに特化した体制での運営を行っていた。利用者・家族からの希望に沿った個別リハを提供していた反面、人的・時間的制約により、全ての利用者に対して専門職としての十分な関わりを持つ事は困難な状況であった。H18年4月、通所リハにリハマネージメント加算が新設され、評価・利用者の状態に応じた個別的リハ計画の策定・実施というプロセスに重点が置かれることとなり、当事業所においても、リハマネージメントに重点を置いた体制に変更した。新体制から半年が経過したことから、体制変更に伴う職員の意識や課題を整理し、今後の通所リハにおけるリハスタッフの役割を検討することを目的に調査を行った。<BR>【方法】通所リハに勤務する職員25名に対し、調査趣旨を紙面にて説明し無記名アンケートを実施した。アンケート内容は、H18年度介護保険改定についての理解度、体制変更前後のサービス面での変化、体制変更による業務の変化、リハスタッフ・理学療法士についてなどである。<BR>【結果】職員22名より回答が得られた。介護保険改定については55%が理解していると回答し、65%が体制変更後通所リハサービスは向上したと回答した。自由記載では、サービス面に関して「個別性を重視したケアへの意識が高まった」「プログラムが多様化された」「情報交換が活発になった」「様々なレベルへの対応が困難」など、リハスタッフ・理学療法士に関しては「リハ職による評価が個別ケアに役立つ」「情報交換が活発になった」「介護技術など研修をして欲しい」「体操メニューの多様化を望む」などの意見があった。<BR>【考察】調査結果から、リハマネージメントの積極的導入により、個別的ケアへの意識が高まりサービスに反映されている事がうかがえた。当事業所は大規模事業所であるとともに、利用者のレベルは要支援1から要介護5まで、利用目的は心身機能の維持改善、社会的交流、生活全般の援助などと多岐にわたるため、リハスタッフは、数多くの利用者に対しそれぞれに、生活を見据えニーズに応じたリハ計画を立案し、様々な角度からアプローチを行い、それらをリハマネージメントとして通所リハ全体へ反映させる事が求められる。<BR>【課題とまとめ】H18年度医療保険制度、介護保険制度の同時改定により、高齢者を取り巻く、保健・医療・福祉の環境は著しく急激に変化することとなった。医療保険でのリハには疾患別区分や算定日数上限が設定され、今後、医療保険と介護保険が連携して高齢者を支える仕組みの整備や介護保険分野でのリハサービスのさらなる充実が急がれる。当事業所でも、医療保険でのリハとの連携と利用者全体へのリハサービス向上を目指し、リハマネージメントに加え、短期集中リハとしての個別リハ提供体制の充実・整備を模索している段階である。
著者
榊原 志保 三和 真人 南澤 忠儀 八木 忍
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20
被引用文献数
1

【目的】臨床場面における患者様の履物は裸足やバレーシューズ、スリッパと様々見受けられる。しかし、これら履物の違いが臨床場面に及ぼす影響について着目した研究は散見されない。加えてスリッパは高齢者の転倒要因の一つとして挙げられているが、実際に力学的変化を研究したものは少ない。本研究はステップ昇降における裸足、バレーシューズ、スリッパの力学的変化を解析することによって、スリッパによる力学的特性と転倒要因との関係を明らかにすることを目的とした。<BR>【方法】対象は本研究の目的に同意の得られた健常女性12名(平均21歳)である。動作課題は、裸足、バレーシューズ、スリッパの3条件における高さ20cmのステップ昇降とし、それぞれ3回ずつ測定した。また動作を一定にするため、メトロノームに合わせて課題を行った。動作解析は三次元動作解析装置と床反力計を用い、関節角度、関節モーメント、第5中足骨床間距離を測定した。赤外線反射マーカーは臨床歩行分析研究会が推奨する10点に貼付した。尚、第5中足骨マーカーはバレーシューズの場合はシューズの上から、スリッパの場合は第5中足骨周囲を切り取り皮膚に貼付した。課題は二足継ぎ足昇降とし、右脚、左脚の順に行った。統計処理はそれぞれ3回のデータの平均値を求め、一元配置反復測定による分散分析を行った。差の検定は多重比較を用い、有意水準は5%未満とした。<BR>【結果】スリッパの昇段では、右脚は踵離床時の足関節底屈角度(7.4°)が裸足に比べ有意に減少し、最大toe clearance(30.6cm)が裸足に比べ有意に減少した。スリッパの降段では、右脚は床接地時の股関節伸展モーメント(0.2Nm/kg)が裸足、バレーシューズに比べ有意に増加した。同様に足関節背屈角度(10.5°)が2つに比べて有意に減少した。上段左脚支持相の足関節背屈角度(13.6°)と足関節底屈モーメント(1.1Nm/kg)が有意に減少した。<BR>【考察及びまとめ】スリッパによる昇段において右脚の最大toe clearanceが減少したことから、スリッパはつまずき易いことが考えられた。また最大toe clearance時の重心は前方移動するため不安定となり、より転倒しやすいと考えられた。更に踵離床時の足関節底屈角度が減少したことから、スリッパは脱げ易く足先で持ち上げて離床しなければならないと考えられた。しかし各関節モーメントに有意な差は見られず、筋力の差を言及することはできなかった。一方ステップ降段における右脚の接地時に足関節を背屈、膝関節を屈曲することにより衝撃を吸収しているが、スリッパによる降段において足関節背屈角度が減少し、衝撃吸収の役割を果たしていないと考えられた。その代償として股関節伸展モーメントが増加し、衝撃を吸収していると考えられた。上段左脚支持相で足関節背屈角度、足関節底屈モーメントが減少していることから、スリッパは降段制動力を減少させると考えられた。
著者
三根 幸彌 中山 孝 Steve Milanese Karen Grimmer
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.247-254, 2016 (Released:2016-06-20)
参考文献数
43

【目的】非特異的慢性腰痛を有する患者に対する痛みの神経生理学に基づいた患者教育(pain neurophysiology education;以下,PNE)の効果を検討することを目的とした。【方法】英語・日本語の無作為化比較試験を対象として2015年6月5日までの系統的検索を行った。バイアスのリスクの評価にはPhysiotherapy Evidence Database スケールを用いた。データの統合は記述的に行われた。【結果】6 編の英語論文が低いバイアスのリスクを示した。PNE が他の患者教育よりも効果的であるという明確なエビデンスはなかった。また,PNE と他の介入を併用した際に効果が減弱する可能性が示唆された。【結論】PNE を用いる場合は,患者特性と他の介入との相性を考慮する必要がある。将来の研究はこの研究で明らかになった方法論的欠点を解消し,PNE の効果についてより質の高いエビデンスを提示する必要がある。
著者
野村 卓生 浅田 史成 高野 賢一郎 佐藤 友則 川又 華代 廣滋 恵一 坂本 和志 明崎 禎輝
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.146-147, 2017 (Released:2017-04-20)
参考文献数
5

本研究は,日本における産業理学療法の推進をめざした3 年度計画の研究である。初年度(平成25 年度)においては,Web メールを用いた腰痛予防を目的とした理学療法士による指導効果に関する予備調査の検証を行った。2 年度(平成26 年度)目においては,初年度行った予備調査の検証から得られた成果を参考にして,産業理学療法指導システム(Consulting system for physical therapy in occupational health:以下,Compo)を開発し,介護労働者の腰痛予防を目的として,Compo を用いた臨床介入研究を計画した。最終年度(平成27 年度)においては,Compo を用いた臨床介入研究を始動させた。
著者
諏訪 勝志 藤井 亮嗣 井舟 正秀 坂井 志帆 伊達 真弥 川北 慎一郎
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.E0172-E0172, 2005

【はじめに】今回、転倒による入退院を繰り返し、転倒予防を目的に訪問リハを開始し、効果を認めた症例を経験したので、若干の考察を加え報告する。<BR>【症例紹介】女性、83歳。HDS-Rは24点で痴呆は認めないが、性格は、せっかちで他人の言うことはあまり聞き入れない。自分の歩行能力を理解しておらず、転倒に対する認識は低い。歩行能力は、入退院を繰り返したが、毎回退院時にはピックアップ歩行器自立レベルとなっていた。介護度は、要支援である。<BR>【転倒歴】平成9年に転倒により左大腿骨頚部骨折受傷する(他院で治療)。平成14年12月7日自宅にて転倒し、右大腿骨頚部外側骨折のため平成15年4月25日まで入院する。平成15年5月12日自宅トイレにて転倒し、右骨盤骨折のため9月16日まで入院する。平成16年1月1日ポータブルトイレ移乗時に転倒し、左骨盤骨折のため5月1日まで入院する。<BR>【家族構成】息子夫婦と3人暮らし。息子は、住職で日中家にいることは多いが、大学の臨時講師、文化教室などをしており多忙で介護をする気持ちはない。嫁はくも膜下出血後遺症のため、麻痺はないが失語症があり介護は困難な状態である。<BR>【家屋状況】最初の当院退院時(平成14年入院時)に家屋評価を行っている。家屋は、寺に隣接した住居で廊下は広く、敷居が多い。段差解消と手すり設置、家具・テーブルなどの位置変更をすすめるが、家族は拒否する。通所サービスの利用も拒否する。相談の結果、トイレの手すり設置と症例の居室の出入り口のみ段差解消を行う。家内の移動は、ピックアップ歩行器を使用し、夜間はポータブルトイレ使用とした。浴室に手すりはつけず、ホームヘルパーによる介助入浴を行うことになる。<BR>【訪問リハの内容】平成16年5月1日退院時にケアマネージャーと相談し、今後も転倒の危険性が高いことから、訪問リハによる転倒予防指導を家族に提案し、了解を得る。訓練内容は、下肢筋力強化と歩行訓練だが、毎回本人に対する転倒への注意と活動範囲での動作指導を徹底して行った。訪問頻度は、家族より限度額以内にしてほしいとの条件があり、週1回のヘルパー利用があるため、一月に1~2回となる。<BR>【考察】転倒を繰り返した原因として、本人・家族ともに転倒に対する認識が低く、本人のやりたいようにしていたこと、自宅改修による安全性向上ができなかったことが考えられた。その結果、転倒を繰り返したが、本人・家族ともに全く気にしていない状態であった。しかし、訪問リハ導入により、病院ではできなかった実際の生活場面での指導を継続して繰り返し行ったため、特に本人が転倒に少しずつ気をつけるようになってきた。その結果、訪問リハ開始となってから、現在まで転倒はなく、効果はでていると思われる。今後は、訪問リハの内容を検討しながら、フォローしていく必要性を感じています。