著者
倉内 慎也 大山 貴志 吉井 稔雄 白柳 洋俊
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_871-I_878, 2018 (Released:2019-01-10)
参考文献数
9

交通事故統計によれば,高速道路の事故率は一般道路の約10分の1である.また,重大事故率については,高速道路の方がやや高いものの,ほぼ同程度である.それにも関わらず,高速道路の運転は怖いと考え,利用を避けるドライバーが一定数存在するものと思われる.そこで本研究ではドライバーに対してアンケート調査を実施し,事故率と重大事故率の知覚状況や,それらが高速道路の利用頻度に及ぼす影響を分析した.結果,事故率については約2割,重大事故率については約9割の人が,高速道路の方が高いと知覚していることを確認した.また,事故率と重大事故率の知覚値が高い人ほど,高速道路の運転への恐怖感が高く,利用頻度が有意に低下すると共に,所要時間や料金等に対する満足度と比較しても,無視できない影響を及ぼしているとの結果を得た.
著者
片岡 将 柳川 篤志 田中 皓介 川端 祐一郎 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_375-I_386, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
25

本研究では,交通インフラ整備がもたらすマクロ経済上の効果及び各地域の人口や経済力の分布の変動をシミュレーションするため既往研究で提案されているモデル(MasRAC)を用いて,新幹線の新規整備効果を推計した.その結果,新幹線の新規整備が我が国の実質GDPの向上に寄与し,一定のマクロ経済改善効果があることが確認された.地方別の生産額及び人口の変化に着目した分析では,現状整備との比較 においてリニア中央新幹線の整備や新幹線の全国整備を進めた場合,関東地方の人口が最大4.2%,GRPは最大5.3%の水準で少ない一方,各地方においては人口等が多く,「分散化」効果があることがわかった.これらの結果は,新幹線の新規整備が我が国全体の成長力向上に寄与し,また人口と経済力の偏在状況を改善する効果を持つことを示すと言える.
著者
石塚 裕子 新田 保次
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_283-67_I_290, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

本研究では,視覚障がい者は移動を伴う観光行動へのニーズの表明率が低いという既往研究の結果を踏まえて,自身の五感を使って地区の魅力を体得するような楽しい散策経験は,散策意図の向上に寄与すると仮説を設定した.散策の支援策の一つとして観光ガイドに着目し,観光ガイドを伴った散策経験により,当該地の魅力の認知ならびに当該地を散策しようという散策意図の向上に寄与する可能性を検証し,観光ガイドを伴った散策の効果について考察を行うことを研究目的とした.その結果,観光ガイドを伴った散策の経験は,地区の印象や推薦意図の向上を促すことが確認され,視覚障がい者が当該地の魅力を認知することに寄与することが確認された.しかし,散策意図の向上を図ることは難しいことが明らかになった.
著者
平澤 匡介 齊田 光 高田 哲哉 石田 樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_981-I_992, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
14

我が国の高規格幹線道路は限られた期間や費用で整備を進めるために,交通量が少ない区間は4車線のうち,2車線のみを暫定的に供用する方法を採用した.暫定2車線区間は大半がラバーポールと縁石による簡易分離であり,正面衝突事故が起きた場合は重大事故に至りやすい.寒地土木研究所では,2車線道路の正面衝突事故を防ぐために,支柱が細く,設置幅が少ない緩衝型のワイヤロープ式防護柵を開発した.本稿は,高規格幹線道路暫定2車線区間の中央帯にワイヤロープ式防護柵の導入を検討するため,暫定2車線区間の道路構造を試験道路で再現し,大型車のすれ違い走行試験や試験参加者の主観評価を行い,さらに,車両衝突時のはみ出し量を低減させるロープ連結材の開発について報告するものである.
著者
佐溝 昌彦 渡邉 諭 杉山 友康 岡田 勝也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.237-249, 2013 (Released:2013-09-20)
参考文献数
31
被引用文献数
4 8

鉄道橋梁では河川増水時に橋脚基礎周辺の河床が洗掘されて安定性が低下し,橋脚が傾斜・転倒することがある.こうした災害から旅客や列車を守るため,ハード対策に加えて,ソフト対策として河川水位に応じた運転規制を行っている.こうした措置を合理的に実施するためには,橋梁の状態を詳細に調査したうえで実施する必要があるが,膨大な数の橋梁すべてを対象に行うことは困難である.このため,洗掘被害を受ける恐れのある橋梁をより簡便な方法で的確に抽出することが重要となる.本論文では,日常の検査業務で得られる種々のパラメータと過去の被災データに基づく多変量解析により,現状の被災危険性と将来的な洗掘危険性を推定する手法を検討した.その結果をもとに,増水時に被災を受ける恐れのある注意すべき橋脚を抽出する手法を提案した.
著者
西村 和記 東 徹 土井 勉 喜多 秀行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_809-I_820, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
26
被引用文献数
1

利用者の減少等から地域公共交通の維持が困難な状況となっているため,行政から補助金等の財政支出がなされている.しかし,これまで企業として独立採算で運営されていた交通事業者に補助金を継続して投入することに対しては,行政側の財政難からの否定的な意見なども少なくない.一方,地域公共交通の価値や必要性を重要視する声も多数あるが,これまでは定性的に述べられていることが多く,収支率以外に定量的に評価されたものが残念ながら少ない状況である.そこで本研究では,クロスセクター効果の考え方から,地域公共交通の定量的な価値算定を試みるものである.このことを通じて「公共交通の赤字」という意味を改めて考え直し,地域公共交通への支援は赤字補填ではなく,地域を持続するための必要な支出であることを考察するものである.
著者
森山 真稔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.I_39-I_46, 2022 (Released:2022-05-18)
参考文献数
45

PFIに関する経済学的研究の知見は我が国のPFIの政策,実務の双方に示唆を加えるものであり,特に近年その重要性が増している.このような背景を受け,本稿は我が国のPFIを分析対象とした経済学的研究の論点整理と展望を目指し,これらの研究の包括的レビューを行った.レビューの結果,(1) 理論研究は契約理論をベースに発展してきており,諸外国の著名な先行研究と整合的な結果を得ていること,(2) 実証研究は我が国のPFI事業の入札に関するデータを用いて競争入札に関する理論や契約理論の検証を行っており,これらの理論を支持するような結果が得られていること,の2点が明らかになった.その一方で,実証研究は主にデータの制約から分析内容が限定されており,この分野の研究のさらなる発展に向けては課題が残るといえる.
著者
塚井 誠人 原 祐輔 山口 敬太 大西 正光
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_349-I_358, 2018 (Released:2019-01-10)
参考文献数
10

2016年に50周年を迎えた土木計画学研究委員会では,これまでの歩みの検証と,今後の展望を議論するための幹事団が設けられた.そのミッションは,2016年春大会から開催された4回のイベントを通じて,今後の土木計画学研究委員会について,議論を深めることであった.本稿では,土木計画学の研究トピックスの変遷の分析(第54回研究発表会,長崎大学で報告)を,この間の幹事団の議論とともに記録することを目的とする.1985年~2015年までの約30年間の土木計画学研究・論文集に基づくデータベースにトピックモデルを適用して,研究トピックスを定量的に抽出した.その結果,基礎研究を終えた多くの研究テーマが,社会で活用されながらも,新たな課題とともに再び学術的な研究テーマとなるサイクルの一端が窺えた.
著者
岸川 知樹 和田 健太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.I_1109-I_1119, 2022 (Released:2022-05-18)
参考文献数
11

鉄道における保安装置・自動運転の性能向上により,今後極めて高速に車両同士の連結・解結が可能となることが期待される.本研究では,高速車両連結(解結)技術,つまり,柔軟に車両編成数を変えることができるシステムを前提として,新たな高頻度鉄道運行スキームを提案する.具体的には,郊外方向では急行列車が駅に停車する度に新たな各駅停車列車を生成(切り離し)する,その反対に,都心方向では多数の各駅停車列車が急行停車駅で 1 本の急行列車に連結される運行スキームを考える.この提案スキームを表現する連続体近似に基づく数理モデルを構築し,従来型運行スキームとの比較を通して,提案スキームの特徴や優位性を明らかにする.
著者
板橋 昂汰 和田 健太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.I_1045-I_1055, 2022 (Released:2022-05-18)
参考文献数
14

本研究は,ネットワークへの需要分布が上位選択(交通モード選択や住宅立地選択等)により内生化された,タンデムボトルネック・ネットワークにおける出発時刻選択問題の特性を理論的に考察する.具体的にはまず,上位選択に制約のない単純な同時選択均衡を考え,2 つのボトルネックに限定した均衡状態パターン(どの地点で需要・渋滞が発生するか)が上位選択固有の費用(効用)差,隣接ボトルネックの容量比によって分類できることを示す.そして,このパターン分類が,一般的なボトルネック数の問題や上位選択に制約を加えた問題の分類にも有用であることを明らかにする.また,均衡状態と社会的最適状態との関係についても議論を行う.
著者
甲斐野 翼 日比野 直彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.I_329-I_338, 2020 (Released:2020-04-08)
参考文献数
16

高速道路ではICとは異なる救急車専用の緊急入退出路を設置し,救命救急に貢献している.しかしながら,高速道路会社管理道路では緊急入退出路の設置は全国でわずか17箇所に留まっており,今後の更なる整備が望まれるが,整備に向けた実務的な面での検証は十分ではない.本研究では,緊急入退出路の整備経緯や利用実態を明らかにしたうえで,新規設置に向けた検討を行う.具体的には,整備に関する議事録等を基に,整備の動機や整備の流れを明らかにし,また,対象病院への搬送データ等を基に利用実態を明らかにする.それらの結果を基に新規設置のために必要な条件について言及するとともに,その条件を満たす効果的な新規設置検討箇所について明示する.
著者
大谷 悟 佐渡 周子 今野 水己 土谷 和之 牧 浩太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_163-I_171, 2013 (Released:2014-12-15)
参考文献数
41
被引用文献数
1 1

主要先進国・国際機関の公共事業評価に適用される社会的割引率について調査を行った結果,1990年以降,主要先進国等の多くで,公共事業評価に適用される社会的割引率の数値の引下げ,その算定方法の見直し,不確実性への対応の進展(時間逓減割引率の導入,感度分析の実施等)等が行われていることがわかった.これらは,実質市場金利の低下,世代間の公平性への配慮,関連する分野での調査研究の進展等を主たる理由としている.我が国の公共事業評価に適用される社会的割引率は4%と設定され,10年以上改定されていないが,これらの調査結果を踏まえ,社会的割引率の水準及び算出方法等に関する論点の整理を行った.
著者
宮谷台 香純 谷口 綾子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.II_798-II_811, 2022 (Released:2022-04-20)
参考文献数
33

自動運転システム(以下,AVs)の実証実験や運転支援技術の実装に伴い,将来利用者となる人々のAVsに関する議論や課題も多様化していると考えられる.今後,AVsの社会的受容性を検討するうえで,これらを把握する必要がある.そこで,マスメディアの一つである新聞による報道に着目する.新聞は議題設定効果を有していると言われており,新聞分析では人々が抱える議題を明らかにできる.本報告では,AVsについて新聞が社会に提供した議題を明らかにし,AVsの開発・導入の議題の変遷を把握することを目的とする.読売新聞を調査対象とし,「自動運転」の登場よりAVsに関する記事を収集し,質的分析を行った.その結果,国際競争で勝つために開発するといわれる背景にガラパゴス携帯の失敗があること,技術への過信が危惧されていることなどが明らかとなった.
著者
中村 陸哉 神田 佑亮
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.II_241-II_251, 2022 (Released:2022-04-20)
参考文献数
12

COVID-19の感染拡大による外出自粛に伴い,移動需要が急激に低下している.我が国の公共交通業界は収入が大きく落ち込み,公共交通サービスの提供の継続が困難な状況に直面している.公共交通の受けた影響の規模を把握するために,経営状況への影響度を多面的に把握する必要がある.本研究では,全国の上場交通事業者が開示する決算資料を集計し,営業収益や営業利益・損失の推移,雇用調整助成金の受取状況を分析した.その結果,交通事業者の危機的状況は加速しており,赤字・減収に対する支援も不十分であることが示された.
著者
柿本 竜治 上野 靖晃 吉田 護
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_57-I_68, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
29
被引用文献数
2

「自然災害に対するリスク認知が高くても,そのリスクへの防護行動を取らない」という自然災害リスク認知のパラドックスの存在が指摘されている.このパラドックスの存在は,自然災害リスクの認知を向上させるだけでは,防護行動を促すことが難しいことを意味する.これまでに,防護意図や防護行動の促進および阻害要因を抽出する研究は数多く行われているが,抽出された要因が防護意図や防護行動に与える影響は結果が異なっている.そこで本研究では,リスク認知のパラドックスの解消に向けて,同じ質問項目内容のアンケート調査を6地区で行い,個人の減災行動の地域性や共通性を検証した.その結果,非常持ち出し品の備えを促す上で,リスク認知改善よりむしろ反応コストに関する対処評価認知の改善が地域に共通して有効であることが示唆された.
著者
柿本 竜治 上野 靖晃 吉田 護
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_51-I_63, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
70
被引用文献数
2 6

「自然災害に対するリスク認知が高くても,そのリスクへの防護行動を取らない.」といった自然災害リスク認知のパラドックスの存在が指摘されている.自然災害リスク認知のパラドックスの存在は,自然災害リスクの認知を向上させるだけでは,そのリスクへの防護行動を促すことが難しいことを意味する.そこで,本研究では,既往研究の中に見られる自然災害リスク認知や減災意識と防護行動との乖離の要因を抽出し,自然災害リスク認知パラドックスの存在を確認する.そして,防護動機理論の枠組みを援用して,研究の視点や枠組みを整理することを通じて,個人の自発的な減災行動の包括的な理解を促すことを目的とする.また,同時に阿蘇市および南阿蘇村で実施された予防的避難の実行状況と自然災害への意識の分析から意識と行動の乖離の要因を探る.
著者
林 勇朔 浜岡 秀勝
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_653-I_663, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
6
被引用文献数
1 2

単路部横断では,高齢者は横断時間が長いため,横断開始のタイミングを誤り,横断後半で車両との事故の危険性がある.そこで本研究では,安全島を用いた二段階横断が有効と考えている.安全島により,横断歩道を一度に横断せずにすみ,安全島で一時停止もできる.また,横断の前半部は右側,後半部は左側のみの確認で良いため,高齢者でも横断タイミングを誤らずに横断しやすくなる.以上より,二段階横断にすることで,歩行者の安全性が向上すると考えられる.仮説を検証するために,調査対象区間にてビデオを撮影し,歩行者,車両の到着時間を取得した.また,これらデータを用いてシミュレーションを行い,その場所に適した制御方法を明らかにした.シミュレーションの結果,5つの制御方法のうち,安全島の設置が有効であると明らかになった.
著者
大口 敬 山口 智子 鹿田 成則 小根山 裕之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_1175-I_1183, 2012 (Released:2013-12-25)
参考文献数
8

交通信号制御における切替り時の損失時間は,交差点円滑性指標の遅れに影響を与え,また交通安全上も重要である.切替り時における損失時間の開始と終了(有効青時間の終了と開始)のタイミングは,これまでほとんど研究されていない.損失時間を厳密に評価することが,より安全で効率的な交通信号制御に繋がる.本研究では,青丸表示から右折矢印表示への切替り時に着目し,飽和交通流,最終車と先頭車の通過タイミング,および青丸表示時に右折車が停止線を越えて交差点内に滞留するスペース長などの幾何構造を調べ,損失時間と有効青時間を分析する.幾何構造の異なる5交差点の分析から,右折専用現示前には損失時間ではなく有効青時間が重なるゲインが存在することを実証し,このゲインの大きさを交差点形状から推定する方法を提示する.
著者
尾野 薫 山中 英生 中西 雄大
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_859-I_869, 2018 (Released:2019-01-10)
参考文献数
15

本研究は,自転車の普及や法的整備の歴史から道路通行システムにおける自転車の位置付けと通行実態の変遷を明らかにし,自転車の歩道通行の常態化や双方向通行の要因について一示唆を得ることを目指す.各法制度の変遷から,1970年と1978年の道路交通法改正で自転車の位置付けが変化したことがわかった.次に,1960~85年の自転車通行状況を写した写真や映像資料からデータベースを作成し自転車の道路通行実態の変遷を把握した結果,改正前は自転車の車道・左側走行が浸透していたが,1970年の道路交通法改正後に歩道走行が出現し,1978年の道路交通法改正後に車道走行が減少し歩道走行が増加したことがわかった.最後に,道路通行システムへの理解不足,自転車の車両特性との齟齬が自転車の歩道通行の常態化や双方向通行の要因である可能性を示唆した.
著者
田中 皓介 稲垣 具志 岩田 圭佑 大西 正光 神田 佑亮 紀伊 雅敦 栗原 剛 小池 淳司 佐々木 邦明 佐々木 葉 Schmöcker Jan-Dirk 白水 靖郎 泊 尚志 兵藤 哲朗 藤井 聡 藤原 章正 松田 曜子 松永 千晶 松本 浩和 吉田 樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.129-140, 2021 (Released:2021-06-20)
参考文献数
20
被引用文献数
2

本稿ではCOVID-19の蔓延および政府からの社会経済活動自粛要請に伴う,人々の意識行動への影響を把握することを目的にWebアンケート調査を行った.その結果,感染・死亡リスクを,現実の数倍~数千倍過大に評価している様子が明らかとなった.また,接触感染対策として効果的な「目鼻口を触らない」の徹底度合いが他の対策に比べて低く,周知活動の問題点を指摘した.さらに,緊急事態宣言に対する65%以上の支持率や,「家にいる」ことについて,「ストレス」を感じる以上に「楽しい」と感じる人が多いこと,行動決定のために参考にするのはキャスターや評論家や政治家よりも「専門家の意見」の影響が大きいことなどが明らかとなった.