著者
内田 幸子 田村 照子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.579-587, 2007 (Released:2010-07-29)
参考文献数
22
被引用文献数
9

Twenty-eight healthy female subjects aged 61 to 88 years old wearing only shorts and brassieres lay in a supine position on a bed and their cold/warm thresholds were measured over 26 body regions under the conditions of 28°C ambient temperature and 50% R.H. Ten female subjects aged 20 to 25 years old were also measured under the same conditions as the control. The cold/warm thresholds of the leg, foot and sole were high and those of the forehead, cheek and chin were low for each group. Both thresholds were higher for the elderly than they were for the young women, and they increased with age. In addition, principal component analysis of the cold/warm thresholds revealed that individual differences in regional contrast between the front-back/trunk-peripheral of the cold/warm threshold were greater among the elderly than they were among the young women and they increased with age.
著者
萬羽 郁子 五十嵐 由利子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.595-606, 2008 (Released:2010-07-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1

The oil mist or kitchen exhaust diffuses into various parts of a house as well as the kitchen itself, the mist is responsible for the formation of oil stains on the surface of respective rooms, i.e., the surface of the ceiling and walls. With an open type kitchen, a range of the oil mist diffusion tends to expand, and the authors believe that the condition of the living-cum-dining room might be deteriorated as a result. Twelve residences in Niigata City were chosen to clarify the extent of the oil stain accumulation. In the first place, four to five Teflon sample plates (20×40 mm) were installed at four corners of the ceiling of the kitchen and living-cum-dining room. Three months after the installation, a process of removing the plates that had been installed in the corners of the ceiling started: the plates were removed one at a time in an interval of one month in order to measure the color difference ( E ∗ab reading) by chroma meter. Furthermore, in some of the houses chosen, the sample plates were installed in the other rooms as well. It was confirmed that E ∗ab reading in all residences had increased in accordance with the passage of time. It was noted that the oil stain had a high tendency to accumulate at points where the ventilation stayed, and that the sagarikabe wall was effective for preventing the diffusion of the oil mist. It is also to be noted that the kitchen layout as well as the cooking performance at respective homes had much to do with the accumulation as well as the condition of the oil stains.
著者
張 立娜 武本 歩未 大塚 美智子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.563-573, 2015 (Released:2015-11-14)
参考文献数
8

Three-dimensional measurements of Chinese middle-aged and elderly women and younger women were used to ascertain the body type characteristics of middle-aged and elderly women. An average body shape was determined based on principal component analysis of 3-dimensional body shapes, and the body type characteristics of middle-aged and elderly women and younger women were compared. In addition, a model of the trunk that closely followed the contours of the body was created to simulate a virtual model of an average body shape, and the characteristics of the body shape of middle-aged and elderly women were ascertained. Principal component analysis of 3-dimensional body shapes identified the forward/backward or left/right of the body, body fat percentage, and spinal curvature as body type characteristics of middle-aged and elderly women. A cross-sectional comparison with the body angles of an average body shape revealed that middle-aged and elderly women had a gently sloping bust, a more protruding abdomen, and a marked disappearance of the “S curve” of the spine. A pattern that closely followed the contours of the body was created based on the average body shape. Body type characteristics of middle-aged and elderly women that were identified in principal component analysis were a rising incline from the anterior obliques to the shoulders, and the degree of obesity was distributed in the upper anterior obliques.
著者
雨宮 敏子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.218-223, 2022 (Released:2022-05-13)
参考文献数
38
著者
中村 泰彦
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.427-433, 1991-05-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
9

普通の大豆とエイジング処理した大豆に対する塩の軟化効果を試験し, 以下の結果を得た.(1) 試験した陰イオンにはいずれにも軟化作用が認められ, その効果は概して陽イオンよりも大きかった.陰イオンの中では, 炭酸水素イオンが群を抜いて軟化作用が強く, つづいて多価カルボン酸, 1価カルボン酸の順であった.(2) 陽イオンでは, アルカリ金属はいずれも軟化作用を示したが, アルカリ土類金属は組織を硬くするように作用した.2価の鉄は普通の大豆に対しては軟化促進的に働くが, エイジング大豆では逆に組織を硬くした.(3) 食塩や第一鉄塩は単独では軟化作用はそれほど強くなかったが, 両者を組み合わせると軟化の強い相乗効果が認められた.(4) 塩溶液浸漬による豆からのCa2+の溶出の程度と煮豆の軟らかさとは比例関係にあったが, 炭酸水素塩や第一鉄塩は特異であった.
著者
岡本 洋子 田口 田鶴子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.161-168, 1996-02-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
22
被引用文献数
6

年齢6~12歳の小学生 (男子452名, 女子414名) を被検者として, 甘・酸・塩・苦味食品に対する嗜好調査を行い, 性・年齢別 (学年別) に群別して食味嗜好傾向を検討した.同様の嗜好調査を3~5歳・12~79歳の男女 (2,218名) に対しても行い, 性・年齢層別の20群に分類して, 数量化理論第III類により解析し, 小学生の嗜好パターンが全年齢層のなかでどのようなところに位置づけられるのかを調べた.さらにショ糖 (甘味), クエン酸 (酸味), 塩化ナトリウム (塩味) の等差濃度水溶液を検査試料として, 小学生 (102名) の味覚閾値を幼児 (76名) および20歳大学生 (98名) と比較検討した.結果は次のようであった.(1) 小学生では, 年齢 (学年) および性別による食味嗜好傾向の顕著な相異はほとんどないと考えられた.(2) 小学生の食品に対する嗜好パターンは, 幼児および若年齢層男女群と類似していたが, 中・高年齢層男女群とは異なった.(3) 小学生の嗜好食品群としては, アイスクリーム, グレープフルーツ, ポテトチップなどが挙げられ, 近年取り入れられて普及してきた甘・酸・塩味食品であった.(4) 小学生の味覚閾値はショ糖水溶液0.2~0.8%, クエン酸水溶液0.02~0.08%, 塩化ナトリウム水溶液0.04~0.16%の濃度範囲であり, これらの値はいずれも20歳大学生女子に比べてやや低く, 幼児とは同様な傾向を示した.
著者
木村 実
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.969-972, 2009-11-15 (Released:2012-08-24)
参考文献数
2
著者
久保 加織 川勝 聡美 堀越 昌子 石永 正隆
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.351-358, 2001-04-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
19

(1) あまに油は, 4℃保存では, 酸化速度は遅く, 8週間の保存が可能であることがわかった.20℃保存では, 経日的に酸化が進行するが, ごま油の添加によりかなりの酸化抑制効果が期待できた.しかし, 50℃保存ではごま油や合成酸化防止剤によっても酸化を抑えることは難しかった.(2) あまに油の脂肪酸組成は, 今回のいずれの保存条件においても, ほとんど変化せず, α-リノレン酸を50%以上含有していた.(3) あまに油マヨネーズの冷蔵保存における酸化安定性は高く, 冷蔵庫内で8週間保存してもほとんど変化しないことがわかった.(4) あまに油マヨネーズにごま油を添加することによって, マヨネーズの酸化安定性を高めるだけでなく嗜好面でも効果のあることがわかったが, 味, におい, 色などの点からさらに改良の余地があるとみなされた.
著者
高尾 哲也 藤本 清彦 中山 榮子 佐々木 央 永井 寛 桃原 郁夫
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.71, no.12, pp.757-765, 2020 (Released:2020-12-19)
参考文献数
19

木製まな板およびエンボス加工されたプラスチック製まな板について, 新品および使用済みのまな板をそれぞれ3枚入手し, 模擬的な調理後の洗浄, 次亜塩素酸消毒処理, 自然乾燥の各工程における一般生菌数および大腸菌群数を測定した. また, まな板の表面粗さの定量的な検討を行い, 粗さと生菌数等との関係を検討した. 模擬的な調理を行った後の, 洗浄, 消毒, 乾燥工程後の一般生菌数及び大腸菌群数は木製新品まな板, 木製使用済みまな板, プラスチック製使用済みまな板間で有意な差はなかった. 一方, 未使用および使用済みまな板双方で表面粗さは, まな板によって差があるものの, 全体としては木製まな板の方がプラスチック製まな板と比べて小さかった. 数年間使用したことにより平滑性が低下した木製まな板でも, 粗さはエンボス加工されたプラスチック製まな板と同等かそれ以下であった. まな板の表面粗さと微生物の残存性との関係を検討した結果, 凹凸の平均粗さ (Pa) が乾燥時の一般生菌数と大腸菌数で正の相関を, 凹凸差を示す最大高さ (Pz) が洗浄後と消毒後の一般生菌数と大腸菌数とに対して正の相関を示した. 一方, 最大深さ (Pv) はこれらと相関を示さなかった. これらの事から木製まな板においては, Pa及びPzがエンボス加工されたプラスチック製まな板と同等かそれ以下であり, 「大量調理施設衛生管理マニュアル」が定める洗浄, 消毒, 乾燥工程を経れば, 木製まな板とエンボス加工された使用済みプラスチック製まな板との間で, 洗浄性や消毒性, 微生物の生残性にも有意な差は無く, 両者を同様に使用でき, 衛生性の差も大きくないと考えられた.
著者
松山 容子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.791-799, 2001-09-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
51
被引用文献数
1
著者
倉賀野 妙子 木村 宏樹 和田 淑子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.45-52, 1991-01-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
26
被引用文献数
3

薄力系の小麦粉よりグリアジン画分, グルテニン画分を分画して, それぞれ小麦澱粉に8%混合添加したものを小麦粉の代わりとし, これに油脂および水を混合してクッキーを調製して, ドウおよびクッキーの物性に与える両タンパク質画分の影響を調べた.ドウのクリープ試験による粘弾性係数ならびに定速圧縮試験による最大応力, 最大エネルギー値の結果によると, グリアジン画分のドウはやわらかくて変形しやすく, 滑らかに伸展するのに対し, グルテニン画分のドウは弾性に富んで硬く, 圧縮に抵抗する力が大となる傾向を示した.グリアジン画分のクッキーは焼成時に上方への膨張が大きく, みかけの膨化率は173%であった.電顕観察の結果から, 膨張は吸水したタンパク質によると思われる膜様の存在により, 内部組織に気泡が安定に保たれたためと推察された.一方, グルテニン画分クッキーのみかけの膨化率は102%であり, 焼成による膨化はほとんど生じなかった.電顕観察でも気泡のあとはほとんどみられず, ところどころにタンパク質によると思われる相互につながりのない小さな集合体が認められた.クッキーの圧縮破断試験によると, グリアジン画分クッキーはみかけの破断応力, 破断エネルギーが小さく, やわらかくて砕けやすいが, みかけの破断時間, 破断ひずみは大きく, 荷重一時間曲線には小さなピークが多数生じた.一方, グルテニン画分はみかけの破断応力, 破断エネルギーが大きい, 硬いクッキーとなるが, 破断時間, 破断ひずみが小さく, 荷重一時間曲線はピークの少ないシャープなパターンとなった.酸可溶性グルテン画分のドウおよびクッキーの物性はグリアジン, グルテニン両画分の影響を受けていると推察される場合と, グルテニン画分の特性による依存が大きい場合がみられた.酸不溶性タンパク質画分のドウおよびクッキーの物性は酸可溶性グルテン画分とは異なる傾向を示した.
著者
高村 仁知 山口 智子 林 恵理奈 藤本 さつき 的場 輝佳
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.1127-1132, 1999-11-15
被引用文献数
11

The change in radical-scavenging activity while cooking curry made from spices, vegetables, and meat was analyzed by the 1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl-HPLC method. Fifteen kinds of spices generally used in curry all possessed radical-scavenging activity. In particular, the activity of clove, allspice, and cinnamon was extremely high and comparable with that of vegetables. After heating, the radical-scavenging activity of the combination of vegetables and meat increased, while that of mixed spices decreased. Vegetables as well as spices contributed the radical-scavenging activity of curry. In the present research, one serving of curry and rice contained 363 μmol Trolox eq of radical-scavenging activity. The spices contributed approximately 45% of the total radical-scavenging activity of curry and rice.
著者
福本 俊
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.805-811, 2008

高齢社会である日本の抱える社会的問題の一つは,人間関係の脆弱化である.高齢者が人生の最終コーナーを豊かに駆け抜けるためには,幼少期から人間関係を紡ぐことが出来るような環境作りが緊要である.対人的なスキルの養成等は教育的な課題である.豊かな人間関係を阻むものの大きなものとして,従来からの性役割意識がある.この意味で,性を超えて自由にその人らしく生きる事を志向するアンドロジニーな生き方が強く求められている.本研究の目的は、提案されたアンドロジニー尺度の妥当性と信頼性を吟味・検討する事である. 当該尺度は性役割現実像10項目と性役割期待像6項目の計16項目からなっている.これら16項目の概念的妥当性が確かめられた.また内的整合性は充分に満足できる水準にある.因子分析の結果3因子を得たが、これら3因子間には高い有意な順位相関関係が認められた.以上のことから,今回提案のアンドロジニー尺度は妥当性と信頼性を兼ね備えたものであると言える.
著者
水野 一枝 水野 康 山本 光璋 松浦 倫子 松尾 藍 岩田 有史 白川 修一郎
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.391-397, 2012

Eleven healthy male subjects slept from 13:30 to 15:30 under ambient temperature and humidity maintained at 29℃ and RH70%, using polyurethane foam mattresses (U) and camel mattresses (C). A polysomnography,skin temperature (Tsk), microclimate, bed climate, and subjective sensations were obtained. The rapid eye movement sleep (REM) in the first hour for the U significantly increased compared to that for the C. The leg, arm, and mean Tsks for the C significantly increased compared to those for the U during the later segment of sleep. The microclimate humidity significantly increased, while the microclimate temperature and bed climate significantly increased during the later segment of sleep. The subjective humid sensation and the requirement for decreasing the mattress temperature significantly increased in U compared to the C. These results suggest that bed mattress material can increase the subjective humid sensation and the requirement for decreasing mattress temperature by 1) increasing the bed climate and microclimate temperature and humidity, and 2) changing the REM distribution.
著者
倉賀野 妙子 北尾 敦子 山田 光江
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.39, no.7, pp.665-670, 1988
被引用文献数
1

クッキーの食味とショートネス, 硬さとの関係を把握するために嗜好度官能検査を行い, 同時に定速圧縮破断特性値と対応させて検討した.<BR>1) クッキーの嗜好度官能検査をもとに, 総合評価および各評価項目間の単相関係数, 偏相関係数を求めた.その結果から, ショートネスが, 甘味, 風味と並んで総合評価に貢献する官能的要因として欠かせないことが認められた.硬さはショートネスと大きな相関があり, クッキーにとっては, 両者は切り離せない性質であり, 硬さも総合評価に影響を及ぼす要因と推定される.<BR>2) クッキーのもろさの嗜好度評価 <I>K<SUB>B</SUB></I> とみかけの破断エネルギー <I>E<SUB>n</SUB></I> (×10<SUP>6</SUP>erg/cm<SUP>3</SUP>), および硬さの嗜好度評価 <I>K<SUB>H</SUB></I> とみかけの破断応力 <I>P<SUB>f</SUB></I> (×10<SUP>7</SUP>dyn/cm<SUP>2</SUP>) の関係は, おのおの, <I>K<SUB>B</SUB></I> =-0.147<I>E<SUB>n</SUB></I><SUP>2</SUP> + 0.666<I>E<SUB>n</SUB></I> + 0.551, <I>K<SUB>H</SUB></I> =-0.209<I>P<SUB>f</SUB></I><SUP>2</SUP>+ 0.979<I>P<SUB>f</SUB></I> + 0.141 で示すことができた.クッキーのもろさは, みかけの破断エネルギー 2.27×10<SUP>6</SUP>erg/cm<SUP>3</SUP>, 硬さはみかけの破断応力 2.35×10<SUP>7</SUP>dyn/cm<SUP>2</SUP>を有するものが, 嗜好度評価が最も高いことが推定された.これらの破断特性値を有するクッキーを調製できる材料配合比を明らかにした.
著者
津田 淑江 小寺 俊子 大家 千恵子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.1009-1020, 2002-10-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
30

本研究では女性の食生活と低体重児出産および適正体重児出産との関係を調べた.食物摂取頻度および食行動パターンの調査を行い, 妊娠1年前の母親の食物摂取頻度, 年齢, 身長, 体重と新生児の体重を調べた.調査データーから低体重児出産婦および適正体重児出産婦の平均値には違いは見られなかった.しかし低体重児出産婦は適正体重児出産婦よりBMI19.5未満の人が多かった.食物摂取頻度調査の結果, 両出産婦ともエネルギー, タンパク質, カルシウム, 鉄の摂取量が低かった.また低体重児出産婦はコンビニエンスストアやスーパーマーケットの惣菜の利用が多く, 3食外食でも平気, スナック菓子をよく食べる, ダイエットで食事制限の経験があり, 偏食がある事が明らかとなった.これから次の世代を出産する女性にとって, この現状を改善し, 低体重児出産防止のために, 若いころからの家庭での食教育が重要であることが示唆された.
著者
阪本 弘子 佐野 恂子 山田 令子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.149-157, 1988

愛知県・岐阜県に在住する女子短大生の母親424名を対象に, 和服の着用に関するしきたり, 結婚支度として和服を調製する程度, 衣裳みせの風習の3行動について調査し, 因襲にとらわれた日本の伝統的慣習がいかに受けとめられているかを考察した.方法としては, 和服に対する一般的態度とのクロス集計, 数量化第II類, 重回帰分析 (Fishbeiaの予測式) を行ったが, その結果は次のようにまとめられる。<BR>1) 和服着用に関するしきたりについて<BR>この行動意図は, 行動に対する態度よりも主観的規範の影響を強く受けて生起し, その結果, しきたりは改めたほうがよいという者が約半数であった.しかし, 残る半数は現状の肯定者であり, 古くからのしきたりは無視できないと考えられる.和服に対する一般的な態度との関係は, 好意的な者ほど現状を肯定しており, 主観的規範の影響も非好意的な者より強く受ける傾向が認められた.<BR>2) 結婚支度に和服を調製する程度について<BR>この行動意図は, 主観的規範よりも行動に対する態度の影響を強く受けて生起し, 「人並み」という中立的な者が大半を占める結果をみた.この行動も, 和服に対する一般的態度が好意的な者ほど, 「入並み~人並み以上」に調製しようとしている.また, 数量化第II類で分析した結果, この行動に強く影響を与えるアイテムは, 和服着用程度, 居住地, 世帯主職業, 世帯の全収入であった.<BR>3) 衣裳みせの風習について<BR>この行動意図は, 行動に対する態度と主観的規範が同程度に影響して生起するという特徴があるが, 結果としては衣裳みせはしないという者が大多数であった.和服に対する一般的態度との関係は, 好意的な者ほど, 衣裳みせを肯定している傾向が, わずかばかりみられた.<BR>今回の調査で取り扱った三つの行動は, いずれもその行動意図を形成する過程において, 自分の意志以外に世間体を配慮していることが明確である.このように本音と建前という相反する意識が交錯して実行に移るという一連の概念は, Fishbe海の予測式に示される (態度+規範=行動意図) に適合していると考えられた。さらに彼の予測式を特徴づける重回帰分析を適用することにより, 態度と規範の行動意図へのかかわり方を, 数量的に把握することができたといえよう.