著者
松岡 敬二 井上 恵介 川瀬 基弘
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.127, no.6, pp.333-344, 2021-06-15 (Released:2021-09-30)
参考文献数
71

鮮新-更新統古琵琶湖層群は,三重県から滋賀県にかけて分布する湖沼および河川堆積物からなる.古琵琶湖層群からの哺乳類や貝類化石は,江戸時代の弄石(ろうせき)仲間では広く知られる存在であった.今回の巡検地である伊賀盆地(上野盆地)東方の大山田地域は,古琵琶湖層群の下部が分布し,日本の鮮新世を代表する化石を産出している.その熱帯~亜熱帯要素を含む淡水生動物化石は,伊賀非海生動物群としてまとめられている.この巡検では,それらが産出した地層を案内し,露頭の現地保全とその重要性について論議するものである.
著者
青矢 睦月 平島 崇男 高須 晃 榎並 正樹 Simon Wallis 榊原 正幸
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.107, no.12, pp.XXI-XXII, 2001 (Released:2010-11-26)
参考文献数
2
被引用文献数
1 2

2001年の9月1日から7日に渡り, 愛媛県の新居浜市, 土居町, 別子山村を舞台に開催された国際エクロジャイト会議(IEC)の記念碑が別子山村の瀬場に建立された(Fig.1).材料となった重量10トンにも及ぶエクロジャイトの転石(Fig.2)は1998年, 京都大学の岩石学グループが別子巡検を行った際に瀬場谷川下流域で見つけたものである. 極めて保存の良い美しいエクロジャイトであったため(Figs.3-5), 昨年11月, IEC記念碑の建立を計画していた別子山の村長らにその転石を紹介したところ, 村側も大変気に入り, 即, 採用の運びとなった.
著者
小西 拓海 宇都宮 正志 岡田 誠 田村 糸子
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.129, no.1, pp.469-487, 2023-10-31 (Released:2023-10-31)
参考文献数
50

本研究では下部更新統上総層群下部(前弧海盆堆積物)と千倉層群畑層(海溝陸側斜面堆積物)について古地磁気層序とテフラ層序に基づく時間面対比を行った.上総層群勝浦層最上部と大原層上部~黄和田層にFeni(Réunion)正磁極亜帯とOlduvai正磁極亜帯に相当する正磁極性がそれぞれ確認され,それ以外の層準でMatuyama逆磁極帯に相当する逆磁極性が確認された.千倉層群畑層のテフラ層Kmj-3,Kmj-10,Kmj-18,Kmj-29,Kmj-41,Kmj-53,Kmj-68,およびKmj-71が上総層群のテフラ層Kr31,KRm,KH2,IW2,OFN2,KB,HS C,およびHS Aにそれぞれ対比された.これらのテフラ対比は古地磁気層序と調和的であり,上総層群のテフラ層IW2はFeni正磁極亜帯内,HS CはOlduvai正磁極亜下部境界の直下,HS Aは同境界直上にそれぞれ位置することが示された.
著者
藤本 幸雄 林 信太郎 渡部 晟 栗山 知士 西村 隆 渡部 均 阿部 雅彦 小田嶋 博
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.Supplement, pp.S51-S74, 2008-09-18 (Released:2011-12-22)
参考文献数
130
被引用文献数
2 1

男鹿半島には白亜紀後期の基盤花崗岩類から古第三紀火山岩類,新第三紀火山岩類・海成層,第四紀層と海成段丘,火山岩及び火山地形,砂丘などが整然と分布している.そのため男鹿半島は,東北地方日本海側の9000 万年ないし6500 万年前からの地史を考える上で重要な地域になっている.風光明媚にして男性的な景観には,このような地質体の形成過程・多彩な地史が刻み込まれており,自然界の営みの中に歴史を作る人々の営為も垣間見ることができる.災害・産業・環境問題・自然認識などをはじめとして,地学は教育の重要な柱として一層の活用が求められている.ここでは近年得られた新知見を加え,地質体の形成過程・地史について解説し,合わせて地学教育上の要点を挙げてみる.
著者
三重県大型化石発掘調査団
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.103, no.2, pp.IX-X, 1997 (Released:2010-12-14)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

松尾層群は, 志摩半島東部の秩父累帯中帯にあって, 中帯の主体をなすジュラ紀付加体青峰層群を傾斜不整合で覆う前弧海盆堆積物とされている. 本層群は以前から汽水生の前期白亜紀貝化石を多産する地質体として, 広く知られていた(山際, 1955, 1957; 山際・坂, 1967).このたび, 標記調査団の一員である金子, 高田, 谷本, 藤本が本層群から大型恐竜の骨格の一部である脛骨の化石を発見した. その連絡を受けた三重県教育委員会は亀井および山際に調査を依頼し, その結果, 発掘調査団が組織された. 調査団は, 関係当局の協力を得て, 1996年9月6日から23日まで発掘・調査を行った. 詳細は, 化石の発掘, 剖出および古生物学的な記載の完了を待って報告される予定であるが, ここに発掘の概要を速報する.化石を含む地層は, 鳥羽市安楽島の秩父累帯中帯で, 蛇紋岩を伴う断層を介して青峰層群とくり返し帯をなして分布する松尾層群の分布域の1つ(坂ほか, 1988の加茂帯)に属している. 化石は, 北方に面した海崖をなす泥質岩卓越相中の, 厚さ約50cm, 走向E―W, 傾斜90°の泥岩層に密集して含まれている. 折から来日中の中国科学院董枝明博士をまじえた発掘開始前の調査では, 西から東に向かって, 脛骨, 上腕骨, 肩甲骨, 大腿骨と同定される骨化石が発見された(発掘後, 脛骨を包むマトリックスから腓骨が剖出された). これらの骨化石は, その産状や位置関係から本来の部位関係をほぼ保っているとみなされ, 1個体の恐竜遺体が汀線付近から沖合に運ばれて水底に沈み, そのまま埋没するか, あるいは, 軟体部の腐乱後, その躯体骨がほとんど乱されることなく埋没したものと判断される. したがって, その西側に頭骨が存在していた可能性がある. ただ, 露頭面が埋没した恐竜骨格のほぼ正中面に当たると思われ, 侵食によって頭骨部分はすでに失われた可能性が大きいと推定される. 運搬営力としては, 化石を含む泥岩層の上・下位層中にストーム起源を示唆する堆積構造が卓越していることから, ストーム時の沖合に向かう流れが考えられる.これまでに確認された骨化石と地層中におけるその産状から判断すると, 体長22m前後の竜脚類のものと考えられる.
著者
池田 倫治 後藤 秀昭 堤 浩之
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.7, pp.445-470, 2017-07-15 (Released:2017-08-03)
参考文献数
118
被引用文献数
4 3

西南日本の地体構造を考える上で中央構造線は欠くことのできない地質要素のひとつである(以下では,便宜的に地質境界の中央構造線を表現する場合には「中央構造線」を,活断層としての中央構造線を表現する場合には「中央構造線活断層系」を,また両方の断層を包括して表現する場合には「中央構造線断層帯」を用いる).中央構造線断層帯は長い活動史を持ち,白亜紀に西南日本内帯/外帯の地質境界として形成されてから,現在もその一部が活断層として活動している.しかし中央構造線と中央構造線活断層系の地下深部構造については現在も議論の分かれているところである.一方で,全長400km以上にわたる横ずれ活断層の破壊過程には不明な点が多いため,地震防災上も注目され地質学的のみならず地震学的にも研究が進められている.特に1995年兵庫県南部地震以降,正確な断層分布の把握,最新活動時期,活動間隔あるいは変位量といった断層活動性評価に資する情報が急速に蓄積されてきた.さらには,その様な活動性情報の収集は,長大横ずれ断層である中央構造線活断層系の断層セグメンテーションの検討を促進し,その結果,断層破壊過程あるいは発生する地震の規模予測の議論へと展開されている.本巡検では,四国西部の中央構造線と中央構造線活断層系を時空間的に意識しながら断層露頭を訪れ,地質境界の産状および活断層地形を観察する.また,中央構造線の活動で形成された第二瀬戸内層群である郡中層の産状についても観察し,様々なフェーズにおける中央構造線断層帯の運動像に迫る.
著者
三田村 宗樹
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.129, no.1, pp.405-413, 2023-08-09 (Released:2023-08-09)
参考文献数
21

琵琶湖より下流の淀川流域は,これまで幾度も氾濫を繰り返してきた.1885年(明治18年)の氾濫は,淀川流域の水害の中でも最大規模であった.この水害をきっかけとして,本格的な淀川の河川改修がなされた.この改修では,大阪平野域の淀川の蛇行が和らげられ,現在の淀川本流となる直線的な排水路としての新淀川が開削された.大阪市内中心部を流れる大川(旧淀川)は,毛馬洗堰によって新淀川と分離され,大川への流量制御が行われるようになる.この毛馬洗堰には,水準測量の基準点である水準基標が設置されていた.しかし,1946年昭和南海地震に伴う地殻変動,第二次世界大戦後の復興期の過剰な地下水揚水に伴う地盤沈下によって,基標の変動が生じ,水準基標は茨木市福井に移設された.現在の毛馬には,改築された洗堰や大規模排水機場があり,大阪市内の洪水防止を担う重要な箇所となっている.本巡検では,毛馬から大川沿いを歩き,災害履歴や河川改修をもとに地域の水害リスクを考える素材としての明治18年淀川大洪水や淀川改修工事にかかわる石碑や遺構などを見学する.
著者
山元 孝広 川辺 禎久
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.120, no.7, pp.233-245, 2014-07-15 (Released:2014-11-12)
参考文献数
43
被引用文献数
6 6

ラハール堆積物は,平均粒径-標準偏差の関係,粒径の分布型の違いから,粘着性の泥流堆積物,非粘着性の土石流堆積物と高密度洪水流堆積物の3タイプに識別することが出来る.2013年10月16日未明に伊豆大島で発生したラハールは,伊豆大島火山西斜面を被覆していた降下細粒火山灰層が表層崩壊を起こしたもので,堆積物の粒度組成の特徴は,この流れが高密度洪水流であったことを示している.すなわち,土石流のような巨・大礫が集合したものではなかったことが今回の土砂災害の大きな特徴となっている.今回のラハールは斜面崩壊発生時から流体として流れ出したため,斜面を面状に高速で流れ下ったものとみられる.この種の土砂災害は,他火山でも発生事例があり,防災上考慮しておく必要がある.
著者
竹下 徹 平島 崇男 植田 勇人 岡本 あゆみ 木下 周祐 辛 ウォンジ 幸田 龍星 安藤 瑞帆 中山 貴仁
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.7, pp.491-515, 2018-07-15 (Released:2018-08-18)
参考文献数
79
被引用文献数
2 2

神居古潭変成岩は古くから典型的な低温高圧型の変成岩として良く知られ,数多くの研究が行われて来た.また,北海道白亜系蝦夷層群は,日本列島の中では極めて大規模な前弧海盆堆積物であり,空知層群(空知オフィオライト)を挟んで神居古潭変成岩の構造的上位に分布している.この神居古潭変成岩-空知オフィオライト-蝦夷前弧海盆堆積物は太平洋を挟んで, 北米西岸白亜紀のフランシスカン・コンプレックス-コーストレンジ・オフィオライト-グレートバレー・シーケンスにも対比出来る.本巡検は,かつて北海道の白亜紀の海溝深部から浅海域に位置していたと推察される 地質体を,1泊2日の短期間で巡ることが出来るよう企画された.神居古潭変成岩についての研究は2000年以降,暫く途絶えていたが,新たな視点での研究が再開された.特に,本巡検では2つのテーマに焦点を当てる. 一つは神居古潭変成岩を構成するメンバーの中で最も初期に形成されたと考えられる蛇紋岩メランジュ中の角閃岩・青色片岩テクトニックブロック で,本岩石を構成する変成鉱物(ざくろ石, 角閃石, 緑簾石など)の組成累帯構造に基づき,テクトニックブロックが顕著な冷却の履歴を被ったことが推察されることである.今日,この冷却の履歴は世界の沈み込み帯起源の青色片岩やエクロジャイトから報告されており,海洋プレート沈み込み開始初期から定常状態の沈み込みに至る冷却を示すと考えられるようになった.もう一つは,神居古潭変成岩上昇時のおそらく前弧域における著しい高温流体活動である.最近,いくつかの試料について炭質物ラマン温度計が適用されたほか,緑色黒雲母の産状が明らかとなるなど,変成岩上昇時に青色片岩を緑色片岩に置き換えてしまうほどの高温流体移動による接触変成作用が生じていたことが明らかになりつつある.この事実は,今後,前弧域テクトニクスを解明していく上で大きな示唆を与える.
著者
平野 直人 奥澤 康一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.108, no.11, pp.691-700, 2002-11-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
43
被引用文献数
10 8

嶺岡帯,鴨川市峠においてアルカリ玄武岩溶岩中に噴出時に取り込まれたと考えられる砂岩を発見した.この砂岩はおもに,斜長石・ダトー石・石英・および珪長質火山岩片から構成され,ダトー石を除けば嶺岡層群神塚層または愛宕山層の砂岩の構成粒子の鉱物組み合わせに似ている.アルカリ玄武岩の活動場は,このような陸源性砂岩が供給されるような場であった事が明らかとなった.アルカリ玄武岩は,その産状と化学組成から,海山を構成していたと考えられるが,アルカリ玄武岩の噴出場と含まれている陸源性砂岩の堆積場は,おそらく海洋プレートと島弧もしくは大陸が会合する収束境界付近であった見込みが高い.アルカリ玄武岩の放射年代は,嶺岡帯のオフィオリティック岩体が本州弧側へ定置したとされる時代の直前であり,本論の結果と調和的である.本研究において嶺岡帯の形成過程を論じるにおいて新たな見地が得られた.
著者
菅森 義晃 池内 萌加 佐野 円香 景山 直樹 小玉 芳敬
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.129, no.1, pp.45-60, 2023-01-15 (Released:2023-02-21)
参考文献数
53

鳥取県東部の白兎海岸の気多岬および淤岐ノ島に露出する鳥取層群の地質調査および安山岩のK-Ar年代を測定した.気多岬には鳥取層群八頭層河原火山岩部層に帰属する両輝石安山岩が露出し,その石基中の斜長石のK-Ar年代は18.3±0.6 Maであった.絶対年代を比較すると,先行研究で指摘された河原火山岩部層が北但層群の養父亜層群八鹿層に対比される考えは支持される.淤岐ノ島に露出する鳥取層群は岩美層に帰属するとみられ,礫岩層を主体とし,河川環境下での火山活動の激化による堆積とその後の火山活動の鎮静化による斜面変形の一連の環境変化を記録した堆積物,広義のギルバート型ファンデルタの一部に比較できる地層を有する.広義のギルバート型ファンデルタが示す古流向は現在の方位で南西方向であったため,東北東方向に陸地が存在したとする考えと調和的である.これらの知見は日本海形成初期における古地理の復元に有用なデータとなりうる.
著者
狩野 謙一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.94, no.8, pp.629-632, 1988-08-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
14
被引用文献数
3 3
著者
Takehisa Tsubamoto Takanobu Tsuihiji Dong Pha Phan Dinh Hung Doan Naoko Egi Toshifumi Komatsu
出版者
The Geological Society of Japan
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.128, no.1, pp.245-251, 2022-11-03 (Released:2022-11-03)
参考文献数
26

A fossil specimen of Anthracokeryx naduongensis (Mammalia, Artiodactyla, Anthracotheriidae, Microbunodontinae) discovered in the middle/upper Eocene Na Duong Formation at Na Duong Coal Mine in northeastern Vietnam is described. The specimen is a left mandibular fragment preserving p3-m3. It is characterized by an association of features that is observed in A. naduongensis, including a small size relative to most of other anthracotheriids, bunodont to bunoselenodont dentition, weak cingula, and a hypolophid on the lower molars. This specimen illustrates the precise morphology of m2-m3 of A. naduongensis from the type locality.
著者
星 博幸
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.10, pp.805-817, 2018-10-15 (Released:2019-01-24)
参考文献数
124
被引用文献数
10 10

筆者は「関東対曲構造の形成はいつ始まったか」という問題について主に地質と古地磁気の両面から最近の研究をレビューし,現状の到達点について整理した.伊豆衝突帯の櫛形山地塊の地質より,伊豆弧と本州弧の衝突は17Ma頃には始まりつつあったと考えられる.対曲構造の東西両翼から得られた古地磁気データは,対曲構造の形成が約17Maから15Maまでの間のある時期に始まった可能性が高いことを示す.地質から推定される年代と古地磁気から推定される年代が整合することから,約17Maから15Maまでの間のある時期に本州弧と伊豆弧の衝突が始まり,衝突開始と同時に対曲構造の形成も始まったと考えられる.伊豆弧衝突と対曲構造の形成開始を約15Maと考える研究者が多かったが,実際には15Maには衝突も対曲構造形成もすでに始まっていたようだ.小論では対曲構造形成に関連する検証可能な仮説についてもいくつか紹介した.
著者
石井 英一 安江 健一 田中 竹延 津久井 朗太 松尾 公一 杉山 和稔 松尾 重明
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.112, no.5, pp.301-314, 2006 (Released:2006-09-14)
参考文献数
48
被引用文献数
29 24

北海道北部,幌延地域における新第三紀堆積岩分布域において,地表割れ目踏査,ボーリング調査(コア観察・EMI検層・比抵抗検層・水質分析),反射法地震探査,およびAMT探査を実施し,当域に分布する大曲断層の位置,連続性,および水理特性について検討した.その結果,以下のことが示された.(1)大曲断層はダメージゾーンを主体とした幅120 m程度の断層帯であり,その透水性は高い.(2)研究所設置地区近辺における大曲断層帯の三次元分布が明らかとなり,地表部ではover-stepし,地下では収斂する形態をなす.(3)「塩水系」と「淡水系」の2種類の地層水が存在し,顕著な岩相変化を示さない堆積岩においては,電磁探査を用いた調査が,断層帯の位置,連続性,および水理特性などを検討する際に有効である.
著者
Yui Takahashi Yuichi Fukushima Gengo Tanaka Yukio Miyake
出版者
The Geological Society of Japan
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.128, no.1, pp.65-73, 2022-01-15 (Released:2022-05-21)
参考文献数
48

A conodont fauna characterized by Streptognathodus species was recovered from a limestone block (previously called Ōboradani Formation) of the Ōtani (=Ohtani or Otani) Formation belonging to the Hida Gaien belt distributed in the Kuzuryu area, Fukui Prefecture, central Japan. The fauna consists of Streptognathodus corrugatus, S. elegantulus, S. excelsus, S. gracilis, Idiognathodus sp., Gondolella bella, G. cf. elegantula and G. cf. pohli. These streptognathodids have a wide geographic distribution and indicate a middle-late Kasimovian (Late Pennsylvanian) age, which is slightly older than the Gzhelian (latest Pennsylvanian) age infferred from fusulinid fossils in previous studies. Thus, the limestone block of the Ōtani Formation probably contains the Upper Pennsylvanian carbonate succession.
著者
山本 由弦 千代延 俊 神谷 奈々 濱田 洋平 斎藤 実篤
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.1, pp.41-55, 2017-01-15 (Released:2017-04-18)
参考文献数
44
被引用文献数
2 1

三浦・房総半島では,世界的にも珍しい,ごく若く埋没深度の浅い付加体-被覆層システムが,後生の変成作用を経験しないまま陸上に露出している.本見学旅行では,房総半島に絞って見学する.沈み込み帯のごく浅部(1km程度)から中深部(2-4km)の付加体に発達するin-sequence thrust,付加体を不整合に覆う海溝斜面堆積物,これらを切るout-of-sequence thrust,それに前弧海盆堆積物を見学し,付加型沈み込み帯の基本システムを網羅する.
著者
中澤 努 長 郁夫 坂田 健太郎 中里 裕臣 本郷 美佐緒 納谷 友規 野々垣 進 中山 俊雄
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.5, pp.367-385, 2019-05-15 (Released:2019-08-15)
参考文献数
68
被引用文献数
7 12

東京都世田谷区の武蔵野台地の下に分布する更新統世田谷層及び東京層の層序と地盤震動特性について検討した.世田谷層はMIS 6に開析された谷地形をMIS 5e前期~中期に埋積した地層であり,内湾成の軟らかい泥層を主体とする.一方,この地域の東京層は,MIS 5e中期?~後期の湾奥で形成された砂層などからなり,世田谷層とは対照的に広範囲に比較的平坦に分布する.常時微動観測により,段丘礫層を伴わず世田谷層が厚く分布する地域では,1Hzにピークをもつ地盤震動特性が示された.首都圏の地盤リスクを考えるとき,世田谷層をはじめとする台地の下のMIS 6開析谷埋積層の分布に注視する必要がある.