著者
野見山 順子 彦田 絵美 山崎 智司 小野寺 美琴 諸星 総一 小坂 好男 秋吉 恵蔵 小杉 依子 浅野 明日香 桂 秀樹
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.42-48, 2010-06-30 (Released:2016-09-01)
参考文献数
17
被引用文献数
3

近年,吸入指導の重要性が指摘されているが,院外処方せんを応需した薬局でどのように吸入指導が実施されているかはあきらかではない.地域の保険調剤薬局(以下,薬局)での吸入指導の実態を調査するため,八千代市内の薬局に勤務する保険薬剤師(以下,薬剤師)を対象にアンケート調査を行った.結果は,薬局内で指導方法の統一がなされていない,十分な時間がかけられていないなど必ずしも十分に指導が行われていない状況であった.今後,地域で吸入薬の指導方法を標準化し,適切な指導方法を普及し共有する必要性が示唆された.
著者
西川 正憲
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.53-58, 2012-06-30 (Released:2016-04-25)
参考文献数
29

23価肺炎球菌多糖体ワクチン(PPV23)接種は,65歳以上のCOPD患者および65歳未満で対標準1秒量が40%未満のCOPD患者の肺炎の発生を低下させ,介護施設居住者の肺炎球菌性肺炎の発症を64%減少させ,肺炎球菌性肺炎による死亡率を低下させる.PPV23は,3価不活化インフルエンザワクチン(IV)との併用により,PPV23やIVの単独投与と比較して,寝たきり高齢者の肺炎による入院を半減させ,高齢者の肺炎医療費を抑制し,COPD患者の感染性増悪を減らし,外来通院する慢性疾患を有する高齢者の肺炎による入院を減少させ,高齢者の医療費削減につながる.わが国でのPPV23の認知度は米国に比して低い.PPV23の普及には,接種費用の公費助成とともに,日常診療における適切な病診連携の構築による医療者の啓発と患者教育が大切である.私たちが「元気な高齢社会」を享受するためには,IVとともにPPV23接種も積極的に推奨すべきと考えられる.
著者
長谷川 高志
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.185-189, 2022-04-28 (Released:2022-04-28)
参考文献数
7

1990年代半ばから遠隔医療の実用化が進み,専門医が他の医師を支援する遠隔画像診断,遠隔から患者を診察するオンライン診療や遠隔モニタリングなどが発展した.Doctor to Doctor(DtoD)形態の遠隔画像診断では診療画像等の共有により専門医の指導を行い,医師偏在地域でも高度な診療が可能になる.オンライン診療などのDoctor to Patient(DtoP)形態で,テレビ電話による診察や心臓ペースメーカー等のデバイスの遠隔モニタリングで慢性疾患患者の診療を行う.継続すべき診療からの脱落の抑制,予後改善等の効果がある.医師法や医療法下での適正な診療の実施,診療報酬制度による安定した運営などは整備途上である.ICTならではの新形態の診療手法の出現も考えられ,制度整備の課題は広がっている.呼吸ケアのリハビリテーションには,オンライン診療など遠隔医療のみ可能な「持続のための診療手法」が有効であり,推進には医療技術の定量的な評価の確立が重要である.
著者
鵜澤 吉宏 金子 教宏
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.358-363, 2005-05-31 (Released:2017-11-10)
参考文献数
9

米国では国家資格として呼吸療法士が存在し,教育機関やプログラム,国家試験が整備されている.一方,本邦には3学会合同呼吸療法認定士制度があり,コメデイカルを対象に呼吸療法への興味と関心を広げる役割を担っている.両者は類似しているが,その役割と責任はまったく異なり安易な比較対照はできない.今後,本邦の呼吸管理の質と安全を向上するには,前者のような教育システムなどの整備が必要である.
著者
乳井 美樹 田中 一正
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.427-431, 2001-03-31 (Released:2018-08-07)
参考文献数
17

慢性閉塞性肺疾患患者の航空機内労作における経皮的酸素飽和度(SAT)測定を経験した.日常生活においてはSATは96%を保持し,運動負荷でもSATの低下を認めず日頃ゴルフを楽しんでいる患者であるが,航空機内ではSAT 85%前後,機内移動時のSATは75%と著しい低酸素血症を示した.以上より慢性閉塞性肺疾患患者の航空機での移動には危険性を伴うことが確認された.
著者
藤本 圭作
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1-6, 2020-08-31 (Released:2020-09-02)
参考文献数
17

健康状態をモニタリングするための非侵襲的ウェアラブルの開発を産官学連携で行ってきた.脈波には多くの生体情報が含まれており,不整脈,呼吸数,自律神経活動の評価,循環不全の予兆,活動量の評価,ストレス管理,睡眠呼吸障害のスクリーニングなどの応用が報告されている.我々は,①脈波に重畳している呼吸成分から胸腔内圧変化を測定し,スパイロメータと組み合わせ,動肺コンプライアンスの測定,②脈波のゆらぎから自律神経活動を評価し,睡眠時無呼吸低呼吸の判定,睡眠の質の評価および睡眠構築の判定,③Fiber Bragg Grating(FBG)センサを用いた血圧,血糖値測定の試みについて解説する.また,膜型感圧センサを敷き詰めたシート型の機器を用いて,④無拘束タイプの睡眠時無呼吸症候群スクリーニング機器の開発および同機器を改良した在宅見守りシステムの開発を行ってきたので解説する.最後に医療者間のコミュニケーションツールについて紹介する.
著者
荻野 智之 玉木 彰 解良 武士 金子 教宏 和田 智弘 内山 侑紀 山本 憲康 福田 能啓 道免 和久
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.124-130, 2014-04-30 (Released:2015-11-13)
参考文献数
29

【目的】健常成人を対象に,体幹前傾角度や上肢支持姿勢の違いが肺気量位,胸腹部呼吸運動,呼吸運動出力に及ぼす影響を調査した.【方法】測定肢位は,安静立位,体幹前傾30°位,60°位,各体幹前傾姿勢での上肢支持(on handとon elbow)の7姿勢とした.肺気量位の測定は呼気ガス分析器を用い,胸腹部呼吸運動はRespiratory Inductive Plethysmograph(RIP)を用いて測定した.さらに呼吸運動出力として各姿勢時のairway occlusion pressure 0.1 s after the start of inspiratory flow(P0.1)を測定した.【結果】上肢支持位で肺気量位は有意に増加し,胸郭も拡張位となった.しかし,同じ体幹前傾角度での上肢支持による有意な変化や上肢支持姿勢の違いによる有意な変化はみられなかった.P0.1も姿勢による有意な変化はみられなかった.【結語】健常成人男性においては,上肢支持位で肺気量位は増加し,胸郭も拡張位となるが,上肢支持と体幹前傾姿勢による加算的効果や交互作用は認められないものと考えられた.
著者
杉野 圭史 海老原 覚 本間 栄
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.194-199, 2016-08-31 (Released:2016-09-15)
参考文献数
17

間質性肺炎患者では,労作時の呼吸困難による身体活動性の低下がdeconditioningをもたらし,運動耐容能の低下,QOLの悪化,不安やうつ状態に繋がると考えられる.これら運動耐容能の低下,QOLの悪化,不安やうつ状態に対して,呼吸リハビリテーション(特に運動療法)による改善効果が期待できる.間質性肺炎患者を対象とした5つの無作為化比較試験のシステマティックレビューにより,呼吸リハビリテーションは運動耐容能(6分間歩行距離の延長)の中等度改善,呼吸困難およびQOLの弱いながらの改善が示されており,推奨されている1).間質性肺炎(特に特発性肺線維症)および気腫合併肺線維症患者に対して,呼吸リハビリテーションを行うに当たり,呼吸器内科医は,豊富な経験と知識を有するリハビリテーション科医師および理学療法士の協力が必要であり,チームによる定期的なミーティングを行うことが重要である.さらに,患者選択基準や運動療法の頻度や強度など多面的な解析により,実施方法について詳細な検討を行い,重症度に合わせた最適な呼吸リハビリテーションプログラムを作成することも必要不可欠である.その結果,これらの患者に対して安全でより効果的な呼吸リハビリテーションを導入することが可能になると考える.
著者
関 雅文
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.174-178, 2019-11-30 (Released:2020-01-28)
参考文献数
4

肺炎はガイドライン2017において,市中肺炎,院内肺炎,医療・介護関連肺炎がいったん統合される形で診療されることになった.但し,A-DROPシステムがSOFA/qSOFAシステムと併用されて重症度の判定に使用され,定型・非定型肺炎の鑑別法も引き続き使用される.抗菌薬はペニシリン系薬を軸とする基本的考え方は今後も同様であり,インフルエンザ診療でのワクチンなど,予防的対応にも重点を置くことが改めて確認された.
著者
杉野 圭史
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.190-194, 2022-04-28 (Released:2022-04-28)
参考文献数
22

間質性肺炎診療において,適切な診断と重症度や予後リスク評価を考慮した早期治療介入は臨床上,最も重要なポイントである.坪井病院は,2018年1月より福島県初の間質性肺炎・肺線維症センターを開設した.最終診断は,間質性肺炎を専門とする臨床医,病理医,放射線科医による合議が重要で,当センターでも定期的に実施している.特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis; IPF)の薬物治療に関しては,日本の重症度分類で最軽症のIPF患者のうち,6分間歩行試験時の最低SpO2 90%未満の存在や海外の重症度分類でGAP stage II以上の患者は,明らかに予後不良であり,早期から抗線維化薬を導入することにより,努力性肺活量の低下抑制効果を得ている.最近では,全身性強皮症や進行性線維化型間質性肺疾患の患者においても,ニンテダニブの有効性と安全性が証明された.但し,どのタイミングでニンテダニブを導入するべきかについては,今後も議論を要する.
著者
伊田 瞳 須賀 達夫 逸見 和範 原 史郎 青木 康弘
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.207-210, 2022-04-28 (Released:2022-04-28)
参考文献数
14

【背景と目的】吸入療法は薬剤師による指導を始めとした吸入指導介入が重要である.指導介入は複数回に渡り同様の内容で行われることが望ましいが,薬剤師による指導介入の回数と内容を検討した報告はこれまでにないため,本研究ではこれを報告する.【対象と方法】埼玉県北部を中心とした薬剤師会を通し保険調剤薬局薬剤師にアンケートを送付した.【結果】75名から有効な回答が得られ,内21名は1患者当たりの吸入指導回数を1回以下,54名は2回以上と回答した.両群を比較すると2回以上と回答した群は有意に吸入デバイスの扱いに自信を有していた.また2回の吸入指導内容を比較すると,2回目指導時は1回目指導時に比べ有意に指導時間が短く,指導項目数が少なく,デバイスや説明書を用いた説明を行わず,指導者や患者による実演を行っていなかった.【結語】本研究結果を機に,同地域では定期的な勉強会やより密な医薬連携を図るべく研究会が設立された.
著者
越久 仁敬
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.172-176, 2022-04-28 (Released:2022-04-28)
参考文献数
20

呼吸困難(息苦しさ)とは,呼吸に伴う違和感,不快感または苦痛感である.呼吸困難感の大きさは,基本的には呼吸努力の大きさによって決まる.くわえて,努力に見合う換気量が得られているか否かも関係し,さらには,低酸素血症や高炭酸ガス血症も呼吸努力の大きさとは独立して呼吸困難感を生じさせる.呼吸努力の大きさ,低酸素血症,高炭酸ガス血症といった情報は,脳幹において統合され,上行覚醒系を通って大脳辺縁系や大脳皮質に伝えられ,それらの刺激の大きさをどのくらい大きいと感じるかという感度(息苦しさの感度)により,最終的な呼吸困難感の大きさが決まる.したがって,呼吸困難に対処するためには,呼吸困難の知覚や日常生活への影響だけでなく,精神的な苦痛を考慮する必要がある.
著者
武田 広道 山科 吉弘 田平 一行
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.217-222, 2022-04-28 (Released:2022-04-28)
参考文献数
20

【目的】要支援・要介護後期高齢者の咳嗽力と呼吸機能,身体機能の関連を明らかにすること.【方法】要支援・要介護後期高齢者33名を対象とし,咳嗽時最大呼気流量(以下,CPF),肺機能,呼吸筋力,胸郭拡張差,最長発声持続時間,5 m歩行時間,握力,膝関節伸展筋力,片脚立位時間,Timed up & go test(以下,TUG)を測定した.統計解析ではCPFと呼吸・身体機能との相関分析を行った.また,CPFを従属変数,呼吸・身体機能を独立変数として重回帰分析を行った.【結果】CPFと肺活量,吸気筋力,胸郭拡張差,最長発声持続時間,5 m歩行時間,握力,TUGで有意な相関がみられた.重回帰分析では,吸気筋力,胸郭拡張差が有意な関連因子として抽出された.【結論】要支援・要介護後期高齢者の咳嗽力には胸郭可動性,吸気筋力との関連が認められた.
著者
高田 学 竹内 伸太郎 石川 悠加
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.131-136, 2014-04-30 (Released:2015-11-13)
参考文献数
18

神経筋疾患の非侵襲的陽圧換気療法(noninvasive positive pressure ventilation; NPPV)の覚醒時インターフェイスとして,マウスピースを活用した.マウスピース使用経験のある17名を対象に,導入と中止など使用状況を調査し,マウスピースの利点と問題点について検討した.導入は,覚醒時NPPVが必要になった時期であった.中止は,疾患進行によってマウスピースを使いこなすための体幹や頸部の運動機能や口唇の力が低下してきた時期で鼻プラグなどに変更した.マウスピースの利点は,視野が広く皮膚への侵襲がなく,自身でマウスピースをくわえたり離したりすることで,NPPVの開始と中断を自由にコントロールできることである.このため,NPPVの合間に飲食や会話がしやすい.しかし,マウスピースを口元から離しているときに低圧アラームを制御する工夫を要する.マウスピースによるNPPVは,適応や導入時期,使用方法により有効活用が可能である.
著者
鵜澤 吉宏 金子 教宏 田代 尚範 宮川 哲夫 田中 一正 押味 由香
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.67-70, 2007-04-27 (Released:2017-04-20)
参考文献数
11

3学会合同呼吸療法認定士が,資格取得後どのように呼吸療法へかかわっているかについて全国規模のアンケート調査を実施した.回答者の意見として資格の取得を通じた学習で知識の向上は得られたと感じているが,業務への反映が不十分であること,呼吸療法業務に従事していない者が多くみられた.本制度への今後の希望は資格制度の発展への期待が最も多く,続いて職場環境の充実,教育体制の確立などの意見もみられた.
著者
多田羅 勝義 石川 悠加 今井 尚志 河原 仁志 神野 進 西間 三馨 福永 秀敏
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.57-62, 2007

<p>国立病院機構所属施設では,平成17年7月1日時点で89施設に2164名の長期人工呼吸患者が在院しており,昨年度より約100名増加していることが判明した.この内363名は,10年以上人工呼吸を続けている患者で,最長は27年であった.疾患別にみると,筋ジストロフィー1156名,筋萎縮性側策硬化症402名,重症心身障害児者304名であった.使用人工呼吸器は74.5%がポータブル型で,人工呼吸方法は,気管切開が61.3%,非侵襲陽圧人工呼吸が37.1%で,半数以上がアシストコントロールモードであった.人工呼吸下での外出,入浴の実施率から患者QOL向上への配慮が伺われる一方,モニタリング実施率の低さ等,安全管理上の問題点が明らかになった.</p>
著者
茂木 孝
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.327-330, 2015-12-31 (Released:2016-01-26)
参考文献数
14
被引用文献数
2

呼吸器領域の患者教育は,包括的呼吸リハビリテーション内のコンポーネントとして位置づけられており,他の運動療法,栄養指導などと共に提供されるが,本稿では呼吸器に留まらず医療一般に必要な患者教育総論として概説する.近年の患者教育は,患者自身の自己管理をいかに向上させるかという点に重点が置かれている.その目標にあるのは患者の自己管理による適切な行動選択と実行である.そして患者の望ましい行動変容を教育・支援するのがわれわれ医療者の役割である.そのためには,単なる知識の伝達ではなく,患者の元々の健康に関する素養(ヘルス・リテラシーなど)とアドヒアランスにも考慮した教育・支援が必要となる.医療者自身が正確な情報を保持し,患者のニーズに合わせて適切に提供してこそ意味がある.患者の認知・教育状態を把握しながら,疾患や社会の将来までを見通した医療情報を提供するよう心がける必要がある.
著者
岩井 宏治
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.186-190, 2020-12-25 (Released:2020-12-25)
参考文献数
13

慢性呼吸器疾患患者における身体活動は予後に影響するため,いかにして身体活動を維持・改善させるかは重要な臨床課題である.我々は,身体活動量と運動耐容能,30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30テスト)には相互的な関係性が成立すると考え,運動耐容能に見合った身体活動量推定の可能性について検討した.結果,3つの因子にはそれぞれ関連があり,椅子1つあれば簡便に評価可能なCS-30テストから身体活動量が推定できる重回帰式(2.760-1.387×mMRC息切れスケール+288×CS-30テスト)が得られた.次に心機能に着目し,慢性閉塞性肺疾患患者(COPD)患者の運動耐容能と左室拡張障害,右室収縮期圧との関連性を検討した.結果,左室拡張障害の有無で運動耐容能に有意差は認めなかったが,心負荷を示唆する所見とは有意差を認めた.また,右室収縮期圧の上昇は,労作時酸素飽和度の減少,心拍数の上昇を惹起し,運動耐容能に関連する可能性が示唆された.
著者
白石 匡 東本 有司 杉谷 竜司 水澤 裕貴 藤田 修平 西山 理 工藤 慎太郎 木村 保 福田 寛二 東田 有智
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.453-459, 2021-06-20 (Released:2021-06-20)
参考文献数
24

【はじめに・目的】呼吸リハビリテーションにおいて,吸気筋トレーニング(IMT)の有効性は確立されつつある.しかし,横隔膜の動きを考慮した適正負荷圧の設定方法は確立されていない.本研究の目的は,横隔膜のトレーニングにおいて最も効果的な,IMTの負荷圧を検証することである.【方法】対象は健常男性20名.クロスオーバーデザインで実施.IMT負荷圧を最大吸気圧(PImax)の30%,50%,70%に無作為割付け,1週間の間隔をあけて異なる負荷圧で計3回IMTを実施.超音波診断装置(M-mode)にて最大吸気位から最大呼気位までの横隔膜移動距離(Maximum Diaphragm excursion: DEmax)を測定した.【結果】30%PImaxによるIMT実施でDEmax(r=0.31,p<0.05),IC(r=0.64,p<0.05)に有意な増加を認めた.50%PImaxにおいてはDEmax(r=0.82,p<0.01),VC(r=0.34,p<0.05),IC(r=0.74,p<0.05)に有意な増加を認めた.【結論】健常者に対するIMTでは,中等度負荷が最も横隔膜に対して効果がある可能性が示唆された.