著者
中西 諒 岡村 聡
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.12, pp.835-851, 2019-12-15 (Released:2020-03-26)
参考文献数
42
被引用文献数
10

北海道太平洋沿岸西部は,17世紀の地震・津波の規模や波源を明らかにする上で重要な地域である.そこで歴史記録に残っている1640年の駒ヶ岳噴火にともなう山体崩壊津波の規模を推定するために,内浦湾から胆振海岸西部にかけて17世紀のイベント堆積物の分布を明らかにした.イベント堆積物の粒度・鉱物組成は海浜周辺の砂とよく類似しており,内陸に向け薄層化・細粒化・軽量化を示す.本砂層は,内浦湾から登別にかけて1640年の駒ヶ岳噴火テフラ(Ko-d)によって覆われていることから,1640年の駒ヶ岳山体崩壊にともなう津波堆積物であると判断される.現世の津波堆積物調査結果を基に各調査地点の津波堆積物分布における浸水深1mが妥当かを評価し,数値シミュレーションを用いて1.20km3を超える山体崩壊物流入量を再現し遡上高を求めたところ,内浦湾沿岸から白老周辺までは,両者の推定遡上高が調和的な結果となった.この津波規模は約Mt 7.9-8.2と見積もられる.
著者
原山 智
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.121, no.8, pp.293-308, 2015-08-15 (Released:2015-08-29)
参考文献数
35
被引用文献数
1 6

北アルプス北部,鹿島槍ヶ岳から爺ヶ岳,蓮華岳一帯には,第四紀前期更新世の火山-深成コンプレックスの断面が広く露出している.この一帯では火山活動と花崗岩マグマの上昇定置の直後にあたる1.6-0.6Maの間に傾動を伴う隆起が生じており,爺ヶ岳火山岩類と黒部川花崗岩が80°前後の直立に近い状態まで南北水平軸回転している.この巡検では,北アルプス稜線の爺ヶ岳南峰と中央峰の間においてほぼ直立した湖成堆積物や溶結凝灰岩層を観察するほか,爺ヶ岳火山岩層中に貫入した黒部川花崗岩の接触境界,黒部川花崗岩中に多量に含まれる暗色苦鉄質包有岩を観察する.さらにカルデラ外に流走したアウトフロー堆積物である大峰火砕流堆積物を大峰山地において観察する.大峰火砕流堆積物は東に40°前後傾斜している.北アルプスの隆起に引き続き,中期更新世以降に松本盆地東縁断層に沿った衝上運動が生じ,大峰帯の傾動隆起を引き起こした.北アルプスも大峰帯も第四紀以降の北部フォッサマグナと北アルプス一帯を支配した短縮テクトニクス場での構造運動により生じている.なお2.2-0.8MaのジルコンU-Pb年代値が報告された第四紀黒部川花崗岩が,定置直後の傾動隆起によりどのような熱年代学的応答をしたのかについても解説を行う.
著者
中島 隆
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.8, pp.603-625, 2018-08-15 (Released:2018-10-10)
参考文献数
196
被引用文献数
2 15

2017年時点での日本の花崗岩の総括を行った.日本列島の花崗岩類はすべて顕生代の造山運動で形成された島弧型花崗岩である.大部分が日本列島がまだアジア大陸の一部だった時代に大陸の成長最前線として形成された花崗岩類で,ほとんどがIタイプであり,Sタイプ花崗岩類は非常に少ない.起源物質はその大部分がマントル由来の玄武岩質下部地殻の部分溶融によると考えられ,古い大陸基盤の存在や関与は考えられない.その活動はきわめてエピソディックであり,地表露出面積では50-130Maの白亜紀~古第三紀の花崗岩類が全体の約8割を占め,後期中生代環太平洋花崗岩地帯の一部をなす.西南日本外帯には13-15Maと極めて限られた期間に活動した花崗岩類が広範囲に露出しており,背弧海盆の拡大に関連した特異なテクトニクスでの活動と考えられている.ジュラ紀と三畳紀の花崗岩類は飛騨帯に見られる.古生代の花崗岩類はきわめて少ない.
著者
篠崎 鉄哉
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.129, no.1, pp.603-613, 2023-12-06 (Released:2023-12-06)
参考文献数
114

本総説では,津波堆積物に対し地球化学的手法を用いた研究をまとめ,津波堆積物の地球化学的特徴・挙動について整理し,今後の課題と併せて記述した.地球化学的手法が津波堆積物そのものではなく,海水流入の痕跡もしくは環境変化を見ているため,津波堆積物研究の中でも(1)地層中の津波堆積物の識別や(2)津波浸水域の高精度復元への貢献が期待されている.近年発生した巨大津波以降,津波堆積物の地球化学的特徴について多くの知見が報告されてきており,化学プロキシごとの挙動が徐々に明らかになってきた.一方,依然としてプロキシごとの保存ポテンシャルや堆積環境ごとの挙動に関しては十分な知見が得られているとは言い難い.今後は,現世・古津波堆積物の化学的特徴の把握に加え,新たなプロキシ・解析手段を適用が求められる.そのためには様々な研究分野との協働が必要不可欠であり,分野横断型研究を進めていくことが求められる.
著者
田村 糸子 高木 秀雄 山崎 晴雄
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.7, pp.360-373, 2010-07-15 (Released:2010-11-11)
参考文献数
54
被引用文献数
11 13

南関東の千葉県銚子地域から東京都江東区,神奈川県鎌倉市,愛川町にかけて分布する上総層群相当層に見出された,ざくろ石を多量に含むという特徴を持つテフラ層について,記載岩石学的特徴,ざくろ石の化学組成,テフラ層の層序学的位置づけなどを検討し,これらのテフラ層が明確に対比されることを示した.そして,ざくろ石の粒径の傾向などから,その給源火山が丹沢に求められることを明らかにした.このざくろ石テフラ層を丹沢-ざくろ石軽石層(Tn-GP)と呼ぶ.Tn-GPの堆積年代は,各地における生化石層序,テフラ層序,古地磁気層序などから,およそ2.5 Maと推定される.ざくろ石を多量に含む極めて特徴的なTn-GPは,今後,南関東の各地の更新統で見出される可能性が高く,新しい層序区分におけるP/P境界付近,あるいは黒滝不整合の時代の指標テフラとして貴重な時間面を提供し,関東平野の都市基盤解明に寄与すると期待される.
著者
新井田 清信 高澤 栄一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.Supplement, pp.S167-S184, 2007 (Released:2009-01-27)
参考文献数
52
被引用文献数
1 5

幌満かんらん岩体は,日高山脈の南端部に露出する8×10kmの大きな岩体で,新鮮なかんらん岩からなる造山帯レルゾライト岩体として良く知られている.岩体内部には顕著な層状構造が認められ,ダナイト・ハルツバージャイト・スピネルレルゾライト・斜長石レルゾライト・輝岩および少量の苦鉄質岩からなる.岩体は,これら全ての岩石タイプが成層して層厚3,000mに達する複合岩体を構成し,全体的に滑らかに湾曲したスラブ状の形態を示す.ここでは,幌満かんらん岩体の層状構造に焦点をあてて全ての岩石タイプとその産状を観察し,上部マントルでつくられた層状構造の起源を考察する.
著者
黒田 潤一郎 吉村 寿紘 川幡 穂高 Francisco J. Jimenez-Espejo Stefano Lugli Vinicio Manzi Marco Roveri
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.120, no.6, pp.181-200, 2014-06-15 (Released:2014-11-12)
参考文献数
86
被引用文献数
1

地中海は中新世の末期(5.97~5.33 Ma)に膨大な量の蒸発岩が形成されるイベントを経験した.これはメッシニアン期塩分危機と呼ばれる.これらの蒸発岩は十分に塩水が存在する状況で析出したのか,深海盆までが干上がったのか,未だ議論に決着がついていない.本論では,1)シチリア島の天日塩田で見られる蒸発鉱物(石膏・岩塩)の形成プロセスとその堆積構造と形成環境の関連を紹介し,2)シチリア島のメッシニアン期蒸発岩で提唱された塩分危機のシナリオを解説する.シチリア島のメッシニアン期蒸発岩類は浅海堆積相で晶出した初生的下部石膏ユニット,深海盆でこれが再堆積した砕屑性下部石膏ユニット,深海堆積相の厚い岩塩層,深海堆積相でこれらを覆う上部石膏ユニットに大別される.これらの蒸発岩類は5.33 Maに突如終焉し,広く鮮新世の半遠洋性石灰質堆積物に覆われる.
著者
田村 糸子
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.4, pp.157-162, 2008-04-15 (Released:2009-02-24)
参考文献数
17
被引用文献数
11 4

高等学校において地学教育の機会が減少の一途をたどっている.その要因の一つは,2003年度より施行された現行の学習指導要領である.「情報」・「総合的な学習の時間」・理科の3つの総合的な選択必修科目の導入による,理科の時間数減少の中で,受験に関係の少ない地学が最も削減の影響を受けたと予想される.「地学I」の全高等学校在学者数に対する履修率は3%で,理科の7つの選択必修科目の中で最も少ない.また,地学の教員が減少していることも大きな要因の一つである.高等学校生徒数の減少に伴い教員数も削減され,地学教員退職後の補充がほとんどされてない.地学が軽んじられているのは,高等学校の教育が,進路重視,入試最優先という実情にあると考えられる.今後,教育本来の目的を取り戻し,広い視点から高等学校教育を見つめ直す必要がある.
著者
増渕 佳子 石崎 泰男 白井 智仁 松本 亜希子 宮坂 瑞穂 中川 光弘
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.10, pp.533-550, 2016-10-15 (Released:2017-01-20)
参考文献数
29

沼沢火山の先カルデラ期とカルデラ形成期の噴出物の岩石記載,斑晶鉱物組成,全岩主・微量成分組成および同位体組成から,沼沢火山では,噴火期ごとに流紋岩~デイサイト質マグマで満たされた珪長質マグマ溜りが再生されたことが明らかとなった.マグマ蓄積率を求めると,カルデラ形成噴火では他の噴火期に比べ2~40倍の早さでマグマが蓄積されたと考えられる.また,4.3万年前の惣山噴火以降,珪長質マグマとともに安山岩質マグマが噴出している.先カルデラ期で噴出した安山岩質マグマは,噴火の主体となった珪長質マグマと同じ同位体組成をもち,起源物質は同じであると考えられる.一方で,カルデラ形成噴火で噴出した3種類のマグマは異なる同位体組成をもつことから,地下の多様な場でマグマが発生し,それが地殻中の浅所マグマ溜りに集積したことが示唆され,このことが大規模なカルデラ形成噴火を発生させた原因の一つになった可能性が高い.
著者
武藤 鉄司
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.3, pp.172-182, 2011 (Released:2011-07-07)
参考文献数
90
被引用文献数
2

堆積物の輸送が行われているにも関わらず堆積も侵食も実質的に起こらない河川を平衡河川という.平衡河川は河川系における埋積レジムと削剥レジムの境界条件の具現に他ならず,その理解は成因論的層序学の基軸をなす.従来の平衡河川観は下流域沖積系における平衡河川の実現を静止海水準に対する河川系の平衡応答の結果と捉えるが,筆者らによる一連のモデル実験と理論的検討はそれとは異なる理解をもたらした.新しい平衡河川観は次のように要約される.固定境界を持たない下流域沖積系では,(1)平衡河川は海水準が下降するときのみ実現可能であり,(2)平衡河川の実現を許す海水準下降パターンは沖積勾配αと海底基盤勾配φに依存し,(3)平衡河川にはα<φのもと非平衡応答で実現するアロジェニックなものとα=φのもと平衡応答で実現するオートジェニックなものとがある.新しい平衡河川観を織り込んだ成因論的層序学の今後の展開が待たれる.
著者
村上 晶子 井上 淳 吉川 周作 山崎 秀夫
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1, pp.11-18, 2004 (Released:2005-01-07)
参考文献数
42
被引用文献数
5 5

大阪城外堀堆積物に含まれる微粒炭・球状炭化粒子 (SCPs) の分析と球状炭化粒子の表面構造の観察を行った. 微粒炭分析からは, 粗粒の微粒炭濃集層準を見出し, この層準が1945年大阪大空襲の火災であることを指摘した. 球状炭化粒子分析では, 球状炭化粒子の時系列変化の解読から, 化石燃料 (石炭・石油) 使用量の歴史的変化が解明できることを示した. 球状炭化粒子は堆積物中に極めて良好に保存され, 短時間・簡単に分析できる利点を持っていた. この球状炭化粒子は過去の化石燃料の燃焼を解読する上で重要な役割を果たすと考えられる. 今後, 球状炭化粒子に関する研究は, 産業革命以降を示す「Anthropocene (Crutzen, 2002)」の時代の地質学的研究を行う上で重要な指標となることを指摘した.
著者
池田 昌之
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.12, pp.1033-1048, 2018-12-15 (Released:2019-03-15)
参考文献数
97
被引用文献数
1 1

地球軌道要素変化のミランコビッチ・サイクルは地球環境変化のペースメーカーである.この周期性を万年オーダーの時間目盛とする天文年代学により,新生代の年代学や古環境学は飛躍的に発展し,さらに古い時代へと展開している.中古生代の層状チャートはチャートと頁岩のリズミカルな互層からなり,この堆積リズムがミランコビッチ・サイクルに起因した可能性が古くから指摘されてきた.近年,ペルム-白亜系層状チャートの化石層序と古環境指標の周期解析により,ミランコビッチ・サイクルの認定基準である堆積リズムの周期と階層性が確認された.さらに,天文学的年代モデルを用いて堆積速度や物質収支を推定した結果,チャートを構成する生物源シリカは海洋溶存シリカの主要シンクであり,主要ソースである珪酸塩風化速度の変化を反映した可能性が示された.ミランコビッチ・サイクルに伴い超大陸パンゲアのメガモンスーン強度が変化するため,この生物地球化学的シリカ循環を介して層状チャートの堆積リズムが形成されたと考えられる.
著者
大森 光 安藤 寿男 村宮 悠介 歌川 史哲 隈 隆成 吉田 英一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.129, no.1, pp.105-124, 2023-02-22 (Released:2023-02-21)
参考文献数
70
被引用文献数
1 2

いわき市アンモナイトセンターの双葉層群足沢層大久川部層(コニアシアン下部)のアンモナイト(主に径40-60 cmのMesopuzosia yubarensis)密集層と直下にある炭酸塩コンクリーション濃集層の,堆積相・産状観察と地球化学分析から形成過程を考察した.M. yubarensisは,沖合いの生息場から死後浮遊で沿岸に達した軟体部の失われた殻が,ストーム波浪で住房部が破壊され,分級・集積・運搬され,下部外浜沖合い側で癒着HCS極細粒砂層のハンモックマウンドに沿って急速に埋積した.炭酸塩コンクリーションは,多様なサイズ(径15-194 cm)の長-扁球形で,密集しながらも比較的一様に分布する.コンクリーションの形成は,ストーム波浪で運搬された有機物と底質中のベントス遺骸の分解に伴って堆積物の浅所で始まり,その後,埋没に伴い堆積物深所におけるメタン生成帯での有機物分解が生じるまで継続した.
著者
野崎 達生 藤永 公一郎 加藤 泰浩
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.12, pp.995-1020, 2018-12-15 (Released:2019-03-15)
参考文献数
147
被引用文献数
5 5

日本列島は主に過去4億年以降の付加体から構成されており,付加体中には古海洋底で生成した様々な鉱床が胚胎している.本論文では,別子型硫化物鉱床,層状鉄マンガン・マンガン鉱床に関する成因論の進展と未解明の課題をレビューする.三波川帯に分布する別子型鉱床は遠洋域の中央海嶺で生成し,ジュラ紀後期海洋無酸素事変によって保存された.現地性緑色岩を伴う四万十帯北帯の別子型鉱床は,白亜紀後期の海嶺沈み込み現象に付随して生成した.他のメランジュ中に胚胎する別子型鉱床については未解明の点が多い.層状鉄マンガン鉱床は,中央海嶺近傍の熱水性堆積物を起源とし,緑色岩を伴う層状マンガン鉱床は海山近傍の熱水性堆積物に由来する.チャート中に胚胎し緑色岩を伴わない層状マンガン鉱床は,貧酸素・高マンガンの深層水に高酸素・貧シリカの表層水流入によって形成したと考えられるが,マンガンの究極的な起源についてはいまだ不明である.
著者
Tatsuki Tsujimori Akira Ishiwatari Shohei Banno
出版者
The Geological Society of Japan
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.106, no.1, pp.I-II, 2000 (Released:2010-11-26)
参考文献数
1
被引用文献数
3 4

Eclogitic glaucophane schist has been discovered as a boulder (about 4m diameter) from the Yunotani valley in the western Omi area of the late Paleozoic Renge metamorphic belt (Fig.1). The eclogitic glaucophane schist (Fig.2) occurs as a mafic layer (1.2m wide) intercalated within pelitic schist (garnetparagonite-phengite schist), and is characterized by the mineral assemblage garnet (modal volume: 21%)+omphacite (19%)+ glaucophane (37%)+epidote (19%)+rutile+phengite+albite+quartz (Fig.3). This is the first finding of the late Paleozoic eclogite facies metabasite, which is almost devoid of retrogression and preserving textural evolution (Fig.4) and mineral zoning (Fig.5) during progressive metamorphism. This rock provides an evidence for the eclogite facies metamorphism in the late Paleozoic Western-Pacific margin. More detailed description will appear in Tsujimori et al. (in press).
著者
米澤 正弘
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.8, pp.445-458, 2016-08-15 (Released:2016-09-02)
参考文献数
14
被引用文献数
1

千葉市は東京湾の湾奥部北東側に位置し,昭和30年代半ばまで,海岸には広大な干潟が延々と広がっていた.遠浅で広い干潟では,古くからあさりなどの貝掘りや海苔の養殖が盛んで,観光としての潮干狩りや海水浴でも賑わっていた.高度経済成長の影響で海岸の埋め立てが始まったのは,昭和30年代半ばである.その後何度かの停滞を挟むが埋め立ては順次進み,昭和50年代には終了する.埋め立ての進行に伴い工場や住宅が進出し,京葉線が通り,現在はビジネス街・大型商業施設地域・高層マンションなどが立ち並ぶ新都心として発展を遂げている.埋め立て終了から約40年が経ち,埋め立ての記憶は,そこに住む人々からほとんど消えてしまっている.本巡検では,埋め立て地に建つJR稲毛海岸駅から旧汀線に向かって歩き,埋め立ての歴史を遡る.さらに旧海岸線沿いを歩きながら昔の海岸の名残を探し,地形・地質の変遷を考える.最後に,地形の人工的な改変についても見学する.
著者
吉田 和弘 松岡 篤
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.109, no.6, pp.324-335, 2003-06-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
32
被引用文献数
2 3

関東山地両神山地域に分布する両神山チャートユニットは,地質図に表現しうる3つのサブユニットに区分される.両神山チャートユニットは全体として,チャート砕屑岩シーケンスが構造的に積み重なったパイルナップ構造を呈している.サブユニット1とサブユニット2のチャートからジュラ紀中世Aalenianを,両サブユニットの珪質泥岩からはジュラ紀中世Bajocian~Bathonian前期を示す放散虫化石がそれぞれ得られた.復元した海洋プレート層序の比較からは,両神山チャートユニットが秩父累帯北帯の柏木層あるいは橋立層群に起源をもつナップであるとするとらえ方は成立しがたい.両神山チャートユニットに比較可能な秩父累帯の地質体としては,南帯の海沢層と北帯の上吉田層がその候補として挙げられる.
著者
山口 直文
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.2, pp.121-136, 2019-02-15 (Released:2019-06-07)
参考文献数
97
被引用文献数
1

この総説では,これまで行われてきた水路実験を用いた津波堆積物の研究の現状と今後の可能性を,フィールドでの津波堆積物研究において課題とされている点と照らし合わせながらまとめた.水路実験は,水理条件や堆積物,地形の条件などを設定して調べることができることから,低頻度で直接観測が難しい津波堆積物形成の理解に有効であると考えられている.これまでの水路実験による研究では,津波堆積物の空間分布などの特徴から津波規模や水理条件を推定する土砂輸送モデルの高精度化に向けた研究などにおいては一定の貢献が認められる一方で,地質学的な視点による津波堆積物の調査や観察に貢献できるような成果はまだ多いとは言えない.こうした中,最近行われている,陸上地形に注目した水路実験や,認識可能な堆積構造を形成できる大型水路実験は,津波堆積物の正確な識別,解釈に様々な示唆を与えるものとなっており,さらなる研究の進展が期待される.