著者
和田 健太郎 臼井 健人 大口 敬 井料(浅野) 美帆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.85-96, 2017

本研究は,需要のランダム到着を考慮して,系統信号路線の総遅れ時間の期待値を評価する手法を提案する.この手法は交通流の変分原理(VT)に基づく.需要のランダム到着を考慮したVTでは,交通流ダイナミクスは時空間領域のネットワークにおける確率的な最短経路問題の解として記述されるが,その厳密な求解は困難である.そこで,以下の二つを組み合わせた近似解法を提案する:(i) 最短経路の持つ特性による解(経路)集合の縮小;(ii) Clark近似による多重積分の解析的な評価.モンテカルロ計算との比較を通して,提案手法が精度よく遅れ時間の期待値を計算できることを示す.また,提案手法の有用性を示す応用例として,駒沢通りにおける信号最適化のケース・スタディを示す.
著者
本村 真澄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.339-358, 2011

本稿では,帝政ロシア,ソビエト連邦,ロシア連邦における石油・天然ガスパイプラインの建設の歴史を概観し,その政治的な影響に関しても検討する.石油パイプラインでは東欧向けの「友好」パイプラインのように政治的な支配圏維持を目的としたものもあるが,1970年代のロシアから西欧向けの天然ガスパイプラインは,「緊張緩和」を前提としたもので,ソビエト連邦の崩壊を挟んで40年近く,安定的にガスを供給しており,政治的な「武器」としてではなく,むしろ地域の「安定装置」として機能してきた.今日,ロシアの石油パイプラインは太平洋に達しようとしており,天然ガスパイプラインも極東地域での配備が進んでいる.日本にとってこれはエネルギー安全保障上有利となる動きであり,これへの関与の姿勢が問われている.
著者
高橋 咲衣 内田 敬
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_1085-I_1094, 2016

視覚障碍者は,晴眼者と異なり,歩行支援ナビを利用できない.そのため,視覚障碍者は,歩行経験のない場所には晴眼者に連れて行ってもらわねばならず,日常生活で歩行し慣れている道でも,周辺施設について知れず,街歩きを楽しめない状況にある.本研究の目的は,視覚障碍者が日常生活で利用している街情報を把握し,目的地を目指すだけでなく,街歩きを楽しむという観点から,街情報を記述する際のルールを示した既往ガイドラインを改訂することである.<br>本研究では,音声ARアプリを実装したスマートフォンを用いて,視覚障碍者を対象としたフィールド実験を行い,そのヒアリング結果からガイドラインを改訂した.これにより,日常生活モビリティニーズを考慮した視覚障碍者向け歩行支援ナビの早期実用化,拡充可能性を示せた.
著者
吉枝 春樹 小林 渉 岩倉 成志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.43-62, 2020 (Released:2020-04-20)
参考文献数
25

東京圏の都市鉄道は莫大な乗降者数による停車時間の伸長が,混雑率緩和のための運行頻度増のネックとなっている.これを極めてシンプルな着想で解決する.それは,現在の信号システムに比べ,列車間隔をより短く制御できる移動閉そくシステムで運行頻度を増やして,列車毎の乗降者数を減じ,停車時間を縮減して,大幅に混雑率を低減させるというものである. このため,2つのアプローチをおこなった.まず,運転理論に基づく分析で,最小運転間隔90秒の可能性を示す.次に,停車時間を規定する乗降行動と列車挙動のエージェントシミュレーションモデルを構築する.これを用いて停車時間と運行間隔の縮減を分析し,検討路線では移動閉そくと主要駅の改良により95秒間隔で運転でき,大規模な線増投資を行わずに,混雑率150%まで緩和できることを示した.
著者
吉田 護 梶谷 義雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_251-I_258, 2019

本研究では,2016年熊本地震で被災した熊本市健軍商店街を対象として,通行量調査,タクシー利用者数データ,インタビュー調査を用いて,核店舗の被災が地域住民及び周辺店舗へ及ぼした影響を明らかにする.結果として,核店舗の営業再開は商店街の通行量や買い物タクシー利用者数の回復に大きく寄与したが,震災以前の水準までは回復しきれず,核店舗の営業休止中に住民の買い物行動が変化,営業再開後もそれが維持されている可能性が示唆された.また,コミュニティ活動を目的とした商店街訪問者は震災前後で維持されており,コミュニティ機能が震災及び核店舗の営業休止による商店街の賑わいの低下を軽減させることに寄与したことが示された.
著者
長江 剛志 赤松 隆 清水 廉 符 皓然
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.264-281, 2020 (Released:2020-09-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1

本研究は,経路と出発時刻を同時に選択する動的利用者均衡配分 (DUE-SDR: dynamic user equilibrium with simultaneous departure time and route choice)モデルの解法を開発する.具体的には,まず,一起点多終点もしくは多起点一終点の一般ネットワークを対象とし,待ち行列の物理的長さを捨象したpoint-queueモデルを用いて渋滞を表現する枠組を示す.この枠組の下で,DUE-SDRモデルを混合線形相補性問題として定式化する.次に,こうして定式化された問題が,適当な離散時点の枠組下で等価な二次計画問題に帰着することを明らかにし,これをFrank-Wolfe法を用いて解くアルゴリズムを開発する.最後に,提案解法をSioux-Fallsネットワークに適用し,未知変数が数万個に及ぶ問題に対しても,実用的な時間内に均衡解が求められることを示す.
著者
石原 凌河 松村 暢彦
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_101-I_114, 2013
被引用文献数
3

東日本大震災の教訓として,過去の自然災害の教訓や知恵を後世に伝え,それを地域での防災まちづくりや防災教育に活かすことが重要であると言われている.そこで,本研究では,地域で受け継がれている災害伝承の実態を把握するとともに,災害伝承と生活防災行動,防災意識,地域への態度,避難行動,防災対策との関係性について明らかにするとともに,地域単位で災害伝承を行う意義について考察した.その結果,年月が経つにつれて,地域で脈々と受け継がれてきた過去の災害伝承が途切れる可能性が示唆された.また,災害伝承は防災意識や避難行動,地域への態度に直接的な影響はなく,生活防災行動を通じて防災意識や避難行動,地域への態度の醸成につながることが明らかになった.
著者
柴田 優作 日比野 直彦 森地 茂
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_461-I_474, 2019
被引用文献数
1

わが国では,地方創生に資する重要施策の一つとして,訪日外国人旅行者の増加策が着目されている.訪日外国人旅行者数は近年顕著な増加を示すが,宿泊数に着目すると,民泊やクルージングの増加は宿泊施設での宿泊数の増加にはあまり繋がらず,地域への経済効果は限定的となっている.観光消費の4分の1以上を占める宿泊費を増加させることは地域にとって重要であり,宿泊実態を定量的に把握することは,インバウンド観光による地域活性化を考える上では重要である.本研究では,宿泊旅行統計の施設データを用い,訪日外国人旅行者の宿泊実態を市町村別に把握することを試みる.公表された都道府県別のデータではなく,約1600の市町村のデータを作成し,外国人宿泊者数,外国人比率,稼働率等より,各市町村の特徴を整理したことが本研究の特徴である
著者
梶原 大督 菊池 輝 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1-8, 2014 (Released:2014-01-20)
参考文献数
31

人々が,政府の基本政策に対して如何なる態度を示すかは,土木における諸政策を検討する上で重要な問題である.この認識の下,これまで「政府に対する批判」の原因を探る様々な研究が行われてきたが,これらが明らかにしてきた諸要因だけでは,政府に対する態度全般を完全に説明しているとは必ずしも言えないのが現状であり,政府に対する態度の要因を探る研究は未だ必要である.本研究では,政府や政府の政策方針に影響を及ぼす基礎的な変数の一つとして「人は皆,純粋なる利己主義者である」という信念,「利己主義人間観」が存在しているという議論に着目し,アンケート調査により,政府に対する否定的態度の形成に関する理論仮説を検証した.その結果「政府に対する批判」の背景に利己主義人間観が一つの要因として存在している可能性が示唆された.
著者
足立 茂章 高見 淳史 原田 昇 是澤 正人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.73-84, 2017
被引用文献数
2

近年,首都圏の鉄道路線においてホームドアの導入が進んでおり,設置路線においては軌道内転落事故や列車接触事故が減少している.一方,ホームドア導入時の列車運行計画では,従来の停車時間にホームドアの稼働時間を付加するため,各駅の停車時間は増加し所要時間も増加することになる.朝ラッシュ時間帯に着目すると,ホームドア導入により,車側付近の旅客接近や混雑が解消され,停車時間の安定化が確認された.また,車側の安全確認が人的作業から支障物センサーに代わり,ワンマン運転化すると,停車中の安全確認時間に変化が確認された.<br> 本稿では,ホームドア導入による運転形態及び駅の特徴を分類することで,その特徴にあった停車時間変化と安定性効果を分析すると共に,ホームドア導入時の列車運行のあり方を考察する.
著者
安間 匡明 鈴木 文彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.I_61-I_73, 2021

<p>PFI・PPP(以下「PPP」)では,PPP 契約が政府・自治体と特別目的会社(SPC)の間で締結され,その SPC が金融機関からプロジェクトファイナンス(PF)の資金を借りていることにも鑑みれば,出資企業の有限責任性や資金調達におけるノンリコースの原則を前提に PPP 契約が作成されていると考えられる.しかしながら我が国の PPP 契約をみると,かかる原則と必ずしも相容れない契約条項が規定されている.本稿においては,事業者の有責事由に基づく契約義務不履行に伴う公共主体への賠償責任に関する条項を海外事例とも比較し分析したうえで,PPP 契約の適切な在り方を考察する.</p>
著者
川井 涼太 金 利昭
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_1091-I_1100, 2018 (Released:2019-01-10)
参考文献数
8

近年,警察庁と国土交通省により自転車レーンや車道混在といった車道部の自転車通行空間の整備が推進されており,車道を通行する自転車の増加が見込まれる.車道を通行する自転車には駐停車車両の回避等の際に他車両と接触する危険性があり,後方確認や後方合図といった安全挙動の必要性が考えられるが,現行の交通規則は実効性に乏しい.そこで,本研究では,車道通行自転車の進路変更時における安全挙動に関してビデオ観測調査を行い,安全挙動の遵守実態の把握と安全挙動に影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的とした.その結果,進路変更時に安全挙動を行っている自転車運転者は全体の半分以下であることが判明した.さらに,安全挙動の遵守率には,駐停車車両の路上占有幅,離隔幅,PET値,追い越し車種が影響を与える要因として抽出された.
著者
桑原 昌広 吉岡 顕 本間 由紀子 宇野 伸宏 中村 俊之 SCHMÖCKER Jan-Dirk
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_1187-I_1195, 2018
被引用文献数
1

ワンウェイ型カーシェアリング(OWCS)はマルチモーダル交通環境における1つの交通手段として期待されている.本研究では,ユーザのトリップチェーン視点でOWCSの使われ方を評価するため,公共交通駅,カーシェアステーション(st),登録住所の関係を踏まえたトリップ判別モデルを定義する.<br>OWCSである豊田市のHa:moRIDEは,自家用車利用に近いラウンド利用トリップは少なく提供エリア外会員の二次交通トリップが最も多いこと,公共交通駅から離れたstを増加させることにより補完交通トリップ比率が経年で増加している等,本モデル利用により実態としてOWCSが公共交通補完に利用されていることを明らかにした.
著者
萩田 賢司 森 健二 横関 俊也 矢野 伸裕
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_1023-I_1030, 2014
被引用文献数
2

交差点における自転車事故の実態を把握するために,事故当事者の進行方向別の事故発生頻度を明らかにした.千葉県東葛地域の交差点自転車事故を分析対象として,緯度経度情報,当事者の進行方向矢印と事故類型などをもとに,自動車と自転車の相対的な進行方向を求めた.その結果,信号の有無により自転車事故の発生形態が大きく異なっており,信号交差点では,自転車と平行して道路を走行している自動車の右左折に伴う事故が大半を占めていた.無信号交差点では,自動車が交差点を通過する際の手前側の交錯点を走行している自転車との事故が多発していることが示された.また,夜間においては,自動車は交錯する自動車と逆方向から進入してくる自転車と衝突しやすいことが示された.
著者
伊藤 昌毅 諸星 賢治 太田 恒平 森山 昌幸 神田 佑亮 藤原 章正
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.I_1465-I_1475, 2021 (Released:2021-04-20)
参考文献数
15

2018 年に発生した西日本豪雨の被災地では多くの道路や鉄道が寸断され,住民や訪問者の移動に困難が生じた.バスや鉄道などは運行を確保にできる限りの手を尽くしたが,Web や乗換案内アプリケーションでは正確な案内が出来ておらず,公共交通の利用は困難であった.本論文では,災害時に公共交通情報を地域住民や訪問者に届ける方法を論じ,西日本豪雨における実践を通じて有効性を示す.情報を一箇所に集約することは災害時には現実的ではないため,それぞれの交通事業者が出来る範囲で情報発信を行い,乗換案内などからリンクを張るという自律分散的な情報提供を実現した.時刻表通りの運行が困難な状況で役に立つバス運行実績情報や代行バスの位置情報といったリアルタイム情報を提案手法でまとめ,総合的な交通情報の把握を可能にした.
著者
玉越 隆史 横井 芳輝 石尾 真理 鎌田 敏郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.101-116, 2015
被引用文献数
1

全国の多数の道路橋で高齢化が進んでおり,限られた予算で合理的に維持管理することが求められている.そのため,点検データから劣化特性を推定して将来予測に反映する試みも行われている.道路橋では古くから技術基準類が整備され,年代毎には全国でほぼ同じ基準で建設されてきており,その性能は整備時点の技術基準に大きく依存する.本論文では,適用されてきた技術基準の規定を主に耐久性との関係に着目して整理した.その結果,主な劣化要因に関わる規定は,経験的な構造細目等の仕様や下限値規定であり,潜在的に耐久性能の大きなばらつきが避けがたいことを明らかにした.一方で,性能規定化以前の道路橋では,耐久性能に関わる仕様等が適用基準毎に一致するものも多く,劣化予測の観点から耐久性能の差別化が行える可能性があることを示した.
著者
齊田 光 平澤 匡介 高橋 尚人 石田 樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_1013-I_1022, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
11

路面において日陰となる時間(日陰時間)が長い区間では,路面凍結や積雪などが生じやすいため冬期の交通事故発生率(事故率)に影響を及ぼしている可能性がある.そこで本研究では,日陰時間と事故率の関係について,札幌市内の一般国道を対象として検証を行った.検証の結果,冬期は日陰時間が長い地点で事故率が大きくなる傾向にあり,冬期の日陰時間増に伴う事故率の増加率は夏期の約2倍であった.また,この傾向は交差点区間で顕著であり,冬期の日陰時間増加に伴う事故率の増加率は夏期の4倍以上に達することが明らかとなった.
著者
川村 竜之介 谷口 綾子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_335-I_344, 2013 (Released:2014-12-15)
参考文献数
26
被引用文献数
8

本研究は,都市空間における自宅・職場・学校以外の場所を「まちなか」と定義し,まちなかで人々に「居場所」として認知されている場所を分類し類型化すると共に,まちなかの居場所の有無と生活の質・地域への意識(地域愛着など)との関係性について明らかにすることを目的としている.具体的には,まちなかの居場所の有無や,生活の質・地域への意識に加え,既存研究を参考に作成したまちなかの居場所感を計測するためのWEBによるアンケート調査を実施した.分析の結果,特に飲食店や友人・親戚宅,図書館などが多くの人に居場所として認知されていること,居場所の有無と生活の質・地域への意識との間にはポジティブな関係があることが統計的に示された.また居場所感尺度の特徴の違いによって,まちなかの居場所を7種類に類型化することができた.
著者
中村 一樹 大田 佳奈 佐伯 友夏里
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_909-I_917, 2018 (Released:2019-01-10)
参考文献数
31

近年開発が進むVR技術や生理評価手法は,体感型の評価ツールとして,多様なルート環境を動学的に評価することを可能としている.そこで本研究では,体感型評価ツールを用いた歩行ルート評価の基礎的分析を行い,その特徴を整理することを目的とする.まず,VRと生理指標による空間評価手法について文献レビューを行い,歩行空間評価における体感型評価の可能性を整理した.そして,基礎的な実験によりこの可能性を例証するため,VRの視覚ツールとしての特徴を把握し,ケーススタディ地区においてVRと心拍による歩行ルート評価結果を比較した.この結果,VR評価と心拍評価で新たな歩行空間評価の可能性を示す整合的な結果が見られ,これらの組合せ評価の潜在的な有用性が確認された.
著者
渡部 数樹 中村 英樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_889-I_901, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
18
被引用文献数
7

本論文では,交通事故削減に向けた効率的な安全対策実施を目標として,道路交通や社会環境条件と事故発生との関係について事故類型別に統計モデル分析を行った.分析にあたっては,事故データに道路交通状況等の各種情報をGIS上で付与したデータベースを構築し,事故発生頻度を被説明変数とした負の二項分布回帰分析より影響要因の特定を試みた.分析結果より,幹線道路の事故発生頻度と混雑時平均旅行速度や交差点間距離が密接な関係にあることや,非幹線道路では道路幅員や用途地域等の要因が事故類型間で異なることを示した.さらに,非幹線道路の事故は旅行速度の低い幹線道路に近い位置で多発する傾向を示唆した.分析結果をふまえ,幹線道路の円滑性向上や階層化された道路ネットワークの再構築による安全性向上について考察した.