著者
原 信子 越智 寿美江 柴山 卓夫 多田 敦彦
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.166-170, 2009

<p>肺容量減少術を行って7年が経過する慢性閉塞性肺疾患患者に対し,在宅における運動状況の聞き取り調査を行った.内容は歩行,買い物,下肢筋力トレーニング等であり7年間変化がなかったが,歩行数は当初1日に2万歩程度であったものが,術後3年目から1万歩程度に,7年目には7500歩程度と減少していた.運動の継続には公園での歩行,屋外での趣味,友人との外出,時間的余裕などの要因が有利に働いていたことがうかがわれた.</p>
著者
加賀谷 斉
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.9-12, 2011-06-30 (Released:2016-07-05)
参考文献数
14

嚥下と呼吸は互いに影響を及ぼし合うため,摂食・嚥下障害患者は呼吸リハビリテーションが適用できることが多い.痰や誤嚥物の排出には末梢肺領域ではポジショニングやスクイージング,比較的中枢の気道では咳嗽やハフィング,咳嗽介助などが用いられる.また,口すぼめ呼吸,嚥下パターン訓練,頸椎や上肢の関節可動域訓練,シャキア訓練,四肢や体幹の筋力強化訓練,日常生活活動訓練なども行われる.
著者
照井 佳乃 岩倉 正浩 川越 厚良 大倉 和貴 菅原 慶勇 高橋 仁美 上村 佐知子 佐竹 將宏 塩谷 隆信
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.59-64, 2017-09-01 (Released:2017-11-10)
参考文献数
28

【目的】体幹加速度から求めたLissajous Index(LI)を用いCOPD患者の歩行時体幹運動の左右対称性を評価しLIの有用性を検討した.【方法】対象はCOPD患者16名,健常者21名とした.3軸加速度計を腰部に装着し 10 mを2回歩行した.左右・上下加速度からLIを求め,COPD患者の呼吸機能,下肢筋力,片脚立位保持時間を測定した.COPD患者のLIの検者内信頼性と絶対的信頼性,LIと身体機能評価との関連を検討した.【結果】平均LIはCOPD患者34.2±19.2%,健常者21.1±14.1%で,健常者よりもCOPD患者において有意にLIが大きかった.COPD患者におけるLIの検者内信頼性が認められ,系統誤差はみられなかった.COPD患者のLIは片脚立位保持時間と有意な相関を認めた.【結論】COPD患者における歩行のバランス能力評価として体幹加速度波形を用いたLIの有用性が示唆された.
著者
西口 博憲 後藤 英介 坂田 典史
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.210-213, 2013-08-31 (Released:2016-01-26)
参考文献数
11

高齢者の急性呼吸不全の管理におけるNPPV(Noninvasive Positive Pressure Ventilation)の有用性,成否の予測因子を検討するため,NPPVを行った80歳以上の31症例を後ろ向きに検討した.高齢者においても,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease: COPD)急性増悪や心原性肺水腫では高い成功率を示し,基礎疾患の重要性が示唆された.臨床的な数値パラメーターの検討では,P/F ratio,SAPS (Simplified Acute Physiology Score)-Ⅱなどの一般的指標は有用性が低かったのに対し,血清アルブミン値がNPPV成功例で失敗群に比較して有意に高値であり,高齢者でのNPPVの成否および予後予測に重要である可能性が示唆された.
著者
弦間 昭彦
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.82-87, 2015-04-30 (Released:2015-09-11)
参考文献数
12

肺非小細胞癌においては,分子標的治療研究が進み,多くの薬剤の開発がなされている.その中で,多くの問題点も浮かび上がっている.耐性機序,薬剤の使い分け,併用の在り方,個別化の方策など,枚挙に暇が無い.特に,治癒への治療戦略が視野に入ってきており,癌の多様性に基づく耐性獲得を想定した際,併用療法が一つの候補と言える.また,異なる視点での治療標的の併用が考えられる.間質との関係,免疫修飾,代謝の制御,ゲノム不安定性の制御,幹細胞へのアプローチなどが,現時点で候補となる標的といえる.
著者
石田 直
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.245-249, 2011

肺炎は高齢者における主要な死因の一つであり,肺炎球菌は高齢者肺炎の最も多い原因菌である.23価の肺炎球菌多糖体ワクチンは,高齢者の侵襲的な肺炎球菌による感染症リスクを減少させ,死亡率を低下させることが内外の検討で報告されている.現在,日本での高齢者の接種率は欧米に比してきわめて低く,これを向上させるためには,医療者および国民への啓蒙と自治体の公費負担制度の導入が必要である.
著者
石崎 武志
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.217-222, 2008-12-29 (Released:2016-12-28)
参考文献数
11

高齢者拘束性肺疾患では,種々の並存疾患や吸気制限のため最適の薬物療法の維持や呼吸リハビリテーションおよびHOT療法の継続が困難の場合がある.家族の理解と社会の支援も求められるが,医療従事者としては上記治療法と生活指導を通して,高齢者拘束性肺疾患患者がかかえる諸問題に真摯に対応し,ADLとQOLを維持改善することを目的としたい.
著者
原田 さをり 原田 典子 古谷 正登 大池 貴行
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.111-113, 2015-04-30 (Released:2015-09-11)
参考文献数
6
被引用文献数
1

高頻度胸壁振動による排痰補助装置であるスマートベストの導入により,主として家族が必要に応じて定期的に排痰を行うことができるようになった.導入期は,膿性痰が減るなど痰の性状に良好な変化がみられ,CRPは6.6±5.6mg/dlから0.3±0.1mg/dlへ低下した.また訪問看護の回数・日数が減少し,入院回数は0回となった.その結果,医療費2,178,230円(29.8%)の減額に繋がった.スマートベスト導入は,気管切開下人工呼吸換気(TPPV)施行中の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者における,適切かつ定期的な排痰を可能にした.スマートベストは呼吸器感染症の予防や全身状態管理に効果的な排痰補助装置である可能性が示唆された.
著者
川山 智隆 田尻 守拡 木下 隆
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.127-132, 2013-08-31 (Released:2016-01-26)
参考文献数
14

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の病態把握にしばしば気流制限の程度が用いられる.しかし,気流制限の程度は,COPD患者の生活の質(QOL)や予後を反映すべき重症度と必ずしも一致しない.一方,患者の臨床症状や呼吸困難感およびQOLの程度は予後予測因子の一つとして知られる.COPD assessment test(CAT)は,①咳,②喀痰,③息苦しさ,④労作時息切れ,⑤日常生活,⑥外出への自信,⑦睡眠,⑧活力の8項目で患者のQOLを総合的に半定量でき,従来の質問票に比較して簡便で安価である.2011年度版のGlobal Strategy for Diagnosis, Management, and Prevention of COPDドキュメントでは,CATは,呼吸困難レベル,%1秒量や過去の増悪頻度と同様に,症状緩和あるいは将来リスク軽減を予測でき,治療戦略選択に考慮するように推奨されている.
著者
一和多 俊男
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.113-119, 2010-10-31 (Released:2016-09-01)
参考文献数
7

健常者5名とCOPD患者8名に対して,サプリメント無摂取,分岐鎖アミノ酸(BCAA)を含む粉末アミノバリュー®18 g(BCAA 8 mg)と粉末ポカリスエット®13.2 g(51.6 kcal)を運動30分前に投与した.BCAAの投与により健常者は3/5名,COPDは3/8名で乳酸濃度が低下した.COPD患者の8名中7名は血清BCAA濃度が運動前より後に高く,BCAAの吸収が健常者より遅いことが示唆された.
著者
吉田 一正 武田 賢一 河崎 雄司 西田 陽二 近藤 清彦 原田 智也 山口 耕介 山崎 章 井岸 正 清水 英治
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.204-207, 2012-10-31 (Released:2016-04-25)
参考文献数
7

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者のリハビリテーションでは下肢の活動量についての検討はされてきたが,上肢の活動量についての検討は十分とはいえず,COPD患者で上肢活動量の評価方法は確立されていない.COPD患者(17人)の上肢の活動量,動作の障害程度をActiwatch 2 とPFSDQ-Mで評価し,呼吸機能,呼吸筋力,6-minute pegboard and ring test(6-minute PBRT)で測定される上肢運動能等との関係を調べた.6-minute PBRTでのリング数とActiwatch 2 のカウント数との間に正の相関(r=0.53, p<0.05)を認めた.6-minute PBRTは上肢の活動量のサロゲートマーカーとなり,呼吸リハビリテーションを考えるうえで,上肢活動量の推測とリハビリテーションの効果判定に有用である可能性がある.
著者
石川 悠加
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.72-76, 2015-04-30 (Released:2015-09-11)
参考文献数
23

機械による咳介助(mechanical insufflation-exsufflation: MI-E)は,咳機能低下に対する唯一の補助として,最近の国内外のガイドラインに推奨される.下気道の痰の移動だけでなく,上気道のクリアランスを維持するクリティカルな手段とされる.MI-Eを使用することにより,コントロール群に比べて,抜管後の再挿管率やICU滞在日数を減らす効果がある.また,自然の咳より腹圧を上げずに排痰できるため,腹部術後の肺合併症予防にも使用できる.一方,MI-Eの高い陽圧陰圧による声帯や咽頭喉頭の閉鎖も観察されることがわかった.そこで,MI-Eに際して,呼気時に高い流量を得るための至適圧の検討や患者及び医療スタッフの習熟が重要となる.最近,咳の最大流量(cough peak flow=CPF)表示,吸気呼気の高頻度振動,咳トリガ,吸気流量調節ができる新たな機種が市販された.これまでのMI-E機器で効果が不十分であった患者群に対しても,CPFを高める新たな機器条件の検討やチーム医療による工夫を含めた臨床研究が求められる.
著者
黒澤 一
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.87-88, 2007-08-31 (Released:2017-04-20)
参考文献数
8

呼吸理学療法の効果に関して生理的な検証を目的とし,用手的呼吸介助手技を慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に行った.呼吸苦は緩和され,すべての肺気量は有意に減少したが,双方の変化量間の相関に有意性はみられなかった.口すぼめ呼吸時の呼吸抵抗を測定したところ,COPD重症者ほど抵抗が低下することがわかった.口すぼめ呼吸時に軟口蓋が鼻腔を塞ぐことを確かめた.呼吸理学療法の検証作業は今後も重要と考える.
著者
濱田 麻紀子 植田 聖也 阿部 聖裕 渡邉 彰
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.250-253, 2011-12-28 (Released:2016-07-05)
参考文献数
8

当院に外来通院中の安定期COPD患者16名(男性13名,女性3名,平均年齢70.0±9.7歳)を対象に,運動習慣測定器を用いて,1日の歩数と栄養状態・呼吸機能・ADL・運動耐容能・HRQOLとの関連を検討した.平均歩数4,000歩/日以上の群(H群8名)と4,000歩/日未満の群(L群8名)間で各項目について分析した結果,H群において%FEV1.0,TP値,Alb値,Shuttle Walking Test Distance(SWTD)が有意に高値を示した.また,歩数とSWTDとの間で,強い相関関係(r=0.79)がみられた.さらに,在宅用NRADLの全項目,SF-36v2の,PH(身体機能)・GH(全体的健康感)の2項目でH群が有意に高値を示した.以上より,安定期COPD患者において,1日の歩数を測定することは,運動耐容能やHRQOL等を推測する簡便で有用な一手段になりうる可能性が示唆された.
著者
石原 英樹
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.197-198, 2015-08-31 (Released:2015-10-06)

COPD患者の在宅ケアには,薬物療法のみならず,包括的なアプローチが必要である.呼吸不全に対する代表的な在宅呼吸ケアメニューの一つである在宅酸素療法は,わが国でも広く普及・定着している.一方,高二酸化炭素血症を伴う患者の低酸素血症に対する治療は,酸素療法を中心に行われてきたが,肺胞低換気を認める患者には,酸素療法だけではなく,何らかの換気補助療法の必要性が指摘されていた.近年,高二酸化炭素血症を伴う患者に対する換気補助療法として非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)が普及しつつある.NPPVには,従来の人工呼吸法にない簡便性・早期導入の容易さなどの利点があり,在宅NPPV症例数は急増傾向にある.また,円滑な在宅医療継続のためには,地域医療連携が必要である.地域とのネットワーク形成によって,医療・福祉の両面から総合的に支援することが可能になる.
著者
松本 忠明
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.352-358, 2012

帝人在宅医療株式会社では,東日本大震災発生直後から被災地をはじめ,停電エリアの在宅酸素療法患者への支援活動を実施した.震度5弱以上の被災地には約2万5,000人に及ぶ当社酸素濃縮装置の使用者がおり,地震発生直後から災害対応支援システム(D-MAP)を活用した安否確認を開始.仙台に災害対策本部,東京に災害支援本部を設置して,全国から応援要員の派遣や酸素濃縮装置,酸素ボンベの緊急配送を行い,避難所や医療機関で酸素療法が継続できる体制を整備した.今後の課題としては,「地震災害対策マニュアル」の改訂を進めるとともに,緊急時の携帯用酸素ボンベへのスムーズな移行,低流量で乗り切るための呼吸リハビリテーション指導など,患者指導の支援があげられる.加えて,災害時支援における行政,医療機関,在宅酸素事業者の連携体制の確立が重要である.
著者
横山 彰仁
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.280-283, 2012-12-28 (Released:2016-04-25)
参考文献数
13

近年の吸入ステロイド薬の普及に伴い,気管支喘息は慢性疾患のなかで最も死亡率が減少した疾患となっている.一方では,喘息による死亡の9割近くが65歳以上の高齢者であり,本邦の高齢化率は年々増加している点から,高齢者喘息への対処が重要となっている.高齢者は加齢変化や多彩な併存症,個人差が大きい点で若年者とは異なる対応が必要となる.個人の身体機能,併存症,内服薬,認知機能,精神心理,社会機能,栄養といった生活機能を総合的に評価することも必要であり,多職種による対応が重要となる場合も少なくない.治療方針の第一は治療の個別化であり,ガイドラインどおりの診療が必ずしも可能でないことも多い.吸入に固執せず,また副作用を極力避けつつ,内服薬や貼付薬による治療がより良いコントロールにつながる場合も少なからずある.本稿では高齢者の特徴に基づいた喘息診療のポイントについて述べた.
著者
藤本 圭作
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.77-81, 2012-06-30 (Released:2016-04-25)
参考文献数
16

喘息の管理は大きく変遷した.トータルコントロールを目指して治療をステップアップし,健常人と変わらない日常生活を送ることと将来のリスクを減らすことが治療の目的である.このため,症状や呼吸機能だけでなく気道炎症も客観的な指標としてコントロール状況を把握すること,また吸入療法の継続指導による適切な吸入手技の修得とアドヒアランスの向上が重要である.また,治療に対する反応性が不良な症例に対しては禁煙の徹底,環境整備,長時間作用性抗コリン薬(tiotropium)の併用,デバイスや吸入粒子径の異なる吸入薬への変更,新規治療薬である抗IgE抗体(オマリズマブ)の追加治療,合併症に対する治療の併用などを考える必要がある.
著者
門田 淳一
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.284-287, 2012-12-28 (Released:2016-04-25)
参考文献数
18

2011年わが国において策定された医療・介護関連肺炎(NHCAP)診療ガイドラインでは高齢者医療の倫理的側面を含んだ治療区分という分類が導入され,抗菌薬を選択する際の基準となっている.しかし,本ガイドラインの基になった米国の医療ケア関連肺炎において「耐性菌のリスクを有するので広域抗菌薬で治療する」ことと生命予後とは関連しないことが示され,わが国においてもNHCAPを含む高齢者肺炎の予後不良因子は誤嚥性肺炎であり,抗菌薬による治療の失敗とは関連がないことが明らかとなった.すなわちこれらのガイドラインに沿った抗菌薬療法が予後改善に直結するかどうかは疑問であり,特にわが国の超高齢社会においては予防を含めた包括的な戦略が重要である.今後はNHCAP・誤嚥性肺炎に対する抗菌薬療法や胃瘻を含めた経管栄養の是非などについて,終末期医療としての側面を考えながらわが国独自のエビデンスを構築する必要がある.