著者
福家 良太
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.817-820, 2016 (Released:2016-06-20)
参考文献数
26

近年の集中治療の進歩により重症疾患の生命予後は大きく改善しているが,新たな問題として,これまで軽視されてきた ICU退室後あるいは退院後の様々なアウトカムが注目されるようになってきている。すなわち,これまで許容されてきた「急性期は救命できても長期的に見ると機能予後や QOLが悪化している生存者」が無視できない状況となっており,これを Post-Intensive Care Syndrome(以下,PICSと略)と称する。PICSは,ICUでの集中治療後に生じる身体・認知・精神機能障害である。これらは,重症疾患の侵襲のみならず,救命のためによかれと行われてきた医療介入による侵襲も原因となる可能性が多くの報告で指摘されるようになっている。本総説では,PICSの概念・原因・予防と関連する栄養療法のエビデンスについて述べる。
著者
手嶋 無限
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.781-784, 2015 (Released:2015-06-20)
参考文献数
10

地域包括ケアにおいて,薬局は物品の供給の一つとして,特に一般用医薬品や関連する医療材料・衛生材料を安定供給する機能を強化していくことで,地域の中で物とともに関連する情報を提供できる機能が求められている.在宅栄養管理に必要なディバイスの知識はチームケアを行う上で必要な知識となり,チームケアの質の強化に繋がることで,より良い療養生活の支援になることが期待されている.医療材料・衛生材料の供給には様々な課題があり,地域の実情に合わせた供給システムの構築や診療報酬の変化など動き出している.チームケアに携わるスタッフが在宅栄養管理に必要なディバイスへの理解を深めることは重要と考える.地域の中での医療材料・衛生材料の物流や各種ディバイスの情報を基に在宅療養支援における使用の実態を含め考察する.
著者
杉田 尚寛
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.1445-1447, 2017 (Released:2017-12-20)
参考文献数
9

パーキンソン病(Parkinson's Disease;以下、PDと略)治療は、薬物治療、手術療法、リハビリテーションの3つの柱である。その中でも基本となるのが薬物治療である。PDは、進行の速さや症状の程度が患者によって異なる事例が多いため投薬の種類や量も異なる。さらに、食事や薬物相互(代謝、吸収)に留意すべき点が多いことに加えて治療法は、患者にあわせたオーダーメイド治療が原則となるため薬物療法、栄養療法に熟知した薬剤師の職能が求められる。
著者
川原 央好
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.942-945, 2017 (Released:2017-06-20)
参考文献数
21

漢方薬は中国や日本で紀元前後から長い時間をかけて発展してきたが、東洋医学に基づき使われてきたため、西洋医学中心の医療現場、特に臨床栄養の現場ではその使用は限られていた。近年、漢方薬への理解の高まりから、様々な医療現場で全人的治療のために漢方薬が導入されるようになってきている。栄養管理中に活用できる漢方薬として、下痢・便秘や経口摂取増加に関連した消化器に作用する方剤、栄養状態や代謝に影響を与える補剤、精神状態の安定化を図る方剤などがあり、それぞれの臨床的有用性が報告されてきている。稀ではあるが偽アルドステロン症、間質性肺炎、肝機能障害など漢方薬による有害事象も報告されており、漢方薬の使用にあたってはこれらの知識も必要である。腸内microbiomeと関連した漢方薬の吸収・代謝やヒトにおける作用機序に関する基礎研究の発展が待たれるが、栄養管理に携わる医療関係者の漢方薬診療経験の蓄積と共有が、今後、漢方薬が活躍の場を広げていくためのキーファクターとなると考えられる。
著者
西條 豪 金子 聡 吉川 建夫
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.1180-1183, 2015 (Released:2015-10-20)
参考文献数
7

【目的】酢水にて直接フラッシュおよび充填を行う、“酢水フラッシュ充填 ”の経腸栄養カテーテル閉塞予防効果について検討した。【対象および方法】検討1:酢水フラッシュ充填を行った入院患者延べ47例を対象、閉塞に関して検討した。検討2:経腸栄養カテーテルを使用し、濃厚流動食を滴下、その後を〈方法1〉水道水フラッシュのみ。〈方法2〉水道水フラッシュ後、酢水充填。〈方法3〉酢水フラッシュ後、充填。また通水のみを〈方法4〉とし、実施後のカテーテル重量測定、細菌培養検査を実施した。【結果】検討1:47例中、閉塞5本。検討2:重量変化は〈方法2、方法3〉で同水準の増加。一般生菌数は〈方法1、方法4〉陽性、〈方法2、方法3〉陰性。培養検査は〈方法1〉接続部、〈方法4〉先端部より多数の菌が検出。【結論】酢水フラッシュ充填はカテーテル閉塞の予防策、感染対策として有効であり、さらに、看護業務、患者家族負担の軽減も期待できると考えられた。
著者
保井 洋平 丹波 卯子 大西 延明
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.775-780, 2015 (Released:2015-06-20)
参考文献数
13
被引用文献数
1

ここ数年、全国的に在宅医療が推進され、高齢者の在宅療養が多職種の連携で効果的に行われるよう求められるなか、薬剤師の役割に期待が寄せられている。特に、在宅栄養管理を円滑に行うために地域一体型栄養サポートチーム(Nutrition Support Team;NST)に参画することで在宅患者のQOLを高めることができると考えられる。一方、薬剤師の服薬支援をする場が薬局内から在宅へシフトチェンジし、薬剤師に今まで以上のスキル(skill)やスピリット(spirit)が求められている。在宅栄養管理に必要な薬剤の知識と、在宅療養サポートチーム(Home care Support Team:hST)の活動を通して得られた薬剤師への期待を報告する。
著者
西本裕 紀子 惠谷 ゆり 加嶋 倫子 伊藤 真緒 麻原 明美 清水 義之 曺 英樹 川井 正信 位田 忍 川原 央好
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.647-653, 2018 (Released:2018-04-20)
参考文献数
23
被引用文献数
1

【目的】重症心身障がい児(者)(以下、重症児(者)と略)におけるベースライス法ミキサー食の臨床的有用性について検討する。【対象・方法】べースライス法ミキサー食を導入した重症児(者)27例を導入前の栄養法が栄養剤のみの栄養剤群10例と加水法ミキサー食の加水法群17例に分類し、診療録から導入前後のBMI、血清アルブミン(以下、Albと略)値、摂取エネルギー量を後方視的に検討した。アンケートから導入前後の排便回数、便性、嘔吐頻度、調理・介護時間、感想について検討した。【結果】べースライス法導入前後でBMIは有意差がなく、Alb値は栄養剤群で、総摂取エネルギー量は加水法群で有意に増加した。便性は両群とも有意に改善し、嘔吐も改善した。介護時間は56%が短くなったと回答し、「家族と同じ食事を入れられるのがうれしい」という感想が最も多かった。【結論】ベースライス法ミキサー食を導入した重症児(者)において、導入前の栄養法にかかわらず栄養状態は維持改善できた。また消化器症状の改善が認められ、家族の高い満足度が得られた。
著者
蛇口 達造 吉野 裕顕 森井 真也子 蛇口 琢 渡部 亮
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.1105-1108, 2016 (Released:2016-10-20)
参考文献数
20

血漿シトルリン濃度が短腸症候群の消化管順応の生体指標として簡便且つ有用であることが Crennらにより提唱されて以後、栄養学的自立の評価に重要な位置をしめるようになっている。その解釈には小腸で合成されるシトルリン(Cit)が腎臓でアルギニン(Arg)に変換し、全身で利用される代謝機構の理解が必要である。新生児期発症 SBS自験症例の検討から、(1)血漿 Cit濃度は手術時残存小腸の長さを反映し鋭敏に増加する、(2)血漿 Cit, Arg濃度の両者とも絶食時基準値内なら栄養学的自立は可能である、(3)両者とも基準値内で TPNから離脱できない症例では、その原因検索を進めるべきであると考えられた。以上から血漿 Citと Arg濃度は SBSの消化管順応の評価に簡便かつ有用な検査であると結論した。
著者
中村 智之 西田 修
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.821-826, 2016 (Released:2016-06-20)
参考文献数
13

血液浄化療法中は、拡散・濾過・吸着の3つの原理で、血液中の栄養素も除去される。その除去効率は、浄化量をはじめとする血液浄化療法の施行条件に依存するため、血液浄化療法の原理の正確な理解が非常に重要である。血液浄化療法中の栄養療法におけるエビデンスやガイドラインの多くは欧米から発信されたものであるが、本邦と欧米では血液浄化療法の浄化量は異なり、その解釈には注意を要す。本邦で一般的に行われている低い浄化効率の CRRT施行時には、クリアランスは透析液流量と濾過液流量に規定され、血液流量の影響は小さい。糖は、本邦 CRRTの施行条件では影響が小さく、通常の管理でよい。蛋白、水溶性ビタミン、微量元素、電解質は、血液浄化療法で除去されるため、適切なモニタリングと補充が必要である。脂質と脂溶性ビタミンは、血液浄化療法の影響を受けない。経静脈栄養は血液浄化療法と相性が悪く、可能であれば経腸栄養の選択が望ましい。
著者
合志 聡 吉田 悠紀 佐藤 毅昂 禿 晃仁 鈴木 庸弘 佐藤 知巳
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.731-737, 2018 (Released:2018-06-20)
参考文献数
24

内科領域における脂肪乳剤の使用については末梢静脈栄養施行の段階より併用すべきものである。末梢静脈栄養の対象は消化管機能を有していない内科疾患であるが、これらの患者には入院時より必要エネルギーを充足させる必要があることから、脂肪乳剤を併用することでそれに近づけることが可能になる。また脂肪乳剤の併用は必要エネルギー充足の観点のみならず、NPC/N比の考え方からも効率よいエネルギー代謝、タンパク質合成において重要なことである。一方で脂肪乳剤の投与にはいくつかの注意点が存在するが、病態を見極めることで使用可能な症例は数多くいる。我々は総投与エネルギーの約60%を脂肪乳剤で投与しても1週間程度であれば脂質代謝に大きな変化を来すことなく、安全に投与できることを示しており、0.1g/kg/時の投与速度を厳守することが重要である。しかしながら、その投与速度も今後のさらなる検討によって連日投与での推移、安全性の検証ができれば、変更できる可能性も示唆されている。
著者
白井 邦博
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.231-236, 2019 (Released:2019-11-20)
参考文献数
26

急性期医療を要する重症患者では、侵襲による過剰な炎症で代謝異化状態が亢進するため、まずは救命を目的に炎症を制御して呼吸循環動態を安定させる。その後は、急性期、回復期から退院後のquality of life(以下、QOLと略)向上を見据えた救急集中治療を継続的に行わなければならない。これに対して、栄養療法は救急集中治療の連鎖の一貫であり、急性期だけでなくQOLを改善させるための治療として認識する必要がある。さらに、ガイドラインやエビデンスの高い研究を活用して、各施設の実情にあったマニュアルやプロトコールを作成し、栄養サポートチーム(nutrition support team;以下、NSTと略)が遵守しながら適切な栄養療法を現場に提供することが重要である。
著者
江頭 文江
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.693-698, 2016 (Released:2016-04-26)
参考文献数
10

摂食嚥下機能が低下した人への食形態は、スクリーニングテストや5期モデルでの評価とともに、覚醒状態やバイタルサインの安定度や栄養状態、姿勢保持、咳嗽反射、むせ、痰がらみの除去に関連した呼吸機能、さらにそこに食事環境のひとつとして、食事介助スキルの視点も加わり、本人の機能だけではなく、総合的に評価され、決定されている。訪問栄養指導では食事時間に訪問することが多く、実際の料理をみて、使用している食材の特徴の違いを判断し、管理栄養士の視点での機能評価も求められる。中でも4期モデルとともに、プロセスモデルを理解することはとても重要である。リスクのある二相性の食べ物にはどんなものがあるかを理解し、誤嚥性肺炎を予防し安全な食形態での支援とともに、二相性の食べ物を一相性に変えて、咀嚼を引き出す工夫もいれた支援が必要である。
著者
船山 理恵 小椋 千沙 清水 香織 国崎 玲子 藤原 武男 越智 真奈美 高橋 美惠子 松岡 朋子 清水 泰岳 新井 勝大
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.718-724, 2016 (Released:2016-04-26)
参考文献数
24

【目的】小児クローン病 (Crohn's Disease; 以下、CDと略) 患者における栄養療法・食事療法の QOLへの影響について検討する。【方法】小児 CD患者27名を対象に、栄養療法や食事療法に関するアンケート調査を行い、IBDQスコアを用いて QOLを評価した。栄養療法実施群と非実施群で IBDQスコアを比較し、重回帰分析により栄養療法・食事療法 と IBDQスコアの関連性を検討した。【結果】栄養療法実施群と非実施群の IBDQスコアに有意差は認めず、重回帰分析より「体調悪化を感じる」食品数が IBDQスコアに有意に関連し、一方で栄養療法は IBDQスコアに関連しないことが明らかとなった。栄養療法実施群では、実施の理由を「医師に言われたから」「病気の悪化を予防できる」と回答していた。【結論】栄養療法は患者の QOLに関連しないことが明らかとなった。栄養療法を行っている患者は、その意義と効果を理解していると思われた。
著者
鈴木 恭子 八木 佳子 小林 あゆみ 矢本 真也 福本 弘二 渡邉 誠司
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.20-24, 2019 (Released:2019-04-20)
参考文献数
8

重症心身障がい児(以下、重症児と略)は、栄養管理上の問題点を多く抱える。栄養摂取経路は、摂食・嚥下障害のため経管になるが、経鼻胃管の例もまだまだ多く、ましてや長期間経腸栄養剤のみで管理されてしまう例も少なくない。近年、胃瘻を積極的に導入し、同時に、ミキサー食推奨の報告も多くなってきた。ミキサー食は、重症児によくみられる消化器症状や、食後高血糖にも効果があるほか、経腸栄養剤で不足しがちな微量栄養素や食物繊維の補給などにも有効である。また、糖質のコントロールや食物アレルギーの対応なども自在に行える。液状栄養剤と異なり、児に負担をかけず短時間注入も可能である。重症児の健やかな発育を援助し、胃瘻からのミキサー食のメリットを生かすには、管理栄養士による指導が不可欠である。
著者
阿久澤 暢洋
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.1369-1371, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
10

症例は61歳、男性。生来健康で特記すべき疾患の既往なし。昼食中に突発的な胸部苦悶感と嚥下障害が出現したため受診。急性冠症候群を疑い、緊急冠動脈造影を行ったが冠動脈に病変なし。頸部~胸部単純CTでは咽頭後壁左外側にAir Densityを含む単房性の構造物を認めた。食道造影検査では第6頸椎の高さに一致して直径1cmの食道憩室の所見を認め、Zenker憩室の確定診断に至った。入院後、症状は自然に改善し、経口摂取に問題がないことを確認したうえで本院退院となった。Zenker憩室は食道入口部付近にみられる圧出性の憩室であり、高齢男性に多い。上部食道括約部の弛緩障害などに伴う下部咽頭内圧の上昇により発生すると考えられている。確定診断には食道造影が有用である。主症状は嚥下障害であり、内径1cm未満の小憩室でも固形物の嚥下障害を呈することが多い。高齢者の嚥下障害の原因としても留意すべき疾患である。
著者
神應 知道 片岡 祐一 花島 資 中谷 研斗 佐藤 照子 土屋 志保 内藤 亜樹 中村 優 三浦 芳典 浅利 靖
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.835-842, 2016 (Released:2016-06-20)
参考文献数
28
被引用文献数
2

【目的】多職種運用 ICU栄養管理プロトコール導入効果の検討。【方法】ICU滞在2週間以上の患者でプロトコール導入前と導入後の2群間で栄養管理の結果を後方視的に検討。【結果】導入前(127人)に比べ導入後(103人)では,3週目のプレアルブミン(16.9mg/dL,20.7 mg/dL,p=0.013),4週目のアルブミン(3.3g/dL,3.6g/dL,p=0.025),経腸栄養投与開始日(3.9±4.2日,1.8±0.4日,p=0.038),ICU入室48時間以内の経腸栄養投与率(35.4%,53.4%,p=0.008)が有意に改善した。ICU滞在日数(22.6±11.5日,20.8±7.3日,p=0.15),ICU死亡率(16.5%,8.7%,p=0.059)は改善傾向を認めた。さらに ,48時間以内の早期経腸栄養達成に関する多変量解析では ,プロトコール導入はオッズ比2.16と独立した因子であった。【結論】多職種運用 ICU栄養管理プロトコールは,48時間以内の早期経腸栄養を達成でき,臨床栄養内容を有意に改善させた。
著者
水野 英彰 阿部 展次
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.1115-1120, 2018 (Released:2018-12-20)
参考文献数
30

経腸栄養管理は経口摂取が不可能または不十分な場合や、消化管の安静が必要な場合に活用され、静脈栄養管理に比べて生理的であることから多くの疾患・病態で適応となり、アウトカム比率向上に重要な代替栄養法である。経腸栄養を必要とする患者は、腸内環境の乱れ(以下、dysbiosisと略)を有している可能性が高く、これに伴う合併症も考慮される。プロバイオティクス・プレバイオティクスは、dysbiosisの是正を目的として進化を続けており、併用したシンバイオティクスも踏まえて消化器疾患のみならず周術期、2型糖尿病、アレルギー疾患など多くの領域で臨床での有用性が報告されている。経腸栄養管理の領域でも以前からプレバイオティクスやプロバイオティクスの有用性が評価されているがメタゲノム解析などの新たなモニタリングを活用した、さらなるエビデンスの構築が今後期待される。
著者
水野 英彰 竹内 弘久 土屋 雅人 堀合 真市 鈴木 裕 阿部 展次
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.817-819, 2015 (Released:2015-06-20)
参考文献数
11

【目的】我々は胃瘻患者に対し、一定の高さより重力を利用し半固形短時間注入法と同等の時間で栄養剤を確実に投与する方法を自然落下法と提案し、有用性に関して検討を行った。【方法】2012年5月から2013年5月において、当院で胃瘻経腸栄養患者に対し、レントゲン透視検査による胃機能評価を施行。胃蠕動良好であり、自然落下法を施行した71例を対象とした。使用栄養剤は中粘度(約2000mPa・s)のとろみ調整栄養食品を使用した。検討項目は①投与時間の平均時間②排便回数③糞便スコア④合併症発生率の4項目とした。【結果】①投与時間は18.52±4.92分②排便回数は1.13±1.12回/日③糞便スコアは1.34±0.42点/回④胃食道逆流2例に認め、合併症発生率は2%で自然落下法継続率は98%であった。【結論】自然落下法は安全かつ簡便に投与可能で患者QOL改善に寄与する可能性があり、経腸栄養投与法として有用な手技となり得る可能性が考慮された。
著者
小林 裕子 杉本 幸枝
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.1054-1056, 2018 (Released:2018-10-20)
参考文献数
10

【目的】胃瘻カテーテル内腔の栄養剤残留は細菌の温床となるので、ガイドラインでは洗浄を推奨しているが、半固形状流動食の場合は検討されていない。そこで、本研究では半固形状流動食注入後の洗浄について高い洗浄効果が期待される寒天を使用し、胃瘻カテーテルの留置期間に対応した30日間で実験を行い検討した。【対象及び方法】チューブ型バルーンタイプの胃瘻カテーテルを用いて、半固形状流動食(pH4.0以下)注入後洗浄を行った。寒天洗浄40mLと水洗浄40mLを各3本ずつで行い、これを30日間繰り返し行った。カテーテル内腔の回収液のpHを測定し生菌培養検査を行った。【結果】寒天洗浄ではpHは6.6で生菌数は20コロニーであった。一方、水洗浄はpH6.7で生菌数は1,000コロニー以上であった。【結論】寒天洗浄は胃瘻カテーテルの生菌繁殖が抑えられる有用な方法である。