著者
藤平 眞紀子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.272-284, 2017 (Released:2017-06-20)
参考文献数
18
被引用文献数
1

In this study, the author examined the infirmary of an elementary school and considered that, in the context of an educational setting, there should be a strong perception of the infirmary as a life space for children and pupils and that the infirmary should be refurbished in order to achieve this purpose. I surveyed some elementary school infirmaries because elementary schools have pupils in six grades, and children have diverse needs. I also examined a case in which a school nurse renovated the infirmary under her own initiative, so that the space could accommodate the multi-faceted roles required of the space. One of the objectives of my study was to obtain basic knowledge that would help us define the ideal infirmary, where children who come to the space are able to relax and leave feeling content. I therefore renovated an infirmary on an experimental basis, and conducted a study. Specifically, I changed the layout of the furniture in the room to divide the room into several spaces. I brought in wooden furniture and added wooden interior decorations. I also examined their effects.   As a result of these renovations, I was able to set up zones in the infirmary, and children who came to the room were able to freely use the space for any purpose, and they could divide the space any way they wanted to. I received largely positive feedback from children who visited the infirmary concerning the environment in the room, the situation in the infirmary, and how they felt while in the infirmary. Additionally, by using wooden furniture and wooden interior decorations, I had a sense that the children who came to the infirmary were able to relax, and feel less constrained.
著者
小川 宣子 小林 由実 山中 なつみ
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.739-749, 2021 (Released:2021-11-27)
参考文献数
13

ガス加熱と誘導加熱 (IH) の違いが炒め加熱と焼き加熱調理の仕上がりに及ぼす影響について, 炒飯, ほうれん草炒め, 厚焼き卵の味, 物性, 組織構造から調べた. フライパンで水を加熱した時の昇温速度が同程度になるように火加減を設定した. 強火で予熱したフライパンと卵焼き器の鍋底と側面温度は, ガス加熱の方がIHの場合に比べて均一かつ高温になった. 炒飯とほうれん草炒めは強火で各々同じ時間炒め, 厚焼き卵は中火で卵の温度が同じになるよう作製した. ガスコンロで炒めた炒飯はIHヒーターに比べ, 食塩相当量が高く, 付着性が低かった. 炒飯の飯を走査電子顕微鏡で観察した結果, ガス加熱の場合では, IHの場合には見られない表面部分の崩れが観察された. ガスコンロで炒めたほうれん草はIHヒーターに比べ, 組織構造が保持されていた. 厚焼き卵の加熱時間はガス加熱の方がIHに比べて短かった. ガスで加熱した厚焼き卵の表面構造には太い均一な網目構造が観察され, 表面の凝集性が高いことの要因と考えられた. 本研究における加熱条件では, ガス加熱の方がIHに比べて食材からの水分蒸発やたんぱく質の熱変性が促進され, 炒め加熱ならびに焼き加熱調理の仕上がりに影響したと考えられる.
著者
飯島 久美子 郡山 貴子 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.280-288, 2020 (Released:2020-05-29)
参考文献数
31

本研究ではムクナ豆の歴史を調査し, 江戸時代の古文書である「新刊多識編」, 「本朝食艦」, 「大和本草」, 「本草綱目 啓蒙巻之二十」, 「和漢三才図会」にムクナ豆 (八升豆) に関する記載を確認した. 「和漢三才図会」に記載された調理法の「黒汁を取り去り」に着目し, 褐変について検討した. 未熟豆の切断の場合, ポリフェノールとポリフェノールオキシダーゼと酸素が同時に存在するために速やかな反応が見られた. 温熱水浸漬では, 空気中より穏やかな褐変反応であり, これは浸漬液中の溶存酸素の量や浸漬温度や溶出物質, ムクナ豆に含まれる酵素の至適温度などが関与すると考えられる. ムクナ豆の調理時に浸漬液や浸漬豆が黒くなった場合は, L-DOPA量が減少しているが, L-DOPAの一部であって全量ではないことが明らかになった.
著者
加藤 和子 Yohan YOON Roberto S UMALI Sumalee BOONMAR 峯木 眞知子 森田 幸雄
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.496-502, 2018 (Released:2018-07-28)
参考文献数
15

韓国, フィリピン, タイ, 日本の精米の一般生菌数, 大腸菌群数, セレウス菌数について調査した. 2015年5月から7月まで81検体を収集した. 日本では家に保管している精米と市販されている精米および韓国の市販精米はほぼ同じLog3.6-3.9個/gの一般生菌数であった. フィリピンとタイで市販されている精米は日本や韓国の精米に比べ有意に低くLog2.4-2.8個/gであった. 日本および韓国の精米から大腸菌群が分離された. エンテロトキシン産生セレウリド遺伝子非保有のセレウス菌は日本の農家保有精米1検体, フィリピンの市販精米1検体, タイの市販精米4検体から分離され, これらの陽性検体の菌数はLog2.5–2.9個/gであった. しかし, これらの精米を炊飯する加熱条件である98℃, 20分間加熱処理後の検体からは分離できなかった. これらのことから, 炊飯後のご飯のセレウス菌による食中毒のリスクは低いと思われる. しかしエンテロトキシン産生セレウスが炊飯前の米から分離されている. 食品の調理工程や保管に際して交差汚染を防止することは重要であると思われた.
著者
坂井 妙子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.19-24, 2009 (Released:2011-05-25)
参考文献数
29

In this essay, I explore the reasons why Victorian women anxiously wanted their garments to be "suitable for their complexions." In the Victorian period, "good complexions" not only meant fair skin that was fine in texture, they also signified the purity, fineness, and gaiety of the women to whom they belonged. In other words, good complexions were vouchers for good characters. This judgment was sanctified by the popular belief that good complexions were "a gift of Nature," and therefore a true exposure of one's purity in mind. The same belief demoralized people having different complexions. Reddened and flushed faces, blotches, freckles, even tiny black spots and oily skin were categorized as bad complexions. Such dichotomy idealized fair skin, while unreasonably denunciated all other types. Furthermore, women with bad complexions were labeled as immoral, because it was firmly believed that bad complexions were the result of indulgence, intemperateness, and vanity. They were stamped on the face as indelible badges of such sins. Cosmetics were also severely criticized, since they were incompatible with the ideal of "a gift of Nature." Under social and moral pressures, women had to find a means to improve their complexions. One of only a few socially acceptable options was to select the right colors for their garments.
著者
星野 亜由美 布谷 芽依 岸田 恵津 相川 美和子 諏訪 晶子 谷田 幸繁
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.202-218, 2023 (Released:2023-04-29)
参考文献数
35

骨量測定を取り入れた, 教科横断的な食育授業を行い, 食育の有効性を評価することを目的とした. 中学2年生78人を対象とした. 食育授業は, 保健, 数学, 家庭科の計4時間で実施した. 「心身の健康」を共通の食育の視点とし, 保健は「健康的な生活と疾病の予防」, 数学は「データの分布」, 家庭科は「中学生に必要な栄養を満たす食事」の領域で行った. 骨量は超音波骨量測定装置により右踵骨を測定した. 食育授業は, ワークシートの分析により評価した. 同性, 同年齢の骨量の標準値と比較した値であるZスコアの平均値は, 男子97.6%, 女子104.0%であった. ワークシートによる振り返りでは, 概ね7割以上の者が健康に関心を持つこと, 教科の理解を深めることができたと回答した. 保健の感想では, 約9割が骨量に言及した. 対象者の記述から, 生活習慣病を防ぐための生活習慣を多面的に理解し (保健), データを箱ひげ図に表すことで骨を丈夫にするためのヒントを取得し (数学), カルシウムやカルシウムを多く含む食品の特徴を理解した (家庭科) 様子が読み取れた. したがって, 見えない健康状態を可視化する骨量測定は, 生徒にとって関心が高く, 食育を行う上で適した教材であると考えられた. また, 「骨と健康」に関する教科横断的な食育実践では, 各教科の目標を達成しながら食育の理解を深めることが可能であると示唆された. 一方, 目標に到達できていない者も一部みられたことから, 引き続き授業構成などを検討する必要がある.
著者
牧野 秀子 畑江 敬子 島田 淳子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.38, no.8, pp.719-723, 1987-08-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
15
被引用文献数
2

乾燥大福豆の食塩水浸漬が, 煮熟後のやわらかさを促進する効果の機構を明らかにするために, 官能検査, 物理的測定, 食塩およびカルシウムの含量・ペクチン量の測定によって, 水浸漬の場合と比較検討し, 次の結果を得た.1) 食塩水 (0.7%) に浸漬後煮熟した豆は, 官能検査および物理的測定により, 水浸漬後の煮豆よりも子葉が有意にやわらかいこと, 種皮は顕著にそしゃくしやすく磨砕されやすいことが認められた.2) 食塩水浸漬豆の食塩含量は, 水浸漬豆のそれにくらべて, 子葉では約2倍, 種皮では約3倍と多く, カルシウム量は子葉では約1/4, 種皮では約2/3と少なかった.食塩水浸漬中に食塩が吸収されるに伴って, -織中のカルシウムが溶出したことが示された.3) 食塩水浸漬煮豆のペクチン量は, 水浸漬煮豆のそれにくらべると, 子葉, 種皮ともにメタリン酸塩可溶性ペクチンが少なかった.カルシウムの溶出に伴ってペクチン質が変化したことが示された.4) 水浸漬煮豆の種皮は, その官能特性およびペクチン含量により, 難崩壊性現象があらわれたことが示唆された.食塩水浸漬煮豆の種皮では, これが抑制されたと考えられた.
著者
新井 映子 伊東 清枝
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.161-169, 1991-02-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
14

共立て法によりスポンジケーキを調製するさいの, 卵黄の起泡性ならびにその膨化性について検討を行い, 卵黄泡沫の膨化がスポンジケーキの品質に与える影響について考察した.(1) 全卵中の卵黄量に卵白中の水分量に絹当する水を添加して攪拌すると, 卵黄の起泡性は卵白よりも高くなった.これより, 全卵の状態で攪拌を行う共立て法の場合には, 卵黄はきわめて起泡しやすい状態にあること, また, 起泡力をもつことが確認された.(2) 卵黄泡沫は, 共立て法のバッターに特有の硬さ, 粘り, 付着性等のテクスチャー特性を与えた.(3) 卵黄泡沫も焙焼により膨化することが確認された.ただし, 膨化率は, 全卵および卵白により形成された泡沫よりも小さかった.(4) 卵黄泡沫のみの膨化力で膨化させたスポンジケーキは, 凝集性が小さく, もろく, また, きめもあらかった.(5) 共立て法で膨化させたスポンジケーキの官能評価は, 卵黄泡沫および卵白泡沫がそれぞれ膨化することにより形成される2種類の異なる気孔が存在することにより, はじめて得られるものであった.(6) スポンジケーキの良好な膨化のためには, 卵黄および卵白両者の相互作用が必要であった.
著者
池田 昌代 秋山 聡子 鈴野 弘子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.63-75, 2023 (Released:2023-03-04)
参考文献数
37

大量調理における省エネルギーを考慮した調理機器の選択を行うために, フライパンとスチームコンベクションオーブン (200℃) を用いて鶏肉 (70 g×100切) を加熱する際のガス消費量を測定すると共に加熱後の鶏肉の品質評価を行った. 鶏肉10切から50切を加熱する際のガス消費量はフライパン加熱が最も少なかったが, 60切以上の加熱ではフライパン加熱がスチームコンベクション加熱を上回った. フライパン加熱した鶏肉の重量保持率は, スチームコンベクション加熱と比較し有意に低く, 破断荷重及び破断エネルギーは有意に高かった. 分析型官能評価では, 鶏肉の焼き色 (P<0.01) と硬さ (P<0.05) に有意差が見られ, フライパン加熱した鶏肉は焼き色が濃く硬いと評価された. 嗜好型官能評価ではフライパン加熱の焼き色が有意に好ましい (P<0.01) と評価されが, その他の項目ではフライパンとスチームコンベクション加熱に有意差は無かった. 給食施設においては調理する食材の量やメニューに適した調理機器を選択することで厨房内のエネルギー消費量の削減ができると考える.
著者
渡辺 喜弘 岡崎 英規 西宗 高弘
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.155-160, 2001-02-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
12

カイコガを食材として利用する際, その安全性を検討する必要がある.本報では, カイコガ体内に存在するチアミナーゼに着目し, 以下の結果を得た.(1) カイコガの幼虫及び蛹にビタミンB1分解酵素チアミナーゼを見出した.(2) 酵素反応温度がチアミナーゼ活性におよぼす影響を検討したところ, 60℃から70℃で活性が最も強かった.(3) 本酵素のpH依存性を検討した結果, pH9.0において最大の分解活性が認められた.(4) 本酵素はビタミンB1を分解するときに第2基質としてシステイン, タウリン, リジン, プロリン, グルタチオン, ピリドキシン等を要求することがわかった.(5) 本酵素をプロテアーゼ処理すると失活し, 蛋白質性である事が確認された.また, 透析後の酵素液中にも第2基質依存性の酵素活性は残り, 本酵素は非透析性の高分子量物質であることが確認された.(6) ビタミンB1のモノリン酸エステル, ジリン酸エステル, トリリン酸エステルには本酵素は反応せず, 遊離のビタミンB1のみを分解することがわかった.
著者
川端 博子 藤田 佳穂 吉澤 知佐
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.514-522, 2020 (Released:2020-09-02)
参考文献数
7

ジャケットの裏地の用い方が, 動作機能面での快適性に及ぼす影響について考察することを目的とし, ジャケットの着用感評価と衣服圧計測を行った. Mサイズの4枚のジャケット (素材と伸び率の異なる裏地をつけた3枚と裏地なし) で, 裏地の効果を比較した. 次に, MとSサイズのジャケットの着用実験より, 動作性を維持する裏地の条件について考察した. 結果は, 以下のとおりである. (1) 裏地なしジャケットでは衣服圧は最も低いにもかかわらず, 動作のしやすさ, 着脱のしやすさ, 質感のよさで裏地つきのジャケットより評価が低かった. (2) Mサイズで裏地違いの3枚のジャケットの比較より, 柔らかく平滑なキュプラレギュラー裏地のジャケットでは, 衣服圧の低減とともにすべりの良さ, 動きやすさで高い評価が得られた. ポリエステルストレッチ裏地を用いたジャケットの評価が低かったのは, 伸長性よりも袖すべりのよさが動きやすさに効果を与えるためと考えられる. (3) キュプラレギュラー裏地のSサイズジャケットとポリエステル裏地のMサイズのジャケットには, 着用感評価と衣服圧に差は見られなかった. ジャケットの動作快適性を維持し, 衣服圧を抑えるには, 伸縮性よりもすべりがよくせん断特性の小さい裏地の使用がふさわしいことが明らかとなった.
著者
草野 篤子 中西 央 小野瀬 裕子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.5-14, 2000-01-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
15

日本国憲法第3章人権条項のうち, 「男女平等」と「教育の機会の平等」を中心としたベアテ草案作成の背景を考察し, ベアテ草案の先進性と限界を見いだした.その結果を以下にまとめる.(1) ベアテ草案作成の状況ベアテは, 語学力を駆使し, 諸外国憲法を参考に引用しながら, 女性の権利, 教育の平等, 労働者の権利等, 「女性と子どもが幸せになるため」の条文を作成した.(2) ベアテの経歴と起草条項の淵源ベアテが起草した, 民主的な近代家族の生成に寄与した女性の権利保障と教育の自由が明文化された条文の淵源として, (1) 母親からの影響, (2) 10年問の在日経験, (3) 米国ミルズ大学での教育, (4) 被抑圧民族であるユダヤ人として受けた差別, (5) 被抑圧ジェンダーである女性として受けた差別の5点を見いだせた.ベアテはこの時弱冠22歳であったが, さまざまな社会や文化に対してグローバルな視野を持ち, 博識であった.(3) 憲法研究会草案との対比日本の民間草案は約12あったが, 国民に目を向けていち早く発表された憲法研究会草案は注目に値する.新たに規定されるべき国民の権利義務として, 「言論学術芸術の自由」「労働の義務」「労働に対する報酬の権利」「休息権」「老年疾病の際の生活保障」「男女平等の権利」「民族人種差別の禁止」をあげている.模範とした諸外国憲法は, 憲法研究会草案を知らないベアテが模範にした憲法と同じであった.ベアテと憲法研究会が参考にした憲法の条文を表1に示した.ベアテ草案と憲法研究会との条文の共通性を表2に示した.憲法研究会草案はGHQ上級職員から高く評価され, その意識の中には取り入れられていたと考えられた.(4) ベアテ草案の先進性および限界ベアテ草案 (GHQ第一次案) の先進的な部分と限界の双方の指摘を試みた.先進的部分として3点あげることができた.第一に, 家庭における男女の平等を規定した第18条, 長子相続の廃止を規定した第20条では, 「家」制度を廃止するだけでなく, 民主的な近代家族の実現を図るために, 家族という私的領域におよんで法的規定を行ったこと.第二に, マッカーサー草案としては最終的に削除されたが, 第19条の母性保護と非嫡出子差別の禁止, 第26条の男女同一価値労働同一賃金は, 後に法制化の課題として残ったこと.第三に, 第21条, 第24条, 第25条で「児童」の権利をとりあげ, この時代に子どもを「保護の客体」ではなく「権利の主体者」としてとらえた起草を行っていることである.次にベアテの限界として2点指摘できた.第一に, 第25条に高齢年金の保障を掲げているものの, ベアテ自身も指摘しているように, 老人社会福祉に関する条項がないこと.第二に, 住居の選択はあるものの, 居住権等の居住の権利に関する条項がないことをあげることができた.
著者
武田 珠美 福田 靖子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.137-143, 1997-02-15 (Released:2010-03-09)
参考文献数
35
被引用文献数
1

日本独特の調理であると考えられるすりゴマの調理性を明らかにするために, 本報ではゴマ種子の炒り条件による成分変化を検討した.焙煎温度は 170℃, 200℃および230℃とし, 時間は1分から20分の各温度につき4通りとした.170℃20分, 200℃5分および230℃5分焙煎したゴマ種子の重量, 色調はほぼ同じであった.総食物繊維量は170℃15分, 200℃10分, 230℃では5分をピークに減少した.セサミンやセサモリン, アミノ酸も加熱とともに減少した.また呈味に関係する遊離アミノ酸および遊離糖も次第に減少した.官能検査から170℃15分で焙煎したゴマの味の評価が高く, 炒りゴマとして総合的に好ましいことが明らかになった.
著者
岩崎 雅美
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.43-53, 1993-01-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
67

A costume worn by female elementary school teachers in the latter half of the Meiji Period was the one reformed from a traditional Japanese costume called a KIMONO. About 1900, the female teachers' custume was composed of an undivided HAKAMA called a MOBAKAMA like a Western pleated skirt, and a conventional KIMONO underneath. A broad sash, OBI, which was normally used to fasten the KIMONO, was not worn. And, the long-length KIMONO was replaced with a TSUTSUSODE which was a short-length reformed KIMONO with tighter sleeves like those of a Western clothes. The MOBAKAMA and the TSUTSUSODE were both made of cotton.Many of the female elementary school teachers were ordered to wear the above-mentioned costume by the ordinance of a prefecture, just as the male elementary school teachers were ordered to wear western-style uniform.The development of the female teachers' costume suggests the following : 1) In view of the fact that many prefectures adopted the above costume for female elementary school teachers, it can be inferred that educational leaders at that time must be significantly conscious of the nation-wide integration of a new educational society.2) In my previous report, I pointed out that male elementary school teachers were ordered to wear a western-style uniform made of wool which was high-priced material so as to show dignity to schoolchildren. On the contrary, the female teachers' costume was made of cotton, a poorer quality material, with the aim of raising the low attendance of schoolgirls of destitute families; the female teachers' plain costume was believed to make the threadbare girls feel more homey and accessible to school. However, it is quite true that the poorer appearance of the female teachers was openly exposing their lower salary and social status.3) The MOBAKAMA, which originated from men's HAKAMA, an equivalent of Western trousers for men, was found far more convenient for physical exercises. Some female teachers was dissatisfied with the extraordinary design of the TSUTSUSODE, but we have to admit that the TSUTSUSODE was easier for them to wash and take care of because of its simple design similar to a light Western blouse.Therefore, it can be concluded that the adoption of the costume for the female elementary school teachers gave significant favorable results to the development of school education in Japan.