著者
森田 綽之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.203-216, 2011
被引用文献数
1

日本の「道路構造令」に関わる解説書である「道路構造令の解説と運用」は初版の昭和35年から3回改訂されている.本稿ではその変遷の経緯,位置づけ,解釈を整理,体系化している.その結果,道路の構造の全国的統一を意図した当初の趣旨から地域に適した道路構造を実現するために政令の規定を弾力的に適用する思想へ変遷していること,道路分類において必ずしも階層性が明確でなく,利用者に提供すべき目標サービス水準やこれを実現する具体的な設計法が未確立であること,日交通量で需要と容量を取り扱うことで生じる矛盾を解消する必要があること,車線幅員や設計速度などの設定の経緯やその意味を改めて確認し,現在の道路の作り方や運用に対して適切な基準を検討する必要があることなどを明らかにした.
著者
山中 英生 亀井 壌史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_623-I_628, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
15

国土交通省・警察庁が2012年発出した自転車ガイドラインでは自転車走行空間のネットワーク整備を推進するため,多くの街路において,車道部の活用を基本方針としており,自転車専用通行帯に加えて,自動車速度が低く,交通量の少ない道路では,車道部でのマーキングや指導帯等を用いて,車道混在形態の整備を進めることが示されている.しかし,我が国の自転車の利用者にとってこうした車道走行の安全感確保の視点からの評価に関して十分な研究はない.本研究では,走行中の自転車から,追越していく自動車の速度,離隔を計測することができるプローブバイシクルを開発し,安全感のプロトコル調査と組み合わせることで,自動車に追い抜かれる時の安全感モデルを開発した.
著者
福本 潤也 後藤 雄太
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.390-407, 2011

2004年に国土交通省の下に「自動車の検査・点検整備に関する基礎調査検討会」が設けられた.同検討会は自動車検査証の有効期間延長の社会的影響について推計・試算を行い,有効期間の延長が自動車の安全確保と環境保全に甚大な悪影響を及ぼすと結論づけた.しかし,同検討会の推計・試算で重要な位置づけを占める自動車の不具合率の推計は様々な問題を抱えている.本研究では,同検討会の推計が抱える問題を克服するハザード・モデルを提案する.同検討会が不具合率の推計に用いたデータを使用してハザード・モデルのパラメータを推計する.推計結果に基づき,同検討会による社会的影響の推計・試算結果が過大推計であった可能性を指摘する.
著者
光安 皓 大口 敬 林 誠司 金成 修一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_621-I_628, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
7

自動車分野における省エネルギー方策の1つとして,エコドライブがよく知られている.これまでガソリン車の車両の運動とエネルギー消費量の関係については理論的および実証的検討がなされてきたが,近年普及が進みつつある電気自動車については,未だ十分な検討がされていない.その理由の1つとして,電気自動車特有の回生エネルギーを考慮した検討が十分になされていないことが挙げられる.本論文では,まず,実際に市販されている電気自動車のシャシダイナモ試験結果から,車両が任意の運動状態にあるときの駆動力およびエネルギー消費量を算出し,整理した.次に,都市部における様々な条件を想定したショートトリップに対して,エネルギー消費量の推計を行い,電気自動車のエコドライブ方法についての検討を行った.
著者
川崎 智也 轟 朝幸 小林 聡一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_523-I_532, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
11
被引用文献数
1

首都圏の都市鉄道では,朝ラッシュ時に定常的な混雑が発生している.混雑緩和に対する一つの解決策として,時差通勤をした者に対して,抽選で賞金が当たる抽選型報奨金制度がある.本研究では,東京メトロ東西線利用者を対象として,オーダードロジットモデルを用いて抽選型報奨金制度を導入した場合の鉄道利用者行動モデルを構築し,当選金額および当選金額に対する感度分析を実施した.その結果,当選の期待値が100円の下で当選金額を28.9千円(当選確率0.33%)とした場合,定額型施策よりも時差通勤施策の参加者が増加する可能性が示され,混雑率は197.5%となり,現状の混雑率である199%から1.5%減少することが示された.当選金額を20万円(当選確率0.05%)と高額に設定すると,混雑率は196.9%まで減少し,定額型施策よりも0.6%低下した.
著者
杉下 佳辰 朝倉 康夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_215-I_223, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
21

インフラストラクチャーのような相互依存性を有するシステムにおいては,ひとつのシステム内の局所的な障害による影響が複数のシステムに波及し,大規模な障害に発展する現象(カスケード故障)が発生する恐れがある.本研究では,電力網と通信網の相互依存関係を想定したモデルを拡張し,フローを考慮した過負荷による故障と依存性を考慮した故障を表現し,相互依存ネットワークにおけるカスケード故障のシミュレーションモデルを構築した.2003年のイタリア大停電を背景とした条件をモデルに入力して数値計算を行った結果,単体の場合に頑健なネットワークであっても,相互依存性によって脆弱性が大きく増大する危険性があることが示唆された.ネットワークの脆弱性を適切に評価するためには,相互依存性による影響を考慮することが必要不可欠である.
著者
大庭 哲治 松中 亮治 中川 大 工藤 文也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_1047-I_1056, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
9

厳しい経営状態にある地域鉄道を維持するにあたっては,むやみに運行費用の削減をするのではなく,事業者ごとに路線特性を考慮し,運行費用の適正化を目指すことが必要である.そこで本研究は,平成23年度に運行されていた日本全国の地域鉄道事業者を対象に,運行費用の相違が生じる要因を明らかにすることを目的として,運行費用と路線特性の関連性について分析した.その際,従来から作業量の指標として用いられている鉄道車両の走行距離に加え,時刻表に基づいて算出した鉄道車両の走行時間を新たに分析指標として加えた.その結果,線路保存費,電路保存費,車両保存費,運転費,運輸費の5費用項目において路線特性と運行費用の関連性について統計的に明らかにし,また鉄道車両の走行時間が運行費用を分析するにあたって有効であることを示した.
著者
西村 悦子 今井 昭夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_659-I_667, 2013 (Released:2014-12-15)
参考文献数
14

本研究では,国内外の大規模コンテナターミナルで使用される荷役方式に着目し,そこで主として使用される荷役機器とターミナルレイアウトの特徴がコンテナの配置計画にどのような違いをもたらすかを検証する.具体的には荷役機器の違いは,コンテナヤードの保管エリアにあるコンテナブロック間に設けられた通路のどこを搬送車両が走行するかで移動に要する時間が異なること,さらに荷役機器の大きさや機動性に伴ってターミナル全体の保管容量が異なることがある.そこで評価指標には,総サービス時間とスペース占有率を用いた.計算結果より,港の混み具合や係留パターンに関わらず,タイヤ型門型クレーンで評価が高かったが,そのうち半数のケースでレール式門型クレーンと同等の評価を得ることが分かった.
著者
北川 夏樹 鈴木 春菜 羽鳥 剛史 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_327-67_I_332, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
21

本研究では,「家族」,「学校や会社等の組織」,「地域」,「国家」という4つの共同体を取り上げて,これらの共同体からの疎外意識が主観的幸福感に及ぼす影響について実証的に検討することを目的とした.この目的の下,主観的幸福感を構成する「感情的幸福感」と「認知的幸福感」に関する既存尺度とヘーゲルの理論を基に作成した「人間疎外尺度」を用いて,両者の関連を検討した.その結果,共同体に対する疎外意識と主観的幸福感との間に負の関連性が示され,共同体からの疎外意識を感じている人ほど,その幸福感が低い傾向にある可能性を示唆する結果が得られた.特に,「家族」と「国家」に対する疎外意識は,感情的幸福感と認知的幸福感の双方に対して直接的な負の影響を及ぼし得る可能性が示唆された.
著者
中村 一樹 森 文香 森田 紘圭 紀伊 雅敦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_683-I_692, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
21

近年,道路整備の方針は歩行者中心の多機能な空間整備へと転換が求められているが,従来の歩行空間整備は個別の機能に注目しており,多機能性を包括的に評価する手法が確立されていない.そこで本研究では,歩行空間の機能別のデザインが包括的な知覚的評価に与える影響を特定することを目的とする.まず,歩行空間整備のガイドラインをレビューして,多様なデザイン要素を機能別に整理した.そして,全国の整備事例のデザイン要素の水準を指標化し,道路タイプごとにデザイン要素の特徴を類型化した.最後に,各機能のデザインの知覚的評価のアンケート調査を行い,その意識構造について共分散構造分析を行った.この結果,歩行者は歩行空間デザインの機能に階層的なニーズを持ち,これを考慮した機能間のデザインの組合せが重要であることが示された.
著者
井形 康太郎 田中 尚人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_181-I_189, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
13

現代の地域コミュニティには,地域住民の地域に対する関心の低さという課題がある.解決には,地域に対する愛着と誇りという意味のシビックプライドの考え方が必要である.この考え方の醸成のきっかけとして,小学校で取り組まれる地域学習が位置づけられる.本研究では,熊本市内にある向山小学校を対象に,地域学習によって児童に起きる,地域に対する意識の変化の構造とその行程を明らかにすることが目的である.児童の好きな風景の絵や理由と10年後の校区をこうしたいという設問の回答を,共起ネットワークなどを用いて分析した.その結果,地域学習を通じた他者との関わりが地域に対する意識の変化を生むことが分かった.
著者
金 利昭 本田 慎弥
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_585-I_594, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
10

自転車の車道左側通行を徹底しようとすれば,必然的に自転車利用者には車道上での迂回や歩道上での押し歩きを選択してもらうことになる.しかし現状では自転車利用者が迂回や押し歩きを選択することは少なく,歩道上を違法に通行することが黙認されている.本研究の目的は,自転車の車道左側通行に伴う迂回・歩道押し歩き・歩道通行の発生構造を,主要因である発着地点間の位置関係に着目して解明するこ とである.そのため消費者行動分析で用いられるPSM分析を応用した意識調査分析手法を開発し,幹線道路をケーススタディとしたアンケート調査を実施することにより歩道通行の発生構造を分析した.結果, 交差点間隔が200mと500mの場合,迂回・歩道押し歩きを無理なく選択する発着地点間の位置関係は,出発地から50m以内であることが判明した.
著者
織田澤 利守 大平 悠季
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_1-I_15, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
74
被引用文献数
1

社会資本整備のマネジメントサイクルの確立に向けて,事後評価の充実が重要な課題の 1 つに挙げられる.事後評価では,ストック効果の発現状況を多面的に捉え,統計データを有効に活用しながら,可能な限り定量的・客観的に効果を把握することが求められる.インフラ整備によってもたらされるストック効果を適切に評価するためには,実務で一般的に行われている単純な前後比較では十分とは言えない.本稿では,昨今,様々な分野で広く活用されるようになった統計的因果推論について,その手法を概説したのち,交通基盤整備効果の推定を行う既往研究をレビューする.その上で,交通基盤整備評価への適用に向けた論点整理を行うとともに展望について述べる.
著者
小川 圭一 宮本 達弥
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_883-I_892, 2012 (Released:2013-12-25)
参考文献数
5
被引用文献数
1

近年,都市交通手段としての自転車が見直されてきており,環境負荷の低減のため,自動車から自転車への交通手段転換の促進が期待されている.一般に,都市内においては5km程度以内の距離帯であれば自転車の所要時間がもっとも短いとされており,自転車利用の促進が期待される距離帯であるとされている.しかしながら,これは大都市都心部を想定した各交通手段のサービス水準にもとづいたものであり,地方都市や郊外地域においては各交通手段のサービス水準が異なることから,有効な距離帯は異なると考えられる.そこで本研究では,京都市中京区,京都府向日市,滋賀県草津市の3地域における各交通手段のサービス水準にもとづき,地方都市の実状に応じた自転車利用促進のための有効な距離帯の算定と比較をおこなう.
著者
宮川 愛由 田中 謙士朗 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.344-355, 2016

本研究は都市計画,土木計画に抜本的な影響を及ぼす地方政府の統治機構改革を決する政治プロセスの合理化に資する効果的なコミュニケーションについての実証的知見を得る事を目的として,大阪市を廃止して都区制度を導入する,所謂「大阪都構想」を巡る住民投票を事例として,有権者の接触メディアと政策判断との関係性を分析した.その結果,テレビや新聞といった両論併記が原則となる情報媒体を参考にする傾向が高い有権者は,情報の真偽の判断が困難となるが故に従前の意見を変化させない一方で,意見を変化させた人々の内,「反対」に転じた人々は精緻化見込理論でいうところの事実情報に基づく「中心ルート」によって,「賛成」に転じた人々は「周辺ルート」によって態度を変容させたことを示唆する分析結果が示された.
著者
北澤 俊彦 塩見 康博 田名部 淳 菅 芳樹 萩原 武司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_501-I_508, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
20

近距離無線規格であるBluetoothの普及を背景とし,諸外国ではBluetoothのMACアドレス(個体識別ID)を路側で把握することで旅行時間計測やOD計測など交通調査に活用する試みがなされている.わが国でもBluetoothを搭載した電子機器や通信機器が市場に出回るようになっていることから,受信機を設置した任意地点間の旅行時間が計測可能と考えられる.本研究では,BluetoothのMACアドレスを計測・記録して旅行時間計測を行うための調査システムについて検討するとともに,実環境で容易に利用可能な計測ツールの開発を行った.さらに,一般道路や都市高速道路を対象として旅行時間を観測したケーススタディを通じて,Bluetoothを用いた旅行時間計測に関する基礎的な分析を行い,現段階でも旅行時間調査に適用可能なシステムであることが確認できた.
著者
松井 祐樹 日比野 直彦 森地 茂 家田 仁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_533-I_546, 2016
被引用文献数
4

インバウンド観光は,今後の日本にとって重要な役割を担うものである.近年では,台湾,韓国,中国からの訪日外国人旅行者に加え,東南アジア諸国からの旅行者も急増している.観光行動の多様化が進む中,ニーズを十分に捉えた観光政策が求められている.しかしながら,彼らがどのような地域を訪問し,どのような観光活動を好むかを観光統計データに基づき複合的かつ定量的に分析された研究はこれまでにない.本研究は,訪日外国人消費動向調査の個票データを用いて訪問地傾向と観光活動を組合せて分析し,個人属性による差や時系列変化を定量的に示したものである.分析結果より,訪問地傾向と観光活動を組合せて分析することの重要性を示すとともに,近年増加する個人旅行者は,都市部を中心に多様な観光活動をする傾向にあることを明らかにしている.
著者
佐々木 邦明 西山 明博
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_189-67_I_195, 2011

本研究は,交通環境の変化を個人の主観的指標によって計測可能であるかを実証するものである.今回は中山間地に位置する2つの集落を対象に2009年に意識調査を含む生活意識調査を行い,その約2年後に再度同様の生活意識調査を行った.この2年間で,一つの集落ではデマンドバスの走行が開始され,他方は食料品店が閉店するなどの生活・交通環境等の変化があった.結果からはデマンドバスが走行を始めた集落では有意に主観的な生活満足度が向上した.また,個人の交通環境により主観的評価である移動手段に対する不満や,生活行動の断念が多くなる傾向も明らかになった.ただし生活満足度は個人の変化による影響が小さいことも示され,生活満足度は個人の変化による影響の小さな評価指標として活用できる可能性が示された.
著者
川村 竜之介 谷口 綾子 大森 宣暁 谷口 守
出版者
土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_511-I_521, 2015

本研究では,我が国において,公共交通車内における「弱者に席を譲る」「騒ぐ自分の子どもを注意する(抑止する)」という二つの協力行動を促すための有効な方策を明らかにすることを目的とし,欧州と東アジアの6か国における協力行動と規範の関係性に着目した.協力行動と規範の主観的評価については国際アンケート調査から,「マナーに関するアナウンスや掲示物」等,協力行動に影響を及ぼすと考えられる環境要因については鉄道会社のWebサイトや現地調査から把握し,分析を行った.その結果,「優先席」で席を譲る行動を促すアナウンスは,優先席以外で席を譲る行動を阻害している可能性がある事,また「騒ぐ自分の子供を注意する」行動を促すためには,周囲の協力行動に対する認知「記述的規範」を高める事が効果的である可能性が示された.
著者
羽鳥 剛史 関 克己 小林 潔司 湧川 勝巳
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_83-I_102, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
36
被引用文献数
1

火山災害により危機的事態が発生した場合,危機管理を担当する意思決定者には通常モードとは異なる状況判断や意思決定基準を採用することが求められる.本研究では,火山災害に関わる危機管理の現状と課題を考察した上で,有珠山噴火の事例を踏まえて,火山災害時の危機管理問題が災害ステージの時間的展開に応じて変化することを指摘し,各ステージの意思決定問題について検討する.さらに,危機管理に関わる意思決定モードとして,通常時と非常時の2つの意思決定モードについて考察する.その上で,災害ステージの展開に対応して意思決定モードを変更するための高次の意思決定原則(メタ原則)について検討し,メタ原則の下,危機管理に関わる討議システムを基盤として意思決定モードの選択を正統化するための規範的枠組みについて考察を試みる.