著者
四方 裕夫 上田 善道 西澤 永晃 飛田 研二 松原 純一
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.1088-1092, 2007-05-25

61歳, 男性に下腿腫脹と疼痛が出現し, 深部静脈血栓症を疑われて歩行で入院した. エコーならびに下肢静脈造影CTでの検討では深部静脈は開存していた. 受診時の身体および血液検査所見は白血球増多もなく, 強い炎症所見を示し原因不明の筋膜炎を疑った. 入院後の輸液での経過観察中の翌朝に急死した. 剖検にて血液ならびに皮下, 筋肉組織からA群溶血性連鎖球菌感染症が検出され, 劇症型A群溶血連鎖球菌感染症と判明した. 急激な転帰をきたしたいわゆる 【人食いバクテリア】 を経験したので文献的考察を加えて報告する.
著者
堀川 雅人 野見 武男 杉原 誠一 中辻 直之 高山 智燮 丸山 博司
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.2727-2730, 2003-11-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
16
被引用文献数
1

今回われわれは,苛性ソーダによる腐食性食道炎後の食道狭窄の1例を経験した.症例は31歳,男性.泥酔後に苛性ソーダを誤飲し,近医に入院した.腐食性食道炎の急性期治療および瘢痕狭窄に対して拡張術などの保存的療法を施行されるも,嚥下困難症状の改善は認めず,手術目的にて当科紹介となった.上部消化管造影検査,内視鏡検査において胸部上部食道から食道胃接合部までの著明な全周性狭窄と壁硬化像を認め,内視鏡の通過も不能であった.胸部MRI検査にても同様の所見であった.以上,食道の広範囲におよぶ全周性の瘢痕狭窄に対し,食道亜全摘術を施行し,再建臓器としては胃管を用いた.術後,嚥下困難は改善したが,晩期合併症としての残存食道の発癌の問題が残されており今後長期的な経過観察が必要と思われる.
著者
小泉 大 佐久間 康成 森 美鈴 宇井 崇 佐田 尚宏 安田 是和
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.7, pp.1905-1908, 2010 (Released:2011-01-25)
参考文献数
5
被引用文献数
1 3

症例1は53歳,男性.30歳時に生体腎移植を施行.2004年に右鼠径部の膨隆を認め,次第に増悪した.2006年6月Lichtenstein法施行.ヘルニア門は恥骨のすぐ脇で,膀胱上ヘルニア,ヘルニア分類II-1と診断した.内鼠径輪は破壊され,精索が内側に変位していた.症例2は44歳,男性.25歳時に生体腎移植術を施行された.2005年右鼠径部膨隆を認め,次第に増大したため,2008年6月手術施行.外鼠径ヘルニア,ヘルニア分類I-2と診断.腎移植後の癒着のため剥離に難渋し,精索の同定,剥離が困難だった.腎移植術後の鼠径ヘルニアでは,腎移植のため鼠径管や腹膜前腔に癒着が起こり,鼠径管の剥離や精索の同定が困難となっていた.移植腎のある腹膜前腔に盲目的に指を入れ,通常のヘルニアの剥離操作を行うことは,移植腎の不慮のトラブルを避けるためにも行うべきではなく,その点で腎移植後の鼠径ヘルニア症例に,Lichtenstein法は有用な術式である.
著者
石黒 要 今井 哲也 品川 誠
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.1639-1642, 2005-07-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
20
被引用文献数
1

症例は68歳,女性.慢性関節リウマチのため10年以上プレドニゾロン10mg/日を服用していた. 2003年9月18日,腹痛を認め救急車にて搬送された.腹部CT検査にて小腸穿孔・汎発性腹膜炎と診断,手術を施行した.回盲部より30cm口側の回腸に穿孔を認め,小腸切除術を施行した.病理組織学的検査では,潰瘍底にカンジダの増殖を伴う潰瘍を2カ所に認め,うち一方が穿孔していた.医学中央雑誌で過去10年間を検索したが,カンジダによる成人の小腸穿孔の報告はなかった.カンジダは易感染性の患者に日和見感染症を起こし重篤になる場合がある.小腸カンジダ症は稀ではあるが,潰瘍や穿孔の一因になりうるということを,再度認識する必要があると思われた.
著者
秋田 倫幸 有吉 佑 岡田 一郎 五明 良仁 池野 龍雄 宮本 英雄
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.1264-1269, 2018 (Released:2018-12-31)
参考文献数
18
被引用文献数
2

症例は80歳,男性.便秘と腹部膨満感を主訴に当院へ救急搬送となった.腹部は軽度膨満,明らかな腹膜刺激症状は認めなかった.腹部CTで直腸からS状結腸に便塊とその近位側大腸の拡張と液体貯留を認めた.採血結果では炎症反応上昇,脱水,代謝性アシドーシスの呼吸性代償を認めた.下腹部痛増悪,呼吸苦出現,意識混濁出現したため,腸壊死もしくは腸穿孔に至ったと判断し緊急手術を施行した.開腹し腹腔内を観察したところ,便臭のある褐色腹水を認めた.結腸・回腸に菲薄化した腸管を認め,特に下部大腸の腸管粘膜は黒く,壊死像が菲薄化した腸管から透見できた.結腸全摘術を施行した.回腸断端で単孔式人工肛門を造設した.術後は心房粗動に対し除細動,エンドトキシン吸着カラムなど治療を行い,救命することができた.宿便性腸閉塞は透析患者や糖尿病を有する患者に発症しやすいが,手術に至る例は比較的少ない.文献的考察ともに報告する.
著者
吉村 健司 岡本 啓太郎 河島 毅之 和田 朋之 首藤 敬史 宮本 伸二
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.1243-1247, 2017 (Released:2017-12-30)
参考文献数
15
被引用文献数
3

86歳,女性.主訴は労作時呼吸困難.上行大動脈から腹部大動脈に及ぶ広範囲重複大動脈瘤を認めた.広範囲重複大動脈瘤に対し,上行弓部大動脈置換術,腹部デブランチ,胸部ステントグラフト留置術(TEVAR)の三期分割の方針とした.弓部置換時に左室ベントによる心尖部穿孔をきたし,フェルト補強で修復術を施行した.退院後,心尖部から左前胸部にかけて膿瘍を形成し,抗菌薬治療を開始した.2回の排膿ドレナージ術を施行したが,膿瘍は消失しなかった.各種培養は陰性であり,無菌性膿瘍として保存的加療では治療に難渋したため,心尖部大網充填術と腹部デブランチを同時施行した.術後経過は良好で,残存瘤に対しTEVARを施行することが可能となり,広範囲重複大動脈瘤の治療を完結できた.
著者
山崎 康 小澤 壯治 數野 暁人 小熊 潤也 志村 信一郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.21-25, 2015 (Released:2015-07-31)
参考文献数
22

症例は58歳の女性.2012年7月中旬に腹痛,嘔吐を認め近医を受診した.血液検査所見では炎症反応の上昇を認め,上部消化管内視鏡検査では食道に壁外性の圧排による内腔狭窄を認めた.CT検査では下行大動脈からの後縦隔血腫と診断され,精査加療目的に当院転院搬送となった.当院での精査の結果,胸部仮性大動脈瘤破裂の診断となり,緊急手術を施行した.術中所見では下行大動脈に8mm大の穿孔部を認めた.穿孔部を切除すると食道との間に血栓および膿瘍を認め,食道への穿孔部を視認できた.感染性大動脈瘤破裂・食道穿孔の術中診断となり,下行大動脈人工血管置換,食道縫縮術を施行した.術後第9病日に食道縫縮部位の縫合不全と診断し胸部食道切除,頸部食道瘻・胃瘻造設術を施行した.再手術後,胸腔内の持続洗浄を施行し,第51病日に退院となった.初回手術から11カ月後に胸壁前経路頸部食道胃管吻合術を施行し,現在外来通院中である.
著者
児玉 ひとみ 竹宮 孝子 斎藤 加代子 大澤 真木子 岡本 高宏
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.72, no.12, pp.2989-2994, 2011 (Released:2012-07-24)
参考文献数
14
被引用文献数
1

近年,外科を選択する女性医師が増えつつある.女性外科医が妊娠・出産を望む時期と専門医取得を目指す時期はほぼ重なっている.育児と両立しながら臨床経験を積む為には,多くの問題を解決しなければならない.東京女子医科大学は日本で唯一の女子のみで構成された医科大学であり,女性医師を支援するシステムが多く存在する.今後全国的にこれら支援システムがたちあがり,ワークライフバランスの概念が浸透してゆけば,女性外科医は出産後も母親であると当時に一外科医として社会に貢献し続けることができる.
著者
高坂 佳宏 村山 弘之 中山 文彦 河内 順
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.777-780, 2010 (Released:2010-09-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1 3

症例は69歳,女性.頭痛,発熱を主訴に当院受診.項部硬直を認める以外異常な神経所見はなかったが,髄液検査にて高度の細胞数上昇を認め,髄膜炎の診断にて内科に入院し,抗菌薬治療を行った.入院時の髄液培養は陰性だったが,血液培養にてStreptococcus bovisが検出されたため,軽快退院後,消化管腫瘍精査を行ったところ,S状結腸に2型の癌を認めたため外科へ再入院し,S状結腸切除術,D3郭清を施行.病理結果は中分化腺癌,ss,ly1,v1,n1,Stage IIIaであった.本邦では,Streptococcus bovisと大腸癌との関連性の認識がまだまだ低いと考えられるため,文献的知見を加えて報告する.
著者
荻野 美里 富澤 直樹 安東 立正 荒川 和久 須納瀬 豊 竹吉 泉
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.1341-1347, 2013 (Released:2013-11-25)
参考文献数
14
被引用文献数
3

神経内分泌腫瘍は肺,消化管,膵などで報告されているが肝原発は稀である.今回,肝原発神経内分泌癌を経験したので報告する.65歳男性で,平成18年に他院で食道癌切除術を受けた.病理は扁平上皮癌,pT1b(sm)N0M0 Stage Iであった.患者の希望で当院に通院していた.平成19年10月,繰り返す腸閉塞のため解除術を施行した.術前の画像診断では再発や重複癌はなかった.翌年2月,肝両葉に多数の腫瘍が出現.経皮的肝腫瘍生検では未分化癌と診断された.食道癌に準じた化学療法を行ったが,肝不全で死亡した.剖検では肝臓のほぼ全体が白色の充実性腫瘍で置換されており,chromogranin A,CD56が陽性で,MIB-1が45.8%と高値なため,肝原発神経内分泌癌と診断した.本症例では食道癌の既往があり針生検でも確定診断がつかなかったため,食道癌化学療法に準じた治療を行ったが,奏効しなかった.
著者
武内 有城
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.7, pp.1909-1915, 2010 (Released:2011-01-25)
参考文献数
8
被引用文献数
4 5

Mohsペーストは塩化亜鉛を主成分とする組織固定剤で,皮膚の悪性腫瘍などのchemosurgeryに応用されている.今回,われわれは切除不能の進行乳癌で皮膚潰瘍から出血を繰り返した症例と進行肺癌の腹部皮膚転移の自壊による悪臭と浸出液,疼痛の著明な症例に使用し,有用であったので報告する.症例1は60歳代女性で,左乳癌潰瘍部(papillotubular carcinoma)からの出血後失神をきたし,緊急入院となった.乳癌は11×6×11cm,T4N3M1 Stage IVで,根治手術不能のためにホルモン化学療法を施行した.潰瘍からの出血が続くため,Mohsペーストを施行し,24時間で出血は止まり,1週間で完全壊死となり,約2週間で自己融解から自然脱落した.症例2は,60歳代男性で進行肺癌(squamous cell carcinoma,T2N2M1 Stage IV)の腹部の皮膚転移で悪臭と浸出液,疼痛が著明で,患者のQOL(quality of life)を低下させていたが,ペースト使用5日目で悪臭と浸出液は消失し,ペースト塗布と切除を繰り返して約4週間で腫瘍部は平坦化し,疼痛も軽減した.
著者
藤枝 裕倫 水野 伸二 徳丸 勝悟 日比野 正幸 玉内 登志雄
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.8, pp.2306-2311, 2013-08-25
参考文献数
19

症例は39歳,男性.心窩部痛を主訴に近医受診.左上腹部に小児頭大の腫瘤が指摘され当院受診となった.腹部超音波検査では,94×92×111mm大のhigh echoとlow echoが混在した腫瘤が見られた.CT検査では,腫瘤の内部は低濃度と高濃度がモザイク状に混在していた.内部には造影効果は見られなかった.MRIT1強調像では,腫瘍の大半が高信号であり,MRIT2強調画像では隔壁様の構造を伴う高信号と低信号域が混在していた.造影MRI検査では腫瘤背側壁の外縁が造影された.以上より,後腹膜血腫が疑われ,再度問診を行い2カ月前に自転車で転倒し左肘骨折をした既往があると分かった.しかし,後腹膜腫瘍も否定できず開腹手術を行い腫瘤の摘出を行った.病理検査では中心部には変性,壊死に陥った凝血塊を認め,周囲は線維性の被膜で覆われている所見であった.以上よりchronic expanding hematomaと診断した.文献的考察を加え報告する.
著者
川井 廉之 星 永進 高橋 伸政 池谷 朋彦 村井 克己
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.1978-1981, 2011

症例は30歳,男性.前医にて緊張性気胸に対する胸腔ドレナージ後に血胸を呈し,医原性の血胸が疑われ当センターへ緊急搬送された.胸部X線写真にて右胸腔に大量胸水貯留を認め,ドレーンからの出血が続いていたため,血気胸の診断で胸腔鏡下緊急止血術を施行した.出血は肺尖部対側の胸壁の断裂した血管からであり,自然血気胸と診断した.術後,再膨張性肺水腫を発症したが,その後の経過は良好で,術後第7病日に軽快退院となった.自然血気胸の中には本例のように初回胸部X線写真で胸水貯留が認められない症例があり,早期の診断と治療のためには,ドレナージ後の注意深い経過観察が重要である.
著者
河口 賀彦 河野 浩二 三井 文彦 藤井 秀樹
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.1471-1476, 2010 (Released:2010-12-25)
参考文献数
20
被引用文献数
3 2

症例1は79歳,男性.CTで胃軸捻転症と診断し,減圧目的に胃管を挿入した.上部消化管内視鏡で胃粘膜の血流障害を認めたため,緊急手術を施行した.胃は腸間膜軸方向に捻転しており,胃全摘術を施行した.症例2は79歳の女性.CTで胃軸捻転症と診断し,減圧目的に胃管を挿入した.上部消化管内視鏡で胃粘膜の虚血性変化は認めなかったが,整復困難であったため,緊急手術を施行した.食道裂孔ヘルニア内に胃の前庭部が捻転を伴い,嵌頓していた.用手的に胃を還納し,捻転を解除した.一般に胃軸捻転症は,CT検査でその診断はほぼ可能である.治療は,胃管を挿入し減圧を図った後,上部消化管内視鏡を実施し,胃粘膜の観察と捻転の解除を試みる.捻転が解除できない場合や,粘膜の血流不全が認められる場合は緊急手術を施行する.胃軸捻転症は比較的まれな疾患であるが,上記の治療アルゴリズムにより,その診断,治療は適切に実施できると思われた.
著者
森脇 義弘 伊達 康一郎 長谷川 聡 内田 敬二 山本 俊郎 杉山 貢
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.1701-1705, 2001

キックスケート(車輪付きデッキ,シャフト,ハンドルバーから構成される遊戯具)による肝損傷で病院前心肺停止状態(CPA-OA)となり救命しえなかった症例を経験した.症例は, 9歳,男児,同遊戯具で走行中転倒しハンドルバーで右側胸部を強打.救急隊現場到着時,不穏状態で呼名に反応せず,血圧測定不能,搬送途中呼吸状態,意識レベル悪化,受傷後約30分で当センター到着, CPA-OAであった.腹部は軽度膨隆,右肋弓に6mmの圧挫痕を認めた.急速輸液,開胸心臓マッサージにより蘇生に成功した.肝破裂と腹腔内出血の増加,血液凝固異常,著しいアシドーシスを認めた.胸部下行大動脈遮断し,救急通報後78分,搬送後46分で緊急手術を施行した.肝右葉の深在性の複雑な破裂損傷に対しperihepatic packing,右肝動脈,門脈右枝結紮術を施行,集中治療室へ入室したが受傷後約15時間で死亡した.
著者
中山 隆盛 白石 好 西海 孝男 森 俊治 磯部 潔 古田 凱亮
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.3052-3056, 2002

前立腺癌は,日本において死亡増加率が最も高く,今後の動向は重要である.われわれは,直腸狭窄により発見された稀な前立腺癌を報告する.<br> 症例は, 73歳の男性.主訴は排便困難であり,直腸癌疑いにて紹介入院となった.大腸内視鏡および注腸にて,直腸の全周性狭窄像を認めた.尿路症状を認めないものの, PSA (prostate specific antigen)が高値であり,骨転移が認められた.前立腺生検により,原発前立腺癌の確定診断となった.内分泌療法および放射線療法が奏効し,直腸狭窄は解除され,外来で内分泌療法中である.
著者
小原 啓 青木 貴徳 矢吹 英彦 稲葉 聡 新居 利英 浅井 慶子
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.1470-1474, 2008 (Released:2008-12-05)
参考文献数
40
被引用文献数
3 2

胆管との交通を認めたため肝切除術を施行した感染性肝嚢胞の1例を経験した.患者は82歳,女性.平成14年7月感染性肝嚢胞に対する経皮的ドレナージ術を施行している.平成17年11月発熱,右季肋部痛を主訴に当院救急外来を受診,CT検査で多発肝嚢胞を認め,1カ所がair densityを伴い鏡面像を形成していた.感染性肝嚢胞の再発と診断し入院,同日経皮経肝的ドレナージ術を施行した.症状は軽快したが,造影検査で肝内胆管と嚢胞の交通を認めたため肝切除術を施行,病理診断は単純性嚢胞であった.術後,肝切除断端に膿瘍を形成し経皮的ドレナージを行ったが,その後は問題なく現在外来通院中である.
著者
萩原 千恵 北川 大 堀口 慎一郎 山下 年成 黒井 克昌
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.75, no.8, pp.2130-2135, 2014 (Released:2015-02-28)
参考文献数
22
被引用文献数
1

乳腺matrix producing carcinoma (以下MPC)の2症例を経験したので報告する.症例1は51歳女性.左乳癌T2N0M0 Stage IIAの診断で乳房切除術+センチネルリンパ節生検を施行した.病理診断はMPC,pT2,ER(-),PgR(-),HER2(-),sn0/2.術後TC療法を4コース施行し,術後4年5カ月の時点で無再発生存中である.症例2は48歳女性.左乳癌T1N0M0 Stage Iの診断で乳房部分切除術+センチネルリンパ節生検を施行した.病理診断はMPC,pT2,ER(-),PgR(-),HER2(-),sn0/4.術後,治験(BEATRICE試験)に参加し,EC療法4コースとBevacizumabを投与したが,術後12カ月で多発肺・骨・肝転移が出現した.その後,weekly paclitaxelを開始したが奏効せず術後1年6カ月で永眠された.
著者
大槻 憲一 渡辺 明彦 山本 克彦 石川 博文 大山 孝雄 山田 高嗣
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.522-526, 2004-02-25
被引用文献数
3 1

症例は59歳,女性.平成13年11月,下痢を主訴に近医を受診したところ,右側腹部腫瘤を指摘され当院に紹介された.当院受診時,右側腹部に弾性軟,小児頭大の腫瘤を触知した.腹部CTでは右後腹膜腔に12×7 cmのlow density massとして描出され,注腸造影検査において,上行結腸は著名に左側に圧排されていた.後腹膜漿液性嚢胞の診断のもと,腫瘍摘出術を施行した.腫瘤は非常に薄い嚢胞壁を有し,その内容物は無色透明の液体であった.内溶液のCA19-9, CEA値はそれぞれ10,000U/ml以上, 344.5ng/mlと高値を示したが,細胞診は陰性であり,嚢胞壁にも悪性所見は認めなかった.後腹膜嚢腫は稀な疾患であり,若干の文献的考察を加え報告する.
著者
柳清 洋佑 馬渡 徹 黒田 陽介 桑木 賢次 森下 清文 渡辺 敦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.2659-2662, 2009 (Released:2010-02-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1 1

片肺換気が困難な気胸症例に対し,体外循環補助下に手術を施行した1例を経験したので報告する.症例は34歳,女性.32歳時に肺気腫を指摘された.右気胸を繰り返し,3回の外科的処置を施行されたが右肺の拡張不全が残存した状態であった.34歳時に左側気胸を発症し,気瘻および肺虚脱が持続する為に外科的治療を行うこととした.術前から呼吸状態不良であり,術中片肺換気では酸素化を維持できないと予想されたため,静脈─静脈バイパスによるExtra-Corporeal Lung Assistを用いて手術を行うこととした.右大腿静脈および右頸静脈にカニューレを挿入し体外循環下に片肺換気とし,左側のbulla切除を行った.術後経過は良好であり在宅酸素療法指導後,第21日病日に自宅退院した.低肺機能の患者でも肺手術を行わざるを得ないことも少なくは無く,本症例を通じて体外循環補助下の気胸手術に関して考察を加える.