著者
中村 嘉明 溝上 章志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_1197-I_1205, 2018

我が国における乗合バスの輸送人員は1968年にピークを迎え,その後減少を続けている.そのような状況の中,バス利用者の減少の歯止めとして期待され,1980年頃からバスロケーションシステムの導入が全国で進んだ.2017年現在,バスロケーションシステムは全国で様々な通信インフラや,クラウドなどのサービスを利用し導入され,その形態は多様化している.一方で,過去に導入したバスロケーションシステムに導入効果が認められず,サービス廃止やシステムの入れ替えが行われているものも数多く存在する.本研究では,全国のバス事業者へのバスロケーションシステムに関するアンケートの調査結果と,多くのバスロケーションシステムの導入・運用の実態をもとに,バスロケーションシステムの現状と課題,今後のバスロケーションに求められるものを示す.
著者
正木 恵 寺部 慎太郎 葛西 誠 武藤 雅威
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_313-I_322, 2015
被引用文献数
1

本論文では,ご当地グルメにより地域活性化を目指す自治体がご当地グルメを観光資源として有効活用できているのかを振り返るために,ご当地グルメの成熟度(栄枯盛衰)を把握する方法を考案することを目的とした.先行研究に引き続き,ご当地グルメの観光資源としての成熟度はその店舗立地に表れるのではないかと考えた.本稿では特に「店舗配置の時間方向への変化」に着目し,2012年と2014年の二時点での浜松餃子店舗の位置情報を用いて1)ご当地グルメの観光資源としてのポテンシャルの変化を集積度により評価すること,2)店舗間の関係性(競合・補完関係)を空間点過程により定量的に評価することを提案し,これらがご当地グルメの成熟度を把握するためのツールの基礎となり得る可能性を示した.
著者
紀伊 雅敦 横田 彩加 高 震宇 中村 一樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_507-I_515, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
9
被引用文献数
6

本研究は共有型完全自動運転(LV5)車両の普及モデルを構築し,車両価格,都市半径,人口,走行速度が普及に与える影響を分析した.その結果,1) 共有型LV5車両は,個人所有の従来型車両の10倍以上の費用でも普及しうること,2) 普及には車両費用のみならず,都市半径と走行速度も影響し,都市半径が小さく,走行速度が高いほど普及率が高まること,3) 都市人口は普及率に影響しないこと,4) 車両費用が高くても半径の小さいコンパクトな都市では普及率が高くなりうることが示された.以上より,システム価格の高い初期段階では,空間的にコンパクトな小都市やエリア限定での導入が普及率を高める上で効果的であり,車両費用の低下に応じた大都市への展開やサービスエリアの拡大が,普及率の向上には効率的なことが示唆された.
著者
寺部 慎太郎 一井 啓介 柳沼 秀樹 小野 瑞樹 田中 皓介 康 楠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_669-I_679, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
37

観光客の回遊行動の把握は,従来はアンケートによる調査やGPSを用いた調査に依っていたが,近年ではWi-Fiパケットセンサーを用いた調査がなされている.本論文の目的は,Wi-Fiパケットセンサーを用いて歩行者や観光客の行動を把握し分析した研究論文をレビューすることと,それを踏まえて筆者らの取り組みからまだ発表されていない分析例を提示することである.特に,歩行が主な交通手段である比較的狭い地域内での観光スポット間OD交通量は従来の手法ではなかなか得にくいものである.そこで,1年目から3年目における2日分の成果を比較する.3時点のセンサー設置地点間のODパターンを比較したところ,その相関係数は高いものの少数のOD交通量が多いため,当センサーで得られたデータの範囲内では必ずしも類似性があるとはいえないことが分かった.
著者
金井 昭彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_305-I_314, 2014

19世紀フランスにおいては鉄道黎明期から,エンジニアや建築家によって駅舎配置計画類型の理論的分析が行われた.その中で標準型とされたのは,出発と到着の諸室を線路両側に配置する両側面型であった.また,フランスにおいては,旅客は荷物を預けた後は,出発直前まで待合室にいなくてはならず,ホームに立ち入ることは許されていなかった.当初からこの搭乗方式は批判が相次いだが,自由入構制度が導入されるまでには半世紀近くも要した.やがて,新方式が導入されたことによって,駅舎配置も影響を受け,待合室よりエントランスホールが機能上重要となり,徐々にL型配置が採用されるようになる.本研究では,フランスにおける駅舎配置計画の理論的分析と,実際の歴史的変遷の影響関係を明らかにする.
著者
松村 みち子 中村 文彦 田中 伸治 王 鋭
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_1107-I_1117, 2014

一般道路の路上に高齢者等の運転者が駐車できる「高齢運転者等専用駐車区間制度」が,わが国で2010年4月に導入された.本制度は日常生活に必要な施設の直近に,安全で快適な駐車環境を提供することで高齢運転者等を支援するものである.公共施設等の路外駐車場の移動制約者用駐車スペースとは異なり,対象車両が明確化され罰則もある.本研究では,事例として神奈川県における高齢運転者等専用駐車区間を取り上げ,利用実態,周辺施設の駐車場の整備状況,目的施設への公共交通によるアクセスのしやすさ等を併せて調査し,制度の導入効果を評価する.高齢者のモビリティを確保する上での課題や方策についても整理してみた.
著者
大矢 周平 中村 一樹 板倉 颯
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.I_1147-I_1153, 2021

<p>自動車依存の限界はより顕著となり,公共交通を中心とした移動を安全で快適に行える都市空間の再整備は急務である.この中で,公共投資が難しい財政制約下では,複数の交通システムを繋ぐネットワーク整備の有効性も求められる.特に,駅周辺の歩行環境の質は,公共交通の利用意向に影響し得る.しかし,複数の交通手段による移動において,手段間の移動の質の相互関係は明らかでない.そこで本研究では,交通手段の組み合わせと移動の質の関係を把握する.まず,交通手段別の移動の質の評価手法について整理する.次に,移動ログデータを収集し,交通手段別に移動の質を評価するアンケートを行う.最後に,交通手段の組み合わせ別に前後の移動の質の評価との関係を分析する.この結果,交通手段の組み合わせにより移動の質の評価が異なることを示した.</p>
著者
西村 卓也 高松 誠治 大口 敬
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_407-I_416, 2012 (Released:2013-12-25)
参考文献数
12

東京の街路構造は,そこで起きてきた歴史的イベントの影響を受けてその形を変えてきたと考えられる.本研究では,歴史的イベントとして明治維新,関東大震災,戦災と高度経済成長に着目し,各街路の空間機能的特性を位相幾何学的な観点から定量化できるSpace Syntax理論のAxial分析を用いて,東京の街路構造の変遷について分析し,考察するものである.ここでは,街路そのものが造り変わった場合に比較が難しかったAxial分析結果について,メッシュ単位で集計することにより,指標値の定地比較を可能とする定地近接性変化指数を提案する.これを用いて,東京の歴史的イベントとその都市空間形成上の意味について考察し,明治期から昭和期にかけての街路のネットワーク化などの都市形成・発展過程を明らかにする.
著者
中根 洋治 奥田 昌男 可児 幸彦 早川 清 松井 保
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.182-194, 2011
被引用文献数
1

本研究の事例に取り上げた矢作川流域のほとんどが花崗岩地帯であり,沖積平野の広範囲に砂が堆積している.近年,住宅や工場・道路などへの利用が多い旧河道や後背湿地では,地震時に堆積砂が液状化し,豪雨時に低湿地が浸水する被害を受けやすい.本研究では,矢作川の旧河道や後背湿地の生成過程と現状を歴史的文献・資料,地盤調査・工事資料,現地踏査などにより把握すると共に,浸水や液状化による災害に対する危険性を検討した.その結果,河床低下により矢作川本川の越水の危険性は減少傾向にあるが,支川の内水排除対策が今後の重要課題であり,また本川や各支川の旧河道及び低湿地における浸水や液状化に対する危険箇所が数多くあることを具体的に明らかにした.さらに,開発に伴う災害危険区域の増加傾向と共に遊水地の必要性も指摘した.
著者
田村 将太 田中 貴宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.172-180, 2019 (Released:2019-09-20)
参考文献数
21
被引用文献数
3

コンパクトシティ実現に向けた多くの計画では,サービス施設やコミュニティを維持するために人口密度が目標値として設定されているが,設定した人口密度が日常生活サービス施設を維持するための目標値として適切であるかについての検討は十分にはなされていない.本研究では,コンパクトシティ実現に向けた計画策定における拠点地域の人口密度設定の一助となる情報の提供を目的に,人口分布データと各施設の立地分布データを用いて,人口密度と各施設の立地との関連分析を行った.その結果,全29施設のうち25施設において人口密度と立地確率の間に比較的高い関連性が見られ,その立地傾向は人口密度の観点より,「10~20人/ha」,「20~60人/ha」,「60人/ha以上」の3つの人口密度区分に分類することができた.
著者
伊藤 将司 森本 章倫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_101-67_I_108, 2011
被引用文献数
1

本研究は,参加型の社会資本整備より,市民主体の継続活動に展開する要因を明らかにするものである.既往研究及び事例調査から,人(参加者とつながり),意識(目標と信頼関係),環境(適正な合意形成の場)の3つの要因を仮定し,詳細の事例分析によって検証を行った.<br>その結果,参加型の社会資本整備より,市民主体の継続活動に展開する流れを明らかにするとともに,その過程において,継続活動において3つの要因の形成が重要であることが明らかとなった.また,3つの要因に課題が生じた場合においては,継続活動が停滞する場合があることも分かった.
著者
大庭 哲治 松中 亮治 中川 大 北村 将之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_405-I_414, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
10
被引用文献数
3

長年にわたって地域の商業活動の中心を担ってきた商店街の衰退が進んでいる.衰退の原因は様々であるが,商店街は街の賑わいを生む場であり,他の商業施設にはない価値を有する.多様な特徴を持つ商店街の賑わいと土地利用及び業種構成の現在の関係に着目して,本研究は,京都市内86商店街の土地利用及び業種構成を現地調査によって詳細に把握した上で,賑わいとの関連性を定量的に分析した.その結果,小売業(食品系)の割合と歩行者密度は正の関連を有すること,駐車場・低未利用地の割合と歩行者密度や路線価には負の関連があること等,土地利用及び業種構成によって商店街の賑わいが異なることを明らかにした.
著者
曽篠 恭裕 宮田 昭 柿本 竜治
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_141-I_154, 2018

本研究では,海外の災害対応における,国際赤十字の仮設診療所資機材の輸送の改善に向けた示唆を得ることを目的として,災害の種類,被災地の地理的特徴,輸送の所要日数,診療活動の開始日,輸送された救援資機材の使用状況に注目して,過去の資機材輸送の比較分析を行った.その結果,突発災害対応において,救援資機材が到着する空港におけるボトルネックや,陸路の寸断による小型機,ヘリコプターを用いた優先する物資の輸送が発生していた.本研究を通じて,今後の資機材輸送の改善に向けて,災害の種類に応じた資機材輸送,梱包の小型軽量化,災害の種類に応じた資機材の選定,輸送資機材の標準化と事前備蓄,国際支援受入国による資機材輸送支援が課題であることが明らかとなった.
著者
田浦 扶充子 島谷 幸宏 小笠原 洋平 山下 三平 福永 真弓 渡辺 亮一 皆川 朋子 森山 聡之 吉冨 友恭 伊豫岡 宏樹 浜田 晃規 竹林 知樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_153-I_168, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
26
被引用文献数
1 2

本研究は,都市の流域すべての場所で雨水の貯留・浸透を,良質な緑を増やしながら多世代が協力し,分散型水管理が実現される持続的な都市ビジョン「あまみず社会」を提案し,その有効性や実現可能性を検証するものである.そのため,都市の空間構成要素である個人住宅と中学校を取り上げ,安価で魅力的な貯留浸透の方法を考案,計画し,実装を試みた.「あまみず社会」の概念に基づいた魅力的な実装や要素技術は,治水・利水機能に加え,環境面,防災面,活動の広がりなど多面的な価値があることが明らかとなった.加えて,「あまみず社会」の実社会への普及に向け,多面的で重層的な働きかけを網羅的に試みることが有効であり,想定以上の広がりが得られることが確認された.
著者
和田 健太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.I_21-I_39, 2021 (Released:2021-04-20)
参考文献数
83

本稿では,動的交通均衡配分モデルの解析理論の近年の進展について解説する.渋滞の時空間進展と利用者行動の相互作用から生じる,複雑な交通ネットワーク流の見通しのよい解析を可能とする移動座標系アプローチに対象を限定し,車両を流体近似する伝統的なモデルと最近進展している粒子型のモデルを対比的に紹介する.その中で得られる,それぞれのモデルの特徴や関係,均衡解の数理特性に関する成果を踏まえ,双方の優位性を活かした今後の発展の方向性について述べる.
著者
福田 崇紀 奥嶋 政嗣
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_85-I_92, 2014
被引用文献数
2

本研究では,南海トラフ巨大地震発生時の津波被害が想定されている地方都市の沿岸平野部を対象に自動車利用避難シミュレーションを適用し,津波避難計画策定において自動車利用避難の問題点を明確にする.避難車両発生の推計結果より,滞留車両のピーク時点では来訪車両が地域内車両と同程度となった.また,楽観的な仮定にも関わらず,東北地方太平洋沖地震での被災地域での平均自動車利用避難率と同程度割合で避難車両が発生した場合には,多数の避難困難車両が発生することが明示された.自動車利用避難率が抑制された場合でも、主要区間の通行不能を仮定すると,多数の避難困難車両が発生することがわかった.一方,事業所からの自動車利用避難を抑制により,避難困難車両数を低減できることがわかった.
著者
谷口 綾子 奥山 有紀
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_1133-I_1142, 2012 (Released:2013-12-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

本研究では,乳幼児連れの移動者による移動中のマナー・モラルの低下が指摘されている現状を受け,子連れ移動に対する意識における世代間ギャップの存在と,段差解消など物理的なバリアフリー化推進が人々の意識にもたらす副作用の可能性を明らかにすることを目的とした調査分析を行った.その結果,子連れでの外出頻度,子連れ可だと思う場所,子連れ外出可の時刻,夫の育児参加への意識など,子育てに関する意識や行動には世代間ギャップが存在すること,ならびに物理的バリアフリーにより慣れていると考えられる若年層かつ海外居住経験のある人ほど高い行政依存傾向,すなわち,施策が意図せざる副作用の可能性が示された.
著者
吉田 護 小林 潔司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.510-527, 2011

本研究では,重要インフラに対するテロ攻撃を抑止するためのテロ防御策とその実施に関する情報開示戦略について主観的ゲーム理論を用いて分析する.政府にとってテロリストは「見えない相手」であり,政府のテロ防御策に関する意思決定は,テロリストの存在に関する信念に依存する.また,必ずしも政府とテロリストが共通のゲームを解いて戦略を決定しているとは限らない.このような観点から,本研究では,政府とテロリストの戦略が,各自の主観的ゲームの均衡解として導出されるような状況を定式化する.さらに,政府による警戒水準に関する情報開示策とテロ防御策の実施状況に関する情報開示策では,テロ防御策の実施状況に関する情報開示策を検討する場合の方が,政府の主観的な期待利得が高くなることを示す.
著者
中川 善典 重本 愛美
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.304-323, 2016
被引用文献数
1

高齢者による運転事故を予防するため,自動車運転免許の自主返納が推奨されている.免許返納によって高齢者は移動の不便を余儀なくされるが,その不便を引き受けて返納することが返納者にとってどのような意味を有するかを理解することは,返納者の支援策を検討する上での出発点である.本論文は,二名の免許返納者の人生史研究に基づき,返納者の人生史全体を参照しない限り返納者にとっての返納の意味が理解できないケースが存在することを例証した.さらに,これら二名にとっての返納の意味の共通部分を抽出することで【自分の信念を貫いて人生を完結するための決意表明】としての免許返納という概念が構築された.最後に,運転免許の返納を検討する高齢者の家族が,どのような姿勢で高齢者に接する必要があるか等の実践的含意について論じた.
著者
小滝 省市 高山 純一 中山 晶一朗 埒 正浩
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_723-I_733, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
10
被引用文献数
2

本研究では,地方都市の中心駅の駅前広場を対象として,都市計画現況調査1)のデータや都市計画部局職員へのアンケート調査,実地調査の結果を元に,駅前広場の整備の実態と容量不足の要因について分析し,面積算定基準において具体的な方針が示されていない一般車用施設の規模算定方法に関する課題を明らかにした.その結果,中心駅の駅前広場の約89%が整備中または整備済であり,内,約67%が混雑し,約51%が一般車用施設が不足するとしている.また,駅前広場における一般車用施設の容量不足の要因は,経年などによる想定以上の交通量の増加や,待合車両の対応を計画に見込んでいないことから,平均停車時間の計画値と実態値の乖離にあることを明らかにした.