著者
小澤 広直 佐々木 葉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.38-52, 2021 (Released:2021-05-20)
参考文献数
49

本報告では,昭和戦前期から戦災復興期にかけて内務省や建設省の土木エンジニア,建設官僚として活躍した都市計画家町田保(1903-1967)に着目し,町田の著した論考や書籍,公文書や事業記録などの資料を用いて,町田の経歴や仕事を整理するとともに,代表的な仕事の特徴や町田の考え方について把握することを目的とする.町田に関する年表作成と資料分析を行った結果,戦災復興都市計画では帝都復興事業での経験や知見を生かし,戦災復興院及び建設省の土木エンジニアとして中心的役割を担ったこと,首都建設計画では首都建設委員会事務局長として,戦前の地方計画の研究や戦後のアメリカ都市計画の視察に関する経験を生かし,東京を中心とする衛星都市整備計画や首都高速道路計画の立案に尽力したことなどが把握できた.
著者
佐々木 葉 羽藤 英二 岡田 智秀 佐々木 邦明 平野 勝也 山田 圭二郎 星野 裕司 山口 敬太 出村 嘉史
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では 景観計画およびまちづくりの理念を構築するための理論的研究として、①固定的視点からの景観把握モデルに代わる広域を捉える地域景観把握モデルの可能性を示し、②欧州風景条約から本研究の理念の位置づけを確認した。理念を実現する方法論として、③シーン景観、④移動景観、⑤生活景それぞれの視点で地域景観を記述する手法を考究した。理念実現化の運用方策として、⑥地域景観の保全から捉えた地域ガバナンス、⑦地域景観を活用した地域連携方策、⑧地域景観の価値の継承方策を調査した。以上を含めた本研究の成果は2014年1月23日に土木学会ワンデイセミナー「地域景観まちづくりの理論と実践を探る」において公表された。
著者
信野 翔満 佐々木 葉
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.547-554, 2023-10-25 (Released:2023-10-25)
参考文献数
19

駐車場のような低未利用地がランダムに出現する現象である「都市のスポンジ化」は、地方都市における深刻な課題である。この現象を構造的に理解することは、その対策のために必要である。本研究では、福山市を対象として、駐車場の立地状況の空間自己相関分析と、スペースシンタックス理論による街路構造分析とを行い、両者の関係を時間的に明らかにした。その結果、駐車場の集積と街路のアクセス性の傾向の時代的変化を明らかにした。また地区の詳細調査によって、コインパーキングがアクセス性の高い場所に立地している傾向を示した。以上より、ランダムと見做されている「都市のスポンジ化」現象の特性を都市空間構造との関係で読み取ることを可能にした。
著者
結城 拓海 佐々木 葉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.22-00191, 2023 (Released:2023-03-20)
参考文献数
28

本研究では,東日本大震災に関連して整備された国営追悼・祈念施設を含む震災復興祈念公園の一つである石巻南浜津波復興祈念公園を対象として開園後約半年の時点での来訪者に対するアンケート調査を実施した.これによって来訪者の属性,状況,利用行動,印象の観点から利用実態を明らかにした.さらに,来訪者の認識に基づいた来訪者像の分類を行った結果「日常利用追悼」,「象徴的追悼伝承」,「防災学習特化」,「場所記憶追憶」,「レクリエーション重視」,「不定形想起」と解釈した6類型が抽出された.これらは外部から観察可能な単独の指標によって説明されうるものではなく,来訪目的や園内での行為との関係を反映したものであることを具体的に説明した.
著者
田中 皓介 稲垣 具志 岩田 圭佑 大西 正光 神田 佑亮 紀伊 雅敦 栗原 剛 小池 淳司 佐々木 邦明 佐々木 葉 Schmöcker Jan-Dirk 白水 靖郎 泊 尚志 兵藤 哲朗 藤井 聡 藤原 章正 松田 曜子 松永 千晶 松本 浩和 吉田 樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.129-140, 2021 (Released:2021-06-20)
参考文献数
20
被引用文献数
2

本稿ではCOVID-19の蔓延および政府からの社会経済活動自粛要請に伴う,人々の意識行動への影響を把握することを目的にWebアンケート調査を行った.その結果,感染・死亡リスクを,現実の数倍~数千倍過大に評価している様子が明らかとなった.また,接触感染対策として効果的な「目鼻口を触らない」の徹底度合いが他の対策に比べて低く,周知活動の問題点を指摘した.さらに,緊急事態宣言に対する65%以上の支持率や,「家にいる」ことについて,「ストレス」を感じる以上に「楽しい」と感じる人が多いこと,行動決定のために参考にするのはキャスターや評論家や政治家よりも「専門家の意見」の影響が大きいことなどが明らかとなった.
著者
佐々木 葉
出版者
Japanese Society of Steel Construction
雑誌
鋼構造論文集 (ISSN:18809928)
巻号頁・発行日
vol.2, no.7, pp.9-18, 1995-09-30 (Released:2011-07-04)
参考文献数
26

The treatment of connections largely influences the taste of visual impression of a bridge. This paper discuss the detail design of a bridge relating with its total form. Firstly two design trends are shown through the review on recent works and documents that are monocoque style and multilevel composition one. Then four fine works, Tatsumi-shinbashi, Haneda-sky-arch, which are examples of monocoque style, Bach de Roda Felipe II br, and Lusitania br, designed by S.Calatrava as the examples of multilevel composition style, are analyzed into visual elements and connections. Then the each characteristic order in composition and the role of detail design are shown.
著者
林 良嗣 谷口 守 土井 健司 佐々木 葉 杉原 健一 冨田 安夫
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

人口減少・少子高齢化が早く進む地方都市において,郊外からの計画的撤退と中心市街地の再構築が必要であることを示し,さらにその具体的な方法論を明らかにするために,愛知県豊田市をスタディエリアとして,以下の検討を行った.1.将来状況予測:人口予測に基づき,市内各地点の居住環境質,インフラ維持コスト,環境負荷を計測し,郊外部での悪化傾向を示し,人口減少・少子高齢化が進行する地方都市では双対型都市戦略(郊外からの撤退・中心市街地の再構築)の必要性を示した.さらに,今後の都市域縮小策による社会基盤整備コスト削減効果を世代会計の手法を用いて評価した.2.政策目標運成度指標:QoLインディケータを適用した欧米の事例調査に基づき,わが国の都市構造検討に適用可能なQoL・市街地維持コスト・環境負荷の面からなる多元的評価手法を開発した.さらに,QoL向上を可能とする都市構造として分散集中型構造の提案を行った.3.市街地デザイン:街区デザイン検討のための3次元都市モデル自動生成システムの開発を行った.,これを用いて,複数のシナリオにもとづく将来の建物の更新結果の景観を予測評価し,現状の容積率の引き下げ(ダウンゾーニング)の案などを提示した.一方,中心市街地再構築に必要不可欠な自動車依存脱却策の1つとして,自動車共同利用に着目し,国内の事業化事例を対象とした分析を行った結果,自動車保有台数削減等の環境改善効果が観測された.4.事業化検討:日本の密集市街地整備事業の現状と課題を整理し,民間非営利組織による密集市街地整備事業の先進的な事例分析に基づいて,民間非営利組織の役割および特徴について明らかにした.また,TDR制度導入による郊外田園の開発抑制と,都市空間の広域的管理手法としての開発権取引の導入効果について検討した.
著者
片方 信也 佐々木 葉 小伊藤 亜希子 室崎 生子
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

1 中高層集合住宅の建設動向:京都市都心部では、バブル期についで1993年以降再び中高層集合住宅の建設ラッシュに見舞われている。1993年以降の特徴は、分譲、および9階建て以上の高層の割合いが増えていることであるが、敷地規模は依然として多くが400m^2以下であり、周辺の町並みの日照を奪っている。2 都心部中高層分譲集合住宅入居者の特性:1993年以降では3〜4000万円台と分譲価格が下がっているため、子どものいる世帯を含めて多様な世帯の入居がみられる。全体の7割は京都市内からの転入であり、うち半数は都心部内からである。6割の世帯に現在、または以前に都心部に住んでいた親族がおり、都心部とのコネクションの強い住民の入居が多いことがわかった。3 中高層集合住宅に対する周辺住民の対応:中高層集合住宅の建設に対して、日照やプライバシーの侵害、ビル風等の実施的な被害に加え、周辺住民が多大な不安を示していることがわかった。それは、マナーが悪い、だれが住んでいるかわからない、といったコミュニティ形成上の問題である。また、中高層集合住宅建設時に町内会として業者と交渉したり、建築協定を作って対応するといった積極的な動きがみられる。4 中高層集合住宅の立地する町内のコミュニティ形成:集合住宅自治会として町内会に属し、町内会の行事にも参加しているケース、管理人だけが町内会とのつなぎをしているケース、まったく別組織にしているケースなど、集合住宅の町内会との関係は様々であった。概して、集合住宅住民と周辺既存住民の交流は薄く、周辺環境を破壊する集合住宅の建て方がコミュニティ形成のひとつの疎外要因になっている。5 京都市都心部の地域ストックの享受と破壊:周辺既存住民と同様に、集合住宅入居者も、生活のしやすさ、便利さ、歴史や文化の存在、自然環境等、京都の都心部の「京都らしい」環境を評価して入居しているが、現在のような中高層集合住宅の建設は、その環境を破壊しつつあるという矛盾を抱えている。