著者
堀田 秀樹 浜野 晋一郎 福島 清美
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.176-178, 1990-10-31 (Released:2011-01-25)
参考文献数
7

過去4年半に, 抗てんかん薬服用中副作用がみられた48例を調査母体とした。調査時年齢は1歳7ヵ月~29歳2ヵ月であった。体重増加 (肥満) は7例に認め, すべてバルプロ酸ナトリウム (VPA) によるものであった。3ヵ月から24ヵ月の間に肥満度の上昇をきたし, 全例肥満度30%以上となった。投薬前から既に肥満度20%以上を示したものが4例いた。肥満のため投薬を中止したのは4例で, うち3例で体重の減少を認めた。夜尿は7例に認め, 5例がVPAによるもので, フェニトイン, クロナゼパムによるものがそれぞれ1例ずついた。夜尿の出現時期は服薬1日目が4例と多かった。4例で投薬を中止し, 全例その直後から夜尿の消失をみた。VPAによる体重増加, 夜尿は, VPAが視床下部に存在する食欲および排尿調節中枢へ影響を及ぼすためと推測された。
著者
前田 規秀 伊藤 健吾 田所 匡典 加藤 隆司 渡辺 一功 根来 民子 麻生 幸三郎 羽賀 淑子 鬼頭 正夫 Shylaja Nuguri 大木 隆史 佐久間 貞行
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.224-232, 1992

小児期発症の局在関連性難治てんかん患者24例 (側頭葉てんかん12例, 後頭葉てんかん6例, 前頭葉てんかん6例) にMRI, SPECT, PETを施行し, その病態について検討した。全体では, MRIでは14例, SPECTでは15例, PETでは20例で大脳皮質に局在する異常を認めた。側頭葉てんかん12例では, MRIで10例に側頭葉に異常を認め, 5例は側頭葉内側硬化が, 他の5例では側頭葉内側硬化以外の病変が疑われた。SPECTでは9例で, PETでは11例で側頭葉に異常を認めた。後頭葉てんかん6例では, MRIでは4例で, SPECTでは5例で後頭葉に異常を認めた。PETでは6例全例で後頭葉に異常を認め, 視覚発作を伴う4例で1次視覚中枢の異常を認めた。前頭葉てんかん6例では, MRI, SPECTでは全例異常を認めなかったが, PETでは3例で局在する異常を認め発作焦点と考えられた。PETは焦点部位の検出に極めて有用であった。
著者
仲地 律雄
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.172-180, 1988
被引用文献数
1

部分てんかん患者にみられる二次てんかん原性焦点の形成機序を研究するために16匹のネコを用いて, 原焦点側 (一次側) 腹側海馬破壊 (5匹), 正中離断 (6匹), 一次側脳弓破壊 (5匹) が扁桃核キンドリング形成に伴う反対側扁桃核への転移現象に及ぼす影響を検討した。<BR>1) 腹側海馬破壊では, 歯状回から海馬錐体細胞に向かう苔状線維がほぼ完全に破壊されていたネコ4匹で転移形成が阻止されたが, 部分破壊に留まった1匹では転移がみられた。<BR>2) 正中離断では6匹中3匹で転移形成が阻止されたが, 脳梁・海馬交連の離断範囲とは一定の関係がなく, この3匹ではいずれも一次側脳弓が完全に破壊されていた。<BR>3) 脳弓破壊では, 一次側脳弓がほぼ完全に破壊されていた4匹で転移形成が阻止されたが, 部分破壊に留まった1匹では転移がみられた。<BR>以上の成績から, 一側扁桃核キンドリングの反対側同部への転移現象に海馬が重要な役割を果たしていると考えられ, 海馬遠心路のうちでは海馬交連を介する経路よりも脳弓を介する経路が重要と考えられた。
著者
井上 有史 鈴木 節夫 渡辺 裕貴 八木 和一 清野 昌一
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-9, 1992-03-31 (Released:2011-01-25)
参考文献数
44
被引用文献数
5 4

非言語性高次大脳機能を主誘発因とする反射てんかんの自験10例と文献に報告された64例を臨床・脳波学的に検討し, 次の諸特徴を抽出した. 1) 若年発症. 2) 誘発される発作型は全般発作で, 腕や手を中心とするミオクローヌスと大発作が主体であり, 欠神発作を合併することがある. 3) 脳波には中心部を中心とする全般性てんかん放電がみられ, これは特殊な神経心理学的賦活により誘発される. 4) 誘因は複雑な連続的空間的思考から随意運動へといたるプロセスにあると考えられ, 具体的には計算, 描画, 構成, 書字, チェスやカードなどのゲーム, 複雑な手指運動などであり, 随意運動の表象だけでも誘発される. 5) 精神緊張や注意集中は助長因子である.高次大脳機能により誘発される特発性反射てんかんは, 非言語性機能によって誘発される上記の一群と, 言語誘発てんかん (読書てんかんを含む) とに大別される. 本邦における非言語性高次大脳機能誘発てんかんの多さは言語誘発てんかんの少なさと対照的であり, 言語的・文化的背景が存在する可能性を指摘した.
著者
山﨑 陽平 西田 拓司 井上 有史
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.702-709, 2018-01-31 (Released:2018-02-01)
参考文献数
13
被引用文献数
3 8

てんかん患者のための学習プログラムMOSES(Modular service package epilepsy、モーゼス)は、てんかん患者が病気を理解し、実践的な対処能力を身に付け、積極的に病気に向き合うことを学ぶための心理社会的学習プログラムである。海外の報告では、MOSESは知識の向上だけでなく、てんかんに対する対処法を身につけ、発作を減らし、副作用を軽くすることが証明されている。今回、本邦で実施しているMOSESの有用性を明らかにするために、MOSES実施前後で、てんかん患者の生活の質(QOL)、てんかんに関する知識、気分状態、主観的日常生活評価の変化について調査した。本調査の結果、MOSESを受けたてんかん患者55名では、てんかんの知識スケール、全体的な生活の質、てんかんへの適応の項目で統計学的に有意な得点の向上を認めた。MOSESの効果として、てんかんについての知識の向上のみならず、生活全般の満足度やてんかんという病気を前向きに受け入れようという心理面の変化が得られたと考えられる。
著者
堀田 秀樹 浜野 晋一郎 福島 清美
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.176-178, 1990
被引用文献数
2

過去4年半に, 抗てんかん薬服用中副作用がみられた48例を調査母体とした。調査時年齢は1歳7ヵ月~29歳2ヵ月であった。体重増加 (肥満) は7例に認め, すべてバルプロ酸ナトリウム (VPA) によるものであった。3ヵ月から24ヵ月の間に肥満度の上昇をきたし, 全例肥満度30%以上となった。投薬前から既に肥満度20%以上を示したものが4例いた。肥満のため投薬を中止したのは4例で, うち3例で体重の減少を認めた。夜尿は7例に認め, 5例がVPAによるもので, フェニトイン, クロナゼパムによるものがそれぞれ1例ずついた。夜尿の出現時期は服薬1日目が4例と多かった。4例で投薬を中止し, 全例その直後から夜尿の消失をみた。VPAによる体重増加, 夜尿は, VPAが視床下部に存在する食欲および排尿調節中枢へ影響を及ぼすためと推測された。
著者
服部 春生 樋口 嘉久 辻 雅弘 古庄 巻史
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.127-131, 1998-06-30 (Released:2012-07-17)
参考文献数
9

まれな自己誘発図形過敏てんかんの1例を報告した。現在13歳の女児。けいれんの家族歴はない。6歳より網戸、縞模様等を見つめるとミオクロニー発作をきたすようになった。当初より発作の多くは自己誘発と思われ、10歳以降は明らかに自己誘発のみとなった。これらのミオクロニー発作と2回の全般発作以外の発作型はなく、光過敏発作もなかった。また、図形過敏以外で自然におこる発作もなかった。発作問欠時脳波では全般性棘徐波複合の群発を認めたが、光過敏は明らかではなかった。発作時脳波は全般性多棘波複合の群発であった。神経学的所見、頭部CTには異常を認めなかったが、新版K式発達検査で、認知・適応指数59、言語・社会指数80、全IQ 71と境界域精神遅滞があった。認知・適応指数の低さは、視覚的記憶の不良のためであった。また図形に対する執着的な行動が見られた。バルプロ酸投与により12歳より発作は抑制された。
著者
渡辺 裕貴
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.74-78, 2013 (Released:2013-07-16)
参考文献数
12
被引用文献数
2 1

てんかん患者の数は小児よりも成人の方が数倍多いが、日本では成人を診療するてんかん専門医が少ないために、小児科医が子供だけでなく成人患者の一部をも診療している。今後はてんかんを専門とする神経内科医が増加して成人てんかんの診療の大きな部分を担うようになると予想されるが、精神症状を有するてんかん患者の治療では、精神科医と神経内科医との連携が必要である。 日本社会の高齢化に伴い高齢者てんかんが増加している。高齢者のてんかんは症状や治療法が若年者のそれとは幾つかの点で異なる。高齢者のてんかん発作は認知症と誤診されやすいのでそのことに留意が必要である。 精神症状を呈するてんかん患者では抗てんかん薬と抗精神病薬を併用することが多い。これらの薬剤は薬理作用や血中濃度で相互に影響を及ぼしあうので、併用時にはそれらの相互の影響について考慮する必要がある。
著者
加藤 昌明
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.116-125, 2015-06-30 (Released:2015-08-06)
参考文献数
53
被引用文献数
1
著者
馬塲 美年子 一杉 正仁 相磯 貞和
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.8-18, 2013 (Released:2013-07-16)
参考文献数
12
被引用文献数
2

近年、てんかん発作に起因した事故が散見されるが、その背景と刑事責任について検討した。対象は1966年から2011年に発生し、運転者のてんかん発作が原因とされた死傷事故22例である。2002年に道路交通法が改正され、てんかんの既往があっても条件を満たせば自動車運転免許が取得できるようになったが、対象例中に免許更新時にてんかんの既往を申告した運転手はいなかった。起訴されたのは17例(77.3%)で、不起訴は5例(22.7%)であった。起訴された17例中、有罪は14例(82.4%)、無罪は3例(17.6%)であったが、近年、量刑は重くなる傾向であった。多くの運転手は、医師から自動車運転を控えるように指導されていながらも、運転を続けていた。てんかん患者の運転適性が正確に判断されるようなシステムが必要である。また、てんかん患者に対して自動車運転の適否を適切に指導できるよう、医師への啓蒙が必要と考えられた。
著者
立花 泰夫 関 亨 山脇 英範 鈴木 伸幸 木実谷 哲史 前沢 真理子 山田 哲也 清水 晃
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.40-47, 1985-04-30 (Released:2011-01-25)
参考文献数
17

小児期における無熱性全般けいれん発作71例の予後を検討し, 以下の結果を得た。1) 発作の消失したものは, 総数71例中50例 (70.4%), 正常な精神運動発達・精神発達を示したものは, 64例 (90.1%) であった。2) 経過中, 他の発作型を認めたものは, 10例 (14.1%) で, 内訳は, 単純部分発作3例, 複雑部分発作6例, 複雑部分発作+非定型欠神発作1例であった。3) 発作の予後に関与する因子として,i) 精神運動発達遅滞・精神遅滞の合併 (p<0.01)ii) 治療開始までの期間 (p<0.05)iii) 30分以上持続した無熱性全般けいれん発作の既往 (p<0.05) 3つが指摘された。
著者
山岸 裕和 小坂 仁 長嶋 雅子 桒島 真理 宮内 彰彦 池田 尚広 小島 華林 松本 歩 山形 崇倫
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.693-701, 2018
被引用文献数
1

<p>ペランパネル(PER)は、AMPA受容体を非競合的に阻害する新規の抗てんかん薬である。日本国内の使用実績の報告は少ない。今回、知的障害者や12歳未満の小児を含む難治性てんかんの33例について、PERの治療効果と副作用を検討した。発作が50%以上減少した症例を「有効」とし、両側性けいれん性発作への進展を含む焦点発作(Fs)と全般発作のうち強直、間代発作(GTCS)に対する有効率を検討した。FsおよびGTCSに対しては50%の症例で有効であった。全体では52%の症例に有効であった。12歳未満でも12歳以上と同等の有効率が得られた。併用薬剤別では、有意差は得られなかったものの、KBrを併用した2症例でともに有効であった。CBZやPHTといったCYP3A4を誘導する薬剤との併用例の有効率はそれぞれ30%、18%と低い傾向があった。副作用の出現率は55%で、情緒・行動面の異常が30%、傾眠・眠気が18%、めまいが15%であった。若年者や知的障害者では情緒・行動面の異常が出やすく、注意を要する。</p>
著者
茂木 太一 吉川 大輝 曽根 大地 村田 佳子 渡邉 雅子 渡邉 裕貴
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.31-38, 2014 (Released:2014-07-11)
参考文献数
15

良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん(benign adult familial myoclonic epilepsy:BAFME)における難治性の振戦様ミオクローヌスにプリミドンの追加投与が有効であった症例を報告する。症例は39歳女性。てんかん及び振戦様ミオクローヌスの濃厚な家族歴が存在した。17歳時、手のふるえが出現。24歳時、全身けいれんが初発。29歳時、てんかんと診断されバルプロ酸およびクロナゼパムが開始されたが手のふるえは改善せず、年単位での全身のけいれんが持続した。36歳時、レベチラセタム追加以降、全身のけいれんは消失した。しかし、手のふるえは悪化し下肢や体幹にもふるえが出現し39歳時に当院紹介。各種検査にてBAFMEと確定診断したうえでAmerican Academy of Neurologyによる本態性振戦の治療ガイドラインを参考にプリミドンを追加したところ振戦様ミオクローヌスは抑制された。このことから本態性振戦に有効性が示されているプリミドンはBAFMEにおける振戦様ミオクローヌスにも効果が期待できる可能性が考えられた。
著者
兼本 浩祐 川崎 淳 武内 重二 河合 逸雄
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.202-210, 1995-10-31 (Released:2011-01-25)
参考文献数
19
被引用文献数
2 4

難治側頭葉てんかんのため本院で手術を受け1年以上経過した22例の患者について術後の精神症状を検討した。その結果, (1) 術前に精神病状態を体験したことのない患者で術後新規に精神病状態を体験した患者が3例あり, いずれも右切除例であった, (2) 際立った精神症状をきたした患者では, 実体的意識性, 夢様状態を前兆とするものが比較的多かった, (3) うつ状態は術後3カ月以内には出現し, 時には自殺企図を伴うほど重症になった, (4) 術前に敵意・攻撃性が目立った患者は, 術後には改善がみられた, (5) 精神症状の大部分は1年以内には消失したが, 軽症化したものの2年以上遷延した例が2例みられた。以上の結果を文献例と比較し, 術後精神病を心因論だけからは説明することが難しいことを指摘するとともに, 側頭葉てんかんに対する外科手術後に, 神経学的, 神経心理学的評価だけでなく, 精神科的評価が不可欠であることを考察で論じた。
著者
林 紀乃 原田 一樹 福永 龍繁
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.628-636, 2017

<p>東京都監察医務院(東監医)は、東京23区内の異状死を検案し、死因がわからない場合は行政解剖を施行する。過去20年間(1995年から2015年)、東監医で異状死として取り扱われたてんかん関連の死亡について、その状況と死因に関して調査、検討した。死因に関与する疾患として、てんかんがあったものは364例(全検案数の0.15%)で、201例(55.2%)は行政解剖を施行されていた。直接死因は、いわゆるSUDEPに相当するようなてんかん発作に起因した急死が最も多く191例(52.5%)と全体の半数以上を占めた。男性135人、女性56人と男性が女性の2.5倍であり、半数以上が就寝中に急死していた。2番目には溺死が多く、106例(男性52例、女性54例)で、男女差は殆どなかった。特にてんかん症例では通常の浴槽内死亡に比して、上半身が浴槽内、足が浴槽外で沈んでいる姿が多いことがわかった。</p><p>(本稿は第50回日本てんかん学会学術集会、企画セッション11 SUDEPを探るの講演内容を元に作成した)</p>
著者
田中 司 真田 敏 大塚 頌子 大田原 俊輔
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.147-154, 1984-09-30 (Released:2011-01-25)
参考文献数
20

急性脳症後, 高度の知能障害とてんかんを発現した3歳5ヵ月の男児に見られた極めて特異な反射てんかんの症例を報告した。はじめは自発性発作のみであったが, 経過中特定の言葉を聞くことにより同様の発作が誘発されるようになった。誘因となる言葉は初期は “テレビ” のみであったが, 次第に “テープ”, “テ”, さらに種々の “テ” のつく言葉でも誘発されるようになった。臨床発作型はすべて脱力発作で, 発作時脳波はdesynchronizationを示した。なお刺激からdesynchronizationの出現までの潜時は約500msec.で, 発作発現には脳幹のみならず大脳皮質も関与していることが示唆された。誘発性発作に対してはconditioning treatmentが有効であった。
著者
原 實 松田 一巳 原 恵子 三原 忠紘 八木 和一 鳥取 孝安 大沼 悌一 桑名 信匡 青木 恭規 大沢 武志
出版者
日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.33-40, 2008-06-30

39歳の男性。既往歴に1歳時の髄膜炎と、5歳、6歳時各1回の単純型熱性けいれん。10歳時に複雑部分発作(CPS)で発病した。二種類の精神障害がCPS後にみられ、一種類は18歳8カ月から7回みられた不機嫌症で、意識障害がない。他の一種類は20歳2カ月から4回みられ、CPS後に意識清明期を経て現れる意識障害・反復叫喚・自己破壊的行動・攻撃性で、意識清明時に妄想、感情障害が認められた。頭蓋内脳波/ビデオ記録で左海馬と左眼窩前頭部に独立性2発作起始域が記録され、18歳7カ月からみられた左方眼球間代/偏椅・頭部回旋は、左眼窩前頭部の発作症状であった。難治性で、22歳時に左前側頭葉切除術がおこなわれた。術後17年、抗てんかん薬断薬後9年経過し、発作再発せず精神障害もみられない。精神障害の一種は左海馬起始の発作発射拡延による左眼窩前頭部の発作後機能障害、他の一種は左海馬と左眼窩前頭部が関与する発作後精神病と考えられた。

1 0 0 0 OA 11:グリア細胞

著者
大野 行弘 金星 匡人
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.51-56, 2016-06-30 (Released:2016-06-29)
参考文献数
19

グリア細胞は膠(にかわ)のように神経細胞(ニューロン)の隙間を埋めながら、脳内組織の恒常性を維持する受動的な役割を担っていると考えられてきた。しかし、近年、グリア細胞は神経細胞の活動をより能動的に調節していることが明らかとなり、脳機能の生理的なメカニズムや神経疾患の病態を理解する上で、神経細胞の必要不可欠なパートナーとなっている。中枢神経系に存在するグリア細胞は、アストロサイト、マイクログリアおよびオリゴデンドロサイトに分類される。それぞれの細胞について性質と機能に加えて、てんかん病態における役割を概説する。