著者
早川 幹 大久保 教夫 脇坂 義博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.10, pp.2359-2370, 2013-10-01

実用的に人間行動を大規模計測・収集するシステムとして,ビジネス顕微鏡システムを開発した.小型・軽量の名札型センサデバイスにより,赤外線を使用した場所や対面情報,三軸加速度による体の動きや音声特徴量を取得し,組織ダイナミクスを可視化してフィードバックする.センサデバイスは,赤外線送受信の時分割駆動により低電力で様々なシチュエーションの人間の対面を記録するビームスキャン技術や,センサデータのブロック処理により,消費電流を約52%削減した.更に,通信路の仮想化によるプロセス多重化により,同時接続台数が増加しても通信性能が劣化しない大規模展開に耐えうるデータ収集フレームワークを構築した.
著者
齊藤 剛史 小西 亮介
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.4, pp.1105-1114, 2007-04-01
被引用文献数
42

本論文では視覚情報を利用して人間の発話内容を理解する,いわゆる読唇において高認識率が得られるトラジェクトリ特徴量を提案する.トラジェクトリ特徴量は,口唇領域または口内領域より計測できる面積とアスペクト比の二つの特徴量をもとに,発話により生じる2特徴量の時間的変化を口形の軌道として表現される.認識はトラジェクトリ特徴量に二次元DPマッチングを適用する.(1)車椅子制御用10単語と(2)数字10単語の動画像において,これまで提案されている特徴量とトラジェクトリ特徴量の比較実験を行った結果,従来特徴量で最も高い認識率は(1)92.5%,(2)72.0%であったのに対し,トラジェクトリ特徴量は(1)99.5%,(2)83.5%の高認識率を得た.また処理速度,発話速度を考慮して擬似的にフレームレートを変更して比較実験を行った結果,従来の特徴量で最も高い認識率は69.5%であるのに対し,トラジェクトリ特徴量では98.0%と高い認識率であった.これより,トラジェクトリ特徴量は発話速度に対してロバストであり,かつ高い認識精度を有することを確認した.
著者
伊藤 昌毅 川村 尚生 菅原 一孔
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.10, pp.2327-2339, 2013-10-01

本論文では,走行中の路線バスの位置情報を取得するバスロケーションシステムの開発について述べる.バスロケーションシステムは,バス停においてバスの到着を知らせるなど公共交通の利便性を高めるために用いられているが,運用コストの問題で小規模な都市での実現は困難である.本論文では,スマートフォンを車載器として利用することで,導入や運用コストを抑えたバスロケーションシステムを実現した.開発システムは,バスの位置情報をユーザに提供するだけでなく,既に運用中のバスや鉄道の経路案内サービス「バスネット」と連携することで,バスの遅れを考慮した経路探索を実現するなど,公共交通の利便性を高める情報基盤として機能している.開発したバスロケーションシステムは,鳥取県のバスを対象に運用を続けており,アクセス数などの運用状況やそこから得られた知見についても紹介する.
著者
渡邊 栄治 尾関 孝史 小濱 剛
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J97-D, no.12, pp.1725-1728, 2014-12-01

本論文では,e-Learningにおける受講者の取り組みを明確にするために,ノーティングの動作を分析する.まず,ペン先を検出するための手法及びノーティング動作を分類するための手法について述べる.つぎに,ノーティング動作の検出結果から,ノートだけでは抽出できない受講者間の差異を明確化できることを示す.
著者
藤田 和之 高嶋 和毅 伊藤 雄一 大崎 博之 小野 直亮 香川 景一郎 津川 翔 中島 康祐 林 勇介 岸野 文郎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.1, pp.120-132, 2013-01-01

我々は多人数でのコミュニケーションを支援するための情報環境Ambient Suiteを提案し,検討を進めている.Ambient Suiteは部屋全体が入出力機能をもったシステムであり,様々なセンサにより会話の状態を推定し,また,この状態に応じて,床や壁に配置されたディスプレイ群を連携させて様々な情報を表示することで会話の活性化を目指す.本研究では,Ambient Suiteを立食パーティの場面に適用したAmbient Party Roomを実装し,これを用いた初対面の男女6人による会話実験を行った.この結果,本システムが会話の状況を十分に推定可能な性能を有し,情報提示により会話を活性化させられることが分かった.
著者
井関 洋平 川西 康友 椋木 雅之 美濃 導彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J98-D, no.1, pp.236-249, 2015-01-01

様々な環境に設置された防犯カメラで観測された人物画像の特徴量は被写体の姿勢,照明などの撮影条件によって大きく変化する.そのため,特定人物画像検索における人物画像の特徴量比較には,撮影条件が異なれば(1)本来外見が類似している同一人物の人物画像の特徴量間の距離が大きくなる,(2)本来外見が類似していない別人同士の人物画像の特徴量間の距離が小さくなる,という二つの問題がある.従来提案されてきた適合性フィードバックでは,問題(1)には対応できるが問題(2)には対処できない.我々が提案する条件分割型適合性フィードバックでは,撮影条件を分類してフィードバックすることで,各撮影条件の画像特徴量が混合されることを回避し,問題(1)(2)の両方に対処できる.複数の防犯カメラ映像に対して人物画像を検索し,通常の適合性フィードバックと比較することで本手法の有効性を確認した.
著者
工藤 健慈 佐藤 季花 関根 優年
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.101-109, 2008-01-01
被引用文献数
3

ロボット用画像認識システムを容易に実現するために,ハードウェアオブジェクト(hwObject)モデルを用いたhw/sw複合体システムを提案する.hwObjectモデルでは,FPGAにロードされる仮想回路(hwNet)が既存のソフトウェア開発環境にライブラリとして組み込まれる.本研究では,カラー画像によるステレオマッチング及び追跡動作をするアプリケーションの実装を行った.汎用PCx1, hwModuleボードx1 (200kゲート規模のFPGA x3,ローカルメモリ1MByte x3を実装したPCIボード)の実機テストにて,15[frame/s]の画像処理結果が得られた.複数の仮想回路による並列分散処理で浮いたプロセッサリソースを更に高度で複雑な処理に振り向けることが可能である.
著者
渋久 奈保 高橋 友和 井手 一郎 村瀬 洋 小島 祥子 高橋 新
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.215-225, 2009-02-01
被引用文献数
10

本論文では,事前に構築した距離データマップと走行中の自車が測定した距離データを対応づけることで,高精度に自車位置推定を行う手法を提案する.我々が考案した距離データマップとは絶対位置座標とその位置における車両走行方向の距離データ及び距離データの信頼性を対応づけたマップである.また,ここでいう距離データとは,4ラインレーザスキャナにより測定された車両前方の奥行方向の距離分布である.自車位置推定のために行う距離データマップと距離データの対応付けでは,精度向上をねらい,距離データ系列同士をDPマッチングで対応づける.複数の車線がある道路の同一区間を走行しながらGPSと同期して測定されたデータ系列を用いて,実験を行った.実験の結果から距離データ系列間の対応付けにより高精度な位置推定と走行車線分類が可能となることを確認した.
著者
宇都 雅輝 植野 真臣
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J98-D, no.1, pp.3-16, 2015-01-01

近年,構成主義における学習評価法としてピアアセスメントが注目されている.ピアアセスメントでは,評価の信頼性が評価者の特性に依存する問題が指摘されている.この問題を解決するアプローチの一つとして,評価者の特性を表すパラメータを付加した項目反応理論が提案されてきた.しかし,ピアアセスメントでは,評価者数が学習者数と同程度まで増加するため,パラメータ数に対してデータ数が少なくなり,既存モデルでは高精度なパラメータ推定が期待できない.そこで,本論では,通常の項目反応理論について,できる限り評価者パラメータ数が少なくなるように評価者パラメータを付加した,ピアアセスメントのための新たな項目反応理論を提案する.提案手法の特徴は次のとおりである,(1)既存モデルより高精度なパラメータ推定が可能である.(2)評価者特性として評価の一貫性と厳しさの影響を反映した学習者の能力推定が可能である.(3)学習者の正確な能力推定が期待できる.更に,本論では,シミュレーション実験及び被験者実験により提案手法の有効性を示す.
著者
高橋 雄介 三橋 秀男 村田 一仁 則枝 真 渡邊 克巳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.95, no.4, pp.1048-1055, 2012-04-01
被引用文献数
1

他人とコミュニケーションするときや,動物や虫と接するとき,我々はそれらの存在に対して生物らしさを感じることがある.生物らしさに関する従来の研究では,非生物である視覚図形の相互作用的な動きに対して,あたかも生き物のような社会性や意図性を感じるという高次認知過程が示されている(アニマシー知覚).これに対し本研究では,心理物理学手法を用いた実験研究により,無意味な感覚刺激に対して触覚,視覚,聴覚で感じる低次の生物らしさについて検討した.周期的に変化する無意味な感覚刺激を0.5Hzから100Hzまでの様々な周波数で呈示し,被験者は刺激について感じる生物らしさの強さを評価した.その結果,全ての感覚に共通の傾向として,2Hz程度までの低周波刺激の方が高周波刺激に比べて強い生物性が感じられることが明らかとなった.ただし周波数依存性の詳細なパターンを検討した結果,特に触覚では刺激される身体部位により周波数依存性が異なること,視覚,聴覚における生物性では,視聴覚間の統合や相互作用が生じていることなどが示された.以上の結果から,ヒトは無意味な感覚刺激に対してでも周波数依存的に生物らしさを感じており,特に低周波刺激で強い生物性が生じることが示唆された.ヒトが感じる生物らしさには社会性や意図性を反映した高次認知に加え,刺激の統計構造を処理するような低次知覚過程も関与していると考えられる.
著者
神邊 篤史 松原 行宏 岩根 典之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.2, pp.314-323, 2008-02-01
被引用文献数
5

リハビリテーションにおいては,力覚フィードバックを提示することで,関節可動域の拡大などに対し効果的に寄与すると考えられている.そこで,我々は力覚フィードバック機能を用いた上肢運動リハビリテーション支援システムの開発を目指している.反力デバイスを用い仮想訓練環境でボールを投げることで,重さ感覚を知覚しながら腕の動きを訓練することができるようにする.投げる動作は上肢運動の中でも数多くの種類を必要とすることから比較的難しいため,四つのステップに分け,障害当事者にとって難易度に応じた訓練の選択が可能な環境を構築した.また,目的動作の達成を支援するために,腕の動きの表示などを行った.本研究では特にシステムの基本的な機能である,力覚フィードバック機能を導入することで,より効果的な訓練が実施できるかどうかの検討を行った.また,仮想訓練環境内に表示される腕の動きの表示機能の有効性についても考察した.その結果,表示を見て腕を動かすこと,反力を感じながら動作をすることで,より正確に動作をすることができた.
著者
飯田 拓也 梶山 朋子 大内 紀知 越前 功
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.97, no.1, pp.75-84, 2014-01-01

書籍の表紙は直観的に本のイメージを与えるだけでなく,書籍購入前の検索や購入後の書棚散策では大きな指標となっている.一般的に,出版書籍の表紙は,作者や出版社の意思を反映しデザインされるため,読者の印象が反映されにくい.また,近年普及が進んでいる電子書籍コンテンツの中には,表紙が提供されなかったり,同一デザインの表紙が用いられるものが存在し,表紙画像をベースとした書籍検索や書棚散策が考慮されていないという問題があった.そこで,本論文では,書籍表紙画像の自動生成を目的として,読者の印象を反映させた表紙画像色の抽出手法を提案する.具体的には,人間の内面的な性質や状態を表す形容詞と色の関係性に着目したデータベースを構築し,書籍本文と感想文から表紙色を抽出する手法を提案する.被験者20人による表紙画像の描画による実験と,被験者15名による書籍表紙色の選択による実験を行った結果,本手法は文章量に依存せず色抽出を行えること,読書後に読者の感情が揺れ動く小説において特に有効であること,実際に出版されている書籍の表紙よりも読者の印象を反映できることを確認した.
著者
清水 拓也 土方 嘉徳 西田 正吾
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.3, pp.538-550, 2008-03-01
被引用文献数
9 2

現在,商用Webサイトで利用されている推薦システムの多くは,協調フィルタリングを用いている.従来の協調フィルタワングによる推薦方法は,推薦の精度を向上させることに重点を置いて開発されてきた.そのため,既に知っているアイテムが多く推薦されるという問題があった.この推薦は,好みのアイテムをリストアップしてもらうことだけを考えたときには良い推薦といえるが,ユーザの満足度を考えたときには発見性の欠如のために必ずしも良い推薦とはいえない.本概究では,ユーザがどのようなアイテムを知っているかという情報をユーザから獲得し,この情報を用いたいくつかのアルゴリズムを提案する.これらのアルゴリズムは,ユーザの知らない好みのアイテムがどれだけ推薦されるかを示す特性であるNoveltyを向上させることを目的としている。本研究では,ユーザがどのようなアイテムを知っているかという観点でのユーザ聞,アイテム間の類似度を計算し,ユーザが知らないであろうアイテムを推測する.この方法と従来の嗜好に基づく協調フィルタリングを組み合わせることで,ユーザが知らない好みと思われるアイテムを推薦する.
著者
井ノ上 寛人 小野田 望 佐藤 美恵
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.3, pp.753-761, 2013-03-01

文字のデザインは,ICT技術の発達に伴い,自動化及び多様化しつつある.視覚的効果を考慮して文字をデザインすることをレタリングなどというが,そのデザインには,線の太さなど,フォントを種別する基本要素の他に,遠近法や絵画的奥行手掛りに基づいた高次の要素がある.しかし,奥行表現を伴うレタリング文字のデザイン要素は多い上,専門のデザイナがどのような観点や原則に基づいて文字に装飾を施しているかは十分に検討されていない.そのため,奥行表現を活用するなど,構造が複雑なレタリング文字を工学的にデザインする上で必要とされる知見は非常に乏しいのが現状である.これらの背景から,本研究は,奥行表現を伴うレタリング文字のデザイン原則について整理することを目的に,印刷メディアから収集した文字試料を特徴分類した.調査の結果,収集した試料は12パターンに分類されるとともに.「陰」と「影」を組み合わせた表現は禁則的であることなどが示された.また,これらの原則は,映像やWebコンテンツなど,他の情報通信メディアにおいても成り立つと考えられた.
著者
坂本 真貴人 藤井 昭宏 田中 輝雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.97, no.3, pp.405-413, 2014-03-01

さまざまな科学技術計算で用いられる行列行列積計算の高速化手法の一つに,Strassenのアルゴリズムがある.これは1回の適用で計算量を約7/8に削減するアルゴリズムである.また,このアルゴリズムは再帰的に適用することができ,段数(Strassenの適用回数)を増やすことで計算量をO(N^3)からO(N^<log_2 7>)まで削減できる.高速化のためには,計算機環境に合わせて適切な段数を選択する必要がある.適切な段数は行列サイズごとに決まるのでチューニングに多くの時間を要する.本研究では,線形代数ライブラリATLASをベースとしたStrassenの段数を自動チューニングする行列積計算ライブラリSAT Lib(Strassen Auto Tuning Library)を試作した.SAT LibではStrassen及びATLASの特性を利用し,チューニングにかかる時間を削減する.SAT Libの評価を行った結果,全行列サイズを計測する場合に比べXeon X5660上で約1/61,Intel Core i7 2600上では約1/53までチューニング時間を削減できた.
著者
藤澤 順也 唐山 英明 廣瀬 通孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.11, pp.2616-2623, 2008-11-01
被引用文献数
3 1

計測手法としてEEG (electroencephalogram:脳波)を採用した,運動想起を用いたBCI (Brain-Computer Interface)システムを開発した.従来のBCIシステムはその低信頼性とビットレートの低さから主にコンピュータスクリーン上での制御が行われてきたという問題点を挙げ,実世界でのアプリケーション構築の架け橋として,より実世界に近い環境のVR空間でBCIシステムが構築できるかを検証した.右手・左手の運動想起時の脳波は単試行で判別され,3人の被験者で平均80%程度の正答率が得られ,実物体制御への動機付けとでき得る結果が得られた.また,被験者の訓練の負担軽減の考察を行った.訓練されていない被験者に対し,正答率の向上・訓練負担軽減が可能であることをCommon Spatial Patternで抽出された空間パターンとSN比の推定であるr^2の分布を比較することにより示すことができた.
著者
豊田 真智子 櫻井 保志 石川 佳治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.7, pp.1058-1070, 2011-07-01
被引用文献数
1

本論文では,データストリームにおけるcross-similarityの問題を定義する.本論文の目的は,データストリームから類似する部分シーケンスペアを検出することである.シーケンス間の類似度を測定する距離尺度には,時間軸上でのスケーリングを考慮することができるダイナミックタイムワーピング(DTW:Dynamic Time Warping)距離を利用する.我々の提案するCrossMatchは,厳密にDTWに基づいた手法であり,データストリーム処理に適したワンパスアルゴリズムである.DTWを用いた純粋なアルゴリズムと比べて,CrossMatchは計算コストとメモリ使用量の大幅な低減化を実現する.理論的な分析を行い,提案アルゴリズムが精度を犠牲にすることなく類似する部分シーケンスペアを検出することを示す.また,実データと人工データを用いた実験から,CrossMatchがインクリメンタルにcross-similarityを検出することが確認された.
著者
岡本 昌也 柳井 啓司
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J97-D, no.8, pp.1237-1249, 2014-08-01

近年,ウェアラブルカメラと呼ばれる頭や胸などに装着し撮影するカメラの普及に伴って,一人称視点の映像が多く撮られるようになってきている.本研究では,一人称視点映像の実用的な利用の一つとして,道案内映像としての利用を考える.一人称視点映像の移動映像を入力として,映像中の道順が分かるようシーンの重要度に応じて動的に再生スピードを変化させた要約映像を自動生成することを目的とする.要約映像を生成するために,自己動作分類と横断歩道検出という二つの処理を行う.自己動作分類は,映像撮影者の行動を“前進”,“停止”及び“右折”,“左折”の四つに分類する.横断歩道検出は,映像中に出現する横断歩道を検出することで,映像中の交差点や分岐点を推定する.要約映像の生成は,自己動作分類と横断歩道検出の結果を統合し,動的に再生速度を制御することによって行う.実験では,横断歩道検出の精度実験及び自己動作分類の精度実験を行い,その有効性を検証した.映像3本に対して提案手法の要約映像を生成して被験者10人による比較評価実験を行い,横断歩道検出と自己動作分類の両方を用いた提案手法が他のベースライン手法より優れていることを示した.
著者
岡村 寛之 立石 和也 土肥 正
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.89, no.8, pp.1729-1738, 2006-08-01

本論文ではウイルス増殖の時間的推移を確率過程で表現することにより,ウイルス感染予測を行うための統計モデルの構築を行う.特に,いくつかの仮定のもとでウイルス増殖過程が非同次ポアソン過程(NHPP)でモデル化できることを示す.NHPPによってウイルス増殖過程を記述する利点として,モデルパラメータの推定が容易である点と,ウイルス感染による影響を定量的かつ確率的に評価することが可能である点が挙げられる.具体的に,ここでは3種類のNHPPに基づいたモデルを扱い,それらが実際のウイルス感染データによく適合しており,感染予測に用いられる傾向曲線よりも予測精度の観点で優れていることを示す.
著者
山田 浩之 合田 和生 喜連川 優
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J97-D, no.4, pp.774-792, 2014-04-01

並列データ処理系であるHadoopにおいては,近年Hiveをはじめとする上位層ソフトウェアの充実が見られ,当該処理系は大規模データの解析基盤として広く用いられるようになりつつある.同時に,元来のMapReduceなるデータ処理に特化し対象データの全走査を前提とするという設計を見直し,データ処理の効率性を高めるべく,索引やパーティショニング等の各種のデータベース技術を取り込む方向性が見られる.本論文では,Hadoopをはじめとする並列データ処理系において,関係データベースエンジンで試みられているアウトオブオーダ型実行方式を拡張して適用することにより,データ処理の一層の高速化を目指す.アウトオブオーダ型実行方式を適用することにより,並列データ処理系の各々の計算機は,並列データ処理の実行時にタスク分解を行い,分解されたタスクにおいて自らの二次記憶並びにネットワークを介した他の計算機の二次記憶への入出力を行い,入出力の完了に伴い関連する演算を実行する.すなわち,並列データ処理系全体の入出力を非同期化する.データインテンシブな並列データ処理においては,入出力に性能が律速されることが多く,当該入出力を非同期化することにより,従来型の処理系に比して,特にデータセット空間の一部のデータを対象とするデータ処理において,飛躍的な高速化が期待される.本論文では,著者らが試作を行ったHadoopをベースとするアウトオブオーダ型並列データ処理系Hadooodeの構成法を明らかにするとともに,20台の計算機からなるクラスタマシンにおいて当該試作を用いて行った性能評価実験を示し,その有効性を明らかにする.