著者
吉川 友也 斉藤 和巳 元田 浩 大原 剛三 木村 昌弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.11, pp.1899-1908, 2011-11-01
被引用文献数
2 5

本論文では,非同期時間遅れ付き独立カスケード(AsIC)モデルと非同期時間遅れ付き線形しきい値(AsLT)モデルのそれぞれの場合を仮定して,観測した単一の拡散系列から各時刻における期待影響度(期待影響度曲線)を高精度で推定する問題に取り組む.単純な方法として,観測した拡散系列のアクティブノード数を数えて期待影響度曲線とすることが考えられるが,拡散系列は情報拡散の確率的な動作によって多様な結果になるため,この方法での期待影響度曲線推定には本質的な限界がある.本論文の提案法では,観測した拡散系列から各モデルのパラメータをEMアルゴリズムによって学習し,学習したモデルパラメータを使って,シミュレーションによって期待影響度曲線を推定する.提案法を評価するために,現実のソーシャルネットワーク構造データを用いて人工的に拡散系列を生成して評価実験を行う.生成される拡散系列の長さは,同じ条件であっても多様な長さになる.我々は,提案法を使うことによって,多様な長さの拡散系列からでも期待影響度曲線を高精度で推定できることを示す.
著者
小澤 俊介 内元 清貴 松原 茂樹
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J95-D, no.3, pp.506-517, 2012-03-01

Web上には,病気への対処法や料理のレシピなど,様々なノウハウが蓄積されている.そのため,ノウハウを知るためにWebを参照することが多い.しかし,既存のWeb検索でノウハウのみを検索することは容易ではない.この問題に対し,ノウハウをあらかじめ整理し,専用のWebサイトなどで提供することができれば,災害に対する予防策など,様々な事象への対処・対策の発見を容易にすることができる.本論文では,モノとその使われ方に着目することにより,ノウハウを獲得する手法を提案する.本手法では,まず,対象のモノを含むパッセージを獲得し,ノウハウの候補を抽出する.次に,パッセージに含まれる手掛り表現,及び,モノとその使われ方として用途表現を利用することにより,ノウハウ候補がノウハウであるか否かを判定する.実験により,ノウハウ獲得においてモノとその使われ方が重要な役割を果たすことを示す.
著者
本多 俊貴 鈴木 裕利 石井 成郎 遠藤 守 高橋 友一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J95-D, no.3, pp.460-472, 2012-03-01

一般に,災害時に住民に対して提供される情報は行政やマスメディアから発信されている.このような公助的情報は広域にまたがり,あるいは,被害の大きな地域の情報に集中する傾向があるために,住民にとって身近な地域,あるいは,限定された地域における共助的情報の流通は難しいのが現状である.また,情報伝達の取組みにおいても,住民への伝達情報が,果たして住民が必要とする情報であるのか,住民が伝達情報をどのように活用しているのかなど,システムのユーザである住民の側からの評価,システムを使用する際の住民の行動についての分析は行われていない.そこで,本研究では認知心理学的なアプローチの導入により,災害情報収集システムを利用する人々が,「どのように情報を判断するか」について評価することにより,構築システムの最適化とシステムに求められる流通情報の特徴を明らかにすることを目的とする.これまでの評価実験の結果からは,システム利用時にユーザが必要としていた情報である,災害が起こった地域の場所や方向の安全/危険に関する情報を提案システムが提供できている点,災害時を想定した時間的制約のある状況においてもそれが有効である点がそれぞれ確認された.
著者
森 一樹 木下 大輔 古宮 誠一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J95-D, no.3, pp.437-446, 2012-03-01

筆者らは,ソフトウェア開発プロジェクトの開発計画(スケジュールと開発を担当する要員の割当の)案を自動的に立案するシステムを研究開発してきた.工程遅延が発生した場合に,これまでは,クラッシングやファーストトラッキングに基づく対策案(工程遅延を回復できるような開発計画案)を自動立案する仕組みを研究してきた.工程遅延の回復方法には,クラッシングやファーストトラッキング以外に休日出勤による方法が挙げられる.これまでのシステムでは,休日を要員割当処理上の制約としては捉えず,全ての休日を単に割当不可能な日とみなし,非明示的に(つまり,アプリケーション上,変更不可能な対象として)扱っていただけであったが,この論文では休日を『要員割り当て対象日に関する制約』として捉え,原則として要員割当ができない日として,明示的に(つまり,アプリケーション上,変更可能な対象として)扱う.しかし,ユーザが指定したいくつかの工程のみは,休日も要員割当可能な日として扱う.これにより,特定の工程のみは休日にも要員を割り当てるような対策案を自動立案するとともに,提案した仕組みの有効性を検証している.
著者
三代 謙仁 川村 隆浩 中川 博之 田原 康之 大須賀 昭彦
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.11, pp.1791-1799, 2011-11-01
参考文献数
19

近年,食や環境への意識の高まりから野菜作りやインテリアグリーンに関心が集まっている.しかし,都市の限られた環境で緑を育てるのは容易ではなく,その環境に適した植物を選択するには専門的な知識が必要ということもあり,不用意に繁茂させたり,逆に枯らしてしまうケースも多い.また,インテリア/エクステリアとしては周辺環境との調和が気になるが,成長時の生い茂った姿を想像するのは素人には難しい.そこで本論文では,携帯電話のセンサを用いて,植裁スペースの環境(日照,温度,気温等)に適した植物を推薦するエージェントシステムの開発について述べる.また,本システムでは,推薦した植物の成長した姿を3DCGで表示するという拡張現実手法を用いて,周辺の景観とマッチするかどうかを視覚的に確認することもできる.これにより,植物や園芸に関する特別な知識がなくとも,環境に適しており,かつ周辺の景観との調和のとれた植物を選ぶことが可能となる.今回の実験では約70%の精度で適した植物を推薦できることを確認できた.
著者
野宮 浩揮 宝珍 輝尚
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J95-D, no.2, pp.193-205, 2012-02-01

大規模な映像データベースからの人物を含む印象的なシーンの検索を目的としたシーン検出法を提案する.本論文では,映像中の人物に何らかの感情が表出しているシーンを印象的なシーンと捉え,人物の表情を認識し,表情に変化が現れたシーンを感情表出シーンとして検出する.まず,効率的に表情の認識を行うために,眉,目,口の端点などの顔特徴点の位置関係と顔画像の輝度値から高速に求められる特徴量を提案する.また,これらの中から有用な特徴量を選択し,認識対象の表情の種類に応じた数の表情認識モデルを生成する.それらをアンサンブル学習を用いて統合することにより,認識精度と認識速度のトレードオフを考慮した表情認識法を提案する.更に,映像中の各フレーム画像に対する表情認識結果から,表情表出開始フレームと表情表出終了フレームを特定して表情表出シーン検出を行う手法を構成し,提案手法の表情表出シーン検出性能の評価を行う.
著者
中川 俊明 林 佳典 畑中 裕司 青山 陽 水草 豊 藤田 明宏 加古川 正勝 原 武史 藤田 広志 山本 哲也
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J89-D, no.11, pp.2491-2501, 2006-11-01

我々は,眼底画像の異常を自動検出することによって眼科医の診断を支援するコンピュータ支援診断(CAD)システムの開発を行っている.本研究では,眼底画像の視神経乳頭を認識するために,血管の抽出及び消去を行う手法を提案する.また,血管消去画像の応用例として,患者説明に利用する擬似立体視画像の作成を行った.血管はカラー眼底画像の緑成分画像に対して,モフォロジー演算の一種であるBlack-top-hat変換を行い抽出した.抽出した血管領域に対して周囲の画素のRGB値を利用した補間を行い血管消去画像を作成した.このように作成した血管消去画像を視神経乳頭の認識に適用した.視神経乳頭は,血管消去画像を用いたP-タイル法によって認識した.78枚の画像を用いて評価実験を行った結果,認識率は94%(73/78)であった.更に,抽出した血管像及び血管消去画像を利用して,擬似立体視画像の作成を試みた.その結果,血管が網膜の硝子体側を走行している様子を表現できた.本手法が眼底CADシステムの精度向上に寄与することを示唆した.
著者
神田 和幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.609-616, 2007-03-01
参考文献数
50
被引用文献数
9

本論文は手話の認知構造とその応用について社会学的,哲学的,言語学的,工学的という多角的な視点から考察した.手話の言語的特性と認知的特性について記述し,手話翻訳,手話認識,手話生成のために必要な情報をまとめた.
著者
國近 秀信 古賀 崇年志 出山 大誌 村上 卓見 平嶋 宗 竹内 章
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.2, pp.210-219, 2008-02-01
参考文献数
12
被引用文献数
1

本研究の目的は,学習者が構成した英文からアニメーションを生成しフィードバックする英作文学習支援システムの実現である.本システムの支援対象は「意図したことが表現できていない誤り」であり,学習者自身に誤りを気づかせるため,誤りをアニメーションにより可視化する.本システムは,原則として学習者が構成した英文の内容をそのまま可視化するが,陽に表現すべき情報が欠落していた場合はそれが顕在化するように可視化する.本論文では,誤りの可視化方法の実現とその評価について述べる.利用者が可視化された誤りに気づくか否かについて調査したところ,ほとんどの誤りに気づくことができ,本手法の有効性が確認された.
著者
大平 健司 宋 中錫 高倉 弘喜 岡部 寿男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.7, pp.1125-1134, 2010-07-01

近年,インターネット上の攻撃活動の対象はマイナーなアプリケーション等に移行しつつあり,ワームやウイルス等によって講じられたバックドアまでもがねらわれる状況となった.それらに関する詳細情報を入手することは非常に困難であり,ゼロデイ攻撃に備えた新たな手法の開発が強く求められている.情報不足は攻撃者側も同様であり,開発初期の攻撃コードによる管理者権限奪取は極めて難しく,攻撃の成否は攻撃対象のシステム設定や状態に依存する.このためインターネット上のランダムに選んだノードによって攻撃コードを試験する事象が多数観測されている.試験段階の攻撃コードを追跡・解析することにより,その完成前に攻撃者の意図(攻撃対象など)を特定できる可能性があり,実現手法の一つとして,ハニーポットと呼ばれる観測装置が注目を集めている.本論文では攻撃状況に応じて待ち受け設定を自動的に変更する観測装置の設計方法を提案する.本装置により従来のセキュリティ機器では十分に解明できなかった攻撃についても解析が可能になる.インターネット上に展開した実験結果から,本装置の長所及び短所,また従来の観測機器と連携する広範囲な攻撃予知システムの構築の可能性について述べる.
著者
石黒 勝彦 山田 武士 上田 修功
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.371-381, 2009-03-01
参考文献数
14
被引用文献数
1

従来の複数対象トラッキング手法は,すべての追跡対象について一つのダイナミックスモデルを適用することが多い.しかし,シーン内に存在するすべての対象が常に同一のダイナミックスに従うとは考えにくい.この問題に対処するためには複数のダイナミックスパターンが必要となるが,シーンの解析前に適切な数のダイナミックスパターンをすべて人手で決定することは困難であり,自動的に学習できることが望ましい.複数のダイナミックスパターンを学習する問題は,時系列データを複数のパターンにクラスタリングし,各クラスタごとに適切なパラメータを推定する問題ととらえることができる.本論文では,複数の移動対象をトラッキングするとともに,同時にそれらをクラスタリングしてダイナミックスモデルを学習する確率的な生成モデルを提案する.人工データ,及び実動画データを用いた実験を通じて,提案モデルがトラッキングとダイナミックスのクラスタリングを同時に実現可能であること,またトラッキング自体の性能も向上することを示した.
著者
鈴木 健太 大平 雅子 野崎 綾子 内山 尚志 吉川 泰生 佐藤 利幸 野村 収作
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J95-D, no.1, pp.162-165, 2012-01-01

精神的なストレスの評価指標としてコルチゾールというホルモンが注目されている.従来,同物質は血液,唾液,尿などの検体から定量されてきた.これに対し本研究では,皮膚に微細孔を形成し,経皮的にコルチゾールを定量する新たな手法を提案する.
著者
酒井 智弥 井宮 淳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.8, pp.1256-1266, 2010-08-01

本論文では,スペクトラルクラスタリングの計算量を削減するランダム算法を提案する.スペクトラルクラスタリングは核関数法と固有値分解を利用して非線形多様体上のデータを分類できるが,類似度行列の作成と固有ベクトル計算のコストが高い.提案する算法はランダム射影とランダムサブサンプリングを利用し,データの次元数とサンプル数に起因する計算コストをそれぞれ低減する.計算時間はサンプル数に準線形,次元数に線形であり,Nystrom近似に基づく既存の高速算法より高速かつ安定である.特に,アピアランスベースの画像解析では少数の画素のランダムサンプリングによって計算時間が次元数に無関係となり得ることを考察する.また,この特長と提案算法を活かした応用として,画像分割と動画像のショット分割を示す.
著者
小野 智司 津々見 誠 中山 茂
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.12, pp.1971-1974, 2011-12-01

航空機の搭乗券のように金銭的価値をもつ二次元コードの利用が拡大している昨今,二次元コードの複製を検知する技術の実現は急務である.本論文は,複写機による複製を検出できるよう,二次元コードに電子透かしを埋め込む方式を提案する.
著者
高橋 朝英 田口 元貴 小林 良太郎 加藤 雅彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.12, pp.2058-2068, 2011-12-01

現在,ウェブサービスは広く一般に利用され,日常生活を行う上で欠かせないものとなっている.それに伴い,ウェブサービスが停止した際の社会的影響も大きくなっている.一方,攻撃対象のシステムのサービス提供を不能にするサービス妨害(DoS)攻撃が存在し,問題となっている.手動によるDoS攻撃では,サーバ側で攻撃と思われる通信を単純にブロックしていることが攻撃者に気づかれると,攻撃者は攻撃を別の手段に切り換えて対策を回避し攻撃を行ってくる場合がある.本研究ではこの点に着目し,DoS攻撃の一種であるHTTP-GET Flood攻撃に焦点を当て,この攻撃に対して一般利用者の通信をできるだけ生かしつつ,対策を行っていることが攻撃者に気づかれにくくなるようウェブサービス提供側で可能な対策の提案を行う.本対策手法では,仮想マシンを複数台使用することで資源の分離を行い,攻撃者と通常利用者の使用する資源を分ける.また,攻撃者が利用する資源の操作を行うことで,攻撃が成功しつつあるかのように見せる.更に,提案手法の実装を行い,実験を行うことで本提案手法の有効性を確認する.
著者
宇都 雅輝 植野 真臣
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.12, pp.2069-2081, 2011-12-01

本研究では,妥当かつ多様な論文構成の構築を支援するシステムの開発と評価を行う.ここでは,「論文構成」を情報理論における情報源からの出力符号系列とみなしたメタファとしてとらえ,論文構成の構築過程を定式化する.具体的には,過去の優良論文100件の論文構成を論文要素カテゴリーの系列データとし,それがm重マルコフ情報源に従うと仮定する.多重度の推定法として,情報論的アプローチでは,ベイズ符号語長(Bayes code length)最小化による推定法が高精度であると知られている.しかし,本論文で扱うようなデータ長の短いデータから学習する場合,多重度の増加に伴いベイズ符号語長が単調減少し,多重度を正しく推定できないことがある.そこで,本研究では,ベイズ符号語長が単調減少する場合の推定補正法を提案し,過去の優良論文100件から予測精度の高いm重マルコフ情報源を推定する.更に,推定されたマルコフ情報源に基づき論文構成の構築過程を逐次的にナビゲーションするシステムを開発する.最後に,評価実験を行い,補正手法及び提案システムの有効性を評価する.
著者
田中 俊行 グェン ミンティ 中川 博之 田原 康之 大須賀 昭彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.11, pp.1751-1761, 2011-11-01

インターネットの普及に伴い,Web上には商品やサービス(対象物)に対する多くの評判情報が蓄積されている.しかし,誰でも発信できるが故に,情報は膨大となり,それら全てに目を通すことは利用者にとって多大な負担となる.そのような背景から,レビューから意見を自動的に抽出する研究が盛んに行われており,意見を<対象物,評価視点(属性),評価値>の三つ組と捉え抽出する研究も行われている.しかしながら多くの研究は,評価視点や評価値の抽出に辞書を用いており,ジャンルごとに必要となる辞書の構築のためのコストは小さいとはいえない.また,単に辞書を用いてマッチングを行っただけでは,精度が上がらないのが現状である.そこで本論文では,教師あり学習を用いて,レビューサイトから意見を抽出する手法を提案する.提案手法は,従来の手法のように大規模な辞書をあらかじめ用意する必要がないため,コストを大幅に抑えることが可能である.実験の結果,辞書をあらかじめ用意しない既存手法と比較して,最大で適合率は約26%,再現率は約47%向上した.また,既存研究では個別の辞書を必要とするような他ジャンルに対して本手法を適用した結果,ほぼ変わらない精度で抽出することができ,他ジャンルへの適用の可能性を示すことができた.
著者
佐藤 大輔 中川 博之 田原 康之 大須賀 昭彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.11, pp.1773-1782, 2011-11-01

本論文では,閲覧中のWeb上のニュース記事に対する意見を個人のブログから収集し,その本文中の主張部分を抽出して提示するシステムの提案を行う.現在ニュースサイトにコメント欄が用意されているところは少なく,検索エンジンを用いても個人の意見のみを収集するのは容易ではない.そこで個人の意見を述べやすい場であるブログに着目してニュース記事に関連した意見を集め,主張を抽出する.本研究では主張とは意見の中で筆者が強く述べている主観的な部分を指す.開発中の主張提示システムの中で,本論文では主張抽出に焦点を当てる.主張抽出には人手により主張であるとされた文章から形態素解析を利用して特徴的な抽出ルールを設定した.本システムによりユーザはニュースサイトを閲覧すると同時に意見の多角的な見方が可能になり,より深い洞察が得られるようになる.評価実験において人手による正解との適合率を求めたところ70.0%となった.
著者
浜本 一知 田原 康之 大須賀 昭彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.11, pp.1812-1824, 2011-11-01

ライフログなどの個人情報を提供し,プロバイダより情報推薦などの個人サービスを受ける場合,多くの個人情報を提供することで更に品質の高い個人サービスを受けることができる反面,情報の漏えいや流用などによるプライバシ侵害の危険性も増える.そこで本論文では,ユーザごとに設定する希望匿名度に対応する属性を開示する前に,匿名度に影響を及ぼす二つの要素,(1)プロバイダのユーザ背景情報,(2)コミュニティの状況,をチェックし匿名度に反映させることで開示属性を調整し,結果,無用な情報開示を避けることを特徴とするプライバシ保護エージェントを提案する.(1),(2)それぞれにおいて,課題を分析し,解決への提案手法について述べ,(1)は事例モデルによる実験的机上検証,(2)は歩行者モデルを用いたコミュニティを想定し机上検証により,提案手法の妥当性と有効性を確認した.
著者
清水 彰一 西尾 和晃 木村 誠 藤吉 弘亘
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.11, pp.1909-1918, 2011-11-01

人の行動意図を認識しようとするFirst Person Visionでは,人の状態とその人が何を見ているのかという情報が必要となる.そこで我々は,人の眼球と人の視界映像を同時に取得するInside-Outカメラを提案し,そのカメラの構成を活かした注視点の推定法も提案する.Inside-Outカメラはハーフミラーを介して眼球を正面から,視界映像を眼球と同等の位置から撮影することができる.Inside-Outカメラでは,眼球を撮影した画像から得られる視線ベクトルと視界を撮影した画像から得られる注視点位置の関係を変換式で表すことが可能である.そのため,変換式のパラメータをあらかじめ推定することにより,視線ベクトルから注視点を推定する.評価実験では,指標を注視した際の両眼,両視界映像を撮影し,視界画像の指標位置を真値として視線ベクトルから推定された注視点との誤差を算出した.評価実験から視野角において約1.5度の平均誤差で注視点を推定可能であることを確認した.人間は1点を注視しているとき,注視箇所だけではなく視野角で約2度の範囲がはっきり見えていることが報告されていることから,この範囲を評価基準とすると,提案手法は,十分な精度をもつことが分かる.