著者
内藤 まゆみ 鈴木 佳苗 坂元 章
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.67-78, 2004 (Released:2004-11-25)
参考文献数
20
被引用文献数
5 18

本研究は,合理的処理および直観的処理における個人差(Pacini & Epstein, 1999)を測定する情報処理スタイル尺度(IPSI)の作成を目的とした.調査1(回答者290名)ではIPSI38項目の内容的妥当性を検討するため,確認的因子分析を行った.分析の結果,IPSIが合理性と直観性の2因子から構成されることが確認された.また,IPSIは十分な内的一貫性および再テスト信頼性を持つことが示された.他の尺度(曖昧さへの耐性と理論志向性,自尊心,社会的望ましさ)との相関はIPSIの収束的・弁別的妥当性を示すものであった.調査2(回答者237名)では,構成概念妥当性の検討のため,確率推論課題の回答とIPSIの関連を調べた.その結果,直観性および合理性が推論エラーの頻度と関連することが示された.加えて,調査2ではIPSI短縮版24項目を作成し,その信頼性と妥当性が確認された.
著者
片岡 祥 園田 直子
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.13-28, 2014
被引用文献数
1

本研究は恋人の行動を制限する行為を"恋人支配行動"と定義し,恋人支配行動の生起メカニズムの解明を試みた。研究1では,恋愛関係において生じる状態不安を測定するために,恋人分離不安尺度の作成を行った。調査は2回にわたって行った。1回目の調査対象者は大学生291名,2回目の調査対象者は大学生370名であった。分析の結果,十分な信頼性と妥当性を持った恋人分離不安尺度が開発された。研究2ではまず,さまざまな種類の恋人支配行動を測定する尺度の開発を試みた。調査対象者は大学生586名であった。収集した項目を元に因子分析を行ったところ,"暴力的支配行動"因子と"束縛的支配行動"因子が見出された。次に,恋人分離不安,愛情の3因子,交際期間と恋人支配行動の各因子との関連について検討した。その結果,恋人分離不安と交際期間の交互作用が2つの支配行動において重要であるという知見がえられた。
著者
金子 一史 本城 秀次 高村 咲子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.2-13, 2003 (Released:2004-02-27)
参考文献数
38
被引用文献数
1 1

本研究の目的は, 一般青年に見られる被害妄想的観念を自己関係づけとしてとらえて, 対人恐怖心性, 抑うつ, 登校拒否傾向との関連を検討することであった. 被調査者は高校生487名(男子257名, 女子225名, 不明5名)であった. 自己関係づけ尺度, 対人恐怖心性尺度, 抑うつ尺度 (Children’s Depression Inventory: CDI), 登校回避感情尺度, 登校拒否関連性格尺度からなる質問紙に回答を求めた. その結果, 一般高校生において妄想的観念は高頻度で体験されていることが明らかになった. 自己関係づけは, 対人恐怖心性および抑うつ感情と正の相関があった. 考察では, 自己関係づけと対人恐怖心性との概念の異同について検討した.
著者
村上 宣寛 福光 隆
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.170-182, 2005-03-31
被引用文献数
1 3

研究Iでは, 担任教師が指名した攻撃性の著しい児童23名を基準群, 攻撃性の認められない児童567名を対照群とした.参加者は8つの小学校の3-6年生1701名と担任教師59名であった.問題攻撃性尺度は二群を弁別する13の質問項目から構成された.研究IIでは, 児童の攻撃性についてクラスの担任教師が5段階評定を行った.参加者は小学校3-6年生224名と担任教師8名であった.担任教師の評定の信頼性は.93であった, 問題攻撃性尺度と評定との相関は.46, 再検査信頼性は.85であった.814名のデータをIRTで分析すると, 尺度の高得点側で測定精度が高かった.研究IIIでは, 実験群でアサーション・トレーニングによる攻撃性の適正化教育を行った.参加者は, 実験群が3年生38名, 統制群が3年生35名であった.事前・事後の尺度得点の3要因分散分析の結果, アサーション・トレーニングは攻撃性の低い児童で弱い介入効果があった.
著者
岡田 有司
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.388-395, 2008-04-01 (Released:2008-07-15)
参考文献数
26
被引用文献数
3 2

本研究では学校生活への順応と学校生活の享受の2側面を区別して学校への心理的適応を捉え,学校生活の下位領域に対する意識との関係を明らかにすることで,両概念の違いについて検討することが目的であった。質問紙調査により得られた中学生407名分のデータから,以下の知見が得られた。まず,因子分析からは学校生活への順応と学校生活の享受を区別して捉えることの妥当性が確認された。重回帰分析の結果,学校生活への順応・学校生活の享受ともにクラスへの意識が影響していた一方で,順応には友人への意識が,享受には教師・校則への意識が影響するという違いのあることが示された。学校生活に順応することと学校生活を享受することの違いについて検討され,順応に影響していた友人関係は生徒が不安を感じやすい領域であり,享受に影響していた教師や校則といった領域は生徒が反感を抱きやすい領域であることが示唆された。
著者
江上 奈美子
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.21-31, 2011

本研究では,研究1で大学生における境界例心性を測定する尺度を定義に合わせて改変することを目的とし,研究2で境界例心性と対人・達成領域のライフイベント,およびそのイベントに対する不快・快感情との関連を検討することを目的とした。その結果,研究1では境界例心性尺度に6つの因子が抽出され,信頼性と妥当性が確認された。研究2では,大学生378名の回答を対象に<i>t</i>検定によって検討した結果,境界例心性高群は低群に比して,学業面でも対人関係でもネガティブな体験が多く,その体験に対して不快感情を抱いていたことが示された。また,彼らは学業面でのポジティブな体験については低群と経験頻度に差がないにもかかわらず,高群と同程度に快いと感じていないという結果が示された。境界例心性が強い大学生にはポジティブな体験に対しても快いと感じにくい評価のパターンがあることが示された。
著者
中西 満悠 中谷 素之 中西 良文
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.197-200, 2015

This study developed a Japanese version of the Academic Delay of Gratification (ADOG) Scale, based on the original language scale created by Zhang, Maruno, Karabenick, and Lauermann (2011), and investigated its reliability and construct validity. Japanese undergraduates (<i>N</i>=394) completed the new scale. Confirmatory factor analysis yielded a one-factor structure. The students' ADOG score correlated positively with effortful academic behavior, use of metacognitive strategies, planned studying and the average of weekly study time, and negatively correlated with less sustained studying. The internal consistency, test-retest reliability, and construct validity of the scale were confirmed.
著者
天谷 祐子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.46-56, 2009-06-01 (Released:2009-07-24)
参考文献数
15
被引用文献数
1

本研究は,「私はなぜ私なのか」という問い―自我体験―を経る人と経ない人の間,また自我体験を経て,それを深刻に捉えるか否かの間でパーソナリティ特性が異なるという仮説の検証を第1の目的とした(研究1)。そして自身が自我体験を経た意味を積極的に見出すか否かにより,孤独感と心理的well-beingに対する関連が異なるという仮説の検証を第2の目的とした(研究2)。その結果研究1からは,自我体験を経てそれを深刻に捉えている人が未体験者よりも神経症傾向が高いことが示された。また未体験者の方が自我体験を経て深刻に捉えていない人よりも誠実性が高かった。研究2からは,自身の自我体験に積極的な意味を見出している人は未体験者よりも「人は本来1人である」と考える傾向が強いことが示された。これにより,自我体験を経る人と経ない人のパーソナリティ特性,また自我体験の孤独感への関連が明らかにされた。
著者
市川 玲子 外山 美樹 望月 聡
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.142-155, 2015-03-31 (Released:2015-04-04)
参考文献数
35

本研究の目的は,境界性・自己愛性・演技性・依存性・回避性パーソナリティ障害特性(PD特性)における自己認知,被拒絶感および他者からの評価に対する欲求間の関連性について検討することであった。質問紙調査を行い,大学生362名を分析対象者とした。仮説を基に共分散構造分析を行った結果,被受容感がPD特性と自己認知との間を部分的に媒介しており,自己認知もPD特性と被受容感・被拒絶感との間を部分的に媒介していた。一方で,被受容感の低さはPD特性と他者からネガティブに評価されたいという欲求との関連を媒介していることが示された。これらの結果から,被受容感の低さがPDにおける不適応的な対人相互作用に強く関連していることが示唆された。
著者
扇原 貴志 上村 佳世子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.173-176, 2015-11-20 (Released:2015-12-05)
参考文献数
5
被引用文献数
1

Correlations between the scores on subscales of the Scale of Interest in Infants and preferences for pictures of infants were investigated. University students (N=27) completed the Scale of Interest in Infants. Then they were shown arrays of three pictures of an infant, an adult, and an object and required to choose the picture that interested them the most. The results indicated that pictures of infants were chosen more often than pictures of adults. Positive correlations were found between scores on the subscales for “affectionate attention” or “curiosity” and preference for pictures of infants. “Sympathy” and “tolerance” were not significantly correlated with preference for pictures of infants.
著者
服部 環
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.129-134, 2006 (Released:2006-10-07)
参考文献数
6
被引用文献数
1

General growth mixture modeling (GGMM) was briefly reviewed and its merits for the researchers who aim to conduct a longitudinal study discussed. The GGMM refers to modeling with categorical latent variables that represent subpopulations where population membership is not known but is inferred from the data (Muthén & Muthén, 2004). Latent class growth analysis (LCGA) and growth mixture modeling (GMM), which are submodels of GGMM, were applied to a single data set in this paper to examine development of antisocial behavior in children. Finally, the data analytical package sem developed by Fox (2006) was introduced, and an example for latent growth curve modeling with time invariant predictors described.
著者
中川 明仁 佐藤 豪
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.38-45, 2010
被引用文献数
1

本研究の目的は,Cloningerの気質4次元から自己志向的完全主義の各側面への影響を男女別に検討することであった。重回帰分析の結果,男女共通して気質次元の「固執」が完全主義の全側面へ正の影響を及ぼしていた。また,男性のみの結果として,「新奇性追求」と「報酬依存」が「失敗懸念」に負の影響を及ぼし,「報酬依存」は「完全性欲求」にも負の影響を及ぼしていた。一方,女性は「損害回避」が「失敗懸念」および「完全性欲求」に正の影響を及ぼしていた。本研究の結果より,多次元的な自己志向的完全主義の基盤に存在すると考えられる気質特性には,男女共通する気質と男女間で相違する気質が存在することが示唆された。
著者
Filip De Fruyt Jun Moriya Yusuke Takahashi
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.119-130, 2015-03-31 (Released:2015-04-04)
参考文献数
77
被引用文献数
1 2

Developments in the assessment of general and maladaptive personality traits in children and adolescents have been reviewed in the present paper, with an emphasis on instruments based on the Five-Factor Model (FFM), such as the Hierarchical Personality Inventory for Children (HiPIC; Mervielde & De Fruyt, 1999), which describes general traits, and the Dimensional Personality Symptom Item Pool (DIPSI; De Clercq, De Fruyt, Van Leeuwen, & Mervielde, 2006), which accounts for maladaptive traits. We have additionally discussed measures available in Japanese, to assess traits in children, adolescents, and adults, and pertaining issues in cross-cultural personality research, especially with respect to Western and Asian differences. Finally, a number of key implementation areas for personality assessment have been identified, together with some challenges for this promising field of research.
著者
内田 香奈子 山崎 勝之
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.378-387, 2008-04-01 (Released:2008-07-15)
参考文献数
23
被引用文献数
3 1

本研究の目的は,情動焦点型コーピングの1つである感情表出と抑うつとの因果関係を,予測的研究方法を用いて検討することである。参加者は341名で,質問紙には,怒りと落胆感情に対する2タイプの感情表出(独立的/他者依存的)を測定する感情コーピング尺度 (ECQ) の状況版,問題焦点型コーピングの測定にはGeneral Coping Questionnaire (GCQ) の状況版,抑うつの測定にthe Center for Epidemiologic Studies Depression Scale (CES-D) を用い,5週間をあけ (T1とT2),2度回答した。階層的重回帰分析の結果,女性においてT1の独立的感情表出がT2の抑うつと正に関連していた。また,女性において抑うつが高いほど問題解決を行わないことが示された。独立的感情表出を低め,同時に問題解決を高める介入の可能性について論議された。
著者
中西 満悠 中谷 素之 中西 良文
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.197-200, 2015-03-31 (Released:2015-04-04)
参考文献数
11
被引用文献数
1

This study developed a Japanese version of the Academic Delay of Gratification (ADOG) Scale, based on the original language scale created by Zhang, Maruno, Karabenick, and Lauermann (2011), and investigated its reliability and construct validity. Japanese undergraduates (N=394) completed the new scale. Confirmatory factor analysis yielded a one-factor structure. The students' ADOG score correlated positively with effortful academic behavior, use of metacognitive strategies, planned studying and the average of weekly study time, and negatively correlated with less sustained studying. The internal consistency, test-retest reliability, and construct validity of the scale were confirmed.
著者
原田 知佳 吉澤 寛之 吉田 俊和
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.82-94, 2008-09-30
被引用文献数
11

本研究は,"社会的場面で,個人の欲求や意思と現状認知との間でズレが起こった時に,内的基準・外的基準の必要性に応じて自己を主張するもしくは抑制する能力"である社会的自己制御(Social Self-Regulation; SSR)を測定する尺度を開発し,その信頼性・妥当性の検討を行った。研究1では,予備調査で選定された42項目に対して,大学生,高校生673名に回答を求めた。探索的因子分析の結果,SSRは「自己主張」「持続的対処・根気」「感情・欲求抑制」の3下位尺度(計29項目)から構成されることが示された。また,尺度の十分な信頼性と収束・弁別妥当性も確認された。研究2では,脳科学的基盤が仮定された自己制御概念として行動抑制/行動接近システム(BIS-BAS)・実行注意制御(EC)を取り上げ,SSRとの関連を検討した。その結果,先行研究を支持する結果が得られ,構成概念妥当性が確認された。
著者
岡田 努
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.11-20, 2011
被引用文献数
4

本研究の目的は,現代青年の友人関係が自尊感情に及ぼす構造(影響)を検討するものである。友人関係,被受容感,被拒絶感,自尊感情の尺度について246名の高校生と236名の大学生に対して実施された。これらの青年に対して友人関係のパターンを見出すためクラスタ分析が実施され,3つのクラスタが見出された。1)情緒的に近い関係を回避する青年,2)情緒的に近い関係を持つ青年,3)友人から傷つけられたり,友人を傷つけることを避け,また友人と群れていようとする傾向が高い青年である。共分散構造分析の結果,傷つけられることを回避することが,傷つけることを回避する心性を経て,被拒絶感を低減し,結果的に自尊感情を維持させることが示唆された。
著者
田附 紘平
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.180-192, 2015-03-31 (Released:2015-04-04)
参考文献数
24
被引用文献数
1

アタッチメント理論の提唱者であるBowlbyは,アタッチメント経験から形成される“自己に関する作業モデル”に注目していたものの,その後のアタッチメント研究では,意識的な自己イメージは中心課題とされてこなかった。そこで本研究では,アタッチメントスタイルと,自己イメージの内容面である構成要素とその構造との関連について探索的な検討を行うことを目的とした。277名の調査協力者に対し,20答法と日本語版Relationship Questionnaireを実施し,テキストマイニングによる分析を行った。その結果,安定型は社会的で肯定的な自己イメージを,軽視型は防衛的で肯定的な自己イメージを,とらわれ型はアンビバレントな人の関係や否定的な自己イメージを,おそれ型は人との関係や自らの能力から自己イメージを抱きやすいという仮説がそれぞれ示された。得られた結果から,各アタッチメントスタイルが抱く自己イメージの内的力動に関して考察を行った。