著者
井上 純人
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.46-49, 2022-12-26 (Released:2022-12-26)
参考文献数
20

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は主症状である咳嗽や喀痰,息切れといった症状が非特異的であり,かつ緩徐な進行を示すことから,症状が加齢や疲労,感冒症状の遷延と誤認されやすい.さらに一般社会における認知度が低いため,鑑別診断として想起されにくいことから早期に診断されていない患者が多いことが推定されている.しかしCOPDが適切な管理をされずにいると,呼吸機能の低下,身体活動性の低下,さらには増悪による呼吸不全や全身性の合併症の併発といった様々な問題を生じることとなる.急速な高齢化が進む我が国において,COPDを早期に発見し,適切な治療につなげていくかは重要であり,更には呼吸機能だけではなく全身性の併存症にも着目して治療を検討していくことが求められる.COPD診断と治療のためのガイドラインの管理目標にある,運動耐容能と身体活動性の向上および維持を達成することは,高齢者が元気で長生きしていくために重要な要素である.
著者
禹 炫在 青木 秀樹 片岡 英樹 山下 潤一郎 吉武 孝敏 神津 玲
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.345-351, 2023-08-31 (Released:2023-08-31)
参考文献数
31

目的:高齢市中肺炎患者における身体活動量と入院関連能力低下(hospitalization-associated disability: HAD)の発生との関係,および身体活動量のカットオフ値を検討することである.方法:市中肺炎の診断にて,入院後48時間以内に呼吸リハビリテーションが開始された高齢患者を対象に,入院後の7日間に身体活動量を計測,1日当たりの身体活動量とHAD発生との関連とカットオフ値を調査した.退院時のBarthel Index合計点数が入院前より5点以上低下した場合をHADと定義した.結果:対象者95例(82[71-91]歳)のうち,33例(35%)にHADが発生した.単変量分析の結果,HAD発生には低活動と連続臥床時間の延長が説明因子であった.受信者操作特性分析の結果,1日当たりのカットオフ値は歩行時間12分,歩数1,112歩であった.結論:高齢市中肺炎患者はHAD発生率が高く,その発生に影響する身体活動量のカットオフ値は臨床現場での目標設定の指標となる可能性が示唆された.
著者
門脇 徹
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.260-263, 2022-09-30 (Released:2022-09-30)
参考文献数
13

COPD急性増悪によるII型呼吸不全に対する呼吸管理はNPPVが第一選択であり,ゴールドスタンダードである.一方,現時点ではエビデンスは不十分ながらも高流量鼻カニュラ酸素療法(High flow nasal cannula, HFNC)はその特長からCOPD増悪によるII型呼吸不全に対しても有利に働くことが予測され,実際に使用頻度が増加している.実臨床からの経験上は軽症の呼吸性アシドーシスでは非常に有用な呼吸管理法と考えられるが,NPPVとの棲み分けやHFNCを行わない基準等について今後エビデンスを蓄積していく必要がある.
著者
禹 炫在 青木 秀樹 片岡 英樹 山下 潤一郎 吉武 孝敏 神津 玲
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
pp.21-53, (Released:2023-01-06)

目的:高齢市中肺炎患者における身体活動量と入院関連能力低下(Hospital-acquired disability:HAD)の発生との関係,および身体活動量のカットオフ値を検討することである.方法:市中肺炎の診断にて,入院後48時間以内に呼吸リハビリテーションが開始された高齢患者を対象に,入院後の7日間に身体活動量を計測,1日当たりの身体活動量とHAD発生との関連とカットオフ値を調査した.退院時のBarthel Index合計点数が入院前より5点以上低下した場合をHADと定義した.結果:対象者95例(82 [71 - 91]歳)のうち,33例(35%)にHADが発生した.単変量分析の結果,HAD発生には低活動と連続臥床時間の延長が説明因子であった.受信者操作特性分析の結果,1日当たりのカットオフ値は歩行時間12分,歩数1112歩であった.結論:高齢市中肺炎患者はHAD発生率が高く,その発生に影響する身体活動量のカットオフ値は臨床現場での目標設定の指標となる可能性が示唆された.
著者
大村 一之 須賀 達夫 長田 知美 今 瑞季 鈴木 結香理 吉野 宗明 中村 美樹 根松 香織 原 史郎 青木 康弘
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.417-423, 2020-04-15 (Released:2020-04-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1

【背景と目的】閉塞性睡眠時無呼吸症のCPAP治療において,当院の検査技師は導入1週間後に電話連絡を行うなどしてアドヒアランス向上に努めてきた.CPAP継続群と脱落群の電話介入時に得られた訴えと,脱落群の脱落理由を比較検討したので報告する.【方法】対象はCPAP加療中の232例.導入1週間後の訴えを調査し,1年継続群と脱落群の中止理由,性別,年齢,BMI,ESS,AHI,各種睡眠変数,SpO2,3%ODI,周期性四肢運動障害指数(PLMI),体位およびREM依存性の有無,CPAP圧等を比較した.【結果】治療早期に多い訴えはマスクと鼻口症状で,治療中止は半年までに多く,脱落群の中止理由は入眠障害や鼻症状,違和感が多かった.また脱落群では有意にBMIとAHI,3%ODIが低く,平均SpO2,PLMIが高かった.【考察】治療後半年間は,入眠障害や鼻症状,違和感などに注意し,導入早期の訴えが中止理由に繋がる可能性も考慮して,電話などで早期に問題を抱える患者に介入していく必要がある.
著者
礒 千聡 井原 晶子 鈴木 亜美 三藤 雄介 中川 諒 林 涼 小池 康子 新 智美 新 謙一
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.202-205, 2018-05-01 (Released:2018-09-20)
参考文献数
9

77歳の重症慢性閉塞性肺疾患患者に対し,日常生活動作の呼吸困難軽減を目的に在宅にてHigh Flow Nasal Cannula(以下HFNC)を導入した.呼吸困難を伴う食事・入浴の際に使用し,SpO2の改善を認めた.継続使用における問題点として,機器運搬の煩雑さやカニューレのずれがあった.対策として小型の機種に変更し,延長回路を導入した.また,カニューレの固定性を高める為に,持続陽圧人工呼吸療法用ヘッドギアを併用した.HFNC導入4ヶ月後に悪性リンパ腫を併発し,その3ヵ月後に非侵襲的陽圧人工呼吸療法(以下NPPV)へ移行し,その後永眠した.HFNC期間中は体重を維持し,楽しみである入浴が可能な生活を継続できた.本症例より在宅でも安全なHFNC導入は可能であり,NPPV移行までの呼吸サポートとしての有用性が示唆された.
著者
山口 崇
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.177-180, 2022-04-28 (Released:2022-04-28)
参考文献数
20

呼吸困難は,がん・非がんに関わらず,緩和ケア対象患者において頻度の高い重要な症状である.国内外の各種診療ガイドラインにおいて,モルヒネをはじめとするオピオイドはがん患者・非がん患者の呼吸困難に対する症状緩和薬物療法の第一選択として推奨されている.しかしながら,これらのガイドライン推奨の根拠とされている臨床研究は試験デザイン上いくつかの懸念があり,堅牢なエビデンスとは言えない現状がある.またモルヒネ以外のオピオイドについては,臨床研究自体がかなり不足しており,モルヒネの代替薬となりうるのかに関する知見は不足している.また重要な課題として,背景疾患によるオピオイドの効果差に関しても十分な知見は積み上げられていない.このような背景から,呼吸困難に対するオピオイドに関する臨床研究を今後もより一層進めていき,臨床現場の道しるべとなるようなエビデンスを創出していくことが重要である.
著者
井上 登太 鈴木 典子
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.45-49, 2007-04-27 (Released:2017-04-20)
参考文献数
8

嚥下障害を示す症例においては,高い機能を保持している症例では上肺・中肺野異常影を示すものが多く,誤嚥性肺炎を診断困難にする要因の一つといえる.誤嚥性肺炎の胸部単純レントゲン診断においては,ADL,摂食食態,嚥下機能の評価にも注目する必要性がある.
著者
山川 梨絵 横山 仁志 武市 尚也 石阪 姿子 渡邉 陽介 横山 有里
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.110-114, 2012-06-30 (Released:2016-04-25)
参考文献数
13
被引用文献数
1

咳嗽時の最大呼気流速(CPF)における測定の信頼性と妥当性について,入院患者145名を対象に検証した.その結果,検者内,検者間の級内相関係数は,ともに0.97と優秀であった(p<0.05).また,CPF値と呼吸機能の各指標との間には,有意な正相関を認め(r=0.51~0.86,p<0.05),排痰能力とも密接な関連を認めた(F=37.0,p<0.05).よって,CPF測定は優れた信頼性を有し,咳嗽の強さや排痰能力を良好に反映する評価指標であることが明らかとなった.

1 0 0 0 OA 慢性呼吸不全

著者
茂木 孝
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.171-175, 2023-04-28 (Released:2023-04-28)
参考文献数
24

慢性呼吸不全は室内気で PaO2 が 60 Torr 以下という低酸素血症が1か月以上続く場合と定義される.その病態は肺高血圧・肺性心,呼吸筋疲労を中心として中枢神経系,栄養障害など多岐にわたる. 病態からみた慢性呼吸不全の管理ポイントは3つある.1つは低酸素血症と高炭酸ガス血症への対処であり,具体的介入が酸素療法および非侵襲的・侵襲的人工呼吸である.さらにこれらの管理に伴う臨床的問題への対処(モニタリング,アドヒアランスなど)が必要である.第2に栄養,代謝,臓器・筋肉障害への対処であり,介入内容は体重と栄養状態の管理,身体活動性・運動耐容能の向上・維持,および呼吸リハビリテーションである.第3にすべてに共通するのがセルフマネジメント支援である.近年新しい研究も報告されたが,残念ながら酸素療法の適用基準は40年前からほぼ進化していない.一方で新たなデバイスの研究も進んでおり適用拡大も期待されている.
著者
吉澤 孝之
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.162-165, 2023-04-28 (Released:2023-04-28)
参考文献数
11

呼吸困難は呼吸器疾患の終末期に最も多く出現しその対応に最も苦慮する症状である.非がん性呼吸器疾患終末期の難治性呼吸困難に対する緩和ケアは基礎疾患に対する標準的治療が最大限おこなわれることが必須条件である.標準的治療が最大限おこなわれてもなお呼吸困難が持続・悪化するようなら症状緩和のための非薬物療法を上乗せする.非薬物療法による緩和ケアをおこなっても症状緩和が困難な場合には,薬物療法としてオピオイドや抗不安薬の使用が考慮される.
著者
杉野 圭史
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.208-214, 2023-04-28 (Released:2023-04-28)
参考文献数
20

間質性肺炎では,労作時に著明な低酸素血症を呈することが多く,6分間歩行試験等でその実態を明らかにすることは大変重要である.また,急性増悪時には高度の呼吸不全を呈するため,使用法が簡便かつ患者の不快が少ない高流量鼻カニュラ療法が主流となっている.間質性肺炎は,労作時の呼吸困難による身体機能低下がディコンディショニングをもたらすため,呼吸リハビリテーションは改善効果が期待できる.特に顕著な胸郭の運動制限を認める上葉優位型肺線維症患者では,コンディショニングおよび低負荷から継続可能な運動療法を施行することが重要である.また,急性増悪合併時には,大量のステロイド投与などによる筋力低下や呼吸機能障害をのこす可能性が高いことから,早期からの呼吸リハビリテーションが必要となる.そこで今回,間質性肺炎患者に対する急性期および慢性期の酸素療法および呼吸リハビリテーションの現状と課題について述べたい.
著者
小野 央人 小林 武史 村上 知征 高橋 識至
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.245-251, 2023-04-28 (Released:2023-04-28)
参考文献数
20

【目的】身体活動性の定期評価と身体活動性向上のための指導を行っているCOPD患者へのCOVID-19流行の影響を明らかにする.【対象と方法】身体活動性の評価と指導を定期的に行っている安定期COPD患者42名(男性37名,平均年齢74.5±8.8歳)を対象とし,COVID-19流行前(2019年4月~2020年1月)と流行下(2020年2月~2021年2月)の身体活動量を比較した.また,定期評価月別の平均歩数の推移をCOVID-19流行前から流行下にかけて分析した.【結果】COVID-19流行前と流行下を比較して身体活動量に有意な変化はなかった.2020年3・4月においては,6ヵ月前と比較して平均歩数が減少していたが,6ヵ月後には流行前の水準に回復した.【考察】COPD患者において,COVID-19流行下に身体活動性の評価と指導を定期的に行うことで身体活動量の低下を抑制できた可能性がある.
著者
鳥井 亮 山口 雄大 畑 亮輔 樵田 千洋 樋口 周人 中元 洋子 吉井 千春 矢寺 和博
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.273-276, 2023-04-28 (Released:2023-04-28)
参考文献数
10

症例は74歳男性.3年前に労作時呼吸困難が出現し,当院を受診した.慢性閉塞性肺疾患(COPD)と診断し,長時間作用性抗コリン薬(LAMA)/長時間作用性β2刺激薬(LABA)配合薬による治療を開始した.しかし,徐々に自覚症状の悪化,呼吸機能の低下や労作時低酸素血症を認めたため,在宅酸素療法導入も検討された.COPDに対する呼吸リハビリテーション(呼吸リハビリ)としてケア・トランポリンを用いた音楽運動療法を毎週1回,9ヵ月間行ったところ,労作時呼吸困難は軽減し,mMRCは2から1,CATは22点から13点と改善を認めた.肺機能検査にてFEV1は 1.59 Lから 1.78 L,VCは 3.45 Lから 3.85 Lまで増加した.また,1日平均歩数は,4,000歩以上改善し,6分間歩行時の最低酸素飽和度は85%から91%と改善し,在宅酸素療法を導入しなくても日常生活が送れるようになった.
著者
小賀 徹
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.377-380, 2021-06-20 (Released:2021-06-20)
参考文献数
14

治癒や延命を超え,患者の生活・健康への影響といった質を重んじる時代になった.これらは医療者では正しく判断できず,主観を科学的に扱う学問として,患者報告型アウトカムが発展し,quality of life(QOL)はその代表である.QOLの改善はCOPDの治療管理目標にも掲げられるが,QOLは標準化された客観的な尺度の質問票を用いて,主観的に評価し定量的に表現される.QOLは,呼吸機能など生理学的指標との関係は強くなく,別々に評価する必要がある.COPDにおいては,疾患特異的質問票であるSt. George’s Respiratory Questionnaireが頻用され,呼吸器疾患全般において有用性が検証された.しかし慢性呼吸不全では十分ではなく,私たちはSevere Respiratory Insufficiency Questionnaireの日本語版を作成し,臨床試験に応用した.
著者
鶴谷 秀人 佐伯 敬 岸川 禮子
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.91-94, 1993-04-20 (Released:2020-09-01)
参考文献数
4

慢性呼吸不全患者の管理を行っていくうえで,循環動態の管理や合併した循環器疾患の治療は重要であり,ときに難渋することがある.そこで実際に遭遇する頻度の高い病態として,呼吸不全とは別個に合併する虚血性心疾患,左心不全,および呼吸器疾患ゆえみられる右心不全,不整脈についてそれぞれの診断と対応について述べた.いずれの病態においても治療の原則は,現存する呼吸不全状態を可能な限り改善維持することが必要と考えられる.
著者
森 大地 板木 雅俊 岩佐 恭平 大濱 慎一郎 北川 知佳 田中 貴子 池内 智之 河野 哲也 津田 徹 神津 玲
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
pp.22-01, (Released:2023-03-29)

【目的】慢性呼吸器疾患患者の要介護度は過小評価される傾向にあり,患者の不満が多いと報告されている.今回,認定結果に対する不満の有無とその関連因子について検討した.【方法】通所リハビリテーションを利用する慢性呼吸器疾患患者を対象とした.認定結果への不満の有無で2群に分け,比較検討を行った.患者特性,身体機能,ADL(BI,NRADL),呼吸困難,呼吸機能,心理状態を調査・解析し,不満の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った.【結果】解析対象は31例で,不満なし群(21例),不満あり群(10例)であった.ロジスティック回帰分析の結果,NRADL(オッズ比0.914,95%CI 0.852 - 0.980)が不満の有無と有意な関連を認めた.【結論】認定結果への不満にはNRADLが関連しており,NRADLの点数を考慮することで,要介護度の過小評価を是正できる可能性が示唆された.
著者
松宮 潤 宮崎 慎二郎 飴野 淳 山本 晃義
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.243-246, 2022-04-28 (Released:2022-04-28)
参考文献数
17

Platypnea orthodeoxia syndrome(POS)は,直立位によって強調され,臥位によって緩和する低酸素血症および呼吸困難を特徴とする.そのため,離床の妨げとなる可能性があるが,POSに対する理学療法の報告はされていない.今回,間質性肺炎(interstitial pneumonia: IP)に伴うPOSの理学療法を経験した.症例は,84歳の女性.抗ARS抗体症候群に伴うIPにより,座位での低酸素血症や呼吸困難が持続したため,POSが疑われた.心内および肺内シャントを認めず,IPの改善に伴い直立位での呼吸状態が改善したため,IPに伴うPOSと診断した.POSは直立位で症状を呈するため,臥位での運動療法にて身体機能の維持・改善を図り,病状に応じて離床を開始することで,ADLの再獲得に繋げられる可能性がある.
著者
一門 和哉
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.181-184, 2022-04-28 (Released:2022-04-28)
参考文献数
19

ARDS診療におけるステロイド療法について,ステロイドを投与すべきでない対象疾患,ステロイドの投与量,投与時期,投与期間など,現在までの知見で判明している問題点を概説した.インフルエンザウイルス感染,ARDS発症から14日目以降はステロイドを投与すべきでない.我が国の呼吸器内科専門医施設で用いられることの多いステロイドパルス療法は,ARDSに対しては,近年否定的なデータが報告されている事を認識する必要がある.疾患や病態によって,ステロイドが負の効果を示すため,呼吸器内科医として,“とりあえずパルス療法”の考え方を改める事を強調したい.