著者
後藤 和久 菅原 大助
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.127, no.4, pp.199-214, 2021-04-15 (Released:2021-07-15)
参考文献数
105
被引用文献数
6

過去約25年で津波堆積物の研究は大きく進展し,日本各地の沿岸部の古津波履歴や規模の解明が進められてきた.一方で,2004年インド洋大津波や2011年東北地方太平洋沖地震津波等の最近の津波イベントにより形成された堆積物の調査研究も活発に行われ,堆積学的特徴や堆積過程等が検討されてきた.津波防災計画の立案にも堆積学的研究が活用されるようになった現在では,学術的研究の推進のみならず,いかに迅速に成果を社会に還元するかも重要になっている.次の25年間に我が国のいずれかの地域で巨大津波が発生する可能性は十分に考えられ,地質学的研究成果を踏まえた適切な減災対策が講じられることが望まれる.
著者
藪田 桜子 竹内 誠 斎藤 眞
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.127, no.12, pp.689-700, 2021-12-15 (Released:2022-01-19)
参考文献数
45
被引用文献数
2

中新統北設亜層群最上部の玖老勢層上部には,チャネル構造を呈する複数の礫岩層が分布する.本研究では,玖老勢層礫岩の礫種構成と珪質泥岩礫の放散虫化石による年代を明らかにした.玖老勢層礫岩は,火山岩・凝灰岩・凝灰角礫岩礫を主とし,花崗岩類・石英岩・チャート・珪質泥岩・泥岩・砂岩・マイロナイト礫を伴う.珪質泥岩礫中の放散虫化石は中期ジュラ紀の年代を示す.北設亜層群下部の砕屑物は,主に北設亜層群の基盤岩である領家花崗岩類・変成岩類起源である一方で,北設亜層群最上部玖老勢層ではジュラ系などの古期岩類を含む,より広範囲の地質体から砕屑物が供給されるようになったことが明らかになった.
著者
小澤 一仁 佐藤 侑人 成田 冴理
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.8, pp.575-592, 2018-08-15 (Released:2018-10-10)
参考文献数
177
被引用文献数
1

アルカリ玄武含に普遍的に含まれるスピネルカンラン岩捕獲岩の圧力推定についてレビューを行い,それがどのような理由でいかに困難であるかを共通認識として持てるように,これまで提案されてきた圧力推定方法の問題点をそれぞれの方法について指摘した.さらに,それらの問題をどのようにして解決し,充分な精度を持ったスピネルカンラン岩相の圧力推定方法を確立できるのかについての指針を示した.さらに,その推定値を検証するための方法として,マントル物質がマグマに取り込まれてから急冷するまでの時間スケールと上昇速度を組み合わせた方法を提案し,マグマの上昇に関するこれまでの研究をレビューし,有望な反応過程について考察した.
著者
宮下 敦 八木 公史 板谷 徹丸
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.126, no.2, pp.85-93, 2020-02-15 (Released:2020-06-16)
参考文献数
35
被引用文献数
2 3

東北日本の東縁に沿って分布する母体-松ヶ平帯中の古生代の年代を示す山上変成岩類は,高変成度の山上変成岩Ⅰと低変成度の山上変成岩Ⅱに区分されている.このうち,山上変成岩Ⅰは主に泥質片岩と角閃岩からなる.泥質片岩中のルチルにパラゴナイトが含まれることや変成鉱物の組成領域の検討から,山上変成岩Ⅰは蓮華帯の高変成度岩類と同等の低温高圧型変成作用を受けていると推定される.また,泥質片岩と角閃岩中のフェンジャイトK-Ar年代は322-287Maを示し,蓮華帯変成岩類と一致する.変成作用の特徴とフェンジャイトK-Ar年代から見て,山上変成岩類は西南日本の蓮華帯の高変成度岩類に直接対比できる可能性が高いと考えられる.
著者
内野 隆之 坂野 靖行
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.128, no.1, pp.1-6, 2022-01-10 (Released:2022-02-01)
参考文献数
27
被引用文献数
2

An exotic block of garnet-bearing schist has been found at the boundary between the Early Triassic Takinosawa Unit of the Nedamo Belt and the Early Jurassic Nakatsugawa Complex of the North Kitakami Belt, NE Japan. This is only the second discovery of exotic schists in the Nedamo Belt; the previously identified schists occur at the boundary between the Takinosawa and early Carboniferous Tsunatori units of the Nedamo Belt. The garnet-bearing schist is characterized by a mineral assemblage of garnet + phengite + epidote + albite + quartz + titanite. Phengite with Si of 6.51-6.66 atoms per formula unit (O = 22) and the mineral assemblage suggest that the schist underwent high-P/T metamorphism prior to emplacement into its current position. The schist yields a phengite K-Ar age of ca. 290 Ma (late Paleozoic), suggesting a correlation with high-P/T schist of the Yamagami Metamorphic Rocks from the Motai-Matsugadaira Belt. This finding supports the extension of late Paleozoic high-P/T metamorphic rocks (i.e., the Renge Belt of SW Japan) to NE Japan.
著者
竹村 静夫 菅森 義晃 鈴木 茂之
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.115, no.Supplement, pp.S123-S137, 2009 (Released:2012-01-26)
参考文献数
47
被引用文献数
3

岡山県東部から兵庫県西南部には舞鶴帯と超丹波帯を構成する地層・岩石が広く分布する.舞鶴帯の主体をなすペルム系舞鶴層群は,その岩相と層序から付加体とみなすことは難しいが,地理的にはペルム紀の付加体と解釈される秋吉帯と超丹波帯の構成岩類に挟まれて分布している.このように中国地方東部から近畿地方北部の西南日本内帯には,ほぼ同年代でかつ性格の異なる地帯が狭い地域内に並列して分布する.この見学コースでは,ともにペルム紀の陸源砕屑岩を主体とする舞鶴層群と超丹波帯の上月層,舞鶴層群を不整合に覆う三畳系福本層群など,舞鶴・超丹波両帯に属する地質体の岩相や地質構造等を観察する.そして,それらが堆積・形成されたテクトニクスの重要性を再確認したい.
著者
後閑 文之助
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.45, no.541, pp.773-776, 1938

As to the fossil elephants, the ancient Japanese naturalists for a long ti-me believed, following the explanation in the Chinese Pents'ao, that they were the skeletons of dragon but later in the Yedo period some scholars grew suspicio-us about its veracity., The questions of dragons had been variously discussed si-nce 1760 till the so-called "skeletons of dragons" found in Japan were proved to be the fossil remains of elephants in 1811.,
著者
磯﨑 行雄 長谷川 遼 益田 晴恵 堤 之恭
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.126, no.11, pp.639-644, 2020-11-15 (Released:2021-02-15)
参考文献数
20
被引用文献数
3

Detrital zircon U-Pb ages were measured for nine non-fossiliferous sandstones from the uppermost Izumi Group, a “Late Cretaceous” forearc clastic sequence in the eastern Izumi Mountains of western Kii Peninsula, SW Japan. Seven out of nine sandstones yielded Paleocene grains. These results confirm that the uppermost Izumi Group was deposited in the Paleogene (Selandian-Thanetian or younger), extending the total depositional duration of the group to ca. 27 myr, almost double the previous estimate. The new age data raise the possibility that a stratigraphic interval across the Cretaceous-Paleogene extinction boundary may be preserved within the group. The occurrence of Paleogene strata further constrains the onset of the low-angle Median Tectonic Line to post-Paleocene.
著者
後藤 和久
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.10, pp.843-855, 2017-10-15 (Released:2018-01-25)
参考文献数
107
被引用文献数
2 3

琉球海溝沿いの古津波研究は約50年にわたり行われてきた.特に,津波石と呼ばれる沿岸巨礫群の研究から,先島諸島では数百年間隔で巨大津波が繰り返したと考えられる.その一方で,奄美・沖縄諸島では少なくとも約2300年もの間,巨大津波が発生した痕跡が見られないことが指摘されている.この結果は地震学的研究によっても支持されており,琉球海溝においては巨大地震・津波発生履歴と規模に大きな地域差があることを示唆していると考えられる.一方,砂礫質津波堆積物の研究は,調査適地が少ないという問題からあまり実施されておらず,中小規模の古津波履歴を把握するためにも,今後の調査研究が望まれる.
著者
尾崎 正紀 松浦 浩久 佐藤 喜男
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.102, no.2, pp.73-83, 1996-02-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
52
被引用文献数
11 20
著者
小原 一成
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.115, no.9, pp.437-447, 2009 (Released:2010-03-10)
参考文献数
55
被引用文献数
3 1

近年の高密度地震観測網整備に伴い,南海トラフから西南日本に沈み込むフィリピン海プレートの境界付近で,様々なスロー地震が検出されている.巨大地震発生域の深部では,数日間継続するプレート境界固着すべりとしての短期的スロースリップイベント,周期20秒に卓越する深部超低周波地震,2 Hzに卓越する深部低周波微動が,全長約600 kmの帯状領域に沿って複数のセグメントに分かれ,半年あるいは3ヶ月など周期的に発生する.また,南海トラフ陸側の付加体内部では周期約10秒に卓越する浅部超低周波地震が発生している.これらのスロー地震は,浅部では付加体変形過程,深部では沈み込むフィリピン海プレートの海洋地殻あるいは付加体堆積物での脱水分解反応や変成作用と関わっている可能性があり,プレート沈み込み帯における地質体形成や流体循環の現場を反映するものとして注目される.
著者
田辺 晋 堀 和明 百原 新 中島 礼
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.4, pp.135-153, 2016-04-15 (Released:2016-06-21)
参考文献数
94
被引用文献数
11 15

日本列島における「弥生の小海退」は,その存在が認められる地域と認められない地域が明確になっておらず,その存在が報告された地域においても,海水準インデックス・ポイントが連続的に得られていないことに問題がある.筆者らは,利根川低地最奥部において,水深が約1~2mと推定され,3~2cal kyr BPの海水準上昇に伴って形成されたと考えられる湖沼堆積物を発見した.その堆積年代と分布深度は,水深を推定値の最大の2mと仮定しても,海水準が3.0cal kyr BPには標高-2.2mまで低下したことを示す.この低下量は予想される圧密の総和よりも大きく,また,周辺では大規模なテクトニックな地殻変動は考えにくい.したがって,この事象は利根川低地最奥部に「弥生の小海退」が存在したことを意味する.このような相対的海水準低下の要因としては堆積物荷重の影響を今後最も検討しなければならない.
著者
後藤 和久 小松 吾郎
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.10, pp.618-631, 2012-10-15 (Released:2013-02-20)
参考文献数
122
被引用文献数
2

近年の衛星画像の精度向上などにより,火星の堆積岩に関する研究が急速に進展している.火星には,水の作用により海や湖,バレーネットワーク,アウトフローチャネルが形成された痕跡がいたるところに残されており,気候変動を含む火星史を理解する上で極めて重要である.実際に,ノアキス紀の古クレーター湖の壁面の堆積岩露頭には,フィロケイ酸塩鉱物のような粘土鉱物が豊富に含まれることがわかっている.こうした堆積岩は,アメリカやヨーロッパの宇宙機関の火星探査の着陸候補地点となっており,水と生命の痕跡を発見するための重要な研究対象とみなされている.2011年11月には,アメリカ航空宇宙局の最新探査機が打ち上げられ,古クレーター湖中の露頭を対象として地質調査を行なう予定である.こうした将来探査計画の中で,地質学者の知識と経験が大いに有効であり,惑星地質学分野での貢献が期待される.
著者
田切 美智雄 堀江 憲路 足立 達朗
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.6, pp.231-247, 2016-06-15 (Released:2016-08-01)
参考文献数
81
被引用文献数
2 6

日立変成地域のカンブリア系について,ジルコンU-Pb SHRIMP年代値を追加し,既報の年代値をまとめ,各地層を再定義し,地質図を改めた.層序については,早期から晩期のカンブリア系を日立火山深成複合岩体として一括し,その中に赤沢層,玉簾層,変成花崗岩類,変成ポーフィリィを含めた.玉簾層の一部を分離して滝沢層を新設した.西堂平層の堆積年代は白亜紀前期である.さらに,白亜紀後期に火成岩貫入と中圧型変成作用が起った.これは阿武隈帯の竹貫変成岩類の変成履歴とも共通し,東北日本列島でこのような急激なテクトニクスが起こった時期があったと推定した.古第三紀の中央構造線が日本列島全体を縦断していたと仮定して,日本海形成前における,カンブリア系を含む日立古生層と東北日本列島基盤の復元を試み,日立古生層や阿武隈帯は中国東北部の佳木斯・ハンカ地帯に近接することを示した.カンブリア系日立火山深成複合岩体は北中国地塊の東縁に帰属することを主張した.
著者
櫻井 剛 高須 晃
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.107, no.6, pp.XIII-XIV, 2001 (Released:2010-11-26)
参考文献数
2
被引用文献数
1

三波川帯は高圧型変成帯であるが藍晶石の産出は比較的まれであり, 四国中央部の高変成度部に分布するいくつかのテクトニック・ブロックから報告されているのみである(第1図). 今回, 四国中央部三波川変成帯の“いちのまつこ谷”上流の五良津東部岩体中から長径約16cmに達する藍晶石の巨晶が発見された(第2~5図). 五良津東部岩体は, 原岩が層状はんれい岩であり, グラニュライト相→高温のエクロジャイト相→藍閃石片岩相→低温のエクロジャイト相という変成履歴を経た後, 現位置にテクトニック・ブロックとしてもたらされ, 緑れん石角閃岩相の変成作用(三波川変成作用)を受けたと考えられている(Takasu, 1989). 藍晶石の巨晶は, 緑れん石角閃岩相の鉱物組合せよりなる岩石の片理面と斜交するすべり面上に形成されている. このことから, 藍晶石は五良津東部岩体が緑れん石角閃岩相の変成作用が進行していた三波川変成帯の現位置ヘテクトニック・ブロックとしてもたらされる前後の時期に形成されたといえる.
著者
鹿野 和彦 谷 健一郎 岩野 英樹 檀原 徹 石塚 治 大口 健志 Daniel J. Dunkley
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.6, pp.351-364, 2012-06-15 (Released:2012-11-07)
参考文献数
76
被引用文献数
7 8

赤島層デイサイト溶結火山礫凝灰岩についてジルコンのU-Pb年代とフィッション・トラック(FT)年代,斜長石のAr-Arプラトー年代を測定し,それぞれ72 Ma,65〜63 Ma,34 Maの値を得た.ジルコンは自形に近い外形とこれに調和的な累帯構造を保持し,かつ溶結した基質や軽石もしくは緻密なレンズの中に散在しており,本質結晶と考えられる.個々のジルコンのU-Pb年代値は集中して標準偏差も1〜2 Maと小さく,マグマの噴出年代を示している可能性が高い.FT年代値は,FTの短縮化が確認できるので,噴出後に熱的影響を受けて若返ったと考えることができる.斜長石のAr-Ar年代値は,段階加熱の広い範囲で安定しているものの,プラトー年代値は上位の門前層火山岩の同位体年代値の範囲内にあり,門前層の火山活動によってアルバイト化して若返った可能性が高い.得られたU-Pb年代は,東北日本においても後期白亜紀の後半に酸性火山活動が活発であったとする見解を支持する.
著者
隅田 祥光 早坂 康隆
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.115, no.6, pp.266-287, 2009 (Released:2009-10-29)
参考文献数
100
被引用文献数
4 8

兵庫県朝来地域には,古生代海洋内島弧の中~下部地殻に由来する夜久野オフィオライト朝来岩体が露出する.本研究では夜久野古島弧の基盤地殻を構成する苦鉄質岩類の起源について,そしてSuda(2004)が報告したミグマタイトの産状分類に基づいた島弧花崗岩類の形成過程について,地球化学的手法を用いたモデル計算を行い検討した.結果,以下のことが示された.朝来岩体では背弧盆地殻に由来した基盤地殻が部分融解し,珪長質メルトが形成された.これら珪長質メルトは集積,上昇する過程で結晶分化しながらマグマへと成長し,キュームレイトに相当するものが主にミグマタイト中のリューコソムとして下部地殻相当域に,一方,残液に相当するものが岩脈,岩床として主に中部地殻相当域に残された.朝来岩体には,島弧下部地殻の部分融解過程と,島弧花崗岩質マグマの形成と発達による地殻の安山岩質化過程を示すまさにその現行段階が残されている.
著者
菅森 義晃
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.112, no.6, pp.390-406, 2006 (Released:2006-10-12)
参考文献数
48
被引用文献数
12 9

本論では, 層序や構造に不明な点が多かった京都西山地域の中・古生界の層序区分を行った.研究地域の中・古生界は構造的上位の高槻層(再定義)と島本層(新称)及び下位の丹波帯に区分される.年代未詳とされた従来の高槻層は, 砕屑岩主体の上部ペルム系高槻層と中部三畳系島本層に区分されることが明らかになった.一方, 丹波帯は構造的上位から本山寺コンプレックス(再定義), 出灰コンプレックス(再定義)及び田能コンプレックスに細分される.本山寺コンプレックスから三畳紀新世前期, 出灰コンプレックスから三畳紀新世後期及び田能コンプレックスからジュラ紀古世を示す放散虫化石が, それぞれの砕屑岩から産出する.これらの丹波帯の各コンプレックスはその層相及び構造から付加複合体と判断され, 丹波帯の付加・形成が三畳紀新世前期には始まっていたと考えられる.
著者
鈴木 陽雄 佐藤 正
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.213-215, 1972-04-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
9
被引用文献数
4 5