著者
山田 来樹 髙橋 俊郎
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.127, no.9, pp.507-525, 2021-09-15 (Released:2021-12-15)
参考文献数
162
被引用文献数
3

日本海拡大時には北陸地方を含む環日本海地域で活発な火成活動が起きた.日本海拡大期に北陸地方で起きた最初の火成活動は,33 Ma頃の能登半島での安山岩質マグマの活動である.能登半島での安山岩質火成活動は,デイサイト質マグマの活動を挟んで前期中新世にも発生した.一方で後期漸新世~前期中新世には,北陸地方の広範囲で月長石を含む流紋岩質火砕流が噴出した.その後,多様な化学組成をもつ玄武岩~安山岩が前期中新世に北陸地方の全域で大量に噴出した.この火成活動に続いて前期~中期中新世には大量の流紋岩が噴出し,北陸地方は急速な沈降を開始した.この日本海拡大に関連した活発な火成活動は,西南日本弧の時計回り回転の終了にあたる16 Ma頃に急速に減退した.これら火成岩類を形成したマグマは,日本海拡大時にアセノスフェア貫入の影響を受けたマントルウェッジや沈み込むスラブ,大陸地殻が溶融することによって生成されたと考えられている.
著者
高橋 雅紀
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.112, no.1, pp.14-32, 2006 (Released:2006-05-01)
参考文献数
115
被引用文献数
34 39

関東地方に分布する中新統の地理的および年代層序学的分布を総括し,現在の利根川を挟んで岩相,層厚,地質構造,堆積様式,構造方向等に顕著な不連続を認めた.この地質学的不連続は,西は赤城山の南麓下から伊勢崎と太田および館林の間を通り,さらに利根川に沿って柏付近から東方へ成田と竜ヶ崎の間に延び,さらに多古の北東付近で南東に向きを変え,銚子の南の片貝海底谷へと延びる伏在断層である.この断層を挟んで東北日本弧と西南日本弧が大きく斜交しつつ接しており,その起源は前期中新世の日本海拡大時期に形成されたものと考えられる.断層に沿って相対的に東北日本弧が海溝側(東側)に数10 km以上ずれており,また断層の西半部では落差の大きい南落ちの断層として,平野側に厚い海成層を堆積させている.この断層をもって,従来の利根川構造線を再定義した.
著者
長岡 信治 奥野 充 新井 房夫
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.107, no.7, pp.432-450, 2001-07-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
74
被引用文献数
23 23

100~30 kaにおいて姶良カルデラでは, 日木山降下スコリア堆積物(103~95 ka), 金剛寺火砕サージ堆積物, 福山降下軽石堆積物(95~86 ka), 岩戸テフラ(60 ka, )大塚降下軽石堆積物(32.5 ka), 深港テフラ(31 ka), 毛梨野テフラ(26.5 ka)の7層のテフラが認められる.これらの噴火口は, カルデラの東半部に集中している.これらのテフラの噴出と並行して敷根安山岩などの溶岩も流出しており, 平均噴火間隔は7500年に1回となる.27 kaの姶良火砕噴火直前の32.5~30 kaでは噴火間隔は約1000年と短くなるが, 噴出量は逆に減少する傾向にある.姶良カルデラ火山は100 ka以降は活動期にあたる.この100~30 kaの噴火活動は, 最新の活動期の前半にあたっている.
著者
矢島 道子
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.4, pp.163-169, 2008-04-15 (Released:2009-02-24)
参考文献数
10

地質学は,初等中等教育にあるいは社会教育に,どんな貢献をするべきなのか,あるいは貢献できるのかを考察するために,地学教育の歴史を調べてみた.まず地学の最初の学習指導要領を概観した.そこには「地文学」の影響が大きく見られると思う.現在は「地文学」など言葉すら消滅しているので,どんなものであったかを明治期の中等教育の教科書で探ってみた.「身のまわりの地学現象から出発して,その疑問を解いていく中で,地学に親しんでいく」という「地文学」の精神は今こそ地学教育に必要ではないかと提案する.
著者
Takehisa Tsubamoto Hajime Taru
出版者
The Geological Society of Japan
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.128, no.1, pp.287-293, 2022-12-08 (Released:2022-12-08)
参考文献数
55

A new specimen of a fossil tooth of the Suidae (Mammalia, Artiodactyla) discovered in the upper Miocene Oiso Formation (ca. 8.29-5.57 Ma) of the Miura Group, Kanagawa Prefecture, Japan, is described. The tooth is left m3, and its hypoconulid has broken away. It is bunodont, low-crowned, and moderately to heavily worn. The m3 has the typical lower molar morphology of a medium-sized suid, with some furrows on the cusps. The part of the tooth containing the first two lobes is relatively elongated, similar to that of m3 of the Suinae. It is more elongated than that of m3 of the Asian Tetraconodontinae. Based on its size and observable morphology, this m3 is most comparable to that of Propotamochoerus hyotherioides (Suinae). This discovery reinforces the hypothesis that the Oiso Formation was deposited in the Honshu Arc, rather than the Paleo-Izu Arc. Only seven (five Miocene and two Pliocene) suid specimens have been reported from the Neogene of Japan to date.
著者
秋澤 紀克 小澤 一仁 芳川 雅子
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.127, no.5, pp.269-291, 2021-05-15 (Released:2021-09-29)
参考文献数
77
被引用文献数
1

地球表面に露出しているかんらん岩は,過去においてマントルに存在していた物質であり,マントル物質の化石である.かんらん岩が経験した圧力-温度-変形史(P-T-d-t経路)を復元することができれば,どのようにマントルが地球内部で運動し,それに伴いどのように温度変化と変形が進行したのかを明らかにすることができる.そのP-T-d-t経路を,かんらん岩の地表への上昇による“化石化”の時点から連続的かつできるだけ過去に遡ることができれば,長期間にわたるマントルダイナミクスの理解を深めることができる.日高変成帯南部に位置する幌満かんらん岩体では,かんらん岩に記録された過去のP-T-d-t経路を詳細に読み解く研究が盛んに行われてきた.本稿では,幌満かんらん岩体のP-T-d-t経路の研究に焦点をあてレビューを行い,定置に至るまでの最終上昇時からできるだけ過去に遡って幌満かんらん岩体が辿った運動・熱・変形史を整理・概観し,新たな提案をする.
著者
石川 正弘 谷 健一郎 桑谷 立 金丸 龍夫 小林 健太
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.7, pp.291-304, 2016-07-15 (Released:2016-08-02)
参考文献数
71
被引用文献数
1

丹沢層群および丹沢複合深成岩体は,かつての伊豆小笠原弧の火成活動に伴うものと考えられ,丹沢層群と深成岩体は,伊豆小笠原弧の上部地殻と中部地殻が島弧衝突に伴って隆起・露出したと解釈されてきた.しかし近年,丹沢複合深成岩体について岩石学,地球年代学,地球化学,岩石磁気学的な手法を使った再検討が行われ,深成岩体は中部地殻断面ではなく,衝突マグマ活動によって形成されたことが明らかにされた.さらに,丹沢変成岩から組成累帯構造を持つ角閃石が見つかり,従来説の接触変成作用だけではなく,非常に暖かいスラブの沈み込みとそれに続く急上昇プロセスが明らかにされつつある.このように丹沢山地の深成岩と変成岩の形成プロセスに関する視点は今まさに大きく転換しつつある.今回の地質巡検では,伊豆衝突帯のジオダイナミクスという視点から丹沢山地に分布する丹沢層群,丹沢変成岩,丹沢複合深成岩体,足柄層群,神縄断層を案内する.
著者
羽地 俊樹 菅森 義晃 田邉 佳紀
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.128, no.1, pp.295-306, 2022-12-08 (Released:2022-12-08)
参考文献数
71
被引用文献数
2

鳥取市国府町宮下に露出する中新統鳥取層群岩美層の泥岩は,保存の良い浅海性の魚類化石を多産する.この泥岩は鳥取~北但地域の前期中新世末期の海進の最初期の地層であり,その堆積年代は山陰東部の海進史を検討する上で重要である.従来は泥岩中に挟まる凝灰岩から得られた16.8±0.8 Ma(1σ)のジルコンのフィッション・トラック年代が堆積年代として参照されていたものの,その年代値は不確かさが大きかった.そこで本研究では,先行研究と同一のマウント上のジルコンの年代をU-Pb法で再検討した.その結果,中新世の年代を示すコンコーダントな27粒子から17.4±0.2 Ma(2σ)の加重平均238U-206Pb年代を得た.この年代値は,従来の山陰東部の中新統の海成層の証拠よりも40万年ほど古い.中新統の岩相や古流向から古地理を推定すると,宮下地域は鳥取~北但地域の一連の堆積盆地内の低地に位置していたと考えられ,より早期に海水の影響を被る環境に変化したのだろう.
著者
鈴木 毅彦 白井 正明 福嶋 徹
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.7, pp.343-356, 2016-07-15 (Released:2016-08-02)
参考文献数
65
被引用文献数
3 3

三重会合点の北西数百kmに位置する関東平野には,かつての前弧海盆とその周辺域に堆積した上総層群が分布する.鮮新世後期から第四紀前〜中期に堆積した同層群中には多数のテフラが含まれている.これらを用いた火山灰編年研究により,日本列島最大規模の面積をもつ関東平野の地形発達・古地理,地殻変動,そして上総層群にテフラを供給した爆発的火山噴火の復元が可能となる.こうした研究を進めるには関東平野の広大な地下に埋もれたテフラも解明する必要がある.現在関東平野において,ボーリングで確認された地下のテフラや,地表に露出するテフラの対比・認定が進められつつある.本コースでは,関東平野南部,とくに狭山丘陵と多摩丘陵において前期更新世テフラを観察し,同時代のテフロクロノロジーとその応用研究の現状を紹介する.
著者
澤井 祐紀
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.10, pp.819-830, 2017-10-15 (Released:2018-01-25)
参考文献数
73
被引用文献数
8 9

本論は東北地方太平洋沿岸で行われた古津波堆積物に関する研究について総括する.東北地方における古津波痕跡に関する地質調査は,1980年代の日本海側で始まった.その後,津波堆積物に関する調査は太平洋側で行われ,1611年慶長津波,1454年享徳津波,869年貞観津波の痕跡が見つかっている.1611年慶長津波については,三陸海岸沖に波源を想定する一方で,千島海溝の巨大地震によるものという説もあり,未だ決着がついていない.1454年享徳津波および869年貞観津波については,日本海溝中部に波源があると考えられ,その規模はM8クラスである.1454年および869年の津波より前には,幾つかの古津波の痕跡が見つかっているが,その波源についてはまだ明らかになっていない.
著者
佐藤 隆春 中条 武司 和田 穣隆 鈴木 桂子
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.Supplement, pp.S53-S69, 2012-08-15 (Released:2013-02-21)
参考文献数
63
被引用文献数
1 6

室生火砕流堆積物は1960年代以降,大規模な珪長質火山活動の噴出物としてとらえられてきた (志井田ほか, 1960など).ここ十数年の間に,火山地質,地質構造,古地磁気方位,化学組成,構成鉱物の特徴など,多面的な研究が進められてきた.これらのデータの多くから室生火砕流堆積物は,熊野酸性火成岩類や中奥 (なかおく) 火砕岩岩脈群などと共通する特徴を示し,紀伊半島中軸部〜東部に形成されたカルデラ火山群が給源火山であることが明らかになった.室生火砕流堆積物の遠方相に対比される石仏凝灰岩層は給源カルデラ群北端から50 km以上流走したと推定される.本巡検では高温で大規模な火砕流堆積物(high-grade ignimbrite)の岩相と縁辺部における岩相を中心に観察し,大規模火砕流噴火の推移を体感してもらいたい.
著者
辻森 樹 マルテンス ウヴェ
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.112, no.2, pp.III-IV, 2006-02-15 (Released:2013-03-23)
参考文献数
2
被引用文献数
1
著者
田邉 佳紀 小野寺 麻由 中務 真人 國松 豊 仲谷 英夫
出版者
The Geological Society of Japan
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.126, no.4, pp.167-181, 2020-04-15 (Released:2020-07-31)
参考文献数
36
被引用文献数
1

アフリカヨシネズミ(齧歯目,ヨシネズミ科)は二種の現生種がアフリカ・サハラ以南に生息している.先行研究では,現生のヨシネズミ属はその化石記録からアフリカの後期中新世末に出現したと考えられていた.日本-ケニア調査隊はケニア北部に分布する上部中新統ナカリ層(約10Ma)からヨシネズミ属の新種Thryonomys kamulai, sp. nov.を発見した.筆者らは頬歯化石を基に本種の記載を行い,ヨシネズミ属の中では小型で,また固有の稜縁歯(lophodonty)を有することが特徴づけられた.この発見により,ヨシネズミ属の初産出記録が後期中新世の約10Maに更新され,彼らは少なくとも10Ma以前にアフリカに生息していたことが考えられる.
著者
竹下 欣宏 桐生 和樹 花井 嘉夫 北澤 夏樹 川上 明宏
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.5, pp.291-307, 2017-05-15 (Released:2017-07-25)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

2014年9月27日午前11時52分ごろ,御嶽山で水蒸気噴火が発生した.我々は,この噴火による詳細な降灰範囲を明らかにすることを目的として,長野県,山梨県,群馬県,東京都においてアンケート調査を実施した.アンケート結果と既存の研究による降灰確認地点に基づき降灰域を検討した結果,長野県中南部および山梨県の北西部の広い範囲において9月27日の噴煙から1g/m2以下の微量な降灰があったことが明らかになった.27日の噴煙による微量な降灰域は,降灰軸の南側,特に木曽山脈と赤石山脈に囲まれた南北に長い伊那盆地内において広いことが明らかになった.このことは,微量な降灰域は上空の風だけでなく,地上付近の風と地形にも影響を受けることを示している.微量な降灰域に対する地上付近の風の影響は浅間山や桜島のマグマ噴火でも確認されており,細粒な火山灰が降下する際には普通に起こっているものと考えられ,2014年御嶽山の水蒸気噴火でも確認された.
著者
安江 健一 高取 亮一 谷川 晋一 二ノ宮 淳 棚瀬 充史 古澤 明 田力 正好
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.120, no.12, pp.435-445, 2014-12-15 (Released:2015-05-19)
参考文献数
28

本研究では,侵食速度の指標として,環流丘陵を伴う旧河道(以下,環流旧河谷)に着目した.環流旧河谷は,分布が乏しい流域があるものの,日本列島の各地に分布し,様々な比高を持つことから,侵食速度を算出する際の有効な指標になると考えられる.この環流旧河谷を用いた事例の研究を,熊野川(十津川)の中流域において行った結果,旧河床堆積物を覆う角礫層は,赤色化していることから最終間氷期以前の堆積物と考えられ,旧河床堆積物の離水年代は12.5万年前かそれより古いと考えられる.角礫層に含まれるK-Tz起源の粒子は,角礫層の堆積時に降下し,希釈されたものであり,角礫層を覆う表土に含まれるK-Tz起源の粒子は角礫層の離水後に斜面から再移動したものと解釈すれば,赤色化に基づく角礫層の年代観に矛盾はない.この離水年代と旧河床堆積物の現河床からの比高から算出した下刻速度は,約0.9 m/kyかそれより遅い可能性がある.このように,環流旧河谷は,河川の上流や西南日本などの内陸部における河川の下刻などの侵食速度の指標になるとともに,隆起速度を推定する際の有効な指標になる可能性がある.より確度の高い侵食速度の算出には,環流旧河谷に分布する旧河床堆積物や斜面堆積物などを対象とした年代測定が今後の課題である.
著者
山野井 徹
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.102, no.6, pp.526-544, 1996-06-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
50
被引用文献数
20 16
著者
千葉 達朗 林 信太郎 小野田 敏 栗原 和弘 藤田 浩司 星野 実 浅井 健一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.XXI-XXII, 1997 (Released:2010-12-14)
被引用文献数
1

5月11日午前8時, 秋田県鹿角市の澄川温泉で, 地すべりと石流が発生, 澄川温泉と赤川温泉の16棟が全壊, 国道341号も寸断された. 5月4日頃から水の濁りや道路の変状等が察知され, 適切な警戒避難が行われたため, この災害による死者・負傷者はなかった. なお, 地すべりの最中に末端付近で水蒸気爆発が発生した. ここでは, 5月12日にアジア航測(株)が撮影した空中写真, その後の現地の他, 秋田航空(株)が撮影した水蒸気爆発の瞬間の写真を紹介する.
著者
岡本 敦 桑谷 立
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.9, pp.733-745, 2017-09-15 (Released:2017-12-25)
参考文献数
76
被引用文献数
2

変成作用は,地球内部の温度・圧力・化学組成などの条件に応答して進行する化学反応である.変成作用の時間変化を観測することは難しく,最終状態の空間パターン(岩石組織)という独特な情報をいかに読み解くかが,岩石の形成条件やプロセスを理解する鍵となる.変成岩組織には,解釈がシンプルで理論背景が確立しているものから,複数のプロセスが関与して,モデル自体も手探りなものまで様々なクラスがある.本総説では,鉱物の組成累帯構造の熱力学的解析と,反応–破壊カップリング組織の離散要素法モデルを代表例とし,変成岩組織の逆解析とフォーワードモデリングの最近の進展についてまとめる.また,確率的な逆解析が,不定要素の大きい岩石学の問題に有効であることを示す.数値シミュレーションと観測データを統合するデータ同化的なアプローチは,今後,複雑な岩石組織の解読にブレイクスルーをもたらすものと期待できる.
著者
三浦 大助 和田 穣隆
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.7, pp.283-295, 2007 (Released:2008-03-29)
参考文献数
87
被引用文献数
3 8

平均噴出率・楕円率・ルーフアスペクト比を用いた検討から,圧縮テクトニクスと西南日本の中期中新世カルデラ火山の関係について,以下のような考察が得られた.カルデラ火山とテクトニクスの関係では,マグマの噴出しやすさが重要である.陥没構造の違いは,陥没の仕事量の相違である.西南日本のカルデラ火山群は,圧縮と引張の中間的性質を示す極めて大きな平均噴出率である.楕円率・規模・ルーフアスペクト比とトレンチ距離の関係では,トレンチ側で楕円率×活動規模が大きく,ピストン型カルデラが発生しやすいことがわかった.古応力方位はNNE-SSW~NE-SWの最大圧縮応力方位(σHmax)と推定され,この時代の中央構造線(MTL)の左横ずれ変位と一致する.さらに,火山フロントの後退条件を検討した結果,マグマ供給率の低下とテクトニック応力の増加によって起こると考えられる.