著者
鈴木 将司 宮内 俊幸 水野 佑哉 石川 徳久
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.33-38, 2016-01-05 (Released:2016-02-06)
参考文献数
21

ケナフ中のセルロースを濃塩酸で加水分解し,生成した還元性末端基(アルデヒド基)を過マンガン酸カリウムで酸化することによってカルボキシル基を有する弱酸性型陽イオン交換体を得た.このイオン交換体の交換容量は2.80 Cu(II) meq g-1– Rと高く,吸着速度も速く30分以内で吸着平衡に達した.また,金属イオンの吸着はpH=2.5以上から始まり,従来のカルボキシル基型イオン交換体と比較し低pH領域からの吸着が認められた.カラム法を用いて本交換体に対する銅イオン及び白金族金属イオンの吸着挙動を調べたところ,銅(II),ルテニウム(III),ロジウム(III)及びパラジウム(II)は吸着するが,他の白金族金属イオン,すなわちイリジウム(III),オスニウム(IV)及び白金(IV)は吸着しない.また,カラム内に保持された白金族金属イオンは塩酸溶離液でCu(II) – Pd(II) – Ru(III)及びCu(II) – Rh(III) – Ru(III)の三元分離ができた.さらにノートパソコン基板を王水処理し,その中に存在する銅(II)及び白金族金属イオンの回収について検討した.
著者
佐藤 朋覚 熊谷 昌則 天野 敏男 小川 信明
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.653-660, 2003 (Released:2004-01-30)
参考文献数
24
被引用文献数
1 6 2

携帯可搬型の近赤外分光分析装置を用いて,清酒(日本酒)のスペクトルを測定し,ケモメトリックスを用いて判別分析を行い,その分類に対して化学的な解釈を加えた.近赤外スペクトルでの主成分分析で得られた波長寄与率スペクトルから,第1主成分(PC1)はアルコールの -CH3,-CH2-,R-OHの寄与が高く,第2主成分(PC2)はタンパク質の -NH2,-CONH2,-CONH-,-CH3,-CH2- の寄与が高く,第3主成分(PC3)はデンプンの -CH3,-CH2-,-OHの寄与が高いことが推定できた.近赤外スペクトルでの違いが,PC1では純米酒とそれ以外に,PC2では大吟醸酒とそれ以外に,PC3では純米大吟醸酒・本醸造酒,普通酒・大吟醸酒,純米酒にそれぞれ分類できることが分かった.携帯可搬で現場測定が可能なPlaScan-SHは清酒の判別に有用である.
著者
西浜 章平 吉塚 和治 SCAMPAVIA Louis RUZICKA Jaromir
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, 2006

掲載論文の取り消しについて<br> <br> 取消論文: 西浜章平,吉塚和治, Louis Scampavia and Jaromir Ruzicka: 分析化学(<i>Bunseki Kagaku</i>), <b>52</b>(12), 1187-1192 (2003). "マイクロシーケンシャルインジェクション分析法の最適化" (Received 16 July 2003, Accepted 10 September 2003)<br><br>「分析化学」編集委員会及び著者は、上記論文が先に投稿された下記の論文と重複していることから取り消すことに決定致しました。したがって、上記論文を今後引用することのないようにご注意ください。 <br><br> 先行論文: Syouhei Nishihama, Louis Scampavia and Jaromir Ruzicka: J. Flow Injection Analysis, <b>19</b>(1), 19-23 (2002). "μSI: Optimization of reagent based chemicals chloride in Lab-on-Valve system." (Received 9 January, 2002, accepted 28 February, 2002)
著者
中田 有紀 阪井 麻里 日向 正文 鈴木 照雄
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.775-780, 2000-10-05
参考文献数
3
被引用文献数
1 7 3

食品用のプラスチック容器は食品衛生法の対象製品であり,特定成分についての溶出基準値はあるが,スチレンモノマー,ダイマー及びトリマーに関しては基準値の定めがない。しかし,スチレンダイマー及びトリマーは環境庁が外因性内分泌撹乱化学物質の調査対象としてリストアップしている物質の一つである。このため,日常的に使用されている食品容器からの溶出実態を把握するため,市販のカップめん容器(6検体),使い捨てプラスチックカップ(5検体)及びコンビニ弁当容器(2検体)を試料として,各溶媒に溶出するスチレンモノマー,ダイマー(4物質)及びトリマー(5物質)を,GC/MSにより分析した。その結果,溶媒がn-ヘプタンの場合,ダイマーが15.6~745ppb,トリマーが208~6110ppb,20%エタノールの場合,モノマーが0.11~1.5ppb,ダイマーが0.353~4.86ppb,トリマーが0.892~9.87ppb,水の場合,モノマーが0.14~2.6ppb,ダイマーが0.035~1.291ppb,トリマーがN.D.~2.666ppb溶出した。また,材質中に含まれる量も分析したところ,ダイマーが171~426ppm,トリマーが3260~12800ppm含まれていた。
著者
中町 鴻 廣瀬 正明 木川田 喜一 廣瀬 勝己 岡田 往子 鈴木 章悟 本多 照幸
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.589-594, 2015-08-05 (Released:2015-09-03)
参考文献数
12
被引用文献数
4

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震及び,それにより発生した津波によって東京電力福島第一原子力発電所(以下,福島原発)は大きな被害を受け,環境中に多量の放射性核種を放出した.その影響で関東地方においても高濃度の放射性セシウム(134Cs,137Cs)が大気中でも検出された.本研究では大気粒子状物質(APM)に着目し,神奈川県における福島原発事故由来の放射性セシウムを長期的に観測することで,APM中の放射性セシウム濃度の経時変化並びに,大気環境中における放射性セシウムの存在形態について検討した.その結果,大気中の放射性セシウムの放射能濃度は2011年3月から2011年9月にかけて105分の1にまで減少したものの,その後は緩やかな減少にとどまり,2014年3月時点でも1.0 × 10-5 Bq m-3の放射能が検出されていることが明らかとなった.大気環境中における放射性セシウムの存在形態については,粘土鉱物中に強く固定されてしまう土壌中の放射性セシウムとは異なり,水溶性成分のものが50% 以上の割合を占め,土壌等のほかの環境中の放射性セシウムに比べ移動能が高いことが分かった.
著者
海老原 寛 吉原 賢二
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.48-53, 1961-01-05 (Released:2010-02-16)
参考文献数
14
被引用文献数
1

8-hydroxyquinoline (以下オキシンと略す)のモリブデン,インジウムおよびタングステン塩のSzilard-Chalmers効果について調べた.無水のオキシン塩をJRR-1(中性子束密度~1011n/cm2・sec)中で中性子で照射をし,これをクロロホルムに溶解してから種々のpHの緩衝溶液とふりまぜ,Szilard-Chalmers効果によって錯塩の結合からはずれた金属イオンを水層中に抽出した.放射能の測定によって水層への抽出率を定め,水層中のその金属イオンの総量を定量して濃縮係数を出した.99Mo についてはpH2.0~5.6 の間で抽出率は0.5~2%,濃縮係数は10~130程度であった.116mIn では 1N 水酸化ナトリウムでほとんど 100% 抽出され,濃縮係数は約 106 であった.185Wの場合は抽出率34%(pH 7),濃縮係数430を得た.なお99Moのβ崩壊によって生成する99mTcを分離する方法についても述べてある.
著者
藤田 雅俊 大河内 博 緒方 裕子 名古屋 俊士 皆巳 幸也
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1111-1116, 2013-12-05 (Released:2013-12-28)
参考文献数
26
被引用文献数
1

Rapid and sample preparation using stir bar sorptive extraction (SBSE), followed by high-performance liquid chromatography with fluorescence detection to determine polycyclic aromatic hydrocarbons (PAHs) in atmospheric water was studied. Applying the SBSE method to authentic atmospheric water samples revealed that rainwater in Shinjuku contained a 226 pM concentration of total PAHs, which was 10-times as much as that at Mt. Fuji, especially in a higher concentration of soluble PAHs. There was no seasonal variation of the concentration and composition of PAHs in rainwater at Shinjuku. Comparing the concentration of PAHs in rain, cloud, and dew water collected at the foot of Mt. Fuji, 5- and 6-rings PAHs were enriched in cloud water. This result suggests that cloud droplets could condense PAHs, especially high molecular weight PAHs.
著者
林 勝義 丹羽 修
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1-12, 2002-01-05
参考文献数
61
被引用文献数
5

脳内,神経細胞計測用の電気化学センサーシステムについて概説した.リアルタイムモニタリングを目的とした微小電極型,オンライン型,そして,チップ上に検出器や電気泳動を集積したマイクロ化学分析システム(μ-TAS)について,生体・細胞測定に適用されたデバイスを中心に,電気化学検出器と組み合わされた電気泳動チップの現在の動向についても紹介した.微小電極型センサーでは,電極材料や測定手法の開発により,オンライン型センサーでは,酵素カラムや電気化学反応器と検出器との組み合わせにより,高感度,高選択測定が実現されている.μ-TASでは,センサーシステムの微小化によってよりリアルタイムな生体・細胞測定実現の可能性が示された.シナプスレベルようなの速い応答を高い位置分解能での測定が可能なセンサーが必要とされており,今後その実現が期待される.
著者
半沢 昌彦 斎藤 純 横山 幸男 土屋 正彦
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.123-129, 1990-02-05
被引用文献数
1

液体イオン化(II)質量分析法による魚体試料中の2,2', 4'-トリメチル-4-メトキシジフェニルアミン(TMMD)の簡易定量法について検討した.魚体への添加濃度に応じ2種類の簡単な前処理法(1段抽出法, 2段抽出法)により調製した魚体試料をLI法で測定したところ分析成分のプロトン化分子(MH^+)及び魚体成分由来のピークが観測された.LI法では分析成分がプロトン化分子として検出されるので質量分析法の特長である質量分離が成分分離となり, 更に生成イオンの脱離温度の差による分離も利用できるので, 魚体成分をある程度含有したままでの分析が可能である.検討の結果, 従来法よりも簡便な前処理で魚体中濃度が0.3μg/g程度のTMMDが定量可能となり, 化学物質安全性試験のための定量法としてのLI法の有用性が示唆された.
著者
堀江 秀樹
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1063-1066, 2009 (Released:2010-01-25)
参考文献数
8
被引用文献数
6 4

Important taste compounds in vegetables are organic acids (sour taste), free sugars (sweetness) and some amino acids (umami-taste). The author tried to analyze these important taste compounds (oxalic acid, citric acid, malic acid, aspartic acid, glutamic acid, fructose, glucose, sucrose) in various vegetables simultaneously using capillary electrophoresis. The electrolyte used was 20 mM 2,6-pyridine dicarboxylic acid and 0.5 mM cetyltrimethylammonium bromide at pH 12.1. The capillary tube was rinsed between every analysis for 1.5 min with water, 3 min with methanol, 4 min with sodium hydroxide (1 M) and 5 min with a running electrolyte, respectively, for the purpose of improving the stability and peak shape of the pherogram. The signal was indirectly detected at 270 nm. The taste compounds of various vegetables purchased in Japanese market were successfully analyzed using this method. These comparative data, based on the same analytical methods are very rare in the literature, and our data clearly indicate the characteristics of each vegetable.
著者
郡 宗幸 井上 嘉則 井出 邦和 佐藤 幸一 大河内 春乃
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.933-938, 1994-11-05
被引用文献数
6 3

有機スズ化合物の固相抽出法について検討した.固相抽出剤としてスチレン誘導体-メタクリル酸エステル重合体を用い, AASで有機スズの回収率を求めた.分析操作は次のとおりである.海水試料のpHを硝酸で1〜0.5に調整し, 試料と等量のメタノールを加えて, pH0.5〜0.25に再調整する, 試料溶液を固相抽出カートリッジに流量4.5〜5ml/minで流す, 10%メタノール溶液15mlで洗浄し, 溶離液としてメタノール10mlを流して有機スズを溶出させる.人工海水100ml{トリフェニルスズ(TPT), トリブチルスズ(TBT);20mgl^<-1>}を用いて分析精度(n=5)を求めた.平均値は20.0mgl^<-1>(TPT)及び20.3mgl^<-1>(TBT), RSDは1.8%(TPT)及び1.7%(TBT)と良好な結果を得た.
著者
久野 祐輔 雛 哲郎 佐藤 宗一 秋山 孝夫
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.T31-T35, 1991-02-05
被引用文献数
1 3

使用済み核燃料再処理工場の効率的な運転には, 再処理プロセス中のウラン(U)及びプルトニウム(Pu)濃度のリアルタイムでの分析が不可欠である.そこで, 対象溶液の組成を変化させる必要がなく, 直接分析が可能な微分パルスボルタンメトリーに注目し, インライン分析法としての適用を試みた.電極の選択に当たっては, プロセスへ影響を及ぼさないこと, 保守が容易であることなどを考慮し, 貴金属のみを使用することにした.すなわち, 作用電極に金, 参照電極及び対極に白金を選び, これらを1本の樹脂に埋め込んで電極プローブとした.又高範囲の濃度測定のために, 作用電極には有効面積が0.008mm^2及び0.8mm^2の2種類を用いた.更に, 多くのプロセスでは対象溶液が流動しているため, 流動に影響されないプローブの形状を考案した.その結果, 硝酸濃度0.5〜5Mの範囲において1〜200gl^<-1>のU, 0.2〜5Mの範囲において0.5〜20gl^<-1>のPuを約5%の精度で定量できることが分かった.又, 使用済み燃料溶解液など高放射性のプロセス溶液に対しても適用できることを確認した.
著者
今坂 藤太郎
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.3-30, 2001-01-05
参考文献数
94
被引用文献数
2 4

超音速分子ジェット分光法は, 試料分子を気体状態で絶対零度付近に冷却して測定する方法である。試料分子を冷却することにより, 鋭い構造の励起スペクトル, あるいは多光子イオン化スペクトルが得られる。更に, 蛍光スペクトルあるいは光イオン化質量スペクトルを測定して, 試料分子を同定することもできる。したがって, スペクトル選択性が極めて高い。必要な場合には, シンクロナススキャンルミネッセンス分光法や, クロマトグラフなどの分離手段と結合することにより, 更に選択性を向上させることも可能である。一方, この手法は原理的には単一分子を検出できる分析感度を有している。したがって, 本法は極限の選択性と感度を同時に持っている。最近, ダイオキシンを超微量分析するための手法が強く要望されているが, 超音速分子ジェット法は, そのための有力な分析法として注目されている. しかし, ダイオキシンは毒性の異なる多数の分子種の集まりであり, それらを区別して測定することが必要である. また, これらの化合物は極めて毒性が高く, 極微量分析も同時に要求される。現在, ダイオキシン分析に適用できる超音速分子ジェット分光法の技術開発が進められており, ここではその現状についても言及する。
著者
善木 道雄 伊藤 裕昭 姫野 新典 横山 崇
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.201-203, 2003 (Released:2003-08-04)
参考文献数
18
被引用文献数
4 4

A simple solid-phase colorimetry using polyurethane foam (PUF) for the determination of iron(II) has been proposed. The 1,10-phenanthroline (phen) method is selective and sensitive, and is widely used for the determination of Fe(II) in aqueous solution. It is worthwhile to develop this method, which is suitable for visual colorimetry. An iron(II)-phen complex and its ion-associates, such as Br−, SCN− and ClO4−, were not extracted onto PUF at all. In the presence of sodium dodecyl sulfate (SDS), we found iron(II)-phen complex was adsorbed onto PUF and the iron concentration was visually measured from the resulting color onto PUF. The recommended procedure is as follows. Five ml of a 1 M acetate buffer solution (pH 4.7), 1 ml of 10 w/v% ascorbic acid, 3 ml of 0.1 w/v% phen, and 4 ml of 5×10−3 M SDS were added to a 200 ml sample solution containing less than 200 ppb of Fe(II). A chip of PUF (2×2×2 cm) was put into the solution and stirred with a magnetic stirrer for 20 minutes. The chip taken up from the solution was rinsed with distilled water and squeezed to remove any water. The color intensity of the PUF was then visually compared by a standard series method.
著者
林 英男 田中 智一 平出 正孝
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.299-303, 2002-05-05
被引用文献数
7 9

減圧ヘリウムICP-MSは,アルゴンに起因したスペクトル干渉を除くことができる.しかし,m/z=79〜82に小さなバックグラウンドピークがなお存在し,微量な臭素及びセレンの定量を妨害した.本研究では,これらのピークがインターフェース部材質の銅に起因した分子イオンであることを突き止めた.これらのイオンを抑制するため,ニッケル及びアルミニウム製インターフェース部を試作した.その結果,ニッケル製では,広い質量範囲にわたりバックグラウンドピークが生じたが,アルミニウム製ではほとんど観測されなかった.そのため,減圧ヘリウムICP-MSのインターフェース部材質としてアルミニウムが最適であるとの結論を得た.電熱気化法により臭素及びセレンの溶液試料(10ng ml^-1,5μl)を導入して得られた相対標準偏差(n=10)は,いずれも約10%であった.また,臭素及びセレンの検出下限(3σ)はそれぞれ0.2及び0.09ng ml^-1であり,通常のICP-MS(Br 20 ng ml^-1, Se 0.25 ng ml^-1)に比べ高感度な定量が可能になった.
著者
佐藤 浩昭
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.219-220, 2001-03-05

Temperature-programmed analytical pyrolysis (TPPy) techniques were developed for the characterization of various functional polymers. In the first study, the TPPy techniques were applied to investigate the thermal-degradation process of a flame-retarded poly (buthylene terephthalate) (FR-PBT) with a synergistic flame-retardant system based on a bromine-containing polycarbonate (Br-PC) and Sb_2O_3. It was clarified that during the degradation of FR-PBT the evolution of various bromine-containing products, including flame-poisoning SbBr_3 formed through the reaction between Br-PC and Sb_2O_3, were closely related to synergistic flame-retarding mechanisms. In a second study, a natural polysaccharide chitin/chitosan and chitin-based polymer hybrids were characterized by means of analytical pyrolysis techniques. Firstly, in order to determine the composition of N-acetyl-D-glucosamine units (i.e. the degree of acetylation) of chitin/chitosan, a new reactive pyrolysis-gas chromatography in the presence of an oxalic acid aqueous solution was developed. The proposed technique was applicable to any kind of chitin/chitosan sample over the whole range of acetylation to which the other individual methods were inapplicable. Secondly, novel chitin-based polymer blends with a chitin derivative and poly (vinyl chloride) were characterized by the TPPy techniques. The evolution peak-top temperatures and the amounts of the characteristic degradation products were correlated to the miscibility of the blends. In addition, the mechanisms for the intermolecular interaction of the blends were also characterized.
著者
岡田 哲男 原田 誠
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.27-41, 2005 (Released:2005-04-08)
参考文献数
42
被引用文献数
5 6

イオンの分離において重要な役割を果たす静電効果と溶媒の関与について著者らの研究を中心に述べた.イオン交換系及び両性イオン性の系について,クロマトグラフィー,電気泳動による結果を静電理論によるモデル計算に基づいて解析し,分離が起きる界面での様々な現象の理解を可能にした.しかし,溶媒の関与を含めた構造的側面については直接的な検討が必要であると考え,X線吸収微細構造(XAFS)を用いて,イオン交換樹脂や気液界面での単分子膜を用いたイオンの局所構造解析を行った.例えば,水中のイオン交換では,対イオンが部分的にイオン交換基から解離しているが,全体の60~70% 程度は直接イオン交換基に結合し,3分子程度の水によって水和されていることなどが分かった.また,水溶液表面での全反射XAFSを用いることにより,単分子膜でのイオン交換の評価が可能になり,膜の圧縮によるイオン交換選択性の変化が観察された.Br-は,クロマトグラフィーや電気泳動で両性イオン性分子と会合していないと考えられたが,表面XAFSでは部分的に会合していることが示唆された.
著者
並木 美智子 広川 吉之助
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.213-217, 1979-04-05
被引用文献数
1 4

金属銅の定量は試料を窒素気流中又はアルゴン気流中硫酸セリウム(IV)溶液で処理して酸化銅のみを分解分離した後,金属銅を窒素又はアルゴン気流中塩化鉄(III)溶液に溶解し,還元により生じたFe^<2+>を硫酸セリウム(IV)-硫酸鉄(II)滴定法によって定量した.酸化銅(I)の定量は試料を窒素気流中で塩化鉄(III)に溶解し,同じく還元により生じた鉄(II)を硫酸セリウム(IV)-硫酸鉄(II)法で滴定し,酸化銅(I)と金属銅の合量を定量した後先に定量した金属銅量を差し引く.全銅の定量は試料を硝酸に溶解した後銅アコ錯イオンとして光度定量した.酸化銅(II)は全銅から金属銅と酸化銅(I)の合量を差し引いて算出した.以上の方法を混合試料及び実際試料に応用してほぼ満足できる結果を得た.
著者
林 謙次郎 佐々木 義明 田頭 昭二 伊藤 和晴
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.T61-T64, 1981-06-05
被引用文献数
3

アルミニウム-アルミノンレーキの呈色は保護コロイドとしての分散剤の種類や濃度の影響を受ける.しかし,トリトンX-100のような非イオン性界面活性剤を分散剤として用いると安定な呈色が得られ,アルミニウムの弧光光度定量における従来法に比べ感度や精度の向上及び定量範囲の拡大をはかることができる.アルミニウムの定量について検討したところ,最大吸収波長537 nmにおけるモル吸光係数は2.2×10^4,感度は0.0012であり,(6.5×10^<-7>〜5.0×10^<-5>)mol dm^<-3> のアルミニウムの濃度範囲でベール則に従った.レーキ及びアルミノン中のフェニル基やカルボキシル基がトリトンX-100のポリエーテル部と水素結合してミセルの親水部分に吸着されて安定化され,その結果,スペクトルが変化し吸光度が増加すると考えられる.