著者
石井 真史
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.827-832, 2012-10-05 (Released:2012-11-06)
参考文献数
10

1000℃ を超える高温における物理・化学特性を分析する新しい手法として,火を用いる複素インピーダンススペクトロスコピー(OTD-CIS, over thousand degree centigrade complex impedance spectroscopy)を提案する.火は電気伝導を持つため,それを加熱と共に電気プローブの目的に使用するのが基本的アイディアである.一方で火は理想的な導体ではないため,直流と交流特性のそれぞれを考慮して,条件の選択や解析上の処理が必要になる.直流では,火の整流性の影響を回避するため,バイアスを印加して電流-電圧特性が線形となる領域を選択する.交流では,火の正イオンの応答特性を除去するため,差分解析を行う.これらの措置により,酸化アルミのOTD-CISスペクトルが得られた.スペクトルの解析により,抵抗率はOTDでも減少し続けるのに対し,誘電率は室温から変化しないことを示した.
著者
渡辺 最昭 磯村 勝利
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.15, no.11, pp.1215-1219, 1966-11-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
6

カルシウムカーバイドによるアルコールの定量の可否を明らかにする目的で,カルシウムカーバイドとメタノールの反応をガスクロマトグラフ法により検討した.その結果,温度250℃以下ではほとんど反応は起こらないが,温度300℃で,メタノールは100%反応して,アセチレン(65モル%)とジメチルエーテル(35モル%)を生成することが明らかになった.この条件のもとに,n-ヘプタン中に微量メタノールを溶解させた標準試料について実験したところ,本法がメタノールの定量に利用できることがわかった.
著者
森田 裕子 水村 亮介 橘 義貴 金澤 秀子
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.541-545, 2013-06-05
参考文献数
14
被引用文献数
2

Cation exchange resins (calcium polystyrene sulfonate, Ca-resin and sodium polystyrene sulfonate, Na-resin) have been used as agents to improve hyperkerlemia. For removing <sup>137</sup>Cs from the human body, the adsorption ability of the resin for <sup>137</sup>Cs was examined and evaluated. Resin (0.03 g) and <sup>137</sup>Cs (ca.1 kBq) were introduced into 3 mL of water, the Japanese Pharmacopoeia 1st fluid for a dissolution test (pH 1.2) and 2nd fluid (pH 6.8), respectively, and shaken. After 1-3 hours, the <sup>137</sup>Cs adsorption (%) of Na-resin was 99% in water, 60% in a pH 1.2 fluid and, 66% in a pH 6.8 fluid. By adding potassium, the <sup>137</sup>Cs adsorption (%) of Ca-resin was reduced. However, the <sup>137</sup>Cs adsorption (%) of Na-resin was almost unchanged. These results show that both resins have adsorption ability for <sup>137</sup>Cs in the stomach and the intestines. Therefore, the proposed method will be an effective means in the case of a radiological emergency due to <sup>137</sup>Cs.
著者
永野 久志 高田 安章 鈴木 康孝 杉山 益之 橋本 雄一郎 坂入 実
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1105-1110, 2013

駅や商業施設,スタジアムなどの,非常に人が多い場所で爆発物の検査を行うため,被験者の手元周辺の検査に特化した爆発物蒸気のサンプリング部を開発した.サンプリング部を駅の自動改札機のICカード認証部を模した形状とし,ICカードをICカード認証部にかざして通過する間に,手やICカードに付着している化学物質から発散する蒸気を質量分析計に吸引し検出する構成とした.ICカード認証部に沿って流す気流について検討した結果,ICカードに付着したtriacetone triperoxide(TATP)や2,4,6-trinitrotoluene(TNT)などの蒸気圧の高い爆薬成分を,約1秒で検出できることを確認した.これにより,駅などの人の往来の非常に多い場所において,人の流れを妨げずに爆発物の検査を実施できる見通しを得た.
著者
黒羽 敏明 渋谷 晟二
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.925-929, 1972

クリスタルバイオレットを用いる銅中の微量水銀の抽出吸光光度定量法を検討した.<BR>EDTAを含む銅のアルカリ溶液からジエチルジチオカルバミン酸-トルエン抽出により水銀を分離したのち,ヨウ化カリウム,臭素酸カリウムおよび臭化カリウムを含む硝酸(0.7<I>N</I>)溶液で水銀を逆抽出し,ついでクリスタルバイオレットを加えトルエンで水銀を抽出し光度定量することにより銅中の水銀の定量ができた.<BR>本法を妨害する元素として銀と金があるが,銀はジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムの添加量を増すことで,金はジエチルジチオカルバミン酸錯塩としてトルエンで抽出したのち,0.5<I>N</I>の硝酸溶液で洗浄することにより水銀の損失を招くことなく金を除去することができた.<BR>銅2gを採取すれば0.25ppmまでの水銀の定量が可能である.
著者
神谷 厚輝 大崎 寿久 竹内 昌治
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.441-449, 2015-06-05 (Released:2015-07-07)
参考文献数
27

細胞膜は,情報伝達や細胞間の情報交換の場である.このような細胞内外での物質のやり取りは,チャネルやレセプターのような膜タンパク質が主にかかわっている.膜タンパク質は,ガン等の疾病と関連しているため,膜タンパク質の機能を理解する研究が強く進められている.特に,イオンチャネルはパッチクランプ法と呼ばれる,イオンチャネル内のイオンの通過を電気シグナルにて観察する手法により機能評価が行われている.しかし,この手法は難度が高く,熟練した研究者でも1日に数回程度のデータ取得が限度と言われ,イオンチャネルをターゲットとした薬剤開発の妨げとなっている.著者らが開発した液滴接触法は,単純な「8」の字のデバイス内において,簡単・迅速に再現良く人工平面脂質膜を形成できる技術である.このデバイスに電極を配線することにより,様々なイオンチャネルにおけるイオン透過の電気シグナル観察に成功している.本稿では著者らが開発したパッチクランプ法に代わる平面膜形成デバイスの有用性について示し,今後の展望を述べる.
著者
蔵楽 正邦 大倉 与三郎
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.25, no.11, pp.790-794, 1976-11-10
被引用文献数
1

有機リン系農薬4成分(パラチオン,メチルパラチオン,EPN及びメチルジメトン)の同時抽出,クリンアップ及びガスクロマトグラフ定量法を確立した.すなわち,10%クロロホルム含有n-ヘキサンで抽出し,濃縮後ガスクロマトグラフ(FPD検出器)に注入し,上記4成分を同時定量する.本法によれば,水質試料200mlにつき,定量下限は0.001ppm,又はそれ以下である.又,底質,産業廃棄物,工場排水などの汚濁の激しい試料の場合には,上記の濃縮液を活性化フロリジルカラムに注入し,2%アセトン含有n-ヘキサン,次いでアセトンーn-ヘキサン混合溶媒(1:2)で順次展開することによりクリンアップし,脱水,濃縮してガスクロマトグラフに注入する.固体試料(10〜20)g,排水200mlについてクリンアップ操作を経た場合の回収率は,前三者で(85〜95)%,メチルジメトンで(55〜60)%であった.
著者
武者 宗一郎 越智 紘
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.202-207, 1965-03-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
12
被引用文献数
2 2

滴下法によって展開溶媒を供給して展開を行なう円形薄層クロマトグラフィー用の展開装置を考案・試作し,その適用例としてアミノ酸類の分離および同定のための諸条件を検討した.吸着層には厚さ0.2mmのシリカゲルおよびアルミナの円形クロマトプレートを用い,展開溶媒は前者にはフェノール-水(75:25,w/w),後者にはn-ブタノール-氷酢酸-水(40:10:50,v/v)を使用した.試料溶液は円形クロマトプレートの中心かあるいは半径10mmの円周上の数点に点じ,その中心へ展開溶媒を供給して展開後ニンヒドリンで発色すれば,各アミノ酸は同心円状もしくは弧状の細い分別帯を与える.本手法を数種の天然物質中に含有されるアミノ酸類の定性分析に応用し,展開距離約90mmでほぼ満足に応用可能なことを知った.展開所要時間は約180分であった.
著者
斎藤 守正
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.598-602, 1986-07-05
被引用文献数
2

スパークイオン源質量分析法において,対極に金,白金,銀,タンタル,タングステン,アルミニウム細線を用いるプローブ法での相対感度係数(RSC)(Fe=1)について検討した.用いた試料は鉄鋼,銅,アルミニウム標準試料である.各プローブ法で得られたRSCの値を比較すると,プローブ間では大きな差がないこと,又プローブ法のRSCの値は通常の2本の電極でスパークさせる固体法で得られた値と良い一致を示すことが分かった.本法の精度は固体法の精度より5〜13%良くなったが,固休法同様マトリックスの影響があること,鉄鋼中のケイ素,チタンは偏析のため精度が悪くなることがあった.しかし本法は微小部の分析,精度向上に役立つことが示された.
著者
高橋 純一 山田 憲幸
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1257-1277, 2004 (Released:2005-03-28)
参考文献数
87
被引用文献数
9 17

誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)のバックグラウンドスペクトルには,試料やプラズマガスに起因する種々の多原子分子イオンが観測される.微量定量分析を妨害するこれらのイオンを除去する上で,質量分析計の手前にセルで囲ったイオンガイドを設け,気体分子とイオンとを衝突させる手法(collision/reaction cell)が非常に有効であることが示された.Collision/reactionガスの選択,セル内で副成するイオンの除去法,イオンの運動エネルギーの制御の仕方などにいろいろなバリエーションが見られ,少しずつ方式の異なる装置が市販されている.それらの原理,使用に際しての最適化,種々の試料への応用について概観する.試料への応用を通じて,期待される性能,あるいはその限界について紹介する.
著者
大熊 誠一
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.21, no.13, pp.188R-195R, 1972

鑑識化学分析は司法裁判に関係ある事件の解決に応用される分析化学であるため,裁判化学ともいわれている.したがって,分析の対象となる物質(物体)は,きわめて広範囲となるため,その分析内容は薬品分析,農薬分析,生化学分析,各種機器分析などに関係してくることが多いので,用に臨んで,それらの文献を参照し応用することが必要である.今回は1968年までの文献を収載した前回の総説に続いて1969年から1971年の間に発表された鑑識化学分析関係の文献を集録整理した.<SUP>1)</SUP>裁判化学の教科書が新しく出版<SUP>2)3)</SUP>されたが,機器分析法,薬毒物の生体内代謝,生体試料からの薬毒物の分離法などが可能なかぎり取り入れてあるので実務者,研究者にとっても有用である.裁判化学,毒物学に関係ある薬物の単離確認法<SUP>4)</SUP>,薬物の微量結晶検査法<SUP>5)</SUP>,人体臓器中の毒物検出法<SUP>6)</SUP>,揮発性毒物の系統的分析法<SUP>7)</SUP>などの単行本が発刊され,また,毒物の分析化学便覧<SUP>8)</SUP>が出版された.裁判毒物学におけるガスクロマトグラフィー(GC)のシンポジウム議事録が単行本<SUP>9)</SUP>として出版され,毒物学におけるクロマトグラフィーの総説<SUP>10)</SUP>が発表されている.原子吸光分析の基礎とそれの生物試料などへの応用を述べた単行本<SUP>11)</SUP>も出版された.質量スペクトル分析法(MS)の裁判化学への利用を記載したシンポジウム記事<SUP>12)</SUP>があり,また,各種分析機器<SUP>13)</SUP>,各種分光作学的方法<SUP>14)15)</SUP>の鑑識化学分析への応用を記述した総説,解説もある.臨床化学に関係のある薬毒物分析の総説<SUP>16)</SUP>も参考になるものと思われる。各種薬毒物の毒物学的研究の交献集<SUP>17)</SUP>,毒物学の単行本<SUP>18)</SUP>,便覧<SUP>19)</SUP>,雑誌<SUP>20)</SUP>なども出版されている.
著者
中村 靖 小林 義男
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.224-227, 1989-05-05
被引用文献数
2 3

ケイ素を過剰のモリブデン酸塩と反応させ、モリブドケイ酸を生成し、この錯体中のモリブデンを誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS法)で測定して間接的にケイ素を定量する方法を検討した。モリブデン酸とモリブドケイ酸との分離は、ScphadexG25(デキストランをエピクロロヒドリンで三次元的に架橋したゲル)を用いた。このゲルは、モリブドケイ酸をよく吸着するが、モリブデン酸は全く吸着しない。ゲルに吸着したモリブドケイ酸は、アンモニア水で溶離してICP-MS法で測定する。ヘテロポリ酸を生成する元素のうち、ヒ素はゲルクロマトグラフィーで分離除去され、リンはシュウ酸を添加古ることによって影響を避けることができるが、ゲルマニウムはあらかじめ分離しておく必要がある。本法を用いて高純度銅中のケイ素を定量したが、定量下限は20ppbであった。
著者
奥野 雅雄 中川 宏 宗吉 史昭 小硲 真智子 小篠 薫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.531-536, 1977-08-05
被引用文献数
1

汚でい中の6価クロム{クロム(VI)}は,鉱酸などを用いることなくEDTAを用いてクロム酸塩を溶出し,直ちにジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(DDTC)と錯体を形成させメチルイソブチルケトン(MIBK)に抽出することができる.汚でい中に含まれる難溶性クロム酸塩をアンモニアアルカリ性溶液中においてEDTAで溶解し,結合金属イオンを錯化溶出してクロム(VI)を水溶化する.これをpH5付近でDDTCなどの還元剤で発生機状態のクロム(III)にした後,過剰のDDTCと錯体を形成させ,これをMIBKに抽出する.MIBK相を揮散させた後硝酸で分解して原子吸光分析(少燃料フレーム)することにより,共存物の影響をほとんど受けずに定量を可能にした.なお,本法は(10〜5)%の変動係数で汚でい中のクロム(VI)を迅速かつ簡便に定量できる.
著者
大黒 鉱
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.361-365, 1975-06-10
被引用文献数
1

空気-アセチレン及び空気-水素フレ-ムを用いるクロムの原子吸光分析において、数種類のクロム化合物より調製した標準溶液が、同じクロム濃度にもかかわらず異なった感度を示した。各クロム化合物の水溶液での感度の大きさは次のとおりであった。空気-アセチレンフレーム:クロム酸アンモニウム>重クロム酸カリウム>塩化クロム>クロム酸カリウム。 空気-水素フレーム:重クロム酸カリウム>クロム酸アンモニウム>クロム酸カリウム>塩化クロム。 このような感度差は、クロムに対して大きな増感干渉を示す塩化アンモニウムの添加によって補正することができた。その結果、検量線作成用の標準溶液と試料溶液にそれぞれ塩化アンモニウムを添加することにより、いずれのクロム化合物も標準として用いることが可能となり、また数種類の異なったクロム化合物が共存する試料中の全クロムの正確な分析も容易にできるようになった。
著者
阿久津 哲也 清水 得夫 上原 伸夫
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.693-698, 2009-08-05
参考文献数
18
被引用文献数
2

<i>in situ</i>抽出剤生成法とミクロ溶媒抽出法を組み合わせた水試料中のクロム(III)とクロム(VI)の分別法を開発した.試料水25 mLに,モル比を1 : 2とした二硫化炭素とピロリジンを3 v/v% 含むキシレンの混合溶媒を500 μL加え,ミクロ溶媒抽出して50倍濃縮を行った.有機相を分取し,黒鉛炉原子吸光測定した.pH 3.0においてクロム(VI)は,系内で生成したピロリジンジチオカルバミン酸と錯形成し,選択的に抽出される.pHを6.0として35℃ の水浴で30分間加温することで,酸化することなくクロム(III)をクロム(VI)と共に抽出できる.50倍濃縮における検量線は直線性を示し,クロム(VI)及び全クロム[クロム(III)]の検出限界(3σ)はそれぞれ0.75 ng/L,0.64 ng/Lであった.本法をミネラルウォーターと河川水試料に適用した.また,添加回収試験を行ったところ,本法は水試料中のクロム(III)とクロム(VI)の分別に有用であることが分かった.
著者
久永 真央 津田 孝雄 大桑 哲男 伊藤 宏
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.57-61, 2012-01-05
被引用文献数
4

労働環境や生活環境において,生体内に取り込まれた化学物質の皮膚からの放出に関する研究は少ない.そこで皮膚ガスを採取し,ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)で分析を行い,生体内への化学物質の取込みを推定することを目的として本研究を行った.皮膚ガスの採取は,労働環境や生活環境の異なる被験者10名(男性7名,女性3名)の左手から行った.被験者の皮膚ガス中に,ベンゼン,トルエン,キシレン,2-エチル-1-ヘキサノール,<i>p</i>-ジクロロベンゼンなどを確認した.有機化学実験をしている異なる2 つの研究室の被験者間に,2-エチル-1-ヘキサノールの濃度平均値の有意差を認めた.またトルエン濃度が,他の被験者に比べ有意(<i>P</i><0.05)に高い被験者がいた.この被験者がガス関連事業所で働いていたことから,職場での暴露によると推測された.労働環境や生活環境の違いにより,皮膚ガスに含まれる化学物質には,人により差があることが示唆された.
著者
高田 芳矩 伊藤 正人 伊藤 三男 岩渕 等
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.435-441, 1994-06-05
参考文献数
6
被引用文献数
1 2

試料溶液を連続的にカラムに導入し, 純粋な溶離液をパルス状に注入して行われるクロマトグラフィー(ベイカントクロマトグラフィーと呼ぶ)の適用を検討した.装置は通常のノンサプレッサー型のイオンクロマトグラフを使用した.試料はあらかじめ溶離液と混合し, これを連続的にカラムに流しておき, ここにインジェクションバルブから試料成分を含まない溶離液をパルス状に注入した.先端分析, 後端分析及びベイカントイオンクロマトグラフィーにおける目的イオンの保持容量は目的イオン及びマトリックス濃度に影響され変動した.ベイカントビークの面積は目的イオンの濃度及びパルス注入する溶液の濃度に比例した.この手法は試薬などに含まれる微量不純物分析に適すると考えられた.
著者
黒田 正範 工藤 清勝
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.174-178, 1981-03-05
被引用文献数
2

薄層クロマトグラフィー(TLG)によるビスフェノールA系エポキシ樹脂の分離分析に及ぼす溶媒の極性と担体の粒度の影響を検討した.TLGで分離した各成分の基本構造式のnはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定し,それぞれn=0からn = 7に対応することを確かめた.TLGの分離条件をグラジェント法による高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に適用し,紫外部に吸収のないテトラヒドロフラン(THF)-クロロホルム系の吸着モードHPLCによりパターン分析ができることが分かった.
著者
芳川 満輝 内田 亮 黒木 巽 三熊 敏靖 蛭田 勇樹 永田 佳子 金澤 秀子
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.173-179, 2016-04-05 (Released:2016-05-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1

Recently, the need for the analysis of psychotropic drugs has increased. With the revision of the medical treatment fees in FY2014, facilities that can be calculated in those case that could identify the drugs responsible for acute drug poisoning of a patient by instrumental analysis, including HPLC analysis, were expanded from only advanced emergency medical care centers (30 facilities nationwide) to emergency medical care centers (263 facilities nationwide). Since the responsible drugs can include barbiturate drugs used as antiepileptics and tricyclic drugs used as antidepressants, methods to analyze psychotropic drugs are needed. Moreover, in emergency medicine, it is necessary to quickly identify the cause of acute drug poisoning. Ultra-high-speed HPLC has become increasingly popular in analytical research fields. In this study, we investigated the analysis of psychotropic drugs using an ultra-high-speed HPLC system. The HPLC utilized in this study was a ChromasterUltra Rs system (Hitachi, Tokyo, Japan) equipped with a photodiode array detector. Using a LaChrom Ultra C18 column (particle size; 1.9 μm) as the analytical column, rapid and simultaneous analysis of 14 psychotropic drugs (five barbiturates, three benzodiazepines, five tri- and tetracyclic antidepressants, and trazodone) was achieved within 5 min.
著者
藤原 鎮男 荒田 洋治 渡部 徳子 石塚 英弘 磯谷 順一 古田 直紀 山崎 昶
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.23, no.13, pp.88R-111R, 1974

本進歩総説は前回に続き, 1972年初めから1973年末 (一部1974年のものも含む) までの文献を採用した.磁気共鳴に関する論文は近年その数を著しく増し (1973年にはNMR約8000件, ESR約4000件), しかもきわめて広い範囲にわたっている.したがってこれらの文献を漏れなく集録することはもはや不可能であり, また単に測定法のごく一部として磁気共鳴を利用したものまで含めて網らすることは意義があるとは考えられない.この点を考慮し, 本総説では重要と考えられる項目にっいて重点的に文献を集録する.なお, 合成高分子については別に項目があるのでここでは省略する.