著者
瀧本 政雄 佐藤 真一 坂内 正夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.89, no.12, pp.2699-2709, 2006-12-01
被引用文献数
5

本研究は大容量のテレビ放送映像アーカイブからの,フラッシュのたかれる同一シーン映像の発見を目的とする.フラッシュは例えば記者会見や重大事件の一場面などの視聴者の興味を引くようなシーンにしばしば現れ,また,特に重要なシーンは様々な番組で繰り返し放送される.よって,放送映像の中から繰り返し利用される同一場面の映像を発見することで,アーカイブに保存される映像の内容的な解析につながると考えられる.また,本論文で述べる手法では同一場面であるかどうかの照合をフラッシュがたかれる時間的なパターン間の類似度によって行っており,撮影したカメラが違う,若しくはテレビ放送によくあるように付加されるキャプションが違う,などといった映像的な差異にかかわらず照合が行える.提案する手法はフラッシュの発生するフレームを検出する段階と,検出されたフラッシュの発生パターンを比較する段階に分けられ,前者はフラッシュという現象の特徴に基づいて検出を行い,後者は2値のパターン間での類似度を定義している.これらの手法は比較的少ない計算量で行えるように構成されているため大容量の映像に対しても適用可能である.
著者
宮田 宏 並木 美太郎 佐藤 未来子
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J97-D, no.6, pp.1068-1081, 2014-06-01

これまで独自の技術により実現されてきたプロセスオートメーションにおいてもネットワーク化の要求が高まっており,その中で実時間通信を行うためにQoSの利用が求められている.本研究ではプロセスオートメーションに特有な攻撃であるパケットの偽装によるQoS阻害攻撃に着目し,その対策としてOpenFlowを用いたQoSのセキュリティ確保技術を開発した.提案する方式はOpenFlowに対して新規にパケット認証プレーンという,OpenFlowでは提供しないパケット単位での認証を行うための機能を導入することで実現している.OpenFlowの提供するアドレス,ポート番号,DSCP値等のさまざまなパケット内の情報を自由に組み合わせて定義できるフローに対応したフローの偽装防止機能をもち,フロー単位の帯域制御を安全に利用可能にする.本研究ではパケット認証プレーンを用いた偽装検出機能を試作し,提案する技術がプロセスオートメーションに求められる遅延時間内で,パケットの偽装や正しいパケットの再送等の攻撃を検出し,帯域を保護できることを確認した.
著者
池村 翔 藤吉 弘亘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.355-364, 2010-03-01
被引用文献数
4

近年,統計的学習法と局所特徴量を用いた人検出に関する研究が多く取り組まれている.従来の人検出法では,HOG(Histograms of Oriented Gradients)特徴量のようなこう配情報に基づく特徴量を用いる手法が多いが,人の重なりや複雑な背景に対して人検出が困難となる場合がある.更に,検出時には検出ウィンドウのスケールを変化させながら画像上を複数回にわたりラスタスキャンするため処理コストが高く,リアルタイム処理が困難である.そこで,本論文ではTOFカメラから得られる距離情報を用いて人の重なりや複雑なシーンに頑健なリアルタイム人検出手法を提案する.提案手法では,距離画像から二つの局所領域の距離関係をとらえることができる距離ヒストグラム特徴量を抽出する.抽出された特徴量を用いてReal AdaBoost識別器を構築し,人の識別を行う.検出時には三次元実空間における検出ウィンドウのラスタスキャンをすることで,人の大きさに合わない検出ウィンドウを削除して,高速化を実現する.三次元実空間におけるMean-Shiftクラスタリングにより人と識別された検出ウィンドウを統合することで,人がどこにいるかを自動的に検出することができる.評価実験の結果,誤検出率5.0%において検出率98.9%となり,HOG特徴量を用いた従来法と比較して4.9%検出率を向上させることができた.また,提案手法は約10fpsでリアルタイムに人検出が可能であることを確認した.
著者
福本 文代 鈴木 良弥
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.552-566, 2006-03-01
被引用文献数
2

本論文では,人手により複数の分野名が付与された文書における分野名誤りのうち,文書分類の精度に悪影響を与えるものを自動的に検出し,修正する手法を提案する.我々は,誤り検出と修正の手掛りとして三つの点に注目する.1点目は分類に悪影響を与える事例を抽出するために機械学習Support Vector Machines(SVMs)で得られるサポートベクトルと機械学習Naive Bayes(NB)を利用する点である.2点目は誤り事例を検出するために損失関数を利用する点である.3点目は,過剰な修正を抑えるため,分野名をノードとする階層構造を利用する点である.Reuters1996のコーパスを用いて実験を行った結果,誤り検出と修正の精度はそれぞれ0.8391,0.767であった.更に,修正結果を文書分類へ適用した結果,分類精度が0.5〜1.7%向上することが分かり,誤り修正の効果が現れていることが確認できた.
著者
山本 祐輔 手塚 太郎 ヤトフト アダム 田中 克己
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.3, pp.576-584, 2008-03-01
被引用文献数
2

「恐竜は6500万年前に絶滅した」といったような知識の信頼性を確認する際,現在では検索エンジンの検索結果を用いて確認が行われている.しかし,ユーザの確認したWebページのみで判断を行うのは,個々のページの信頼性が低いことやページが網羅的に確認されていない点に問題がある.そこで我々はユーザが真偽に確信がもてない知識の信頼性を判断支援するシステムを提案する.本論文では,知識の信頼性をそれに関連するWebページの品質評価,言語的な分析,ページの生成時間分析から判断支援する方法を述べ,並びに実装,その評価を行う.類似のシステムとしてWebQAが挙げられるが,今回提案するシステムはユーザの質問に対する回答を発見することが目的ではなく,知識の信頼性を積極的に判断支援する点で異なる.提案手法ではまず知識を言及するWebページの評価と知識が言及された文脈の分析を行った.更に,ある時期においてある知識がどの程度Web上で言及されているか,どの程度継続して言及されているかを分析することで,時間的な観点からの知識の信頼性を評価し,その有効性の確認を行った.
著者
福添 孝明 伊藤 雅人 水戸 大輔 渡邊 睦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.5, pp.1369-1379, 2008-05-01
被引用文献数
3

生体情報を利用して人物同定を行う手法,例えば指紋や顔画像パターンを情報源とする手法では,拘束状態にて人物同定を行うものが一般的である.こうした拘束型の手法は,高いセキュリティ性能を必要とする場を主に想定して開発されてきた.しかし人物の同定が必要となるのはセキュリティ応用のみならず,例えば講義における出欠管理など様々な応用の場が考えられる.そこで我々は,物理的かつ心理的に拘束する必要がない人物同定手法について提案する.人物同定の手掛りとなる体型や習慣的な挙動を確率分布の形で学習しておき,ベイズの定理に基づく計算式で各時点における各人物の事後確率を算出する.更に時間方向におけるベイズ統合計算結果に基づいて,当該人物の同定を行う.大学院講義を模擬した有用性評価実験を行った結果,被験者15名に対して平均96.7%の人物同定成功率が得られた.
著者
大木 誠 中嶋 亮輔 岸田 悟
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.97, no.1, pp.192-203, 2014-01-01

本研究では,大規模ホームセンタにおける短時間労働者勤務表の自動作成及び最適化に関する手法を提案する.短時間労働者の勤務表は,現在人の手により作成されている.勤務表には,勤務時間だけでなく休憩時間や勤務配置場所を明記する必要がある.更に,勤務表を作成するに当たって,考慮する条件が多いことから,勤務表作成には多大な時間と労力を必要とする.そこで本研究では,短時間労働者勤務表の作成者の負担を低減することを目的として,勤務表の自動作成及び最適化の手法を提案する.短時間労働者勤務表の自動作成には,遺伝的アルゴリズムの一種である共存型遺伝的アルゴリズムを用いる.本研究において,特定の休憩時間帯に勤務者が集中する問題が明らかになった.この問題は評価関数を新たに定義することでは解決できなかった.そこで,勤務者の休憩時間帯を調整する手法を提案する.また,共存型遺伝的アルゴリズムではあまり考慮されてこなかった突然変異を導入することにより,最適化の進行を向上させる.
著者
加賀谷 駿 荒井 幸代
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.12, pp.3000-3008, 2013-12-01

新たなエネルギー供給と消費の形態として注目されているマイクログリッドは,既存の電力系統からの送電に極力依存せずに,エネルギー供給源と消費施設をもつ小規模なエネルギーネットワークである.供給が不安定な自然エネルギー活用を前提とするため,グリッド内での電圧均衡を実現し,逆潮流による大停電を回避する必要がある.そこで本研究では,マイクログリッドを,複数のエージェントからなるネットワークとしてモデル化し,需給の不安定をエージェント間での電力融通によって吸収することを考える.具体的には,太陽光発電をもつ需要家エージェントの強化学習モデルを提案する.エージェントは,太陽光発電・定常発電・電力需要・需要制御・蓄電の五つのモジュールから構成され,不安定要素である太陽光発電と電力需要の二つを需要制御と蓄電によって安定化する.需要制御に用いる強化学習には,連続値をとる電力制御問題に対応するために,Actor-Criticとタイルコーティングを導入する.実験では,5体のエージェントからなる完全グラフにおいて需給の安定化が学習できることをシミュレーションで示し,電力融通における提案モデルの有効性を示す.
著者
松島 千佳 山内 悠嗣 山下 隆義 藤吉 弘亘
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.8, pp.1172-1182, 2011-08-01

本論文では,物体検出に有効なHOG特徴量のメモリ量を削減するために,Relational HOG特徴量とワイルドカードを用いたバイナリーのマスキングを提案する.HOGは,人検出に有効な特徴量であるが,局所領域に着目しているため高次元な特徴量である.そこで,本論文では特徴量の情報量を削減するために,二つの局所領域から抽出したHOG特徴量の大小関係によりバイナリーパターン化するR-HOG特徴量を提案する.これにより,局所領域間の関係性を捉えたバイナリーパターンを作成することが可能であるが,R-HOG特徴量には識別に不必要なバイナリーが含まれる.そこで,Real AdaBoostを用いて学習する際に,“0”と“1”の二つのバイナリーを許容するワイルドカード(*)を導入することにより,識別に悪影響を及ぼす一部のバイナリーを観測しないようにマスキングする.評価実験の結果より,提案手法はメモリ量を削減したにもかかわらず,従来法であるHOG特徴量の検出性能と同程度以上であることを確認した.
著者
永田 亮
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.5, pp.1346-1355, 2013-05-01

本論文では,英文における主語と動詞の一致に関する誤りを検出する手法を提案する.提案手法の特徴として,誤り検出の際に必要となる主語と動詞の関係を構文解析を利用せずに抽出するということが挙げられる.構文解析を利用する代わりに,英語の性質に基づいた規則により近似的に主語と動詞の関係を抽出する.その際に必要となるのは品詞解析と句解析のみである.抽出された主語と動詞の侯補に対して検出規則を適用することで一致誤りを検出する.評価実験の結果,提案手法は構文解析を利用した手法より性能が良く,比較的文長が短い学習者の英文に対して特に有効であることを確認した.
著者
荒川 貴紀 三川 健太 後藤 正幸
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.8, pp.1956-1959, 2013-08-01

本研究では,学習データ中に全く現れなかった未知のカテゴリー(未観測カテゴリー)の文書が出現するような状況での文書分類問題を対象とし,確率モデルに基づいた新しい分類手法を提案する.
著者
青山 正人 楠 卓也 椋木 雅之 浅田 尚紀 米田 洋介 沖川 隆志 浦田 譲治
出版者
社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.139-147, 2010-02-01
被引用文献数
1

従来の脳動脈瘤検出支援に関する研究では,動脈瘤を球状の領域とモデル化し,形状特徴を利用するものがほとんどであったが,実際には様々な形状のものが見られるため,多様な形状の動脈瘤を検出できる手法が必要である.そこで本論文では,脳血管の輝度分布から計算した方向ベクトル情報を用いて,動脈瘤が血管から瘤状に突出した終端をもつという構造特徴を用いた脳動脈瘤の検出手法を提案する.2 mm以上の動脈瘤32個を含む24症例と動脈瘤なし26症例の計50症例に本手法を適用した結果,動脈瘤の検出感度100%のとき症例当りの平均偽陽性数 4.5個,3特徴を用いた線形判別法による偽陽性除去の結果,97%のとき1.5個という結果が得られた.
著者
天野 敏之 玉木 徹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.8, pp.2060-2069, 2007-08-01
被引用文献数
5

本論文では三次元物体の姿勢パラメータを二次元画像から高速に推定する方法として,EbC(Estimation-by-Completion)法を提案する.EbG法は,アピアランスベース姿勢推定を,画像に埋め込まれた情報トラックの復元という問題としてとらえ,固有空間法による学習結果をもとにBPLP法で画像補完することで情報トラックを復元し,パラメータ推定を実現する.また,画像補完とパラメータ推定の計算を2枚の画像(EbC画像対)に集約し,各パラメータの推定を画像の内積演算と簡単な三角関数のみで実現するため,パラメータ推定を高速に行うことができる.実験では,鉛直軸周りの回転と画像面での並進の3自由度の姿勢パラメータ推定結果を示し,EbC法の精度と計算コストについて述べる.
著者
岩田 具治 渡部 晋治 山田 武士 上田 修功
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.978-987, 2010-06-01
被引用文献数
4

購買ログデータを用いて,時間変化するユーザの興味及び商品の流行を追跡するためのトピックモデルを提案する.提案モデルは,興味や流行の変わりやすさをデータから逐次推定するため,変化に柔軟に対応可能である.また,新たなデータが得られた際,過去のデータで既に推定された興味・流行に基づいて,現在の興味・流行を推定するため,過去のデータを保持する必要がなく記憶容量を削減でき,かつ計算効率も高い.実購買ログデータを用いた実験により,購買行動の予測精度及び推定の計算効率の観点で提案モデルの有効性を示す.
著者
和歌崎 修平 北越 大輔 鈴木 雅人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.11, pp.2716-2727, 2013-11-01

複数の確率変数間の依存関係を視覚的に表現可能な確率モデルの一つであるベイジアンネット(Bayesian Network: BN)は,その結合構造を活用した確率推論が可能であり,データマイニングや意思決定システム等,多様な分野への適用例が報告されている.本論文では,BNの結合構造簡略化処理によって計算量抑制と推論精度向上を実現した上で,精度保証処理を通じて利用者の要求に応じた信頼性の高い推論値を出力可能な近似確率推論アルゴリズムExtended-LBPCを提案した.確率的,構造的な特徴を有する複数のBNを対象に計算機実験を実施し,既存アルゴリズムとの比較を通して提案アルゴリズムの基本的特性,及び推論性能について評価する.
著者
松原 茂樹 村田 匡輝
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J97-D, no.1, pp.181-185, 2014-01-01

体言止めの文に対する文末表現の自動補完について述べる.文末が体言の2,382文を新聞記事コーパスから抽出し,人手で文末表現を付与し,定量的分析を与えた.分析に基づき,補完する文末表現を決定する統計的手法を実現し,実験により手法の有効性を確認した.
著者
グエン ミン テイ 川村 隆浩 大須賀 昭彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.12, pp.2970-2978, 2013-12-01

本論文は,実世界での人々の行動を分析し,状況に応じた適切な情報提示などへ役立てることを目的に,Twitterなどソーシャルメディアから行動ネットワークを構築する研究の一環である.ソーシャルメディアからの行動抽出にあたっては,さまざまな理由から呟かれなかった行動が数多く存在し,結果として行動ネットワークがスパースになってしまうという問題が存在する.そこで,行動の性質とユーザのゴールを考慮した行動ベース協調フィルタリング手法を提案し,欠損行動の推測を試みる.また,協調フィルタリングによる頻度の原理の副作用としての低頻度だが価値のある情報が埋もれてしまう問題に対して,人が成功している人や行動にどのように影響を受けるか,を単純にモデル化し,一定の重み付けを行う方法を提案する.そして,東日本大震災発生時のtweet 337,958件を対象に評価実験を行った結果,提案手法を用いることで行動ネットワーク内の欠損行動ノードを一定程度,補完できることを確認した.
著者
大倉 輝 山本 寛 山崎 克之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.95, no.5, pp.1081-1090, 2012-05-01

近年,人間の行動を日常的にデータとして記録するライフログに注目が集まっている.人の位置を計測する手法は,屋外ではGPSが利用可能であるが,屋内では衛星からの電波が遮断されるためGPSの利用は困難である.そこで,GPSを用いずに人の位置を推定できる手法の確立が求められている.本論文では歩行経路を推定するために,加速度データから歩行周波数とエレベータ搭乗区間を,方位データから曲がり(歩行者の進行方向の変化)を推定する手法を提案し,システムを開発した.更に,開発したシステムを利用した評価実験を行うことで,歩行経路の推定精度を検証した.その結果,評価に使用した経路全てにおいて80[%]以上,更に,エレベータを含まない場合は92[%]以上という高い推定精度が得られ,屋内での歩行経路推定に有効であることが分かった.
著者
玉木 秀和 東野 豪 小林 稔 井原 雅行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.1, pp.35-45, 2013-01-01

Web会議に代表される小規模な遠隔会議システムは利用や導入の手軽さがあるが,映像,音声の品質に制限があるため,大規模で高精細な遠隔会議システムに比べ,円滑な会話がしづらい.Web会議システムを用いて,司会者のいない創造会議を実施すると,複数の参加者の発話が衝突してしまうことが多い.我々はWeb会議において発話の衝突を低減し,快適な会話を実現することを目標に研究を進めているが,発話衝突の原因とその影響は明らかになっていない.本論文では,音声会議において,発話衝突の原因の一つと考えられる音声遅延量を変化させることで,発話衝突確率の変化と,それによる精神的ストレスを測定する実験を行った.実験の結果,音声遅延量が600msの条件で発話衝突確率が最大となり,その後減少することが分かった.また発話衝突による精神的ストレスは,音声遅延量が増えるほど増加するという結果が得られた.
著者
小林 貴訓 杉村 大輔 平澤 宏祐 鈴木 直彦 鹿毛 裕史 佐藤 洋一 杉本 晃宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.8, pp.2049-2059, 2007-08-01
被引用文献数
16

視野を共有する複数のカメラを用いて,三次元空間における人物の実時間追跡を行う.従来より,パーティクルフィルタを用いた人物追跡手法の有効性が報告されている.しかし,観測による仮説の評価は,カラーヒストグラムや輪郭の類似性など,比較的単純な指標が用いられることが多く,実環境での照明変動や複雑背景に対する精度や頑健さなどの点で,必ずしも十分なものではなかった.これに対して本論文では,Haar-like特徴を用いたAdaBoost学習によるカスケード型識別器を仮説の評価に応用することで,頑健かつ高精度に人物頭部を追跡する手法を提案する.更に,人物頭部の各方向に対応した識別器を複数準備し,パーティクルフィルタにより生成される仮説と各カメラの関係に基づいて,識別器を適応的に選択することで,人物頭部の向きに伴う見えの変動に対応し,追跡と同時に人物頭部の向きを推定する.実環境における実験により本手法の頑健性,有効性を確認した.