著者
森田 明雄 一家 崇志 國弘 彩 鈴木 利和 大石 哲也 小林 栄人 中村 順行
出版者
日本茶業技術協会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
no.111, pp.63-72, 2011-06

日本で栽培されている4つの白葉茶('星野緑,きら香'の2品種と'諸子沢,やまぶき'の2系統)の一番茶新芽の葉色値,遊離アミノ酸,カテキン類,カフェイン,有機酸および無機元素含量を,緑葉品種である'やぶきた'と比較した。その結果,葉色値は'やぶきた.の32.7に対して,白葉茶が0.6~8.1と非常に低い値を示した。遊離アミノ酸含量は,4つの白葉茶とも'やぶきた'に比べ1.8倍以上と高い値を示した。カテキン類含量は,'諸子沢,星野緑,きら香'が'やぶきた'の約3/4と低かったが,'やまぶき'はほぼ同程度であった。その他の成分では,シュウ酸とクエン酸,硝酸イオン,アルミニウム,カリウム,カルシウム,マグネシウム並びにマンガンの含量がいずれの白葉茶においても'やぶきた'より高い値を示した。これらのことから,供試した4つの白葉茶品種・系統は'やぶきた' と比べて,非常に高い遊離アミノ酸含量を有する特性を持つことが明らかとなった。また,いくつかの有機酸,無機元素含量が高いなど特異な化学成分組成を有している可能性が示唆された。
著者
松山 康甫 岡村 克郎
出版者
日本茶業技術協会(農林省茶業試験場内)
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1984, no.59, pp.28-40, 1984
被引用文献数
1

南九州畑作地帯における平坦地茶園の機械化栽培技術体系を確立するため,荒茶工場の標準的規模とみられる20haの茶園を対象に,履帯形の茶園専用作業機(摘採機,防除機,施肥中耕機等)を中心に共同作業を行うこととして試験した。<BR>集団規模の20haは1戸平均2.5haの茶園を持つ農家8戸で構成するものとして想定し,その中の1戸当りについて目標とする技術水準を検討した。<BR>そこで,1戸の家族労働力を男女2名とし,年間に労働する日は,日曜・祝日を除いた日で作業時間を8時間/日と設定した。<BR>目標とする技術水準のなかの,成園時1ha当り労働時間を609時間とし,さらに試験を行ったところ次の結果を得た。<BR>(1) 乗用履帯作業機を基幹として各作業を行った結果,強い晩霜害によって摘採計画の変更を行った年もあったものの,いずれも適期内に実施できた。<BR>(2) 体系化における各作業精度は,個別試験時と変わらなかった。従って,当機械化栽培体系で実施した場合,現行技術より作業精度は低下せず,むしろ部分的に向上するものが認められた。<BR>(3) 体系化における総合労働時間は,第1年目が1973時間(樹令8年生45a,6年生100a,4年生105a,計250a),第2年目が1596時間,第3年目が1420時間,第4年目が1407時間で,第3年目以降はha当り約565時間となり,成園時の目標時間である609時間の93%となった。また,その実ほ場作業率は80~87%であった。<BR>このように,総合労働時間が少なくなったのは,茶園の成園化に伴い,雑草の発生が減少したことが主な要因である。<BR>次に,総合機械利用時間は,第2年目以降471~472時間であり,1ha当り約180時間となって成園時の目標時間235時間の77%となった。また,その実ほ場作業率は77~80%であった。<BR>なお,1ha当り労働時間は被覆の有無によって差が大きく,特に被覆巻取り作業に要する時間が摘採作業の約2倍に相当する200時間と大きかった。<BR>(4) 作業体系と労働配分の関係は,2.5haを基幹労働力2人のみでほぼ全作業ができたが,一番茶は4月末から5月初めの連休と重なるので,この時期のみは日曜・祝日に作業を要し,他に時間外労働を一部に要するのみであった。また,雇用労働については,第1年目の被覆巻取り作業に93時間,第3年目には台風が接近し,被覆してあった寒冷しゃが吹き飛び,これを補正するのに12時間を要した。<BR>以上の結果を総合すると晩霜害の強い年があったにもかかわらず,第2年目以降の労働配分とその労働投入はスムーズに行われた。また,作業精度,総合労働時間等については,目標値を上回り1ha当り労働時間は550~560時間となった。更に,この外の想定した経営目標値をすべて達成でき,乗用履帯作業機を中心とした作業体系を確立することができた。<BR>本研究は,鹿児島県茶業試験場において1974年1月から4年間にわたり,農林水産省総合助成試験事業実用化技術組立試験として実施した。<BR>この研究に対し,終始適切な指導助言を賜った元農林水産省茶試企画連絡室長,杉井四郎氏,同茶試枕崎支場長前原三利氏,推進委員の方々,鹿児島県農試企画経営部,同農試大隅支場農機研究室の方々に対し,ここに謹んで感謝の意を表する。<BR>また,この報告のとりまとめに懇篤なる援助と協力をいただいた,当場環境研究室長藤島哲男氏,鹿児島県農業改良専門技術員原之園親男氏に心から感謝する。なお,本研究中,終始助言指導を賜った当場職員で構成された推進グループおよび加工研究室の方々に謝意を表するとともに,基幹労働力として協力された中木原末孝氏,福田サチ氏に厚く御礼申し上げる。
著者
讃井 元 安間 舜
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1961, no.17, pp.11-15, 1961-06-20 (Released:2009-07-31)
被引用文献数
2 3

Izumi is a new variety for Kamairitya -(Pan fired tea).This is a progeny of Benihomare and was selected from the natural crossing seeds.Izumi has fine flavor and nice taste for export to North Africa and especially fertile in yield. The yield of fresh leaf in a year is about 1000 kg. per 10 are.This variety is vigrous growing and cold resistant but is susceptible to the Japanese Exohasidium Blight (Exobasidium reticulutum ITn et SAWADA).
著者
阿南 豊正 高柳 博次 池ケ谷 賢次郎 中川 致之
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1982, no.56, pp.65-68, 1982-12-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
15
被引用文献数
3 1

緑茶貯蔵中の脂質含量:の変化を明らかにするため,貯蔵条件の異なる4種類の試料,すなわち荒茶を-70℃で18ヵ月貯蔵したもの(試料A,対照区),25℃で3ヵ月貯蔵後-70℃で15ヵ月貯蔵したもの(試料B),25℃で6ヵ月貯蔵後一70℃で12ヵ月貯蔵したもの(試料C),25℃で18ヵ月貯蔵したもの(試料D)の脂質を定量し,次のような結果を得た。1. 各試料について官能検査を行った結果,試料Aは新茶とあまり差がなかった。一方,試料Cおよび試料Dは変質程度が大きく飲用不適と判定された。2. 試料Bは試料A(対照区)に比べて全脂質含量で約10%減少し,試料Cは約20,0fib少した。一方,試料Dは試料Cよりほんのわずか減少する程度であった。3. 各脂質画分別にみた場合,25℃での貯蔵期間の増加につれて減少傾向が比較的はっきりしているものは糖脂質であり,中性脂質とリン脂質は減少傾向が小さかマた。又,個々の脂質別では,減少傾向が比較的大きかったものはMGDG,DGDG,SQDG,PCであった。終わりに,本実験を行うにあたり,御指導を頂いた当試験場古谷弘三前場長,坂本裕製茶部長ならびに官能検査をお願いした製茶第3研究室の方々に深く感謝致します。
著者
物部 真奈美 野村 幸子 江間 かおり
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.131, pp.9-14, 2021-06-30 (Released:2023-07-01)
参考文献数
13

カフェイン+EGCG/テアニン+アルギニンのモル比が2未満の高級抹茶を継続摂取するとストレッサーによる侵襲を受けにくいことが既に報告されている。一方,カフェイン+EGCG/テアニン+アルギニンのモル比が2以上の抹茶ではストレッサーによる侵襲を受けてしまうことが本研究でも明らかになった。しかし本研究では,上記モル比が2以上の抹茶ラテを飲用していた場合,不安状態における交感神経系を介したストレス防御反応の低下を抑える可能性があることが示された。
著者
沢村 信一 伊藤(中野) 恵利 加藤 一郎
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.93, pp.19-25, 2002-06-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
5

1) 荒茶の一般生菌数は,他の茶類(鳥龍茶・紅茶)と比較して多いことがわかった。蒸熱工程を含む緑茶特有の製造工程に起因しているものと思われる。2) 荒茶の一般生菌数を製茶法別に比較すると,深蒸し茶が普通煎茶より多い傾向にあった。深蒸し茶製造工程中の送帯式蒸機での一般生菌の残存と葉打ちから中揉にかけての二次汚染が原因と考えられる。3) 荒茶工場内の製茶工程毎に茶葉をサンプリングした結果,蒸機の種類により違いが見られた。送帯式蒸機の方が網胴回転撹拌蒸機より一般生菌数が多い傾向にあった。
著者
内野 博司 本多 勇介 中島 健太 佐々木 功二 小林 明 田中 江里 久米 信夫 酒井 崇 嶋崎 豊 石川 巌 岡野 信雄 京極 英雄 船越 昭治 北田 嘉一 淵之上 康元 田中 萬吉
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.107, pp.107_19-107_30, 2009-06-30 (Released:2011-12-09)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

茶新品種‘ゆめわかば’が埼玉県農林総合研究センター茶業特産研究所で育成された。‘ゆめわかば’は1968年に‘やぶきた’ב埼玉9号’の交配により得られた個体群より選抜され,1994年から2003年に県単試験を含む栄養系適応性試験,裂傷型凍害抵抗性及びもち病抵抗性検定試験を実施し,更に2004年,2005年には香気の更なる発揚を目的に試験を行った。この結果,優秀と認められ,2006年10月17日に茶農林53号‘ゆめわかば’として命名登録,2008年10月16日に品種登録された。‘ゆめわかば’は摘採期が‘やぶきた’より1日から2日遅い中生品種である。生育,収量とも‘やぶきた’並である。耐寒性は赤枯れ抵抗性が「強」,青枯れ抵抗性が「やや強」,裂傷型凍害抵抗性が「強」でいずれも‘やぶきた’より強い。また,病虫害抵抗性は,炭疽病に「やや強」である。製茶品質は外観が優れ,内質も‘やぶきた’並に優れる。また,摘採葉を重量減15%から20%に軽く萎凋させることによって,香気及び滋味が向上する。耐寒性が強いために,関東やそれに類似した冷涼な茶産地に適する。
著者
松本 五十生 落合 勝義 船越 昭治 中村 公一 真野 光雄 森田 貞夫
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.74, pp.1-9, 1991-12-10 (Released:2009-07-31)
参考文献数
6

緑茶の消費向上と嗜好の多様化に対応するため,緑茶にない芳香をもち,苦渋味の少ない新香味茶の製造方法について検討し,図2に示す技術を確立した。(1)萎凋と発酵は煎茶用自動乾燥機を用い,温風温度35~40℃で30分が適当であった(重量減7~10%)。(2)攪拌は中揉機に金網胴をとりつけ,60分処理で好結果が得られた(重量減15%)。(3)静置は生葉コンテナーを用い,室温(27℃)に60分放置した。これにより強い芳香が発揚した。(4)マイクロ波加熱による殺青(ブランチング)は出力4KW,照射時間50秒,重量減45~50%が良好であった。(5)整形及び乾燥は揉捻機,再乾機,乾燥機を用い,揉捻15分,再乾と乾燥はともに60℃の排気温で,それぞれ40分が好適であった。(6)仕上げは火入れを行って青臭みを除き,9号で切断し,10号の篩目で仕分け,整形した(平均粒度1.27mm)。(7)一般消費者に対して,代表的試製茶の嗜好調査を実施したところ,46%の人が好き,やや好きと答えており,市販された場合購買嗜好も高く明るい見通しを得た。
著者
水野 卓
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1964, no.22, pp.121-123, 1964-10-15 (Released:2009-07-31)
参考文献数
12

茶葉から図1の分別法に従って咨種多糖類を調製し,それらの構成糖組成を表5のごとく明らかにした。
著者
鹿子木 聡 德田 明彦 上室 剛
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.120, pp.37-45, 2015-12-31 (Released:2018-01-01)
参考文献数
16
被引用文献数
3 3

著者らは松元機工株式会社と共同で,10a当たり200Lの農薬散布が必要とされてきた茶病害虫防除をより少ない散布量で行うことができる装置「かごしま式防除装置MCS-KAGO1-1 (以下,本装置) 」を平成25年度に開発し,平成26年度に初年度実証試験を行った。本装置によって農薬散布量を慣行よりも削減したかごしま式・40L区とかごしま式・68L区を慣行乗用・200L区 (200L/10a) と比較したところ,チャノナガサビダニ (甚発生) およびチャノミドリヒメヨコバイ (甚~多発生) に対する防除効果はほぼ同等となった。輪斑病 (中発生) に対する現地での防除率はかごしま式・72L区で87.8%,慣行乗用・200L区は82.3%となり,また,炭そ病 (少発生) の防除率はかごしま式・43L区およびかごしま式・62L区,慣行乗用・200L区が同等だった。しかし,炭そ病の多発生下では,農薬散布量が少なくなるほど防除効果が下がる傾向があった。本装置による少量農薬散布技術には不明な点が多く残されているが,実用化の可能性があると思われた。今後は実証試験を重ねるとともに,全国各地の茶園に対応できるように本装置の改良も進めたい。
著者
向井 俊博 堀江 秀樹 後藤 哲久
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.76, pp.45-50, 1992-12-10 (Released:2009-07-31)
参考文献数
8
被引用文献数
27 25

荒茶価格1kg当り560円から12,000円の煎茶61点を集めアミノ酸含量と全窒素量を分析した。上級煎茶と下級煎茶では,グルタミン酸含量にあまり大差がなく,テアニン,グルタミン,アルギニン含量に著しい差が見られた。また,グルタミンの割合が上級煎茶ではグルタミン酸よりも多い傾向があったが,下級煎茶では少なかった。価格と全窒素量は下級煎茶と中級煎茶に相関が認められるが,上級煎茶では認められないため,全窒素量は上級煎茶の品質判定の指標として使用出来ないと考えた。それに対して,全アミノ酸量は,全ての価格帯において相関が認められ,より広い範囲の品質の煎茶の判定に利用できるものと考えられた。また,17種類のアミノ酸の中で最も価格との相関が高かったのはアルギニンとテアニンであった。本研究を進めるにあたって,試料の収集に御協力いただいた静岡県茶商工業協同組合関係各位及び,分析を手伝っていただいた天野いねさんに深く御礼申し上げます。

1 0 0 0 OA 包種茶史

著者
竹尾 忠一
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.91, pp.1-4, 2001-07-31 (Released:2009-07-31)
参考文献数
11
著者
吉留 浩 長友 博文 水田 隆史 佐藤 健一郎 宮前 稔 古野 鶴吉
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.125, pp.7-23, 2018-06-30 (Released:2020-07-01)
参考文献数
8
被引用文献数
1

‘はると34’は,1997年に宮崎県総合農業試験場茶業支場において,‘さえみどり’を種子親,‘さきみどり’を花粉親として交配した実生群から選抜された極早生の緑茶用品種である。2007年から2015年まで‘宮崎34号’の系統名で宮崎県を含む全国の14試験場所 (一部の場所は2010年まで) で系統適応性検定試験第12群として地域適応性試験等を実施した。更に,2011年から2013年までは農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業23014に参画した試験場所の一部で特性調査を行った。その結果,‘はると34’は,温暖地の好適条件の茶産地であれば,高価格が期待できる一番茶の極早期に製茶できる品種で,煎茶,釜炒り茶いずれにおいても品質が優れる良質極早生品種として普及に移し得ると判断され,2016年1月12日に種苗法に基づく品種登録出願を行い,2016年12月27日に品種登録出願公表された。‘はると34’の特性の概要は次のとおりである。1) 樹姿は‘中間’,樹勢は‘強’,株張りは‘やぶきた’より大きい。一番茶期の新芽は,萌芽後18日目の早い極みる芽の時期から30日目のやや硬化した時期まで‘さえみどり’より葉色が濃く,鮮やかな緑色である。2) 晩霜による生育遅延を受けなかった場合の一番茶の萌芽期は,‘やぶきた’より7日程度,摘採期は5日程度早い極早生品種であり,特に温暖な茶産地では摘採期が‘やぶきた’より10日程度,‘さえみどり’より5日程度早い。3) 一番茶,二番茶の収量は‘やぶきた,さえみどり’より多い。4) 耐寒性は,裂傷型凍害や赤枯れ,青枯れには‘やぶきた,さえみどり’より強いが,越冬芽の凍害は‘ゆたかみどり,さえみどり’並に弱い。5) 耐病虫性は,輪斑病は‘やや強’,炭疽病,もち病には‘弱’である。クワシロカイガラムシに対する抵抗性は‘極弱’である。6) 製茶品質は,煎茶の一番茶は色沢,水色が特に優れ,‘やぶきた’より優れる。防霜施設が整えられた温暖地での栽培等,条件が良ければ‘さえみどり’より優れる時がある。煎茶の二番茶は色沢,香気,滋味が特に優れ,‘やぶきた,さえみどり’より優れる。釜炒り茶の一番茶では色沢,香気,滋味が特に優れ,‘やぶきた,さえみどり’より優れる。7) 煎茶及び釜炒り茶における一番茶荒茶の化学成分含有率は‘やぶきた’より遊離アミノ酸含有率が高く,タンニン含有率は低い。煎茶の二番茶荒茶の化学成分含有率は‘やぶきた,さえみどり’より遊離アミノ酸含有率が高く,タンニン含有率は低い。8) 一番茶の3.5葉期頃から80%遮光率5日間程度の直接短期被覆処理を行うと,製茶品質では形状,色沢,水色が向上し,化学成分含有率では遊離アミノ酸が増加し,タンニンが減少するため品質が向上する。
著者
原田 重雄 渡辺 明 加納 照崇
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1954, no.4, pp.1-5, 1954

1.昭和28~29年の暖冬に際し,切枝を低温処理して幼芽の耐寒性の品種間差異につき調査した。<BR>2,腋芽は頂芽に比し耐寒性がやや強かつた。また品種間の差異は大きく,暖冬時の1月25日の調査では,みよしが最も弱く,U21(3倍体)及びやまとみどりは強かつた。萠芽期の3月30日及び4月8日の調査では,幼芽の耐寒性は急激に弱くなり,品種間ではみよし,あさつゆが最も弱く,やまとみどりが最も強かつた。冬芽で強い方であつたあさつゆ,たまみどり等が春芽ではやや弱い方に入り,冬芽で弱かつたべにほまれが春芽では強い方に入つたのは,春期における芽の活動状況の違いによると思われるが,中にはやぶきたのように春芽の発育が盛んなのにもかかわらず,耐寒性の比較的強いものもあつた。<BR>3,冬芽における耐寒性の品種間差は,昨年度の冬期間に成葉につき調べた耐寒性の強弱とかなりよく一致し,暖冬年でも冬芽の耐寒性の品種相互間の関係は,平年とそれほど変るものではないように思われた。<BR>4.頂幼芽の搾汁屈折率は耐寒性とかなり密接な関係を持ち,春になり芽の発育が進むほど屈折率は低く耐寒性は弱くなり,また冬芽・春芽のいずれの場合にも,屈折率の低い品種ほど耐寒1性が弱い関係が見られた。<BR>5.暖冬下における幼芽は,発育がかなり促進されても,萠芽期の春芽に比すれはなお耐寒性が著しく強かつた。これはいくら暖冬とはいつても,芽の生理的活動は春の萠芽期の芽に比すればなお著しく微弱なためであろう。しかし圃場で冬芽に2割四外の被害を認めた場合もあり,みよしは特に被害芽が多かったから,幼芽の耐寒性については,今後品種選択等の場合に充分注意さるべきであろう。
著者
三輪 悦夫 高柳 博次 中川 致之
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1978, no.47, pp.48-52, 1978-03-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
17
被引用文献数
16 5

葉位による化学成分含量の相違について,一番茶,二番茶を対象に検討した。(1) 葉位が下がるほど含量が減少した成分は,全窒素,タンニン,カフエインであった。茶期別にみると,一番茶に全窒素が多く,二番茶ではタンニン,カフエイン含量が多かった。(2) 葉位が下がるほど含量が増加した成分は,遊離還元糖,フラボノール類,塩類可溶性ペクチン,全ペクチンであった。(3) カテキン類のうち,特にエピガロカテキンガレートは,上位の葉および二番茶に多かった。(4) アミノ酸類のうち,テアニン,グルタミン酸,アルギニン,アスパラギン酸,セリンは,一番茶の上位の葉に多く,二番茶では著しく減少が認められた。(5) 無機成分含量のうち,上位の葉に比較的多く含まれる成分は,カリウム,リン酸,マグネシウム,亜鉛であった。下位の葉に多く含まれる成分は,カルシウム,マンガン,アルミニウムであった。本研究は,著者の1人三輪が,農林省茶業試験場において,国内留学中に行ったものであり,実施にあたり御指導,御協力をいただいた阿南技官,天野氏に,また,無機成分分析で御指導をいただいた池ケ谷技官に深く感謝いたします。
著者
大西 市造
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1975, no.42, pp.37-46, 1975

1. 工程の進行とともに茶葉幅とわん曲度は減少し,みかけ比容積は逆に大きくなる。また5段階加すいより4段階加すいのほうが長短度は大きく,細よれとなった。これから工程初期における加すい時期の遅速が整形上大切な要素となることがわかった。<BR>2. 揉手1往復当たりの茶葉応力は,最大応力部分と無反応個所が存在し,加すいの移動とともに応力は増加するが,茶葉水分,機種の構造などの違いによって,かならずしも近似的な波形は示さず,加えて茶葉の反転,分散,緊締度などに関係があると思われる力積値の変動要因についても注目する必要がある。<BR>3. 各機種とも懸すい荷重については,それぞれ重すいの重さと竿の長さに比例的に働くが,実際運転中におけるロット(作用点)の荷重は,メーカーにより支点,力点,ロットの取り付け位置などが異なるため,重すいの移動に対する動荷重変位比率に違いが生じるので,精揉操作の加すい配分には十分な考慮を払うべきである。<BR>4. 精揉工程における均質な製品を得るための方法としては,投入時の茶葉の性状についてのチェックと機械自体のしくみを明らかにするとともに,投入茶量,所要時間,荷重方式の組み合わせは,取り出し水分(11.9%)外観評点(40点)の基準値より遠くにあるものは排除し順次集約したプログラムの作成を行い自動化への基礎資料を求め,さらに発展させる方向に進めなければならない。<BR>終りに本研究を実施するにあたり,ご協力を仰いだ当研究所製造課の諸氏をはじめ,種々適切な助言をいた〓いた農林省茶業試験場竹尾室長ならびに京都府中小企業総合指導所工業技術課 小柳技師に深く感謝の意を表します。
著者
渕之上 康元
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.66, pp.15-39, 1987-12-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
15
被引用文献数
2

1埼玉県茶業試験場で,品種園の中の100品種・系統(日本種,準中国種,準アッサム種など)を供試して,4年生時(1974)から14年生時(1984)までの11ヵ年間にわたって,圃場耐寒性を調査し,同時に冬季の気象条件などとの関係を調べたところ,耐寒性茶樹育種のための多くの知見を得ることができた。2調査方法の概要は下記のとおりである。(1)圃場耐寒性は,関東茶産地での主要な寒害(赤枯れと青枯れ)に対する抵抗性で,いずれも越冬圃場(毎年3月上旬に)での被害の程度を肉眼観察により1(軽微)~9(甚大)に判定区分した。(2)気象観測は,茶業試験場内の百葉箱によるもので,11月第3半旬~3月第1半旬の最低気温,降水量,降雪量,地温,凍結期間などである。3得られた成果の要約は下記のとおりである。(1)赤枯れ被害は,幼・成木期に関係なく何時でも発生がみられるが,青枯れ被害は,特異な異常気象年を除き幼木期程被害が大きい。(2)主要な32品種の11ヵ年のデータについて分散分析を行ったところ,両被害共年次間及び品種間に顕著な有意差を認めた。(3)赤枯れ被害でも年により被害程度に多少の差がみられるが,青枯れ被害は,茶樹の幼木期に生じやすいとはいえ,毎年発生するとは限らず,とくに成木園になってからは,異常気象年を除き,被害軽微の年が多かった。(4)被害度の反復力(遺伝力)を計算し,耐赤枯れ,青枯れ性の検定に適した年の有無について検索したところ,耐赤枯れ性では,一般に被害度が特異的でしかも品種の変動係数の小さい年を除いて,平均被害度が4.0~5.0程度で品種の変動係数の比較的高い年(平均0.3~0.4位)を選ぶこと,また,耐青枯れ性検定では,やはり異常気象を除き,幼木期を対象として適度の被害度(平均3.0~4.0位)と品種の変動係数の大きい年(0.6~0.8程度)をそれぞれ選んで,これを検定に適した年とするのが良いように思われた。(5)これを冬季気象条件との関係において検討したところ,耐赤枯れ性検定では,暖冬年や寒の戻り年などの特異な気象年を除き,冬期の日最低気温積算値が-320℃~-460℃位の当地方でも比較的寒冷な年で,しかも1976年のように前年の12月下旬から厳寒期にかけて半旬別平均最低気温がほぼ直線的に低下していた年が最も検定に適していた。また一方,耐青枯れ性検定では,やはり異常気象年を除き,茶樹の幼木期に相当した年次の中で,茶樹が吸水低下を来たすと言われている土壌凍結~地温3~4℃以下の継続日数の長い寒冷な年で,しかも無降水継続日数が50日以上にも達する年が適していた。(6)検定に適した年の被害度の分散分析の結果をもとに主要32品種の圃場耐寒性の階級分けを行い,耐赤枯れ性を強~弱の5群に,耐青枯れ性を強~甚弱の6群に群別した。(7)今後,気候遷移期の特徴といわれる異常気象年(冬季の)に対応できる品種育成の基礎資料を得る目的で,特異な気象条件下での品種の耐赤枯れ,青枯れ性の変動について,やや強以上の品種(検定に適した年のもとでの)について調べた。その結果,まず耐赤枯れ性では,寒の戻り年でも比較的その低下をみなかった品種にやまとみどり,たまみどり,こまかげ,さみどりなどが,また逆に著しく低下をみたものにおぐらみどりがみられた。また一方,耐青枯れ性についても同様に検討してみると,1984年の異常気象年でもこまかげ,さみどり,安化県種の3品種・系統のみは被害が極めて軽微(被害度1.0)で特異的であり,あさひ,さやまかおり,やまとみどりなども比較的耐青枯れ性の低下が少なかった。しかし,一方おぐらみどり.他数品種に著しく耐青枯れ性の低下するものを認めた。なお,検定に適した年に平均的被害度が4.0であったやぶきたが異常気象年に8.0まで低下していたことは注目された。(8)赤枯れ,青枯れ被害と一番茶収量との相関関係は,赤枯れでは被害の著しい年にのみ負の相関関係を認めたが,一方,青枯れでは被害のあったすべての年で負の相関関係が認められた。(9)最終的に,特異な気象条件下での各品種の変動も含めて,わが国主要46品種の耐寒性の階級分けを6~7段階に行った。そしてこれによれば,まず耐赤枯れ性では日本種が強~弱,準中国種がやや強~やや弱,準アッサム種がやや強~甚弱に,また一方,耐青枯れ性では日本種と準中国種が甚強~甚弱,準アッサム種がやや強~甚弱にそれぞれ変異していた。なお,これを個々の品種でみれば,とくにこまかげ,さみどり,さやまかおり,あさひ,やまとみどりの5品種が耐赤枯れ,青枯れ性共に他の品種よりも上位にランク付けされており,将来の超耐寒性品種育成のための素材として注目された。
著者
園田 敬太郎 和田 義彦 今村 嘉博 山中 成元
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.127, pp.27-36, 2019-06-30 (Released:2021-07-01)
参考文献数
7

近年,滋賀県ではニホンジカの生息数が増えており,県内主要茶産地である甲賀市では,野生シカが茶園に侵入して生育,収量への影響があると言われていたが,十分な状況把握ができていなかった。筆者らは,2016年7月に生産者にアンケート調査を行ったが,幼木園において被害を認める生産者は約7割,成木園において被害を認める生産者は約9割であることが分かった。同年9月から行ったトレイルカメラを使った実地調査では,侵入は夜間に多く,シカが自生する雑草を摂食する様子が認められた。しかし,10月下旬以降はチャ樹冠面の成葉を摂食する様子も観察されるようになった。また肥料として施用する「菜種油かす」がシカを誘引しているとの生産者の声があることから,数種類の有機質肥料に対するシカの行動を調査した。その結果,一般草地に出没するシカは「菜種油かす」は摂食しないが,茶園に出没するシカは摂食することを認めた。さらに数種類の有機質肥料に対する行動を調査したが,「魚かす」は摂食の対象になり,「ひまし油かす」は摂食されにくいと考えられた。
著者
佐藤 邦彦
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.104, pp.33-42, 2007-12-31 (Released:2009-07-31)
参考文献数
7

(1)室内試験において,高湿度条件(相対湿度100%)および湛水条件下におけるクワシロ卵のふ化状況を調査した。高湿度および湛水条件下で7日間保持したクワシロ卵のふ化率は,それぞれ20%と7%に低下し,湛水条件を10日間維持すると卵はふ化しなかった。(2)茶園において,雌介殻内のクワシロ卵を高湿度に保つ方法について,スプリンクラーを用いて試験した。チャの枝が常に濡れた状態になるように,日中断続的に散水(1日1haあたり120~150t)することで,クワシロの卵は雌介殻内で褐変し死亡した。茶園においては,クワシロ卵のふ化開始以降,スプリンクラーを用いて16日間高湿度状態にすることで,クワシロ卵のふ化を効果的に抑制することが可能である。
著者
原 利男 深津 修一 伊奈 和夫
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.78, pp.61-65, 1993-12-15 (Released:2009-12-03)
参考文献数
5
被引用文献数
1 3

茎茶と煎茶の香気成分をGC及びGC-MSで調べ,また呈味成分は熱湯浸出液の13C-NMRスペクトルを測定し,その差異を比較・検討した。茎茶にはリナロールとゲラニオールが煎茶より多く含まれていたが,緑茶の主要香気成分であるネロリドール,インドール及びシスージャスモンなどは少なかった。茎茶は煎茶に比較してカテキン類,カフェイン,しょ糖などの含量が少なく,テアニンとキナ酸カリウム塩が多く含まれていた。