著者
川村 教一 篠原 俊憲
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.8, pp.415-425, 2008-08-15 (Released:2009-03-25)
参考文献数
36
被引用文献数
3 3

ボーリングコアを用いて愛媛県西予市宇和盆地に分布する宇和層,中位段丘構成層の層序の確立および対比を行った.宇和層は最下部,下部,中部,上部に区分できる.挟在する火山灰層のうち25層について,その記載岩石学的特徴に基づいて対比と年代を検討した.その結果,下位より,宇和1火山灰は敷戸テフラおよびイエローI火山灰に,宇和20火山灰は誓願寺栂テフラに,宇和23火山灰は樋脇テフラに,宇和24火山灰は小林笠森テフラに,宇和26火山灰は加久藤テフラにそれぞれ対比される.また,盆地南端の中位段丘構成層中の稲生火山灰は,阿蘇2テフラに対比される.火山灰の対比から,宇和層のうち,最下部が少なくとも1.3 Ma以前に形成が始まり約1.0 Maまで,下部は約1.0 Maから0.33 Maまで,中部は約0.33 Ma以降,上部は後期更新世で約0.026 Ma以前に形成された.また,中位段丘構成層は,中期更新世末の0.2~0.1 Ma前後に形成された.
著者
市原 実 藤田 和夫 森下 晶 中世古 幸次郎
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.61, no.720, pp.433-441, 1955-09-25 (Released:2008-04-11)
参考文献数
14
被引用文献数
3 2

The stratigraphy of the Osaka Group in the Senriyama Hills, is summarized in the following table., Groups Formations Members Western Part Eastern Part Characteristics Osaka Basin Terraces Toyonaka Terrace Onohara Terrace Sinodayama Group Sakurai Gravels 10m± Hozumi Gravels 10m± Butunenziyama Fault Onohara Faults J2 Osaka Group 300m+ Ibaraki Formation 100m+ Mituike Alternations of sands and clays 90m+ Hattyoike Alternations of sands and clays 95m+ Marine clay rich Hattyoike Tuff Azuki Tuff Yamada Tuff The upper part of the Osaka Group I2∼J1 Senriyama Formation 200m+ Simakumayama Gravels 70m+ Sinden Sands 147m+ Metasequoia Jugrans megacinerea The lower part of the Osaka Group I1 Basement Kobe Group
著者
巽 好幸 谷 健一郎 川畑 博
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.115, no.Supplement, pp.S15-S20, 2009 (Released:2012-01-26)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

小豆島には,瀬戸内火山帯の一部をなす中新世の火山岩類(瀬戸内火山岩類)が分布する.これらは,他地域の瀬戸内火山岩類と比べて以下の特徴を有する:(1)比較的規模の大きい複成火山体をなす.(2)水中火山活動の証拠が顕著に認められる.(3)玄武岩から流紋岩までの広い化学組成を有する.(4)斑状火山岩と比較的無斑晶質な火山岩(サヌキトイド)まで,岩相変化に富む.(5)サヌキトイドの複合溶岩流が存在する.(6)初生的な安山岩(高Mg安山岩),玄武岩が産する.ここでは,主にこれらの特徴を簡略に説明する.
著者
山路 敦
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.107, no.7, pp.461-479, 2001-07-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
107
被引用文献数
10 8

地殻応力の評価は, テクトニクスを理解するうえで鍵になる.また, 応用地質的な価値も高い.ところが, その手法として普及している共役断層による小断層解析は, 間違った答えをだすことが多い.それにかわって, 3次元的応力歪みを許容する小断層解析法がここ30年間に幾つも開発されてきた.新手法の開発とともに適用可能な野外の対象も拡大するので, フィールド調査と方法論的な研究が両輪をなして進んできたわけである.代表的な方法がインバージョンによる応力推定である.しかし, それは複数の応力を記録しているデータセットからそれらの応力を分離する能力にとぼしいが, その能力のある方法の開発も試みられている.未解決の方法論的問題が少なからずあるので, 今後も手法の開発とフィールドへの適用という2面で研究が進展していくだろう.
著者
加瀬 善洋 川上 源太郎 小安 浩理 高橋 良 嵯峨山 積 仁科 健二
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.128, no.1, pp.7-26, 2022-01-15 (Released:2022-02-15)
参考文献数
58
被引用文献数
3

北海道の津軽海峡沿岸域において津波堆積物調査を実施した結果,4地点で泥炭層中に挟在する6枚のイベント堆積物を見出した.イベント堆積物の形成年代は589~516 cal yBP,734~670 cal yBP,1656~1538 cal yBP,1745~1639 cal yBP,2401~2265 cal yBP,2771~2618 cal yBPである.イベント堆積物の供給源,確認地点の現海岸線からの距離,発生頻度から総合的に判断すると,イベント堆積物は津波起源の可能性がある.イベント堆積物はいずれも隣接地域の既知の津波イベントと年代的に近接する.一方,年代の新しいイベントは13~15世紀頃と推定され,北海道から東北地方の太平洋沿岸域で広く知られる17世紀の津波イベントは北海道津軽海峡沿岸に堆積物を残していないことが示された.このことは,17世紀に発生した津波の波源域を考える上で,拘束条件の1つとなる可能性がある.
著者
佐藤 時幸 加藤 凌 千代延 俊
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.127, no.10, pp.621-633, 2021-10-15 (Released:2022-01-01)
参考文献数
43

新潟地域の石油坑井および地表から採取した七谷期試料の石灰質ナンノ化石調査結果は,中期中新世初期のNN5帯とNN6帯で新潟平野中央部が広大な非海域であったことを示唆する.NN5帯の石灰質ナンノ化石の産出量は,調査地域南東部から北東部の北蒲原に抜ける狭い海域の存在を示唆する.NN6帯では新潟平野中央部から東山一帯で海域が急激に縮小するが,東部の北蒲原へ抜ける海域は依然残る.しかし,寺泊期になるとこの海域も消滅し,新潟地域の古海洋環境がMid-Miocene Climatic Optimum後でNN5帯末の急激な寒冷化とそれによるユースタシー変動の影響を強く受けたことを示す.一方,中新世火山岩類を貯留岩とする油・ガス田の多くは石灰質ナンノ化石が産出せず,日本海形成時のリフティングと火山活動で形成された構造的高まりがそのまま油ガス田構造となったことを示す.
著者
佐川 拓也
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.2, pp.63-84, 2010 (Released:2010-10-13)
参考文献数
135
被引用文献数
8 3

近年,過去の海洋表層水温を復元する指標として,浮遊性有孔虫のMg/Ca古水温計が広く用いられている.この手法の利点は,約1℃の誤差で古水温を復元できるだけでなく,酸素同位体比と組み合わせることで,塩分の指標である海水の酸素同位体比の復元も行える点である.このように復元された水温と塩分の時系列変動から,様々な時間スケールの海洋変動が,気候システムの中で重要な役割を果たしてきたことが明らかになってきた.しかし一方で,Mg/Ca古水温計の問題点も指摘されており,特に炭酸塩の溶解が大きな影響を与えることが知られている.浮遊性有孔虫のMg/Ca古水温計の原理や問題点を理解し,その上で古海洋解析に適用することは,過去の水温や塩分を復元する手法として有用であり,気候変動に関するさらなる知見を与えるであろう.本論文では,Mg/Ca古水温計の原理を解説した上で,古海洋学研究への応用例,Mg/Ca古水温計の問題点と今後の展望についてまとめた.
著者
林 愛明 趙 国春 趙 国澤 徐 錫偉
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.104, no.2, pp.III-IV, 1998 (Released:2010-12-14)
参考文献数
1

1998年1月10日11時50分頃, 中国河北省張家口市北西部(北緯41.1°,東経114.3°, 第1図)で Ms6.2 (表面波マグニチュード) 地震が発生し, 河北省北西部の広い範囲に甚大な被害をもたらした. 中国国家地震局は今回の地震を張北-尚義地震と命名した. 1月17日までの集計で死者が50人, 重傷者が 11,439人,倒壊家屋が13.6万棟に達する大惨事となった. 筆者の一人(林)は1月15日から19日まで中国側の研究者と被災地の調査をしてきたので, ここに今回の地震の被害状況を報告する. 被害状況と地質構造・地盤・地形との関連などについては現在継続して調査・資料整理中である.
著者
疋田 吉織
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.102, no.10, pp.847-865, 1996-10-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
31
被引用文献数
10 10
著者
寒河江 健一 ハンブレ マーク 小田原 啓 千代延 俊 佐藤 時幸 樺元 淳一 高柳 栄子 井龍 康文
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.2, pp.117-136, 2012
被引用文献数
10

沖縄本島南部には,主に第四紀更新世のサンゴ礁複合体堆積物からなる琉球層群が広く分布する.本地域の琉球層群は,糸満層,那覇層,港川層よりなる.糸満層は本地域内に散点的に分布し,主に溶解・侵食を受け赤色化した現地性の皮殻状無節サンゴモに富む石灰岩からなり,層厚は2 mを超える.那覇層は糸満層と不整合ないし同時異相の関係にあり,その分布高度は約170 m,層厚は50 mに達する.本層は4つのユニットの累重体であり,ユニット1~3は浅海相であるサンゴ石灰岩から沖合相である石灰藻球・<i>Cycloclypeus-Operculina</i>・砕屑性石灰岩へと上方深海化する整合一連のシーケンスよりなり,ユニット4は沖合相のみから構成される.石灰質ナンノ化石生層序は,那覇層の堆積は1.392~1.706 Maに始まり,0.853 Ma以降まで継続したことを示す.港川層は港川と喜屋武岬西方に分布し,層厚は約20 mに及ぶが,分布標高は50mを超えない.本層の地質年代は不明である.
著者
山下 大輔 安田 知佳 石橋 毅 Rossana Martini 尾上 哲治
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.9, pp.477-493, 2016-09-15 (Released:2016-12-15)
参考文献数
72

本研究では,沖縄本島最北端の辺戸岬に分布する上部三畳系今帰仁層の岩相層序とコノドントおよびアンモナイト化石年代を明らかにするとともに,堆積環境について検討した.本研究の結果,今帰仁層は主に放散虫や薄殻二枚貝を含むミクライト質石灰岩からなる下部層,砕屑性石灰岩が頻繁に挟まれる中部層,数層準にスランプ堆積物が挟まれる上部層に区分される.薄片観察の結果から,今帰仁層は大陸から遠く離れた大洋域の海山などの斜面において,ミクライト質石灰岩の堆積中に浅海域起源の砕屑性石灰岩がタービダイトやスランプ堆積物として流入して形成されたと考えられる.またコノドントとアンモナイトの化石年代より,辺戸岬に分布する今帰仁層の堆積年代は三畳紀後期のカーニアン前期からノーリアン中期と考えられる.
著者
小澤 一仁 前川 寛和 石渡 明
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.119, no.Supplement, pp.S134-S153, 2013-08-15 (Released:2014-03-21)
参考文献数
79
被引用文献数
3 6

南部北上山地は,シルル紀の酸性火山岩類を含む地層が分布し,シルル紀前期の花崗岩も確認されており,大陸性の地殻がシルル紀-デボン紀に存在していたと考えられる古い地塊である.この地塊の北縁と西縁には,オルドビス紀の島弧オフィオライト(早池峰(はやちね)・宮守(みやもり)オフィオライト)とオルドビス紀~デボン紀の間に形成された高圧変成岩類(母体(もたい)変成岩類)が分布し,これらは,オルドビス紀以降のおよそ数千万年で成熟した島弧地殻へと進化していった沈み込み帯の発達過程を記録している.本見学旅行では,早池峰・宮守オフィオライトのマントルセクションとほぼ同時~1億年後の沈み込み帯である母体変成岩を対象として,これまでの地質学・岩石学・地球化学的研究に基づいてオルドビス紀の島弧を復元し,当時の島弧マントルの進化過程について議論したい.